自分の趣味と好きなものをぶち込んだものですが、たのしんでいただけたら幸いです。
トリニティのイメージは、ブレイクブレイドのデルフィングに、エイハブリアクターとGセルフのバックパック換装システムを乗っけたイメージでおねがいします。
クランク・ゼントはオーリス・ステンジャの行為を不満に感じていた。彼が嬉々として倒しているのは、モビルワーカーだ。戦力さも機能性も雲泥の差。
モビルワーカーに乗る傭兵たちに同情する。しかし、それが戦いでもあるということをクランクはわきまえていた。
強者が弱者を倒す。それが真実。
力を持たぬものは、あがくか、逃げるか、勇猛に散るか。クランクは多くの戦場でそれを眺めてきた。強者の立場でも、弱者の立場でも。
「クランク二尉、よいのでしょうか」
アイン・ダルトンの不安そうな声に、クランクは「放っておけ」と一瞥して答えた。あの数のモビルワーカーだ。いくら技量が未熟とは言え、オーリスが駆るグレイズなら、全滅も時間の問題だ。オーリスの指揮したモビルワーカー隊の撤退時間も充分に稼げる。
「恨むなよ、傭兵ども」
小さく、クランクは呟いた。実直な軍人である彼は、不要な戦死者や不当な戦いを嫌った。そもそも、この作戦事態、クランクにとって納得できるものではない。ギャラルホルンという巨大な勢力が、今まで静観していた民間PMC、それも特定の一企業を襲撃するなど、ありえないことだった。
クーデリア・藍那・バーンスタイン。
司令であるコーラル・コンラッドはそこまで彼女を危険視しているのか。それをいうならばと、クランクは火星独立の気運に大きく関わる人物を思い出した。
ライガット・カッシュ。
奴も危険と言えるだろう。これまで地球の経済圏に頼らなければ、武器の売買すらできなかった火星が、今では火星だけで武器の輸出入を賄っている。
ライガットが立ち上げた企業のせいで、痩せ衰えていた火星がわずかに息を吹き返し、同時に不要な戦線の拡大に繋がっている。武器商人が持ってくるものは本当に厄介なものしかない。
彼がいくら孤児や生活に苦しむ人々を積極的に雇用したとしても、彼らに戦争の片棒を担がせている真実は消えない。クーデリアよりも、やつを捕らえるべきなのでは?そう何度もコーラルに打診はしているが、良い答えは帰ってこなかった。
ギャラルホルンもその戦争の当事者。クライスラーエレクトロニクス社から購入する武器や試作兵器は、ギャラルホルン火星支部を潤わせているのも確かだった。
地球から購入するより遥かに安い価格で武器を仕入れることができる。その浮いた金はコーラルや火星支部の上層部が横流しで受け取っているのだろう。
軍部内の腐敗も酷い。地球では、セブンスターの一角であるファリド家が家長を交代したことで、元イズナリオ派の動きがどうにも、きな臭くなっている。
不穏な空気が地球から、そして火星をも包もうとしているように思えた。
「クランク二尉!!」
アインの叫びに、クランクは現実に引き戻された。眼前のモニターが緩やかに、そして激しくアラームを武骨なコックピット内に響かせる。
「後方から急速に接近してくる反応が!エイハブウェーブ反応も!」
クランクは素早く機体を反転させる。
エイハブウェーブ反応だと?こんな火星の僻地にいったいなぜ?いくら火星が息を吹き返したとは言え、民間PMCやゲリラがエイハブリアクターを搭載した兵器を所持しているとは考えられなかった。
そんなクランクの思惑に反して、急速に接近した存在が、自分達の直上へと迫った。真上?クランクのグレイズが真上を向く前に、アインが駆る機体が地面へ倒れた。
グシャリ、と何かに踏みつけられるような音。アインのグレイズの背部スラスターが、大きくひしゃげて変形しているのが見えた。が、肝心の相手がどこにもいない。
「二尉!上です!!」
倒れたアインの言葉と同時に、クランクのグレイズが激しく揺れた。今度こそ真上を向く。
「なんだ…このモビルスーツは…!!」
そこには純白のモビルスーツが、グレイズの肩に片足を乗せている光景があった。グンッと、モビルスーツの重量がグレイズの右肩に集中し、ひしゃげた。
肩部の異常な負荷により、駆動部が完全に壊れたのだ。
「俺を、踏み台に…!?」
純白のモビルスーツは、クランクのグレイズを踏み台にし、さらにその奥に居るオーリスのグレイズへ肉薄してゆく。
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マーズマグネシウム合金。
モビルスーツフレームに使われる特殊合金、高硬度レアアロイに強度こそ劣るが、マーズマグネシウム合金の特徴はその伸縮性にあった。
伸縮性に長けた素材であり、重量はかさむが多重構造状のフレームにすれば、モビルスーツの内骨格として充分に機能する。
そして最大の特徴は、その性質を最大限に活かしたフレーム各部に施された「金属靭帯」だ。
エイハブリアクターの熱相転移スラスターに姿勢制御や出力を頼る現存のモビルスーツとは違い、マーズマグネシウム合金で形成されたトリニティは、原始的ではあるものの、驚異的な反応速度と、跳躍力を有している。
地面やデブリを蹴ることにより初速を爆発的に稼ぎ、滑空時は姿勢制御などにスラスターを使う。着地時の衝撃も、マーズマグネシウムが持つ伸縮性によって吸収することもできるため、大幅な出力の節約が可能となった。
故に、モビルスーツ「トリニティ」の火星での最速移動方法はーー跳び跳ねることだ。
「うおおおおおーーー!!!」
跳び跳ねる機体を操りながら、ライガットはその跳躍時の無重力感に苛まれていた。
トリニティの跳躍距離は150メートルを優に越える。これは東京タワーの約半分ほどの高さだ。
そこから慣性落下し、着地と同時に再び跳躍。それを繰り返して、CGSの戦場へと急いでいた。
「こっれぇぇー!!!きっつぅ!!!!」
エイハブ粒子による耐G効果や、金属靭帯、伸縮性による振動吸収作用があるとは言え、高度150メートルの高さからの落下と跳躍を繰り返せば、コックピットの振動は想像を絶する。
地面を穿ちながら、トリニティの操縦に全神経を向けた。
「前方のグレイズとの距離…はぁっ!!」
「もうすぐだ!!」
火星の重力下で跳び跳ねながら、モニターを正確に見ることは難しい。故に後方にいるハッパさんへモニターの管理を頼んだ。レーザー通信からの音声だけだが、それが僕にとっての唯一のナビゲーションになる。
「まずは、二機、か」
前方に見えてきた二機のグレイズ。
それらは、奥で暴れるグレイズを見守っているように見えた。ということは、あの二つがアインとクランクが乗っているのだろう。
奥で暴れてる奴を止めるためには、二人のグレイズがとにかく邪魔だった。飛び越えることも考えたが、背後から狙われたら元も子もない。
慣性落下が終わり、地面へ着地。
もう敵の索敵範囲には入っている。
深く、深く、トリニティの姿勢を前のめりにし、落とす。まるでクラウチングスタートでもするような姿勢へ。
「行けぇぇ!!」
爆轟。
深々と沈んでいた体を前へと押し出した。立っていた場所にあった火星の土は背後へ撒き散らされ、岩が砕けた。
驚異的な速度で、一機目の背後へ瞬時に到達する。
敵の背部スラスターへ足をかけて、次いで真上へ。棒立ちのグレイズを踏み台にして飛び上がった。跳躍力からなる力に耐えきれず、グレイズは地面へ倒れ伏せた。背部スラスターはメキメキと音を立てて壊れているのを確認し、眼下を見た。
次だ。
緊額から口元までこぼれた汗が、慣性落下により額へ戻った。落下寸前に、二機目のグレイズが真上を見たのがわかったが、もう遅い。
そのまま右肩にエントリィィィ!!!
こちらでもひしゃげるような音が響く。高高度から落下したときに生れた加速力により、グレイズの1.5倍あるトリニティの重量は何倍にも膨れ上がっている。
その着地は、完全にグレイズの肩を破壊した。
「悪いね、いい足場だったよ」
聞こえない言葉を投げ、僕は奥で暴れるグレイズへ、金属靭帯をしならせて跳躍する。
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「やめろぉ!!そこには俺の仲間が!!」
ダンジ・エイレイは仲間の制止を聞かずに、絶望的な戦力差でもあるにも関わらず、オーリスが駆るグレイズへ肉薄した。
阿頼耶識を通したイメージ通り、手動の操作ではできない軌道を飛ぶように描き、地面を滑る。
どこでもいい。とにかく攻撃を当てて、奴が本部を攻撃するのをやめさせなければ。
両肩に背負った砲口をグレイズへ向けた瞬間、眼前に影が迫っていた。オーリスが肉薄したモビルワーカーを蹴ろうとしている。
あぁ、ダメだ。これは避けられない。
迫り来る巨人の足の前では、阿頼耶識での反応速度を持ってしても間に合わない。
俺はここで死ぬのか。
こんな、誰も守れないまま。
ダンジは目を見張った。
せめて最後まで、あがくために。
なにもできないまま、死なないために。
ガァン!!!
鉄と鉄が凄まじい力でぶつかり合う音が響く。浮遊感、衝撃が体を突き抜けた。モビルスーツの足が直撃したーーわけじゃない。
眼前を覆い隠していた影が横へいきなり逸れたのだ。右側に付いていた砲を掠めたせいで、ダンジが駆るモビルワーカーが横へ緩やかにスピンして宙を舞ったのだ。
まるで何もかもが遅く感じる。
俺は、まだ、死んでないのか?
無重力の中で見えたモニターには、暴れまわっていたグレイズの頭を、手に持ったショートメイスで叩き潰している純白のモビルスーツが写っていた。
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「なぁぁにぃぃいぁぁあ!?」
バランサーも効かずに無様に転がる機体の中で、オーリスは何が起こってるのか理解できなかった。
鬱陶しいゴキブリのようなモビルワーカーを蹂躙し、肉薄した一匹を粉微塵に蹴りあげようとした最中で、突然の衝撃と振動があった。気がついたら自分の機体は宙へと舞い上がり、四肢で支える間もなく地面を転がっている。
なんだ!何が起こった!?
アラームが鳴り響くコックピットの中で、オーリスは何とか機体を立て直そうと足掻くが、メインカメラと索敵機能を司る頭部が完全に破壊されている。
何も見えない。
そんな状況で、熟練者でもないオーリスが機体を即座に建て直すことなど、無理だった。
『サブカメラを使え!オーリス!』
レーザー通信で、確かにクランクの声が聞こえた。思い出したように、オーリスは胸部に備わるサブカメラを起動させる。
モニターに灯りが灯った。胴体も傷ついたのか、サブカメラの映像にも若干のノイズが走っていたが、外の様子を見るには問題はない。
四つん這いになって、やっと胴を起き上がらせた。
その先に、モビルスーツが立っていた。
赤い大地に似合わない。純白の装甲を纏ったモビルスーツ。その手にはモビルスーツ用のライフルと、ショートメイスが握られている。
「なんだ…このモビルスーツはぁ…」
グレイズではない。しかし、ギャラルホルンが所有する旧式のモビルスーツでもない。オーリスはその純白のモビルスーツ見たことがなかった。
民間PMCのものか?それともテイワズ?他の武装組織か?
そんな疑問よりも、オーリスは怒りで思考をいっぱいに満たしていた。ギャラルホルンでもない、野良のモビルスーツが、私に地を着かせたのか?
許さんぞ。
許さんぞ許さんぞ許さんぞ許さんぞぉぉ!!
「たかが、野良のモビルスーツがぁ!!」
オーリスは腰に備わったアックスを装備して、目の前の純白のモビルスーツへ飛びかかった。無造作に振り下ろされたそれを、相手はショートメイスで受け、振り払った。
押し負けた!?その一瞬の驚きも、オーリスのプライドが怒りへと変換させる。冷静さもなかった。
「きさまぁ!!どこの火星ネズミだぁ!!」
ゴギィン!!アックスとショートメイスがぶつかり合い、繋がった通信回線にオーリスの憎しみが籠った声が響く。
アックスにかける出力を上げて、オーリスは力任せに相手のモビルスーツを圧倒した。圧倒してるつもりだった。
『アンタ、ギャラルホルンだろ。何故こうも簡単に、虐殺ができるんだ!』
相手モビルスーツのパイロットの声か?その台詞に、オーリスはいやしく口を綻ばせた。
「もちろん、我々が正義だからだ!!人間でもない虫ケラを何匹殺そうが知ったことじゃない!!」
そうだ。そうだとも。
ギャラルホルンが行うことは正義だ。そこに何の躊躇いがある?クーデリアが我々にとって害だというならば、それは正義に立ち塞がる悪じゃないか。こうやって沸いてくる虫ケラも、悪じゃないか!!
『そうか、わかった』
「へ?」
その言葉を契機に、相手のモビルスーツの動きが変わった。押していたはずのアックスは地を穿ち、煙が上がる。相手は?相手はどこにいった?あの火星ネズミは!
ズンッと、自分が乗るグレイズに重さが乗った。まるで自分の機体の重量が二倍になったような。胸部カメラの死角。敵はーー頭上。俺の機体に乗っていると言うのか!?
「ネズミがぁ!!」
『もうお前は、消えていい』
純白のモビルスーツが、つぶれた頭部から突き刺すようにショートメイスをグレイズに突き立てる。トドメと言わんばかりに、ショートメイスに内蔵された短槍型のパイルバンカーが、グレイズの真上からコクピットを貫き、股関節部まで貫く。
オーリス・ステンジャの人生は、そこで儚く、唐突に終わりを告げたのだった。