コックカワサキに扮した元一般人の鎮守府新生活    作:一柳二朗

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提督は基本罵られないので、その分カワサキが被害になります


第9話

 罵声が聞こえた方向に顔を向けてみると、そこには2人の艦娘が腰に手をあてながら、俺のことを睨みつけていた。ハッキリ言ってコワイ。一体俺が何をしたっていうのだろうか。

 

「威勢がいいねぇ~。えーっと君たちは…」

 

「駆逐艦、曙よ」

 

「同じく駆逐艦霞よ。覚えておきなさい」

 

「うん、わかったよ~。俺はねぇ「「知っているから答えなくていいわ」」…あっそう…」

 

 銀髪の方が霞で、紫の髪の方が曙か。てっきり、名前を知らなかったから、俺のことをそんな呼び方するのかとも思ったりしたが、どうやらそうでもないらしい。まあ、確かに、昨日あの場に居合わせていなかったらこんな風に罵倒してくることはまずないだろう。仮に全くの初対面でクソとか言われた日には酷くへこむ。いや、今も若干へこんでいるけど。だが俺に対して、何が原因でこうもいら立ちを募らせているのだろう。まずはそれを聞いてみよう。

 

「2人ともピリピリしているようだけど、どうしたの~?買ったばかりのアイスを一口も食べずに全部落としたとか~?」

 

「な、舐めてんの、あんた!?私も霞もそんなくだらないことで、こんな風に怒鳴りつけたりなんかしないわよ!ていうか、そんなのただの八つ当たりじゃない!そんなみっともないマネしないわよ!そもそもこんな朝っぱらからアイスなんか食べるわけないでしょ!仮に食べるにしても、そんな間抜けなことする馬鹿がどこにいるか!」

 

「曙。おおむね同意だけど、某駆逐艦が最近アイスを一口も食べずに落としていたらしいから、その辺にしておきなさい」

 

「えっ…そうなの?ごめん、ちょっと言い過ぎたわ」

 

 今謝ったのは俺に対してじゃないんだろうな、きっと。それにしても適当に言ったつもりだったのに、まさか該当者がいたとは。そんな漫画のようなことをしてしまう駆逐艦に少し会ってみたい。誰だか分からないけど―いや、もしかしたら―まあ、とにかく、本当にご愁傷様です。

 

「と、とにかく、カワサキ。あんた伊良湖さんと一緒に店を開くって、昨日言ったでしょ。だったら黙って見てるだけにはいかないわ」

 

「私もよ。伊良湖さんには何の心配もしていないけど、カワサキ。昨日の様子を見た限りだと、あんたが店にいることにはハッキリ言ってものすごく不安を覚えたわ」

 

 ま、マジかよ…改めて言うが、俺はここにきてからまだ一つも料理を出していない。それにも関わらず、ここまで言われるとは正直言ってショックである。というかこの2人からの評価どれだけ低いんだ、俺。

 

「でもさ~。2人とも、どうして俺たちが店を開くことに対して口を出してくるのさ~。2人には関係ないじゃないか~」

 

「「関係大有りよ!!」」

 

 俺の反論に2人同時に反応した。なんていうか、こいつら息ぴったりだな。

 

「いい?私たち2人だけじゃないけでど、以前、伊良湖さんが店を持ちたいって話してくれた時、その時は私たちも手伝うって約束したのよ!」

 

「そりゃまた、どうして~?」

 

「当然でしょ!あんた、この鎮守府に所属している艦娘、全部で何人いるかわかってんの?全員が一度に来るのはないにせよ、そんな大勢を相手に料理を作りながら対応することなんてできるわけないでしょ!アシスタントは絶対に必要なのよ!間宮さんと一緒の時ですらそうしているの!」

 

「それに私たちに限らず、伊良湖さんが作ってくれる甘味ものは、それこそ駆逐艦や海防艦をはじめとした気に入っている艦娘が多いのよ。今回あんたと一緒に店を出すことで、質が落ちるようなことがあったら堪ったものじゃないし、それだけは何としても阻止しないといけないわ!」

 

「へぇ~それは大変だねぇ~。じゃあ2人ともがんばらないとねぇ~」

 

「「他人事みたいに言ってんじゃないわよ!!そもそもの原因はアンタだって言ってるでしょうが!!」」

 

「まあまあ、落ち着いてよ~。そんなに大きい声ばかり出して疲れない?血圧上がっちゃうよ~」

 

「「誰のせいだと思ってんのよ!!このクズ(クソ)コック!!!!」」

 

 いかん。なんとかなだめようとしているのに、どうも火に油を注いでいるようらしい。2人ともいつもこんな調子なんだろうか。だとしたら周りの人は大変だな。

 

「とにかく!あんたのそのたるんだ根性を叩き直してあげるから、これからは覚悟しておきなさい!まったく。こんなに怒鳴ったことなんて、この鎮守府にきてから一度もなかったからちょっと疲れたわ」

 

「私もよ。あの提督とこのカワサキが同じ世界出身だなんて、ホンット信じられないわ」

 

 そう言い残して2人はこの場を離れていった。ありゃりゃ、あんなに怒鳴ったことは今まで一度たりともなかったのか。まさかあんなにキツイ性格をした艦娘が2人もいるとは…2人ともかわいい顔をしているけど、中身もあれだけかわいけりゃな。もっとも中身がかわいくけど外見がキツイというのも、それはそれで対応に困るかもしれないが。

 それにしても美少女に罵倒されるなんて、今まではずっとご褒美だと思っていたが、存外心にグサリとくるものがあったぞ。これもカワサキになってしまったことの弊害なのだろうか。だとしたら、カワサキになったことマジ不幸。そして、霞と曙が店を手伝うということは、さっき2人が言ったように、これからも怒鳴り続けられること間違いなしである。…正義は死んだのか…?神は滅びたのか…?でもそういえば、ゲームでカワサキを使って神(邪神)を倒したのは俺だしな。

 はあ、これからどうしよう…じゃあ、怒鳴られないようにすればいいだけの話だって?あえて言う、それは無理な相談だ。俺はため息をついてぐったりしていると、また近くに艦娘がやってきて

 

「元気ないわねー。そんなんじゃダメよ」

 

「でも、見ていて少しかわいそうだったのです」

 

「そんな風にため息をついて落ち込んでいると幸せが逃げちゃうわよ」

 

「暁もこの間アイスを一口も食べられずに落っことしていたときは、これ以上ないぐらい落ち込んでいたけどね。司令官がすぐに新しいのを用意してくれてなかったら、どうなっていたことか…」

 

「響―!それは言わない約束って言ったでしょー!ぷんすか!」

 

 いかにも仲良し4人組といった具合で、食事を持ってきながら、俺に話しかけてきた。…ていうかアイスを落っことした某駆逐艦って、薄々感づいてはいたが、案の定暁のことだったのか…もう、俺から言うことは何もないが、とりあえず暁よ、強く生きろ。

 

「4人ともおはよ~。そっちの2人は暁さんと、響さんだよね~。これからよろしく~」

 

「あら、レディである私に“さん”付けをするなんて、わかっているじゃない。少し見直したわよ」

 

「スパシーパ。これからよろしく、カワサキさん」

 

 どうも、この体は女性に対しては自然と“さん”付けをしてしまうらしい。まあ、アニメでもカワサキは、年下のフーム相手でも途中から“さん”付けをしていたから、その名残でもあるんだろう。知らないけど。

 

「そして、こっちの2人が…」

 

「雷よ、これからよろしくね!」

 

「電です。よろしくお願いします」

 

 雷と電か。なんか外見だけでなく、名前まで似た感じだとは。性格は違っていそうだが、間違えないようにしないと。ただ、電のほうは転生前でも見覚えがあったような気はする。結構メジャーな艦娘だったのかもしれないな。

 

「雷さんと電さんだねぇ~。これからよろしく~」

 

「はい。カワサキさんは、今日はどういう予定なのですか?」

 

「俺は今日、大鯨さんに鎮守府を案内してもらうよ~」

 

「へーっ、大鯨さんが一人で?大変じゃないかしら…?」

 

「大鯨さんなら心配ないよ。暁とは違って」

 

「なんで、響はいつも一言多いのよ!」

 

「暁、落ち着きなさい。こぼしているわよ。ほら、これで拭くからこっちに寄って」

 

「あ、雷ありがとう…って、別に一人で拭けるわよ!暁はお姉さんよ!」

 

「暁ちゃん、食事中なのです。あまり騒いじゃダメなのです」

 

「そうだよ、暁。落ち着いて」

 

「元はといえば響のせいでしょ!」

 

 なんだろう、さっきの2人とはまた別のベクトルで騒がしい。ただ、4人になったことでその分スケールアップしてはいるが。…違うな、騒いでいるのは暁だけだった。

 

「君たちは4人姉妹なんだね~。第6駆逐隊だったっけ~?」

 

「そうよ!今日も4人一緒に遠征に行くことになってるわ!」

 

「遠征?そんなのあるの~?」

 

「ええ、そうよ!今日も司令官に褒めてもらえるようがんばるわ!」

 

「褒めてもらうことが目的なんて、雷はまだまだ子供ね…」

 

「でも、電も司令官さんに褒めてもらいたいのです」

 

「私もだよ。じゃあ、司令官には暁は褒めなくてもいいって伝えておこうか」

 

「なんで響はそう意地悪なのよ~!私だって司令官に褒めてもらいたいに決まっているでしょ!!」

 

「だったら最初から余計なこといわなければいいのです」

 

 電の言う通りなのです。おっと危うくこっちまで口調が移ってしまいそうだ。それにしてもこの4人、見ていて全く飽きないな。これは元の世界ではこの4人組というくくりでも、相当人気があったのではないのだろうか。

 

「みんな、食べ終えたわよね。もうそろそろ時間だし、いきましょ。カワサキさん、またね!」

 

「ハラショー。カワサキさん、また今度だね」

 

「電も今食べ終えたのです。カワサキさんお先に失礼します、なのです」

 

「ちょっと、なんで雷が仕切っているのよ!?それに私はまだ食べ終えて…あーっもう!かわはひはん、ははへー!」

 

「またね~」

 

 俺は手を振りながら4人を見送った。いやあ、まるで台風のようだったな…でも見ていて微笑ましかった。最後、暁は置いていかれそうだったので、食べ物を一気に口に流し込んでいたが…いつか喉を詰まらせそうで心配だな。

 さて、食堂の人だかりも少なくなってきたし、割かし時間をつぶせたんじゃないだろうか。そろそろ俺も準備しなくては…って別にすることはないな。

 

「お待たせいたしました。それでは行きましょう」

 

 そして、しばらく待っていると大鯨さんがこちらにやってきたので、俺たちは食堂を後にして鎮守府を回ることにした。

 




中々話が進まない…
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