雪音クリスは〇〇したい   作:とりなんこつ

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今回はクリス視点です。

ノリ的には絶唱しないシンフォギアのあれで。

多少の諸々のデフォルメは大目に見てもらえると嬉しいです。


2.雪音クリスは昼寝がしたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私立リディアン音楽院も午前中で授業が終了する日が存在する。

その日、雪音クリスは、お昼を食べて遊びに行こうという学友の誘いを固辞し、一人自宅へと向かっていた。

道々のコンビニであんぱんと牛乳を購入。歩きながら空腹を満たす。

風鳴翼あたりから『行儀が悪いッ!』と眉を顰められそうな光景ではあるが、クリスの内情は切実だ。

彼女の心の声を代弁すれば、ズバリ、

 

「…眠い、眠さが爆発しているッ!」

 

原因は、昨晩寝る前に鑑賞したレンタルDVD。

序盤こそ壮大なミステリー展開にわくわくしながら見ていたが、中盤から後半へかけては怒涛のホラーラッシュ。

ならば見なければよさそうなものだが、結末が気になって結局ガッツリ見てしまった。

代償として、寝室どころかマンション中の電気をつけ、朝までまんじりとせず過ごすことに。

仏壇の前で差し込む朝日にようやく眠気を催し、うとうとしたと思った瞬間に目覚ましのベルが鳴る。

結果として、彼女はほとんど眠らず午前中の授業をこなしていた。

 

「まあ、今日は特に訓練とかもないしな…」

 

あくび紛れでひとりごち、自宅のドアの鍵を開けるクリス。

気合と根性で授業を乗り切ったツケは、いま猛烈な眠気となって彼女へと襲いかかっていた。

靴を脱ぎ散らかし、廊下を歩きながらニーソックスも脱いで行く。

そのまま寝室へ直行し、ベッドへとダイブ。

速やかに夢の国へ下降していく寸前、制服を着たままのことを思い出す。

このまま寝ては皺になってしまう。そして明日も学校はある。

最後の気力を振り絞り制服を脱いでベッドの外へ放り出す。

下着だけの恰好になったクリスは、思いきり枕へと頭を押し付けた。

 

さあ、夢の国へ、MEGA DETH PARTY…。

 

その時だった。

 

「ク・リ・スちゃ~ん!」

 

開け放しの寝室のドアから、能天気極まる大きな声。

 

「な、な、な…!?」

 

ベッドで跳ね起き狼狽するクリスに、

 

「わ、クリスちゃんってば、だいたーん」

 

と制服姿の立花響がいる。

そこでようやく自分が下着姿であることを思い出したクリスは、ベッドの上の毛布を掻き集め胸元を隠す。

返す刀で響へと口撃。

 

「おまえ、なんでここにいるッ!?」

 

「んー、あたしだけじゃないよー?」

 

ケロッとした顔で小首を傾げる響の背後から、小日向未来が顔を出した。彼女の手にはクリスが脱ぎ捨てたニーソックスが畳まれている。

 

「響、ダメじゃない。いきなり寝室へ入ったりしたら失礼だよ?」

 

最愛の陽だまりの指摘にバツの悪そうな顔をしながらも響はブーたれる。

 

「でも、何度チャイムを押しても出なかったし。もしかしたらクリスちゃんが意識不明で倒れているかもーって心配になってつい…」

 

「単に留守とか寝ているって発想が出てこないのかおまえッ!? つーか、寝室以前に勝手に人の家に入ってきてるんじゃねえッ!!」

 

「そんな固いこといわないでよ、クリスちゃん。せっかく遊びに来たんだからさ」

 

駄目だこの馬鹿、話が通じねえ。

ならばと非難の矛先を未来へ変えれば、

 

「ごめんね、響がどうしてもクリスと一緒にお昼食べたいっていうからお邪魔したんだけど…」

 

クリスは別の意味で諦めを悟らざるを得ない。

一見常識人枠と思われている未来であるが、響絡みになると言動がエンジョイ&エキサイティングへと振り切れる傾向にある。

いそいそと部屋着を着こみながら、クリスは別の切り口で牙を剥く。

 

「いいか、あたしはもう昼飯は喰った! そして全力全開で眠いッ! だから今から昼寝するッ!」

 

直情馬鹿には直截的な言葉は一番伝わる。

経験則から導きだされた偽りのない本音の一撃。

が、ド天然太陽娘は余裕でスルー。

 

「なんだ、クリスちゃん、お昼寝したかったの? それじゃあ、ほら」

 

小日向未来を正座させ、その膝を響はポンポンと叩いて、

 

「特別に、未来の膝枕を貸してあげる。とっても柔らかくて、寝ていて気持ちいいんだよー♪」

 

「やだ、響ったら」

 

きゃいきゃいと騒ぐ太陽ダマリーズに、クリスのコメカミは熱く脈打つ。

 

「…あのなぁ~!!」

 

「あれ? クリスちゃん気に入らない? よし、それじゃとっておきだよ!」

 

言うが早いが響は未来をお姫様だっこする。

ここいらへんの普通の女子高生離れした筋力は日々の訓練の賜物だろう。

続けて未来をベッドの上へ放り投げてきたのには、さすがのクリスも面食らう。

弾む未来。驚くクリス。二人を前に響自身も堂々とベッドに横になる。

二人並んで横たわると、未来越しにポンポンとマットレスを叩いて、

 

「ほら、クリスちゃんも」

 

「…何の真似だ?」

 

「添い寝だよ。未来に抱きついて寝ると、温かくて、いい匂いがして、とってもよく眠れるんだよ~。だから、クリスちゃんも、ほら」

 

手招きしてくる響に、赤面してそっぽを向きながらクリスは言い放つ。

 

「…そーゆーのは家でやれ!」

 

「え? ここはクリスちゃんの家でしょ?」

 

「お・ま・え・らの家でだ~ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人をどうにかこうにか追い出し、クリスはリビングで溜息をつく。

テーブルの上には持参してきたらしい弁当があったが感謝する気にもなれない。

寝入りばなを邪魔された機嫌の悪さと、怒りのアドレナリン分泌のおかげですっかり目が冴えてしまったと思ったが、常備している牛乳を飲むとようやく気持ちも落ちついてきた。

同時に、遠ざかっていた睡魔も戻ってくる。

ふああと大きな欠伸をしつつ、クリスは玄関のドアへと施錠。

響たちは合鍵を使用して勝手に侵入してきたらしい。

 

あいつらめ、そのうち鍵を変えてやろうか。さすがに今日はもう戻ってこないだろうけど、念のためチェーンもかけておこう…。

 

そう思い、クリスがチェーンをかけようとした瞬間、ぐるっと施錠したはずの鍵が逆回転。

 

「邪魔するぞ、雪音」

 

「風鳴、センパイ…?」

 

クリスは失念していた。もう一人、自宅の合鍵を持つ人物を。

突然すぎる来訪というか展開に固まるクリスをよそに、ずかずかと室内へ上がり込んでくる風鳴翼。

 

「ほう、ここが雪音の住まいか。眺めはいいし、うむ、実に見事な仏壇だな」

 

「あの、センパイ…」

 

「新しいバイクの鳴らし運転をしていて、ちょうど近くを通りかかったものだからな」

 

土産だ、と包みを手渡してくる翼。

不承不承開けてみれば、中身は落雁だった。

ここいらの彼女の趣味の渋さは、クリスには理解しかねる。

 

「合鍵をもらっていたから、いつか来ようと思っていたが、なかなか機会がなくてな…。遅くなってすまない」

 

ライダースーツのままソファーに座り、笑顔でそう述懐する翼。

 

合鍵はあんたらが勝手に作っただけだし、元々こっちは誘ってもいねえよ…。

 

本音を口の中でもごもごと呟いて、クリスは買い置きのペットボトルからお茶を注ぐ。

 

眠気と苛立ちで頭の中はぐちゃぐちゃだ。

だが、相手は仮にもセンパイと認めた先任装者。邪険に追い払うにわけにはいかない。

たん、とお茶の入ったコップと落雁を数枚テーブルに並べる。

 

「で? 何の用事なんだよ?」

 

「なんだ、ずいぶんとつれない態度だな」

 

「そりゃあどうも」

 

答えつつ盛大に欠伸をして見せれば、翼は形の良い眉根を寄せる。

 

「どうやら、すこぶる眠そうな様子だが」

 

「そうだよ。こちとら寝不足で、ちょうど今から昼寝をしようとしていたところで…」

 

半ば投げやりに答えたクリスであったが、翼の雰囲気が一瞬で切り替わる。

 

「昼寝、だと…?」

 

「…なんだよ、悪ぃのか?」

 

翼は立ち上がる。

背筋を伸ばし、凛と脚立する姿は、地に突き立てた絶刀と見間違うが如し。

 

「防人足らんとするもの、早寝早起き自己管理が肝要! 真昼間から眠気を催すなど、たるんでいるッ!」

 

その剣幕に、うんざりとクリスは天を仰ぐ。

 

あー、この人も結構面倒くさい人だったな…。

 

それでも普段のクリスなら適当にいなしたことだろう。

だが、今の彼女は眠気と不機嫌も相まって、かなり適当かつ攻撃的になっていた。

 

「そりゃあ決めつけが過ぎるんじゃあないかい、センパイ」

 

「ほう? どんな言い訳があるというんだ?」

 

「あたしだって別に遊んで夜更かししてたわけじゃないぜ。夜間戦闘を想定しての自己鍛錬をしていたんだよ」

 

カ・ディンギルの一撃ばりの大嘘である。

アーティストと装者、加えて学生生活を送る自己管理の鬼・風鳴翼に対し、言いも言ったりの台詞だが、ほとんどやけっぱちで断言するクリスに後ろめたさは感じられない。

 

「む…」

 

たじろぐ翼に、さらにクリスは畳みかける。

 

「だいたいここが戦場だってなら、休めるときに休む、眠れるときに寝ておくのも防人ってのの嗜みじゃないのか?」

 

「むう…。悔しいが雪音の言うとおりかもしれん」

 

…基本的にちょろいんじゃねーの、この人?

 

目の下に隈を浮かべ不遜な感想を抱くクリスをよそに、翼は予想外の感銘を受けた様子。

 

「確かに不躾な言い様だった。謝罪する。かくなる上は、おまえの昼寝のために、私もささやかながら微力を尽くさせてもらおう」

 

「おう」

 

横柄に返事をしておいて、やれやれこれでやっと眠れる、と安堵の息を吐くクリス。

しかし、翼が次にとった行動は、彼女の予想の遥か斜め上を行く。

翼は立ち上がり、やおらクリスの手を取る。

 

「セ、センパイ?」

 

てっきり帰るとばかり思っていたので面食らうクリスを引っ張り、翼はずんずんと部屋の奥へと誘っていく。

 

「む、ここが寝室かッ!」

 

おもむろにベッドの上の毛布を剥ぎ取る翼。

続いて合気の要領でコテンとクリスをベッドに横にすると、その上に丁寧に毛布を掛ける。

きょとんとしてされるがままのクリスだったが、翼がベッド脇に端座するに至り、ようやく疑問を口から絞り出すことに成功。

 

「あんた、一体何を…?」

 

「非常時にて、寝込みを襲われるのが武人最大の懸念。雪音の心配もそこに尽きるのであろう?」

 

「いや、そんな懸念や心配なんてこれっぽっちも…」

 

「ゆえにこの風鳴翼! おまえの安眠を守るため、あい不寝番を務めよう! さあ、雪音! 存分に眠るが良いッ!」

 

「眠れるかーーーーーッッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




みんなクリスが大好きなんだと思います。
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