コックカワサキに扮した元一般人の鎮守府新生活    作:一柳二朗

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本日はもう1話投稿する予定です。



第5話

「敬礼!!」

 

 勇ましい声とともに全員が全員敬礼の構えをとる。やはり一つの軍である以上、こういうときの呼吸は一切乱れがない。どことなく緊張感を漂わせる中、ついに俺が全員ではないらしいが、艦娘に向かって挨拶をするときがやってきた。

 

「各位、本日もご苦労であった。今日こうして皆を集めたのは、既に知っている者もいるかもしれないが…この鎮守府に新しく加入することとなった者についての紹介をする。ではカワサキ、前へ」

 

 メタナイトから促されて俺は壇上の中央に向かった。こういうのは最初が肝心だ。艦娘たちの表情は真剣そのものだし、俺もビシッと決めないと…そして中央の位置に立つや息を吸ってこう言った。

 

「カワサキだよ~~。今日からこの鎮守府で暮らすことになったので、よろしくね~~」

 

 ダメだ…この厳粛とした空気を壊さないように、引き締まった挨拶をしなければならなかったのに、語尾は伸びるし、敬語すら使えていない…心なしか艦娘の皆さんも、少し不審の顔でこちらを見ているような気がする。しかし、そうなるのも無理はない。ただでさえ異形な姿をした生き物が、急に自分たちの生活の場に入ってくるというのに、聞く側によってはこちらを馬鹿にしてるかのようなしゃべり方なんだもんな。

 …どうしよう。ここから挽回する手段は、えーっと…

 

「そ、そ~だ~!メタナイト卿~このまま終わるのも味気ないんじゃないかなぁ~。だからこの場を使って、みんな色々と俺に質問するってのはどうかなぁ~?疑問に思っていることとか、聞きたいことがあれば何でもいいよぉ~」

 

「そうだな。この場は何も重要会議などといった類ではなく、飽くまでもカワサキとこの鎮守府にいるものの顔合わせが目的だ。硬い空気は不必要だろう。それに、これからお互いのことを知っていくためにも、そのような問答があるに越したことはない。皆ももっと楽にしていい。あまり多くなっても埒があかないだろうから、とりあえず一人一問ずつにしよう。何かカワサキに質問がある者は挙手をして、名前を呼ばれてから発言するように」

 

 だからいちいちあんたの発言は硬いんだよ。でもいずれにせよ、こちらの提案を受けてくれるあたり、さすがメタ様である。するとちらほら手は上がり始めて、そのうちの一人をメタナイトは指した。

 

「よし、では大淀」

 

「はい。その…カワサキさんは、提督と同じ世界からこの鎮守府にお越しになったと伺っておりますが、こちらの世界に転移した原因や、前後の状況について何か把握されていることはございますか?」

 

「気がついたらベッドに寝っ転がっていたんだよ~。こっちに来たことの心当たりは正直思いつかないねぇ~。転移する前のこともよく思い出せないんだよ~。もしかしたら、何かの拍子で死んだんじゃないの~?そしたら生き返って、こっちの世界にやってきました、みたいな?アハハ~」

 

「そ、そうですか…わかりました、ありがとうございます…」

 

 おお、我ながら上手く受け答えができたんじゃないだろうか。そこまで噓も言っていないし。今質問をしてきた、眼鏡をかけていて、いかにも仕事ができそうな感のある艦娘…大淀は、若干ひいているようではあるが、まあそこまで気にしなくてもいいだろう。

 

「では、他に。長門」

 

「聞いているかもしれないが…我々艦娘は普通の人間とは外見は似ていても、身体の性質や、戦闘能力等中身は全く持って違う。それらが原因で、外部の人間が我々を怖がったりするのも珍しくはない。中には偏見を持って蔑んだりするような輩もいるが…そういう謂わば腫物のような存在である私たちと生活することについて、抵抗があったりすることはないか?仮にあったとして、それが理由で我々に危害を加えようとするのであれば―」

 

「へぇ~そんなに違うの~?どれぐらい違うのかなぁ~ひょっとして、メタナイト卿とカービィぐらい?なんか少し興味がわいてきたねぇ~。それと、質問の答えだけど…え~っとなんだったっけ?悪いけど、もう一回聞いてもいいかなぁ~」

 

「いや、今の反応で大体は把握した。こちらこそ、無礼な物言いをしたことについて謝罪する。なるほど、さすがは提督と同郷のもの。少し脅迫まがいな聞き方をしたにも関わらず、こうも物怖じしないとは…」

 

 やたら威圧感を感じると思ったら、やっぱりそういうことか…つーか全然平気じゃねーよ。この長門っていう艦娘、やけに背が高いし、風貌や佇まいから並々ならぬ迫力が伝わってきたっつーの。特に最後の方めちゃめちゃ怖かったからな?足なんかがくがく震えていたし。

 でも、受け答えはスムーズにできるんだよなあ。やっぱりカワサキ効果?心の中まで完全にカワサキになるのも、そう時間はかからないんじゃないだろうか、この分だと。

 

「他に質問がある者―漣」

 

「はーい!カワサキさんとご主人様はいったいどういった関係で?」

 

「へ?俺にご主人様なんていないよ~」

 

「あ、いえ、そうではなくて、提督とカワサキさんについての間柄を知りたくて…」

 

「俺とメタナイト卿かぁ~。やっぱり仲間かなぁ~。一緒にカービィの手助けだってすることもあるし~」

 

「その…カービィさん?っていうのはカワサキの旦那たちと同じ世界の住人ってわけですかい?」

 

「そ~だよ~。俺の友達なんだけど、まん丸で、君の髪の色みたいにピンク色の身体をしていて、食いしん坊で、ダンスが得意で、歌が下手で…」

 

「話がカワサキのことから脱線してきているからそこまで。では他に―川内」

 

あらら、せっかく話が盛り上がってきたのに残念。まあ、途中から完全にカービィの話になっていたしな。そして、この漣って子も割と話しやすいぞ。ただ、いつの間にか自然と、俺を旦那呼ばわりしていたことについてはどうなんだろう。デデの旦那じゃあるまいし。

 

「川内でーす。単刀直入に聞くけど…カワサキさんは夜戦って好き?」

 

「ヤセン?そんな料理があるの?簡単そうだったら俺にも作れたりするかなぁ~」

 

「いやいや、今のは料理の話じゃなくて、夜に戦闘するって意味で聞いたんだけど…」

 

「銭湯?それもいいねぇ~だんだん寒くなってきたし、あったかいお風呂は気持ちいいよぉ~。それで気分がよくなってきたときに料理を出せば、味なんて関係なく注文してもられるかも~」

 

「料理から離れんかーい!!それに料理を出す側なら、味には常に注意しろーい!!」

 

 今質問した川内…その雰囲気から結構おちゃらけた艦娘かと思ったけど、言っていることは案外まともだな。少し意外な気がした。うん?俺がまともでなさ過ぎて相対的にそう思えるだけだって?おっと、それ以上はやめなさい。だって失礼だろ。俺にも、川内にも。

 

「それでは他に「はい!!」では朝潮」

 

「カワサキさんは先ほどから、司令官のことをメタナイト卿と呼んでいらっしゃいますが、そもそも司令官は元の世界ではどのような方だったので「カワサキに関係する質問ではないから却下だ」そ、そんなぁ…」

 

 自分のことは隠しておきたいだけだろ。そもそも顔(かわいい)すら隠しているしな。今の質問をしてきた、小柄な体格の真面目そうな子…朝潮も少ししょげているぞ。さっきから熱心に手を挙げていたもんなあ…かわいそうに。

 なにはともあれ、なんだかんだでここまでの問答は順調といってもいいんじゃないだろうか。この自己紹介前でも、ある程度艦娘と話せたこともあるし、コミュニケーションの部分は問題ないと言ってもいいと思う。だったら、この鎮守府で暮らすのはそんなに難しいことではないんじゃ…

 

「よし、時間もそろそろ押してきたので、次の質問を最後としよう。最後に何かカワサキに聞いておきたい者、挙手」

 

「はーい」

 

「よし、鈴谷」

 

 今度はいかにも今どきの若者って感じの艦娘が指された。この艦娘は鈴谷っていうのか…

 

「ぶっちゃけこれは提督にも含めて聞きたいんだけど、カワサキは今後この鎮守府でどう暮らすわけ?カワサキ自身、具体的になんかやりたいこととかはないのー?」




こうやって文に起こすと、カワサキのしゃべり方がよりウザく感じる今日このごろ
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