いつかこれを読む君の為に   作:北間 ユウリ

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「家出」という単語には少しだけ思い入れがあります。小さい頃は親に反発して、よく家を飛び出したものです。同じくらい家を追い出されましたが。
 だけど、一度だけ全く違う理由で家出をしたことがありました。今回のお話は、その時を思い出して書きました。

 つまり、今回は416の奇行はないです(料理は除く)。



僕の副官の家出

 

 5月21日 曇り

 

 416が復帰した。修復に時間が掛かったのは、ズタズタに断ち切られていた左腕の疑似神経を繋げるのに手間取ったからだと聞いている。それ以外の損傷にはそれほど時間が掛からなかったそうなので、それほど左腕の損傷が酷かったのだろう。

 そういうわけで今日から416が副官をまた務めてくれたのだが、頻繁に左腕を気にしていた。修復したばかりでまだ違和感があるのだろうか。大丈夫だと言っていたが、もし酷いようなら休みを申請するように伝えた。

 その他に一つ気になったのは、彼女が執務中も手袋をしていたことだ。いつもは外しているのに、どうしたのだろうか。聞いてもはぐらかされたので深くは追及しなかったが、傷が残っているなら直してもらった方がいいと思う。女の子なのだから

 

 久しぶりの無味無臭料理は、天丼だった。素材の味を完全に殺す手際は健在なようで安心した。美味しいとは言っていない。

 

 

 

 5月22日 雨

 

 やはり左腕の違和感が大きかったのだろう。416が休みと外出を申請してきた。勿論受理し、安静にするように伝えた。返事に元気が無かったので、かなり無理をしていたのだろう。気付かなかったことを申し訳なく思う。

 今日から暫くはG11に副官を頼むことにした。寝てばかりの彼女だが、任せた分はその日の内に終わらせてくれる。提出はその日の内にしてほしいのだが。書類は枕では無いと言っても聞いてはくれないだろう。

 

 416が外出しているため、夕飯をまた食堂の定食で済ませようと思っていたのだが、食堂には416作のおでんが作り置きされていた。温め直していただいたのだが、無味の出汁が無味の食材に染み込んでいて大変無味だった。

 

 

 

 5月23日 雨

 

 G11から聞き、自分でも確認したのだが、416が外出してから戻ってきていない。カリンに頼んで416が申請していた外出先に行ってもらったのだが、誰も彼女の姿を見ていないという。携帯端末で彼女に連絡を試みたが、彼女からの応答は無かった。

 基地の人員を総動員して捜索しているが、これを書いている今でも彼女の行方は分かっていない。

 一応日記を読み返しているが、ヒントになりそうな記述は見当たらな

 

 

 

 5月24日 雨

 

 ようやく家出娘を捕まえた。

 まさか同じ相手に二度も指輪を渡す事になるとは思わなかった。今度は薬指ではなく、ネックレスにして首に掛けたのだが。

 柄になく走ったり、雨に打たれてびしょ濡れになったから、とても疲れた。今日は早く寝る。

 

 

 416が無事でよかった。

 

 

 





 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 何がどうなったのかは、ご想像にお任せします。手抜きじゃないです。想像を促してるだけです。ほら読む人の数だけ物語があるって素敵じゃないですか? はいごめんなさい。

 ただ、416のために指揮官が雨の中走り回った事だけは覚えておいてください。

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