いかに平和的に鉄華団を作るかを考えた結果こうなりました。まぁあとでオルガに反旗翻されそうだけどな!!!
アルテの年齢は17歳ですキャハ★
「見ればわかるでしょ!!工具を早く持ってきて!!」
CGSのモビルワーカーや機動兵器収容を担う倉庫で、工具機器類を汎用運搬車から引っ張り出してきたハッパが怒鳴り散らしていた。雪之丞をはじめとしたメカニックスタッフが、世話しなくハッパの指示に従っているのを、ライガットはトリニティのコクピット入り口で眺めていた。
ぼこぼこにへこんだハッチを無理やりこじ開け、ハッパの指示で用意されたクレーンに乗り込む。下に降りて行くに連れ、世話しなく動き回っていたCGSの少年兵たちの緊張が強まっていくのが手に取るようにわかった。
「さて、と」
困ったことになった。至るところが壊れ、ひび割れたトリニティを見上げて、僕はため息を吐き出した。こりゃあ、ハッパさんに大目玉を食らうだろうなぁ。まぁ実際にぼこぼこにしたのは、出鱈目な機動力を持ったバルバトスだけどさ。
吐き出したため息と共に、出発前に食べたサンドイッチもリバースしてしまいたい気分だったが、これ以上、ここを混乱の渦に落とすわけにはいかない。
問題は、この惨事を引き起こしたのが、CGS側だと言うことだった。
しかも、この場にはCGS社長であるマルバが居ない。彼はギャラルホルンの襲撃に際し、持てる資産を持って逃げたらしい。まぁ知っているけど。
「ライガットさん!!!」
しばらくトリニティを見上げて佇んでいると、青い顔をしたアルテが駆け寄ってきたのが見えた。目尻に涙を溜めて駆け寄ってくる。そっか、彼女にも心配をかけてしまったな。と、申し訳ない気持ちを噛み締めていたら、みぞおちに強烈な一撃が入った。
アルテが殴った。それもグーで。
「おっふ!?ソ、ソーラープレキサスブローはダメだって…」
「なんであんな無茶をしたんですか!!バカ!!バカバカ!!バカ社長!!」
うずくまる僕に、アルテは追撃を加えてきた。今度は脚だ。ポコポコなんて可愛いもんじゃない。ドスドスとダメージが溜まる系の攻撃だ。こら止めなさいって嫁入り前の娘なんだからゴフゥ。
「す、すまん!わるかった!だから勘弁してくれ!!」
両手で参ったと言わんばかりに、身ぶり手振りで次なる攻撃をなんとか止めようとあえぐと、ぴたりと攻撃がやんだ。
何事かと前を見ると、アルテはただ静かに涙を流していた。子供らしく泣きじゃくるわけでもなく、表情は確かに怒ってはいたが、それに反するように大粒の涙がはらはらと頬を伝って落ちている。
「社長が、居なくなったら…私は…どうすればいいんですかぁ…ばかぁ…」
そんな彼女を僕は抱き締めた。
優しく頭を撫でる。
「すまなかった。けれど、ちゃんと帰った。約束は守ったよ」
「怖かったんですよぉ…アホぉ…ばかぁ…」
抵抗が無いのが、許してもらった証拠だ。確かに、今回はかなり危ない橋を渡ったと思う。あと少しクーデリアやハッパさんたちの到着が遅ければ、やられていたかもしれない。
意地や知識や記憶だけでは、戦いには勝てない。綿密な準備と策略とほんの少しの幸運がモノを言う世界だ。今回は、ほんの少しの幸運によって命を拾った。
ふと、アルテの後ろを見ると、三番隊の中高生グループが居た。オルガにユージン。そしてノルバ・シノ。ビスケット・グリフォン。おおう、鉄血の主要メンバー揃い踏みじゃねぇーか。
アルテをここに案内していたのだろうか。僕の居場所がわかった瞬間にアルテが駆け出したのだろう。
「君たちが、今のこの場にいるCGSの責任者…ということになるのかな?」
アルテを離して立ち上がると、戦闘に立っていたオルガが頭を下げた。
「こ、この度は、その、なんつーか。ほんとに、すまねぇことを」
初対面である僕との会話に、オルガの声に覇気は無かった。言葉使いも粗っぽい上に、何を言えばいいのかわからないようでもある。他のメンバーも、どうすればいいのかわからないような、そんな雰囲気があった。
ふと、アルテが僕の元を離れ、オルガの前に立った。
「あ、アルテ?」
「まず歯を、食い縛りなさい」
え?
その言葉を最後に、アルテは頭を下げていたオルガをぶん殴った。再びグーだ。しかも僕が殴られたときよりも強烈のように見る。頑丈なはずのオルガが膝から崩れ落ちた。
うむ、僕の場合は対格差があったのだろう。まだあどけなさが残る彼女にそんな力があるはずがーー。
「口を慎みなさい。ガキども。あなたたちは誰に弓を引いたか、わかってるの?んん?」
あったわー。かなり力もってるわこの子やだ怖い!!そんなドスの効いた声、聞いたことない!!怖い!!あ、そうか。彼女もマクマードさんやジャスレイとの取引に来てるわけだから、僕と同じようにそういう雰囲気の出し方を身につけてた訳か。はっはっはっ笑えねぇぞこれぇ!!
アルテのごみを見るような冷たい視線と、歳に似合わない凄みに、オルガと共に来ていた他の中高生組は何も言えないようだった。
「この方は、火星の軍需産業であるクライスラーエレクトロニクス社の社長であり、あなた方CGSへ多額の支援をしていた人物なのですよ?そんな彼に、攻撃?それがどういう意味か、わかってるの?ねぇ?答えてもらえるかしら?」
そうだ。これが困ったことだった。
彼らはどうであれ、僕を攻撃してしまったのだ。それは覆り用のない事実。まだトリニティが無傷であるなら話は違っていただろうが、ここまでボロボロになってしまったら言い逃れはできない。
「いやぁ、僕の技量不足と、無茶な攻撃が起こしてしまった不運な不始末でもあるわけだし」
「社長は黙っていてもらえませんか?」
あ、はい。黙ります。黙りますから満面の笑顔で拳を顔の前で握りしめないで貰えます?すごく怖いです(白目)
「それは、その…俺がしっかりとした詫びを」
「詫びとは何ですか?」
ふらふらになりながら答えようとするオルガに、アルテは容赦しなかった。詫びとはなんだ?謝ればすむ問題だと思っているのか?そう思っているなら、反吐が出そうな気分になる。
「だったら俺が謝ればいい話じゃん」
そう言ったのは、バルバトスから降りてきた三日月だった。貫くようなアルテの視線が三日月を捉える。
「謝れば、謝罪すれば、今回の話はそれで済むと思っているのですか?我が社の新型モビルスーツをボロボロにし、さらにはあなた方CGSへ手厚い補助をしていた社長を殺しかけたんですよ?」
「だから、謝るって」
そんな三日月に再びアルテの拳が火を吹いた。今度はみぞおち。作中では見たことは無かったが、あの三日月が膝を着く。
「…っ、痛いじゃん」
「この程度で済ませてるんです。本当なら撃ち殺してるところです」
その程度、というところは同感だ。このまま事態が悪化したら、おそらくCGSは鉄華団になる前に消滅することになるだろう。今の火星では、クライスラーエレクトロニクス社はそれほどの影響力がある。
もし、今回の一件が外部にでも漏れようものなら…。
いや考えるのを止めよう。マクギリスがアリアンロッド艦隊を引き連れて火星にくるところまで想像してしまった。いかんいかん。本気でやりそうで怖いし。
「アルテ」
今度の声には、アルテは何も言わずに従ってくれた。拳を納めて、僕の側へと戻ってくる。
「確かに、今回の件で我がクライスラーエレクトロニクス社から出た損害は大きい。モビルスーツ『トリニティ』の各部装甲に、両腕のフレーム素材もろもろ。CGSのそのものを売却しても、賠償金が残るくらいにね」
その言葉にビスケットやユージンが顔を青くさせた。しかし事実でもある。
まだ世に出回っていないマーズマグネシウム合金の単価は、社内費用だけでも取引されるレアメタルの単価を上回っている。そんな合金を純度100%使用したモビルスーツの腕に価格をつけるとなると、とんでもない金額になるのは必須だった。
「そ、そんな。じゃあ僕らは…どうすれば」
ビスケットの不安な声に、頭を悩ませる。僕としても、今後の計画に鉄華団が欠けることはなんとしても阻止したいところだ。彼らが居なければ、なにも始まらない。
ということならば、本来ならば地球の一件後にと考えていたことを前倒しするしかない。
「そこでだ。クライスラーエレクトロニクス社の傭兵部門として、このCGSを設備も人員もまるごと僕に譲ってもらうとしよう」
その場にいた誰もが固まった。アルテもだ。うむ。そうだろうとも。だから地球の一件後にと考えていたのだが、構わずに言葉を重ねる。
「クライスラーエレクトロニクス社は軍需産業を担う企業ではあるが、その実商品を搬送する護衛や危険等の対処は民間PMCに依頼する方針をとっているんだ。これがなかなか費用がかかることでね。そこでだ。君たち民間PMCであるCGSを僕の企業の傭兵部門としてまるごと貰いたいわけなんだよ。わかるかい?」
「ちょ、ちょっと待ってください社長!それでは世間への示しが」
アルテの反論も勿論だが、そこもちゃんと考えてあるので、とりあえずそれを無視して話を続けるぜ!!後が怖いけどなぁ!!
「もちろん責任問題はある。それは別でとってもらうとしよう。本来ならば現場で指揮を取るべき社長であるマルバや、実質的な実行部隊である他部隊は、ギャラルホルン襲撃の際に我先にと逃げ出している。彼らがここに留まり指揮を行えば、今回のような不幸な行き違いは起こらなかったわけじゃないか?つまりだ」
膝を着くオルガに近づき、膝を同じようについて、苦しさにあえぐ彼と視線を交えた。
「CGS社長であるマルバ・アーケイや、一番隊および実働部隊でありながら逃げた彼らに、責任をとってもらう。あらゆる手段をとってだ」
立ち上がって、僕は個人ホットラインが詰まった端末を取り出すと、とある人物へ連絡を取った。
「あ、マクマードさん。いつもお世話になっております、ライガットです。実はお頼みしたいことがありまして」