雪音クリスは〇〇したい   作:とりなんこつ

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これは戦姫絶唱シンフォギアAXZの後に何も起こらず平和だったら―――という妄想IF展開です。
とりあえずXVが始まる前に書いてみたいと思ってチャレンジしてみました。
以上を踏まえ、楽しんで頂ければ幸いです。









妄想IF展開三部作 1.雪音クリスはGT( ガールズトーク) したい

 

 

 

 

 

 

 

 

パヴァリア光明結社との決着も済み、世界は驚くほど平穏だった。

予想された結社残党の蠢動も、S.O.N.G.主導の作戦計画の前で隠密のうちに次々と潰されている。

シンフォギア装者が出動するほどの案件もなく、風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴのコンビはビルボードチャートを席巻。

他の装者たちも基本的に学生生活を満喫していた。

そんな中、長いツアーを終えた翼とマリアが帰国する。

実に久方ぶりに、装者全員で旧交を温めるために集められたのは―――。

 

「…なんであたしの家なんだ?」

 

雪音クリスはそうぼやく。

 

「だって~、あたしたちの家は二人分荷物あって狭いしー」

 

立花響が笑顔でのたもう。

 

「アタシたちの家も以下同文デース!」

 

「切ちゃん、なんでも物拾ってくるものね」

 

と、これは暁切歌と月読調。

 

「私もマリアも、今は基本ホテル暮らしだからな」

 

最後にシャワーを使ったので、濡れ髪を拭きながら翼が言う。

クリスの家に集まる前に、全員本部で訓練を行い一汗をかいてきている。

 

「ほら、みんな、シチュー出来たよ」

 

小日向未来の声にキッチンへ向かえば、テーブルの上にはたくさんの料理が並べられていた。

 

「ごちそうデース!」

 

さっそく摘み食いしようとする切歌をクリスはポカリと小突き、

 

「おまえもエルフナインを見習ってちったあ手伝えっての!」

 

「あ、ボクなら大丈夫です。みなさんお疲れでしょうし」

 

「うう、エルフナインちゃんは健気だねえ~」

 

称賛しつつ、卓上のサンドイッチを豪快に三つも頬張る響。

そんな彼女にクリスは刹那でヘッドロックを決め、脳天を拳でぐりぐりと抉る。

 

「言動不一致って言葉知ってるか? ああ?」

 

「痛い痛い! やめてクリスちゃん、バカになっちゃうよ~!」

 

「安心しろ、手遅れだ!」

 

ははは…と苦笑しながらその光景を見守るエルフナインに、他の装者たちも誰も止めようとはしない。

つまりは、これがもはや見慣れた風景であるということ。

 

「ほら、響もクリスもシチュー冷めちゃうよ?」

 

未来がそう告げると、二人とも身体を離し席に着くのも普段通りの流れである。

 

「それじゃ…乾杯かしら?」

 

とこれは調。

 

「そうだな。では、何に乾杯する?」

 

翼が応じる。

 

「そりゃあもちろん翼さんたちの凱旋にですよ」

 

響がグラスを掲げてみせた。

 

「ありがとう。そして久方ぶりにあったみんなが元気だったことに」

 

そう言って微笑むと、マリアは一際大きくグラスを掲げて声を張った。

 

「乾杯!」

 

「「 乾杯!! 」」

 

唱和し、グラスの縁を突き合わせる音が鳴り響く。

あとは楽しい食事タイムだ。

 

「む、このビーフシチューは絶品だな」

 

「こっちのアボガドのクリームチーズ和えも美味しいわ」

 

唸る翼とマリアに、未来は笑ってみせる。

 

「美味しいでしょ? シチューなんか、クリスが三日前から下準備したんですよ」

 

「そ、それは言うなっていっただろッ!!」

 

「クリスちゃんも何だかんだ口では言っても楽しみにしてたんだね~」

 

「もっぺん脳天抉られてぇか、てめー」

 

殺気立つクリスに、翼の凛とした声が投げられた。

 

「雪音、過大な心遣い、心より感謝する」

 

「や、止めてくれよ、先輩。頭上げてくれって」

 

「私からも感謝を。貴女は切歌と調の面倒も良く見てくれてるようだし」

 

マリアからの柔らかな謝辞に、「いや、そんなことは…」とそっぽを向くクリスだったが語尾はゴニョゴニョとなってしまい聞き取れない。

 

「そうデスよ! クリス先輩にはお世話なりっぱなしデース!」

 

「本当にそう。ばるんばる、いえ、クリス先輩にはいつも気を使ってもらっています」

 

「や、止めろ、そんな目でこっちを見てくんな!」

 

後輩二人の追撃に顔を真っ赤にしながら手を振り回すクリス。

さらに、

 

「基本的にクリスちゃんは御礼をいうのは苦手だけど、御礼を言われるのはもっと苦手だもんね」

 

「この大馬鹿! おまえもかッ!」

 

後に小日向未来はこの時の様子をこう述懐する。

 

―――なんか十字架を突きつけられた吸血鬼みたい。

 

もちろん本物の吸血鬼ではないクリスは、ガーリックブレッドにたっぷりとシチューを乗せて齧りついている。

その隣では響が泣きべそをかきながらシチューを啜り込んでいた。

 

「うう、頭が痛いよ~」

 

彼女の後頭部にはたんこぶの段々畑が出来ていた。引き際の分からない者の末路である。

 

「御馳走様でした」

 

みんなで食器を洗い後片付けを終えれば、リビングへと場所を変えまったりタイム。

年少組の順からココアが手渡され、室内に甘い匂いが漂う。

 

「それじゃあ始めましょうか!」

 

コップ片手に未来の隣に座り込んだ響がいう。

 

「始めるって何を始めるんだよ?」

 

「女子が集まったら恋バナでしょ、恋バナ!」

 

「恋バナっておまえ…」

 

クリスが突っ込みかけたが、後輩の一人が先駆ける。

 

「ひょっとして響さんは彼氏が出来たんデスかー!?」

 

「いやあ、絶賛彼氏いない歴=年齢を更新中でして…」

 

てへへと響は頭を掻いて、

 

「そもそも、未来並みに魅力的な男子なんてそうそういないわけで」

 

クリスは呆れざるを得ない。

どこまでも小日向基準か。そりゃあ小日向ほど女子力の高い()()なんぞいるわきゃねえだろうよ。

しかも恋バナと見せかけて惚気だし。いや、惚気も恋バナのうちか?

何かアホらしくなったクリスは、皮肉のつもりで言葉を投げる。

 

「もうおまえら結婚しちまえよ。日本でも地区によっては同性婚を認めてるみたいだし」

 

「実は、将来的にそれも視野に入れちゃったり入れなかったり…」

 

「…おいおい、冗談だよな?」

 

たははと笑う響の隣でその手をそっと握り顔を伏せる未来。

急に生々しく見えてきた二人から視線をそらし、クリスはわざと明るい声を出して対象を転じる。

 

「そ、そういうおまえらはどうなんだ? それだけ可愛いけりゃモテるんじゃないのか?」

 

視線の先には、例によって切歌と調のコンビだ。

 

「アタシも調も先輩だって女子高デスよ? 出会いなんてどこにあるんデスか?」

 

至極正論が返ってくる。

 

「あ、でも私は街を歩いていて男の人から声をかけられたことがある」

 

控えめにVサインを出してくる調。

 

「おお? なんて声をかけられたんだ?」

 

「『お嬢ちゃん、ちょっと遠い場所だけど、一緒に美味しいもの食べにいかない?』って車に乗せられそうになったけど、直前で黒服の人たちに止められた。残念だった」

 

「………」

 

それはナンパじゃなくて誘拐じゃねえ?

監視か護衛かは知らないがS.O.N.Gの黒服職員にクリスは感謝の念を奉じる。

 

「おおーっ、調はいつの間にかアタシよりステップアップを!!」

 

「そう、私は切ちゃんより先にちょっとだけ大人の階段を上っているの」

 

ふふん、と胸と鼻を反らす調に、切歌はあくまで無邪気だ。

 

「ああ、アタシもいつか運命の出会いを経て、燃えるような恋がしたいデース!」

 

まるで少女漫画だな。クリスはそう微笑ましくながめていると、あらぬ方向から鋭い声が上がる。

 

「その通りよ! 思い切り、身を焦がすような恋をするべきだわ! 出来るうちに! 可能なうちにッ!」

 

一人カウンターでコップを傾けていたマリアが顔を上げていた。

唐突すぎる声に皆の視線が集まる中、マリア・カデンツァヴナ・イヴはポツリという。

 

「私たち、装者の寿命は短いのだから―――」

 

沈黙がリビングを支配する。

装者である誰もが思い、しかし敢えて思考の俎上に上げない命題だ。

誰もが固まった中、マリアの声は続いている。

 

 

 

 

 

 

 

「―――正直、20歳も過ぎてあの格好で戦い続けるのは辛いッッ…!!」

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

ぷんと香ってくるアルコールの匂い。

 

「…ひょっとして、マリアさんお酒のんでる?」

 

響が質問。

 

「実は最近酒量が増えていてな…」

 

苦笑を浮かべて応じる翼。

 

「でも、いっそフィーネみたいな格好すれば全然いけるんじゃない?」

 

「いや、あれは全身タイツ見たいなもんだから、余計身体の線が出るだろ」

 

「そういう意味では、今の格好とあまり変わりないんじゃ…」

 

好き勝手に議論が盛り上がる中、

 

「あ、あの! そ、そのことなら、ボクがお力になれるかも知れませんっ!」

 

唐突にエルフナインが声を上げた。

 

「おい、そりゃどういうこった?」

 

とろんとした眼差しで虚空を見つめるマリアに替わり、クリスが尋ねた。

 

「リンカーに恒常因子を合成してみるんです。アンチエイジングと似て非なるものですが、代謝を押さえて成長を抑制することによって…」

 

言いさしたエルフナインの細い肩をがっちりと掴む者がいる。

 

「それはダメ。認められない」

 

「つ、月読さん?」

 

「あなたも私も可能性の塊。成長とは夢を見るための魔法の言葉」

 

「は、はい?」

 

「だから、その計画は却下。イイワネ?」

 

「は、はいっ、わかりました!」

 

睨みあう、というより一方的にエルフナインを睨みつけている調をよそに、翼は事態の収拾へと入った模様。

 

「ほら、マリア。後輩を前に見苦しいぞ」

 

「うろたえるな、未成年ッ!」

 

「いや、誰も狼狽えてはいないが…」

 

「愛だ恋だと(さえずる) る前に、翼、そういう貴女はどうなのよッ!?」

 

「私がどうしたというのだ?」

 

「緒川さんよ! 緒川さんのことをどう思ってるのッ!?」

 

「いや、緒川さんはマネージャーで…」

 

「そういう意味じゃないッ! 男性としてどう見ているのか訊いているッ!」

 

時ならぬ年長組のやり取りに、興味津々、息を潜めて見守る年少組。

指摘されてみれば、緒川慎次の風鳴翼に対する献身ぶりは度を過ぎているものがある。

いくら部屋を片付けられないとはいえ己の下着さえ畳ませることを容認する女など、マネージャーとしての関係を逸脱しているのではないか。

また、アイドルとマネジャーが秘密の恋仲などというのも、週刊誌でよく見るゴシップだ。

 

「男性として、か。師として仰いだこともあるが…ふむ」

 

思いのほか真剣に考え込む翼がいる。

黙考することしばし、ぽんと手を叩いて、

 

「言われてみれば、理想の防人像というなら、緒川さんはかなり近いかも知れないかな」

 

「………」

 

あんたの中では男性=防人なんかい。

何とも翼らしい返答に、クリスは彼女がアイドルらしい浮いた話が一つもないことに納得する。

そんな全く面白みのない返答にマリアは爆発。

 

未通女(おぼこ) 過ぎてヘソが茶を沸かすわッ!」

 

吠えるように意味不明な台詞を一喝し、次の瞬間テーブルに突っ伏してしまう。

あとは「くぴー」という寝息が伏せられた顔から流れてくるだけ。

 

「色々とマリアもストレスを抱え込んで疲れているようだ」

 

気遣い、背中に毛布をかけている翼だったが、おそらくストレスの要因は翼本人にも存在するだろう。

 

「…昔はマリアもモテていたんデスよ」

 

「そうそう。デビューしてしばらくは、山のようにお花を抱えて帰ってきて」

 

「お土産のケーキとかも美味しかったデスねー」

 

切歌、調が証言するとおり、歌姫としてデビューしたマリアは、一気呵成にスターダムへと上り詰めた。

比例するように人気も増大。言い寄ってくる男性も、それこそ枚挙に暇がないほど。

だが、世界放送で武装組織「フィーネ」を宣言してから全てが変わった。

国連のアンダーカバー職員だったとのストーリーが周知されたが、あの放送のインパクトは容易に払拭できるものではない。

歌姫として活動を再開した彼女に対し、かつて美辞麗句を並べたててきた男連中は素知らぬふりをし、新しく知り合った男性も全員および腰になっている。

 

「…私だって普通の出会いで普通に恋をしたいのに……ひっく!」

 

寝言でダイレクトに本音を漏らすマリア。

かつてオートスコアラーの一人にアイドル大統領と揶揄されたことがあったが、今やそれは呪いに近い形になって彼女の中にぶっ刺さっている。

あまりにも切実な成人の主張は、リアルすぎて未成年者たちをドン引き、もとい絶句させた。

もっともそんな空気を解さない未成年者も存在する。

 

「さて、次はいよいよ本命のクリスちゃんだよ~」

 

「あん? 何にいってんだ、おまえ?」

 

「ずばり! 師匠とはどこまでいってんの?」

 

ぶーっ! と冷めたココアを噴霧するクリス。

 

「な、なんで、あたしがおっさんとどうこうなるってんだよ!?」

 

「え? だって二人でお食事いったでしょ? 高級レストランのフルコース!」

 

「なっ…!?」

 

どうしてそれを知っている!? あからさまに狼狽するクリスに響は携帯を向けて、

 

「ほら! お召かししたクリスちゃんの写真!」

 

画面には、赤いワンピースを着た自分自身の姿が。

 

「あんまり可愛い格好しているから、こっそり尾行しちゃった♪」

 

「け、消せ! 今すぐ消してくれッ!!」

 

「え? あたしのは別にいいけど…みんな持ってるよ?」

 

見回せば、全員がこちらに携帯電話の画面を向けていた。

もれなく同じアングルの自分の姿が映っていることにクリスは絶望する。

よりによってあの馬鹿に見つかってあとをつけられたあげく、証拠まで押さえられ共有されるとは末代までの不覚…ッ!!

思わず防人脳が発動し、切腹という単語すら頭に浮かびかけたが、寸前で踏みとどまる。

大丈夫、落ち着け。ここはクールに切り抜けろ。

 

「…おっさんには前々から色々と世話になってたからな。その御礼で飯をご馳走しただけ。それだけだよ」

 

「あんなに可愛い格好して?」

 

「ちょっとしたレストランにはドレスコードが必須だろうが!」

 

「ふーん…?」

 

「…ともかく、この話題は終わり! おしまいッ!」

 

「それじゃあクリスちゃんの好きな男の人のタイプって誰?」

 

「はあ!?」

 

「ちなみにあたしの好きなタイプはジャッキー・チェンです。はい、クリスちゃんの番!」

 

「あ、あたしはシュワルツネッガーとかスタローンとか? あとドウェイン・ジョンソンとかも好きだな」

 

「…クリスちゃん、もう告白しちゃった方がいいんじゃない?」

 

「なんでそうなるッ!? そ、それとクリスチャン・ベールだって好きだぞ!」

 

「それってガン=カタの人じゃ……あ(察し」

 

「おい、おまえ、何を察した!? 言え!」

 

「言ったら怒るでしょー! もう怒ってるしー!!」

 

ぎゃいぎゃいと際限なくヒートアップしていくかと思われた二人の言いあい。

そんなクリスと響の後ろにスッと立つ人影が。

人影は、二人の肩にそっと手を置く。

不思議とその手から伝わる波動めいたものが心を落ち着かせてくれた。

大人しく振り返った二人の耳朶を、澄んだ声が優しく打つ。

 

 

 

 

「態度や行動では伝わらないことはあるわ。ちゃんと言葉にして伝えないと」

 

 

 

 

そうはっきりとマリアは告げると―――糸の切れた操り人形のようにその場に倒れ込んだ。

あとには「ずおおお」と豪快なイビキが響き渡るのみ。

 

「…この人、本当に酔っぱらっているの?」

 

疑問が呈されたが、誰も答えるものはいない。

 

 

 

 

 

その後は特に話も盛り上がらず、流れ解散となる。

各々がクリス宅を辞したが、泥酔したマリアだけが残された。

翌朝、二日酔いで目を覚ましたマリアだったが、昨晩の言動はまるで覚えていなかったらしい。

 

 

 

 

 




マリアさん落ち要員カンベンしてください。



次回、「雪音クリスは告白したい」に続きます。


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