コックカワサキに扮した元一般人の鎮守府新生活    作:一柳二朗

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カワサキの1日目の鎮守府生活終了、どうも、お疲れ様でした!


第6話

 鈴谷にそう言われて、ハッとした気分となった。やりたいことか…コックカワサキである身としては、料理人として生きるのが自然な流れなんだろうけど。

 

「まだここに来たばかりでこんなこと言うのもなんだけど、カワサキ自身なにもしないってわけにもいかないっしょー。だったら、なにかやりたいことがあって、それができる環境がこの鎮守府にすでにあるなら、すんなりことは進むよねー。だからまずはカワサキの希望を聞いてみた方がいいと思うわけよ。まー今まで聞いた感じだと料理人なんだろうけど、じゃあ、料理人としてどうしていくかの具体的な話はまだ何決まっていないわけじゃん」

 

「ですが、鈴谷。まだ、ここにきて1日目なわけですし、そのようにすぐに決めることもないのでは…」

 

「熊野。確かに早い気もするが、鈴谷の言う通り、いずれは決めなければならないことではあるからな。カワサキ、そなたの希望はどういうものだ?なんとか極力応えるようにはする。やはり、料理人として自分の店を出したいとかか?」

 

 初対面の相手をなんの抵抗もなく呼び捨てとは…うん、この鈴谷という艦娘はやはりイメージ通りだな―と、思いきや、なんかいきなり核心に迫られた心地がした。案外鋭く、思慮深いところがあるんだな…まあ、そんなことは置いといて、今後生活していくにあたってやりたいことか。あわよくばこのままずるずるいき、何の仕事とかもせずに生活できるかと内心思ったりしたが…そうは問屋がおろさないか。

 だったら、決めるしかないか。となると、メタナイトの言う通り料理人になって店を出してしまうか?料理なんてまるっきり自信がないし、店の出し方なんて全くわからないけど、メタナイトも手伝ってくれるだろうし、ここは軍だからそれほど料理にうるさい人もいないだろうし、ここは流れに任せて…

 

「できたら、それが一番いいねぇ~!店を出してじゃんじゃん稼ぐよ~」

 

 つい、調子に乗ってそんな発言をしてしまった。すると

 

「お~、大きくでたねぇ~。ただ、うちの鎮守府は昼には間宮さん、夜は鳳翔さんが店を出しているし、他にも料理が得意な艦娘は結構いて、一筋縄ではいかないよー」

 

 鈴谷にこのように返された。それに賛同する艦娘も大半を占めている。

 

「彼女らが出す料理はどれも逸品だからな。彼女らに料理を習って腕を上げている艦娘も中にはいる。そのせいもあってか、ここにいる艦娘たちは舌が肥え、並みのものでは満足できなくなっている者も少なくないのかもしれないな」

 

「私は最低限の質が保証されていて、後は量があれば基本的に満足できます!もちろん、味がいいことに越したことはありませんが」

 

「赤城さんのような人もいるけど、基本的には美味しければ満足できるわよね」

 

 赤城はまあ、置いておくことにして…そうか、そんなに味にうるさい連中が多いとは。しまった、安易に答えるんじゃなかった。

 

「え、そうなのぉ~。…てっきり俺の店だけしかなくて、何の努力もなしに繁盛できると思ったのになぁ~」

 

「「「「そこは努力しろ!!!!」」」」

 

 マジかよ…うーん、そうなると難しいか…それにしても、ほとんどが初対面であるにもかかわらず、その場にいる艦娘全員から、一斉につっこまれてしまった俺っていったい…

 

「どちらにしても、来たばかりのカワサキが何の準備もなしに、いきなり店を開くこと自体無理があるだろう。そこで考えていたのだが…間宮。確認するが、デザートといった甘味ものに関しては、現在伊良湖が中心となって作っている、それで合っているな?」

 

「ええ、そうですね。私もお客が多いときはお手伝いしますけど、ほとんどの場合、伊良湖ちゃんが一人で切り盛りしていますよ。それに腕で言えば、私なんかでは到底追いつかないほどです」

 

「な、なにをおっしゃるんですか!?間宮さん!私なんかでは間宮さんの足元にすらおよんでなど…」

 

 間宮、鳳翔っていう艦娘の他に、伊良湖っていう艦娘も店で料理を出しているのか。話を聞く限りでは、どうも伊良湖は間宮の下で働いているみたいだな。

 

「謙遜しなくていいのよ、伊良湖ちゃん。それに自分でも店が持てたらいいなあみたいなこと、この前駆逐艦や、海防艦の子にも言っていたじゃない」

 

「き、聞いていたんですか!?あれは、その、言葉の綾というか…」

 

「遠慮など不要だ。私もその話を耳にしたとき、何か協力はできないかと考えていた」

 

「司令官は甘いものが大好きだものね!!」

 

「しーっ暁。一人前のレディなら、あまりそういうことを大きい声で言うものではないよ。司令官の機嫌を損ねてしまうかもしれない」

 

「えっ…響…そ、そうなの!?ご、ごめんなさい!司令官!!」

 

「…別に気にしていないから謝らなくともよい」

 

 今、騒いだのが例の暁か。確かに小さい。そして子供っぽい。響って呼ばれた落ち着いた子が隣にいることもあって、余計幼くみえてしまうな…

 

「そこで提案なのだが、今回伊良湖とカワサキ共同で、新しい店を出すというのはどうだろうか。いつでも店を出せるようにその分のスペースはもう確保してある。他にも色々準備を要することはあり、少し時間はかかるとは思うが、カワサキの都合もあることだし丁度いい。伊良湖、改めて聞くぞ?本当に自分の店を持ってみたくはないか?」

 

「伊良湖ちゃん、自分の思いを正直に、ね?」

「伊良湖さんなら絶対にうまくいくってー」

「むしろ、店を持たない方がもったいないよー」

「なんなら毎日通う自信があるよねー」

 

 周りの後押し、声援も大きくなってきた。そして伊良湖はついに

 

「す、すみません!!やっぱり自分の店を持ってみたいです!!」

 

 おお、言い切ったぞ。最初の遠慮がちの様子からよくここまで踏み切れたもんだ。独立して自分の店を持ってみたい、か。やはり他人から評価されるほどの確かな実力が自分に備わっているのであれば、どこの世界でも一国一城の主には憧れてしまうよなぁ…いや、でもそんな単純な話じゃないな。

 大抵は憧れるだけで、決断できるほどの勇気を持てる人間は一握りだろう。ましてやこんな自分より小さな子が、そんな決断をしてのけるなんて。それに比べて俺ときたら…ホント駄目だな。そんな俺をみて、その胸中を知ったのかどうか定かではないが、メタナイトはうつむいている俺に向かって声をかけてくれた。

 

「きっかけさえものにしようとしてくれるなら、私はそれを全力でサポートするだけだ。そしてお前はもうこの鎮守府の一員であり、僭越ながら私がこの鎮守府の長だ。部下が勇気をもって前進しようとしているのに、後押しできない上司など、それこそ存在の価値はない。もちろんそれは今回に限った話ではない。ケースにもよるが、いつスタートできるかなど、それこそさしたる問題ではないことのほうが多い。重要なのはスタートできる自分でいられるかどうかだ。そして私に言われなくとも、お前はすでにそのことに気が付いてるはずだ。だから、後お前に必要なのは断固たる決意のみ。そうだろ?カワサキ」

 

 こんな不甲斐ない俺に、温かく激励を与えてくれるメタナイト、そして―

 

「カワサキさん。私はできることなら、カワサキさんと一緒に店を出してみたいです。まだまだ未熟ではありますが、なんとかカワサキさんの役に立てるようがんばりますので…!」

 

 俺のことを励ましつつ、俺の力を欲しようとしてくれる伊良湖。元々自分単独で店を持とうとしていたのに、こう言ってくれるということは、俺への気遣い以外の何物でもないだろう。

 …本当腑抜けだな俺は。ここまでお膳立てしないと、何も決意できないんだからな。でも腹は決まった。そうだよ、今ここでスタートを切ることになんの問題があるんだよ。今切ってしまうことが、この時点での最高のタイミングだ。ならば――!

 

「よ~し、デザートが中心なら、いっそのこと新しい店はカフェとしてやっていこ~~!伊良湖さん、心配することはないよ~!俺もいることだし、大船に乗ったつもりでいてよ~」

 

「カワサキさん…ありがとうございます!!これから一緒にがんばりましょう!!どうかよろしくお願いします!提督も、他の皆さんも本当にありがとうございます!」

 

 大広間に沸き起こる拍手。これは俄然気合が入ってきた。よし、俺もこの波に乗っかってみることにするぜ!料理なんて全く自信ないし、お菓子やスイーツにいたっては、簡単なものですら作った経験がない。それでもこの伊良湖さんとなら、何の根拠もないが、必ずうまくやっていける、そう思うことができた。

 そう、まるで最高のタイミングでベストパートナーと巡り会えたかのような気がしたんだ。そして、ここには最高の上司もいる。それに今俺はコックカワサキなんだ。ここでイモを引くようであれば、料理人としての名が廃る。そして、男が廃る。ならばチャレンジあるのみ。もう今は前の人生とは違う人生を歩んでいるんだ。この決意は冷めそうにもない。いや、冷まさない。

 

「よーし、じゃあ新しい店“カワサキカフェ”で天下をとるよ~!みんな~開店を楽しみにしていてね~!」

 

 カービィカフェならぬ、カワサキカフェを築き上げるんだ!この華々しい門出とともに、俺たちの伝説はここから始まるんだ!!新たなる人生の幕開け!みんな、応援してくれよな!

 

「うわ、急に調子に乗ってきたよ…」

「カワサキも一緒…それだけで一気に不安になってくるわね…」

「店の名前からしてもうダメでしょ」

「さっき大船って言っていたけど泥船の間違いじゃない?」

「いくら伊良湖さんの舵が優秀でも…といったところよね…」

「今からでも伊良湖一人に任せた方がいいんじゃない」

「ホントそれ」

 

「伊良湖ちゃん…不安になったら、いつでも私に相談してきてね?すぐに駆け付けるから」

 

「及ばずながらこの鳳翔もお手伝いしますよ、伊良湖さん」

 

「なんでよ~~!!ヒドイよ~~~!!!俺の料理を食べたこともないのに、なんでそんなに言われなきゃいけないの~~!!みんな、今の発言はギャグでしょ!?ギャグだよね!?ギャグだと言ってよ~~!!!」

 

「か、カワサキさん!私は頼りにしていますし、信じていますから…」

 

 爆笑している艦娘をよそに、俺を慰めてくれる伊良湖さん。ああ、伊良湖さんの優しさが身に染みる…伊良湖さんマジ天使…ていうか、なんでまだ会って間もないというのに、艦娘からの俺の評価はこんなにボロクソ!?普通に自己紹介しただけだよね!それなのに、この鎮守府の連中ときたら、うぅ…

 

「いや、完全に自業自得だろ。少しは自分の言動を振り返ってみろ」

 

 そして、最後にはメタナイトに引導を渡され、艦娘に向けた俺の自己紹介は終わりを迎えていった。ああ、華々しい門出とはなんだったのか。新たなる人生はもう、閉幕しそう…

 ああ~カービィ助けてくれよ~カービィカフェに行くからさ~頼んだよ、カービィ!




次回から2日目になります。
カービィカフェはマジで行きたい…
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