コックカワサキに扮した元一般人の鎮守府新生活    作:一柳二朗

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初投稿になります。アニメのコックカワサキが好きすぎて書いてしまいました。どうぞよろしくお願いいたします。


第1話

「いやー、まさかこんなに遅い時間になるとは思わなかったなー」

 

 現在時刻は午前0時過ぎ。真っ暗闇の中、俺は車を運転し、家路をたどっていた。

 

「それにしても、やっぱりカービィは最高だよ。俺みたいなゲームド下手人間でも十分に楽しめるどころか、全クリまでできちゃうなんてな。ほんと、カービィ最高。カービィカフェにも行くしかないなこりゃ」

 

 そして、先ほどまでやっていたゲームの感想を思わず口にしていた。そのゲームというのは、人気シリーズ「星のカービィ」の最新作スターアライズである。今日、いや、もう日をまたいでいるから正確にいえば昨日、俺としては珍しく友達の部屋に遊びに行ったのだが、その友達がスタアラで遊んでいるのを見て、自分にもプレイさせてほしいと頼んだのだ。

 どうせなら初めからプレイしてみるといい、との勧めもあって新データを使わせてもらった。夕方から遊び始めて、最初は数十分ぐらい遊んだら飽きて終わるだろう、と思っていたのだが、なんのそのすっかりのめりこんでしまっていた。日が変わりつつある時間帯になって、ついにラスボスをも倒したところで満喫したのでお開きにしよう、といった具合である。

 

「ま、全クリといってもストーリーモードだけどな。達成率100%なんて逆立ちしてもまず無理だろうし、あの分だと…」

 

 他のゲームでもよくあることだが、正直言ってストーリーモードなど言ってしまえば前座である。ストーリーをクリア後出現するモード、すなわち隠しモードを友達がプレイしているところをみたが、俺の技量じゃ到底クリアなんてできそうには思えなかった。

 元来ゲームにはそこまで関心のない人間である。カービィというコンテンツ自体は好きで漫画や、アニメ、そしてプレイ動画は見ることはあっても、実際自分でゲームを買って遊んでみるということはほとんどなかった。そしてごくたまに自分で買ったゲームも最後までクリアするなんてことはまずなく、大抵途中で放り投げていた。そんな俺がこのゲーム、スタアラに限っては曲がりなりにも自力でクリアまでこぎつけたのである。感慨もひとしおであった。そしてとりわけ気に入ったキャラというのが―

 

「なんといってもカワサキだよ、コックカワサキ。あいつのおかげでクリアできたようなもんだよなー。アニメでもいいキャラしていたけど、さすがですわ」

 

 確か、アニメではもう、色々とぶっとんでいた。料理人にあるまじき行為や発言は度々あったし、問題行動を起こして、住民から恨みを買うことも一度や二度ではなかった。それでも、どこか憎めないヤツであり、カービィとの仲もよく、脇役にしては活躍の場も多めであり、個人的に好きなキャラでもあった。ちゃっかりとおいしいポジションに座っていたのではないかと、今振り返ったら余計そう思えてくる。

 

「それにひきかえ会社での俺ときたら…あーあ、カワサキが羨ましいよー」

 

 最近の自分の暮らしぶりを思うと、そんなひとりごとをつぶやかずにはいられない心境であった。俺は現在社会人で一人暮らしの生活をしており、派遣社員として日々過ごしている。今勤めている企業には3か月前に配属されたばかりであり、まだまだ分からないことだらけである。にもかかわらず、周りからのフォローはすでにないばかりか、手がまわらないことを理由に次々と仕事を押し付けられ、でもって出来が悪い、仕事が遅いと文句ばかり言われ、毎日陰鬱とした気分でいる。仲のいい人も特にはおらず、人間関係は日を増すごとに悪くなり、空気はとても重苦しく、本当、社会人生活なんてやっていられないと、つくづく思う。

 もっとも仕事をするにあたって、そんな悩みを抱えているのは当然自分だけに限った話ではない。同じく社会人になった学生の頃の友人たちに仕事の話を聞いても、大体似たようなものだ。なんなら、俺よりも酷そうな職場環境もザラにある。それを聞いても尚、今の職場なんてもうこりごり、さっさと辞めたい、なんて考えてしまう以上、そもそも社会人に向いていないのでは?なんて身もふたもないことを考えてしまう。だが、仕事を辞めて他に何かあてがあるかと言われたら、そんなものは全くない。何か新しい分野に挑戦しようという気概もない。となると今の仕事を続けるしかない。じゃないと生活することができないのだから。正に絶望的である。ああ、本当、しょうもないクソみたいな人生だ。

 いっそのこと、カービィの世界に行けたらなあ、なんて思ったりする。だってあの世界働かなくても生きていけるんだぜ?でもって、カワサキになってしまいたい。そしてできるなら、自分に好意を持ったかわいい女の子にとり囲まれながら過ごしていたい、なんとなくそんな気持ちを頭に浮かべていた。え?かわいい女の子とカワサキは何の関係もないだって?仕方ないだろ。男である以上、そう考えてしまうのは。

 

「おっと、運転に集中しないと」

 

 気が付けば信号が青に変わっていた。発進しなければ。左右は確認しなくても大丈夫だろう。こちらが青であるし、こんな時間で車通りも少ないし。いざ、出発と―って、あれ?何か大型車が横から近づいてくる。それも結構なスピードで。ちょっと待て、こんなのがぶつかってきたらひとたまりも―

 

 ×××

 

 気が付くと俺は見知らぬ天井を見上げていた。どれだけ眠っていたのかは見当もつかないが、こうやって意識があるのなら、なんとか一命はとりとめたのだろう。まあ、生きていて良かったが、大型車があれだけのスピードでぶつかってきたのである。身体が何ともない訳がない。きっと重傷を負っていることだろう。どうしよう。あれほど嫌がってはいたものの、いざ仕事に行けないとなるとそれはそれで非常に困る。というか仕事に行くどころか、ろくに体も動かせず、普通に生活することすらままならないのではないか、と思いを巡らしていたのだが…

 

「あれ~?体は全然痛くないし、腕とか足とかも普通に動かせる~。どうなってんだろ~」

 

 不思議なことに痛みは全くない。色々体の部位を動かしても何ともない。まさか無事だったのだろうか。うん?というかさっきの声って本当に俺か?何か普段出している声とは全然違ったぞ。口調もおかしかったし。でも、不思議とどこかで聞いたような気がする。あれ、なんだっけ?確か―

 

「あ、気が付いたみたいよ」

 

「どうやら無事のようだな」

 

「良かったですね、司令官!」

 

 俺が頭をひねっていると、どうやら部屋に誰かが入ってきたようで、声が3種類程聞こえてきた。その内2つは高くてかわいらしい、少女のような声で、もう1つは低いが、すっきりとして通った声、こう、なんというかイケボである。あれ、こっちのイケボも聞いたことがあるような―

 

「って、あーーーっ!!!」

 

 そして、その声がした方向を向いたら、それはもう、びっくらこいた。何たって目の前には小さな女の子が2人ともう一つ、

 

「驚くのも無理はない。が、ここは少し落ち着いて話を聞いてくれ」

 

 仮面とマントを着けている丸い身体をした、カービィの世界のキャラクター、メタナイトがいたのだから。あれ?よく見たら帽子も被っている。珍しいな…

そして、俺はさらに驚くことになる。

 

「カワサキ、まずこの世界についてなのだが…」

 

 ちょっと待て、今、俺のことをカワサキって呼ばなかったか?というかそうだよ、さっきの俺の声どこかで聞いたと思ったら、アニメカービィのカワサキの声だよ。近くに置いてあった鏡で恐る恐る自分の顔を確認してみる。すると―

 

「やっぱりカワサキになってる~~~!!??」

 

「ねえ、司令官。この人…人でいいのかしら…?大丈夫なの?」

 

「急に取り乱し始めましたよ!?」

 

「おそらく精神状態が錯乱しているのだろう。この状況では致し方あるまい。ある程度のことは大目に見てやってくれ」

 

 あれ、なんかヤバそうな人だと思われていない?メタナイトにいたっては同情すらしているようだし!?本当にこれどういう状況?どうなってしまったんだ、俺~!?

 




作者はメタ様も大好きです。もちろんカービィも好きですが、この作品には今のところ登場する予定はありません。
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