チノ達が杜王町から帰って来てから数日が過ぎた。あの事件以降ココア達の胸にはある思いが生まれておりその思いを払拭する為にある決意を持ってリゼの屋敷にいるジョセフの元を訪れていた。
「どうしたんじゃ嬢さん方?この儂に何か用かの?」
お惚けた様にそう言っているジョセフだが、ジョセフにはココア達が自分の訪れた理由を何となく察していた。
「ジョセフさんにお願いがあります…私達に波紋の修行をつけて下さい!!!」
そう言うとココア達はジョセフに土下座する。その様子を見たジョセフは
「別にそこまでする必要はないぞ。お前さん達に一つ聞きたい、なせ波紋の修行を始めたいと思ったんじゃ?」
ジョセフの何故波紋の修行をしたいのかと理由を尋ねられたココア達は口を開く
「今以上に強くなりたいからです!カーズ達との戦いの時、私は肝心な時にやられて大切な妹のチノちゃんに無茶をさせてしまった。もう私はチノに危険な目にあって欲しくないの!」
「私達も同じ理由だよ。私達はもっと強くなりたい!そうすれば死ななくても済む人達を守れるかもしれない!もう関係ない人達が傷つく所も死ぬ所も見たなくはないから!!」
そう言うマヤとメグの胸の中には杜王町での戦いで失われてしまった沢山の命の事を思い出していた。死んでしまった人達にも大切な家族が恋人がいた筈だ。そんな人達に消えぬ傷を与えてしまった事を酷く悔い続けていたからだ。
「大切な妹がそこまでの決意を見せたんだ。兄である俺も男を見せなきゃいけねぇだろ?其れに俺だってあの戦いで出来る事があった筈だからな。後悔しない為にも今やるべき事をやりたいんだ!」
ミロも今自分に出来る事をする為に
「私は大切な友達を守りたい。自分の力不足で友達を失いたくはないから…大切な物を守る為の方法を教えて下さい!」
ユラの力強い意思を感じる言葉に共感する様に麻里も頷き
「私と凛ちゃんも皆さんと同じ気持ちてす。この前の戦いで自分達に足りない物が沢山ある事を突き付けられました。また今回みたいな事が起きないとは限りません…だから!私達に波紋を教えて下さい!お願いします!」
そして最後に青山と凛が自分の胸の内をさらけ出す様にジョセフに言葉をぶつける。ココア達の強い覚悟の言葉を聞いたジョセフは
「お前さん達の覚悟は伝わった。このジョセフ・ジョースター、お前達に波紋の修行をつけてやろう!!但し、途中で根をあげるのは許さんぞ?」
ジョセフの言葉にココア達は強く頷いた。
その後ココア達はジョセフと共にリゼの家が所有している山の一つへとやって来た。
「波紋の修行は此処で行う。学校と仕事以外では此処で生活して貰う。安心しろお前達の事はちゃんとリゼに伝えている」
そう言っているジョセフは何時ものおちゃらけた様子はなくそしてカーズ達と対峙した時とはまた違う戦士としての風格を出していた
「まず、お前さん達に聞きたい波紋をどんな物だと考えている?」
「えっと…超能力みたいな物じゃないの?」
マヤがココア達を代表してジョセフの質問に答える
「確かに波紋もスタンドも一般的には超能力に分類される物じゃろう。しかしそれだけはない。波紋とはスタンドという『才能』に近づく為の古来から伝わる『技術』なのじゃよ」
「じゃあ、波紋とスタンドは同一の存在みたいなものという事?」
「その通りじゃ、波紋とスタンドは同じ生命エネルギーを武器にするという点では同じ。メグちゃんの言うように波紋とスタンドは形は違うがルーツは同じと言って良いじゃろう」
ジョセフはメグの答えが正解だとばかりに頷きながらそう言うとジョセフはマヤに近づくき人差し指でマヤのが横隔膜付近を突いた
「パウ!!!」
「クボェェェ!!」
マヤが女子らしからぬ悲鳴をあげるとその場に咳込みながら蹲る
「息を全て吐き出せ!!肺の中にある酸素を残らず吐き出すのじゃ!!」
ジョセフはマヤを見下ろしながらそう言うと突然の事に戸惑っているメグ達に近づき次々と人差し指で横隔膜付近を突いて行く
「パウ!パウ!パウ!パウ!パウ!パウ!パウ!!」
「ヴェェァァァァ!!」
「ふみゃ!?」
「クボォォォ!!」
「グフォォォ!!」
「うみゃ!!?」
「はやみん!!?」
「うきゃ!!?」
三者三様の悲鳴?をあげるとメグ達も咳込みながら蹲る。咳が落ち着くとココア達は自分達の身に変化が起きている事に気がついた。なんと自分達の足元から花が咲き始めているのだ。つい先程までは草さえも生えていなかった筈なのに
「これでお前さん達は波紋の呼吸を身につけた筈じゃ、しかし波紋法は修業を積まなければ波紋の呼吸も乱れる上に力も弱い。波紋法をモノにする為にも此処から本格的に波紋法の修行を始める!!」
ジョセフはそう言うと波紋の呼吸に切り替え若い姿に戻ると
「本当なら波紋の修行は波紋発祥の地であるチベットのヌー川をさかのぼった奥地かヴェネチアから船で北東へ30分の位置にあるエア・サプレーナ島にある修業地へ赴くのが1番だが、今回は其処に行かなくても出来る波紋の修行を行うぜ!」
そう言うとジョセフは歩きながら近くの川へと歩いて向かうと
「お前達には波紋の呼吸を保ったまま水の上を歩いて反対側の岸に向かって貰うぜ」
「す、水面を歩けってか?俺達が教えて貰いたいのは波紋の修行であって忍者の修行じゃねぇぞ?」
予想の斜め上の修行法にミロは思わず顔を顰めるがジョセフはそんな物には気も止めずに川の中へと向かうと普通に水面の上を歩いていく。其れを見ていたココア達はポカンと口を開けるしかなく、ジョセフは川の半分ぐらいまで歩くとココア達の方を振り返ると
「波紋法を極めればこれぐらい簡単にこなせる様になるぜ。本来ならかなり難易度の高いモンだがチマチマと修行していたら完全に波紋法をマスターするまでどれぐらいかかるがわからねぇ、だから多少はスパルタで行くぜ!!」
こうしてココア達の波紋法の修行が始まった、が修行は中々に前途多難であった。ココア達は水面を歩いて川を渡ろうとしているが上手く出来ずに何度も溺れかけた。そしてそれを繰り返す事数時間…ユラに青山、ミロとメグは何とか歩いて水面を歩いて渡りきる事が出来る様になった。といってもジョセフの様に完全に水面の上を歩いている訳ではないが
「へぇ、もう少し手こずると思ったが中々に筋のいい奴らがいるな」
ジョセフは尻餅をつき全身ずぶ濡れで息が切れているユラ達を見下ろしながら感心した様子で言う。そんなジョセフの言葉聞いたユラがちょっとした意趣返しのつもりで
「そういえばジョセフさんってどれぐらいで水面の上を歩けるようになったのかな〜?」
「ん?俺様の場合は最初から出来たけど?」
ユラの質問にあっさりとそう言うジョセフにユラ達は暫くの間何も言えなくなったのだった。
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その後ユラ達は服を着替え終わるとココア達より一足先に修行の第2段階と移る。ココア達が悪戦苦闘している川の近くでユラ達は新たな修行に必要な道具としてジョセフからワインが並々と入ったグラスが渡されていた。(因みにワインが入っているのは成人している青山だけでありユラ達には普通のジュースが入っている)
「此処からが修行の第2段階だ。お前達にはワイングラスに入った飲み物を『一切』零さずに戦って貰う。後この戦闘ではスタンドの使用は禁止だ!スタンドを使わずに飲み物を一切零さずに戦闘をやり遂げるんだ!」
「の、飲み物を零さないように闘う何て無理だよ!!」
メグが不安そうにそう言うがジョセフは其れを一刀両断する
「無茶じゃねぇ、俺も若い時も親友と一緒にこの修行をやり遂げたんだ。お前達も出来る筈だろ?それともアレか?お前達の覚悟ってのはそんなモンだったのかよ?」
ジョセフの挑発とも取れる発言にカチンと来たメグ達は戦闘訓練を始めるがやはりというか飲み物を零しまくる全身がワインとジュース塗れになった頃に修行の1日目が終了した。修行の1日目が終わりココア達がへたり込んでいるとジョセフが特殊な作りをしたマスクをココア達の元へ放り投げる
「言い忘れてたが修行以外の時間はこのマスクを着けて貰うぜ、このマスクは普段から自然と波紋の呼吸が出来るようにお前達の呼吸を修正するんだ。今の所マスクをつけるのは普段の生活の時だけだが修行に慣れてきたら修行の時にもマスクをつけて貰う予定だぜ」
「さ、流石にスパルタ過ぎないかしら…ジョセフさんって意外と鬼教官なのね…」
苦笑いを浮かべているココア達の中から麻里が代表して声をあげ、ココア達も同意するように頷いている。
「何か言ったか麻里?」
「いえ、何でもありません」
麻里は誤魔化すようにそう言うのであった。その後ココア達はリゼの家が所有する別荘のひとつへと移動するとシャワーで1日の疲れを取り、リゼが手配していた使用人が用意した夕食を食べ、明日に備えて皆早い時間に就寝する。そして就寝してから暫く経った後ココアはトイレに行く為に寝室から出るとリビングで老人の姿に戻ったジョセフがペンダントを見つめながらワインを飲んでいた。
「ジョセフさん。その写真には誰が写っているんですか?」
「まだ、起きておったんかココア。…この写真には儂の娘が写っているんじゃよ」
ジョセフは穏やかな笑みを見せると赤ん坊が写っている写真をココアに渡す。そしてココア写真に写ってる赤ん坊に興味を持つとジョセフに赤ん坊について質問する
「ジョセフさん。この写真に写っている赤ん坊ってホリィさんですか?」
ココアはジョセフの言葉から写真に写っている赤ん坊は承太郎の母親である空条ホリィではないかと推測した。(因みに何故ココアがホリィの事を知っているのかというと以前承太郎が持ち歩いていた両親の写真を見た時に承太郎から説明を受けた事があった為)そしてジョセフはそんなココアの言葉を聞くと軽く頭を振り
「この子はな、儂と仗助が1年前に杜王町で拾った女の子の赤ん坊じゃよ」
「拾った?この子の両親はどうしたんですか?」
「財団が調査をしてはいたんじゃが、行方が掴めなくてな、赤ん坊は儂に懐いていたし養子にしたんじゃよ」
「そうだったんですが…赤ん坊なのに可愛そうですね…」
ココアは思わずその赤ん坊に同情の感情を抱いてしまう
「まぁ、娘には…静にはちゃんと話すつもりじゃよ。それにあやつにはスタンドの制御方法も覚えて貰わなければならないしのう」
「ええっ!?この子スタンド使いなんですか!?」
「あの時は苦労したのう…まぁ今となってさいい思い出じゃか」
そう言うジョセフの脳裏にはその時の騒動の記憶が蘇る。そしてその騒動のおかげで仗助と無事打ち解ける事が出来た事も…そう会話を終えるとココアは眠そうに欠伸をしもう少し起きているというジョセフを残して寝室へと戻ったのだった。
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次の日
「今日はまた新しい修行を始める!昨日の修行でお前達は完璧とは言えねぇが川を歩いて渡れる様になった。先に渡れる様になったユラ達は昨日と同じメニューをして貰うがココア、マヤ、麻里、凛にはまた別の修行をして貰うぜ?おっと安心しな、ユラ達にも後でちゃんと同じメニューをやらせるつもりだからよ」
ジョセフがそう言うと昨日と同じ戦闘訓練を始めたメグ達を河原に残すとココア達を連れて河原の近くにあるそこそこ高い崖へと連れて来た
「お前達は此処で波紋の修行をして貰うぜ」
崖を指差してそう言うジョセフにマヤが嫌な予感を感じ
「ジョセフ、まさかとは思うけど歩いてこの崖を登れって訳じゃないよね?」
頼むから外れて欲しいという雰囲気を出しながらマヤはそう言うが
「勘が良いな、マヤ。その通りだ、お前達には歩いてこの崖を登って貰う。昨日の水面歩きの要領で行けば簡単に登れるようになるぜ」
「あの…ジョセフさん?崖を登れというのは理解しましたが周りには安全の為のクッションがありませんが?」
凛は恐る恐るそう言うがジョセフはきょとんとした表情になると
「そんなモンがあったら修行にならねぇだろ?」
「嫌々!!其処は置いて置こうよ!この高さから落ちたら死にはしないと思うけど、怪我しちゃうよ!!」
「大丈夫だって、怪我したら俺の波紋で治療してやるからよ」
「問題は其処じゃないでしょうが!!」
まるでコントのようなやり取りをするジョセフ達だが当の本人であるジョセフは至って真剣だった。
「良いか、怪我を恐れるな。落ちる事を恐れるな。自分を見失うな。こんな時こそ波紋の呼吸を整えろ、波紋を使いこなすで1番大事なのは恐怖を我が物とする事だ。でも、勇気と無謀。勇気と蛮勇を履き違えるな、其れが波紋使いとしての1番必要な要素だ」
真剣な雰囲気でそう言うジョセフの言葉にココア達もいつのまにか真剣な表情で聞いていた。そしてジョセフの話が終わるとココア達は崖を歩いて登る修行を始めた。当たり前の話だがココア達は何度も崖から落ち、その度に怪我していくがココア達それでも崖を登る修行を続ける。ジョセフが言った『恐怖を我が物』とする事で自分達の殻を破る為に。そしてそんなココア達の波紋の修行はまだまだ続くのはだった…
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「ココアさん達は大丈夫でしょうか?」
ココア達の修行に同行しなかったチノがそんな事をポツリと呟く、本当なら自分も波紋の修行に同行したかったがレクイレムを使った影響なのか倦怠感が中々拭えなかった為に今回は大事を取って休む事としたのだ。しかしラビットハウスの営業を休む訳には行かなったのでこうしてラビットハウスに出て営業をしていたのだ。
「ふう、漸く一息つけそうですね」
ラビットハウスのランチタイムが終わり一息を付ける時間になるとチノはコーヒーを入れるとカウンターに座り入れたコーヒーを飲もうとした時、来店を知らせるベルがなると金髪の少年が店内へと入って来る。
「すいません、ランチタイムはもう終わってしまいまして」
チノは金髪の少年に申し訳なさそうにそう言うと金髪の少年は
「僕はランチを食べに此処に来た訳ではないですよ…香風智乃」
「何故私の名前を?貴方は誰ですか」
「僕は汐華初流乃…イタリアでの名前はジョルノ・ジョバァーナといいます。香風智乃…君に聞きたい事が幾つがあります。…同じレクイレムに到達した者として…」
「貴方が何故レクイレムの事を?一体貴方は何者なのですか?」
「こう見えても僕は財団の関係者です。前にイタリアでちょっとした事件があった時に僕も辿り着いたんですよ…貴方と同じレクイレムに。といってもレクイレムの能力は違いますが」
「貴方がレクイレムに?もしかして前にジョセフさんが言ってたレクイレムに到達した人というのは」
「僕の事です。今回僕が日本に来たのは財団にてレクイレムの研究をする為。そして僕は研究中の貴方のメンタルケアとレクイレムのデータの収集に協力する様に財団から要請され日本に来たんです」
本当はそれ以外にも目的はあったがジョルノは上手い具合に肝心の情報をぼかす事で自分はレクイレムの研究の為に日本へ来たのだとチノに信じさせた。そしてジョルノの言葉を素直に信じたチノはジョルノに自分がレクイレムに至るまでの経緯を説明した後ジョルノから自分はシャロの腹違いの兄妹だと説明を受けその時にびっくりして椅子ごとひっくり返った事はまた別の話である。何やかんとあったがチノとジョルノは暫くの間雑談を楽しんだのだった。
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数日後のラビットハウス
ココア達の波紋の修行にも一息が付き今日は休息日、ラビットハウスには店員として勤務しているチノ以外には承太郎に仗助。そして億泰がコーヒーを飲んでひと息入れていた。因みにココア達は今日はラビットハウスのバイトが休みの為に街へと出かけている。(ジョルノはイタリアの仲間への定期連絡。そしてシャロの両親の誘いで買い物へと出かけている)
「しっかしよ〜杜王町から帰る時から思ってたけど一体全体そのミイラは何なんだ?一体誰のミイラなんだよ?」
コーヒーを飲んでいた仗助が机の真ん中に置いてあるミイラを見つめながらそう言う
「チノちゃんよぉ、本当にいつ手に入れたかは覚えがねぇのか?」
仗助の話を聞いていた億泰が確かめる様にチノにそう質問する
「本当ですよ。本当にこのミイラを何時手に入れたのかは分からないんです。レクイレムが消えた後気を失った私が知らない間に手にしていた物だとジョセフさんが言っていましたから」
チノの言葉を聞いた承太郎はアゴに手をやり何かを考え込んだ後口を開く
「チノが言っている事が本当だとするとこのミイラは気味が悪い、早い内に処分した方が良いだろう。取り敢えずは財団で保管して置く。チノ、其れを私に渡してくれ」
承太郎がそう言ってチノからミイラを預かろうとした時、億泰がミイラに起きている異変に気がつく
「なぁ、そのミイラなんか光ってねぇか?」
「えっ、本当ですか?」
億泰の言葉でチノはその時初めて気がついた自分が手にしているミイラの右手が光っている事に
「何ですか!?コレは!」
突然の事態にチノは驚愕の声を上げる。そしてチノが手にしていたミイラの右手がふわりと浮き上がると一筋の光が誰も居ない空間へと延びていく、その時更に自分達の目を疑う事がおきる。誰も居ない筈の空間が歪むと黒いワームホールが現れその中から5人の少年少女達が姿を現した。そして突然現れた少年達の手にもチノが握っているのと同じく光輝いているミイラが握られていた…
To Be Continued……