コックカワサキに扮した元一般人の鎮守府新生活    作:一柳二朗

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話がマンネリ化しつつあり、状況打破に思い悩むこのごろ


第11話

 あれから俺たちは、各艦娘寮、そして訓練場、出撃地点、学び舎といった順で回っていった。艦娘寮には入っていないが、駆逐艦寮など、複数の寮が存在していた。単独なのは数の多い駆逐艦だけで、軽巡と重巡は一緒、と言った風に艦種別に分けられてはいるが、他の艦と合同であるのが普通のようだ。もっとも海防艦組は人数が少ないこともあり、本館にそれぞれ部屋を構えているらしいが…それ以外にも他に何か理由はあるのかもしれない。

 そして訓練場の広いこと、広いこと。何でもメタナイトの艦娘を鍛えるための力の入れようは尋常ではないらしく、そこはとりわけ拘っているらしい。それに自身の鍛錬にも使っていることとか…ことによるとそちらの方が、訓練場に力が入っている大きな原因なのかもしれない。

 また、学び舎というのは、指導役の艦娘が、まだ経験の少ない艦娘たちや、理解の足りていない艦娘たちに、教養や戦術などを教えてもらっている場所であるとのことだ。こちらも中には入っていないが、練習巡洋艦と呼ばれる艦娘が中心となって指導役にあたるらしい。

 

「そしてこちらが間宮さんの店になりますね。本日は伊良湖さんの移動に伴って、臨時休業になりますが」

 

 でもって今、俺たちが来ているのが食事処間宮だ。そうか、食器とか材料とか運ぶものはそれなりにあるもんな。メタナイトはああ言っていたけど、結構手伝えることあったんじゃね?

 

「あ、カワサキさん!それに大鯨さんも、どうもこんにちは!」

 

 すると、荷物をまとめていた伊良湖さんが俺たちに気づくなり明るく挨拶をしてきてくれた。

 

「伊良湖さ~ん!会いたかった~!」

 

 そして、俺は10年来の親友に久しぶりに会ったかのごとく、大げさなリアクションをとってみた。いや、実際会えて嬉しいんだけれども。そう、もうすぐ抱き合うといった瞬間、

 

 ポカッ!!

 

「鎮守府内での不純行為は厳禁です。風紀が乱れます」

 

 何か物が飛んできて俺にぶつかった。少し痛い…

 

「イタタタタ…別に抱き合うぐらいいいじゃないか~」

 

「むやみやたらに異性と触れ合うことを控える、司令のお達しです。いくらカワサキさんが司令の知人と言えど、見過ごすことはまかりなりません」

 

「あはは…不知火ちゃんは相変わらずだね」

 

 伊良湖さんが少し苦笑い、といった表情でこっちを見ている。今俺に物を投げつけた艦娘は不知火というらしい。

 

「しかし、台所用品を投げてしまったことについては反省しなければなりません。司令からの教えには、物を粗末に扱うことこれを許さず、ともあるので」

 

 台所用品?床を見るとそこには食器を洗うためのスポンジが落ちていた。何をぶつけられたかと思えばこれだったのか…いや、そんなことよりも、だ。

 

「そこは人に物を投げつけたことを、反省すべきだろ~。いくら軽くて、柔らかいと言ってもちょっと痛かったよ~」

 

「人に物を投げつけた…カワサキさんは人ではないでしょう?」

 

「あのね~!そういうことじゃなくてさ~」

 

「冗談です。たとえ外見がどのような姿をしていても、真摯に接するようにと、司令からもよく言われておりますので。先ほどは失礼しました、カワサキさん」

 

 さっきから司令、司令って、そればっかりだなこの艦娘。

 

「相変わらず不知火さんは提督の教えに忠実ですね」

 

 大鯨さんは不知火のことをこのように評しているが、というよりも―

 

「忠実というか…融通が利かないっていった方がいいんじゃな~い?堅物っていうかさ~」

 

「司令はその融通が利かないところが不知火の美点だとも仰ってくれました。不知火にとっては最大の誉め言葉です」

 

 この不知火って艦娘は、メタナイトに対して敬意を通り越して崇拝まですらしてそうだな。なんというか怖い。

 

「不知火ちゃんはこの鎮守府でもとりわけ提督に心酔しているから…カワサキさんもそこのところは分かっておいてね」

 

 さらに間宮さんも奥から顔を出してきた。よし、わかった。不知火の前では軽口は絶対に叩かないでおこう。少しでもメタナイトのことを軽んじたようなことを言ったことが不知火の耳に入ってしまったら―恐ろしい光景が浮かび上がりそうだ。眼光もただならぬものを感じるし。

 

「そういえば、不知火さんはどうしてここにいるの~?今日は店じまいでしょ~」

 

「伊良湖さんの荷物整理の手伝いをいたしております。不肖ながらこの不知火も、この度カワサキさんと伊良湖さんの店のサポート役に就かせていただきます。全身全霊身を尽くしますのでよろしくお願いします。」

 

 うわ…あまり知りたくなかった新事実。霞といい、曙といい、なんかキツイ艦娘ばっかり集まっているのは気のせいだろうか。いや、不知火はキツイというよりも堅いか。個人的には第六駆逐隊、あるいは白露や島風のような扱いやすくて、こっちもまったりできそうな艦娘の方がよかったのだが。よし、こうなったら―

 

「不知火さ~ん。そんなに張り詰める必要ないよ~。メタナイト卿も言っていたよ~。最初から気合を入れすぎると、上手くいくものも上手くいかないってさ~」

 

「司令がそのようなことを…なるほど、カワサキさんの先ほどからのおちゃらけた態度は、司令の忠告を守ってこそのものだったのですね。そうとも知らずに出過ぎた発言、この度の不知火の落ち度お許しください」

 

「提督がそう仰るとは少し意外ですね…」

 

 大鯨さんは不思議そうにしているが、そりゃ今のは俺のハッタリだからな。しかし思った通り、メタナイトの名前を出せば不知火は大人しくしてくれそうだな。これは今後も使えそうだし、なんなら他にも応用できそうだぞ。俺がそう考えていると、

 

「皆、ご苦労。首尾はどうだ」

 

「お疲れ様です…」

 

 この場を通りかかったメタナイトが、緑の髪の艦娘に抱かれながら俺たちに声をかけてきた。

 

「「「「提督(司令)、お疲れ様です」」」」

 

「お疲れ、メタナイト卿~。あれ?異性に触れ合うのはダメだったはずだよ~。ねぇ、不知火さん?」

 

「いえ、察するにこれは山風への褒賞といったところでしょう。ですよね?山風」

 

「うん…この前の出撃でMVPをとったときに、ご褒美に何がいいって言われて…」

 

 どうやらこの艦娘は山風というらしい。これまたメタナイトにすごく懐いているな。

 

「山風たっての希望だ。毎回やたらと抱き着かれては堪らないが、こういった秘書艦の日に鎮守府内を見回るぐらいなら特に問題はない。もっともこれでご褒美になっているのかは私自身ではピンとこないが…」

「「「「いえ、率直に言って最高に羨ましいです」」」」

 

 皆、異口同音にこう答えた。もはや何も言うまい。

 

「そ、そうか…まあ、そんなことより、準備は順調か、伊良湖」

 

「はい!間宮さんと不知火ちゃんの協力もあって、もうそろそろ荷物を移しだします」

 

「もう、それぐらいの段階だったんだね~。よ~し、張り切っていこ~!」

 

 こういうのを見ると実感が湧き出してくるものである。いやいや、改めて自分が店を開くという再認識をさせられるな。俺も自ずとテンションが上がってきた。すると―

 

「カワサキにしてはいい心がけだ。やはり、出だしは肝心だからな。いつも以上に気合を入れて臨むくらいで丁度いいだろう」

 

 そう感心するメタナイト。褒めてくれるのはいいのだが、頼む、空気を読んでくれ。そこに唖然、呆然とした様子で棒立ちになっている艦娘が1名いらっしゃるでしょーが!

 

「皆…頑張ってください。提督、お店が開いたら一緒に行きたい…」

 

「ああ、そうだな。店を手伝う艦娘も、カワサキのように張り切ってくれることを期待しよう。また後で様子を見に来る。それでは」

 

 そういって山風とともにこの場を去っていくメタナイト。不知火の様子?そんなの直視できない。

 

「司令の真意を見抜けずにこうも騙されるとは、何たる不覚…!この不知火の一生の落ち度…!そしてカワサキ…霞や曙が言っていたように、貴方は本当に性根から叩き直す必要があるようですね…!!」

 

 女の子が、いや人がしてはいけない表情になっている不知火。ああ、どうしよう。とりあえず何とかなだめないと…

 

「いや~、人に褒められるのって気持ちいいよねぇ~。不知火さんも褒められるようにすればいいんじゃないかな~」

「この外道がぁ―!!!」

 

 めでたく沸点を迎えましたとさ。この後めちゃくちゃぶっ飛ばされた。

 

「自業自得まさにここに極まれり、っていったところね…」

 

「カワサキさんもいい人ではあるのですが、もう少し発言に気を付けることはできないのでしょうか…」

 

 間宮さんと大鯨さんもややあきれ顔といったところで、このように発言する始末…ああ、味方はいないのか。どうあがいても絶望。

 

「まあまあ…それよりもあともう少しですし、残りの作業を終わらせちゃって移動しましょう!カワサキさんもせっかく来てくれたことですし、新しくお店を出す場所に一緒に向かいましょう!ね?」

 

 そうやって多少強引ではあるが、雰囲気を変えようとしてくれる伊良湖さんはさながら天使であった。ユーアーナンバーワン!!

 




主人公が活躍する場面が全然思いつきそうにない…
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