――日が差してきてまぶしい。もう、朝か…今日もいつものように体を起こして、仕事に行く準備をしなければいけない。そう思って顔をあげると周囲をに違和感を覚えた。あれ、俺の部屋こんなんだったっけ…?そうだ…俺はカワサキに転生―いや、今回のケースだと憑依になるのか?何であれカワサキの姿となって艦これの世界に来たんだった。
昨晩は寝るときに、今起こっていることは全て夢であって、再び目を覚ましたら、元の世界に戻っていたりするのではないかとか考えたりしたが、どうやらそんなことはなかったようだ。でも、いつものように仕事に行かなくていいなら、もう少し横になっていようかな…俺が二度寝を決め込もうとしたそのとき
「目を覚ましているなら、起きろ。カワサキ」
誰かに待ったをかけられた。この低い声はメタナイトだ。そうそう思い出した。結局昨日の夜は、メタナイトの私室で寝ることになったんだ。何でも俺ともう少し話をさせてほしいとか言って。寝るスペースもまだ余裕はあったし、予備の布団もあるということで特に断る理由はなかった。俺もそれほど有用な情報は持っていなかったため、あまり役には立てなかったけど。
そして、メタナイトからの一連の話をした後、すぐに眠ってしまったんだよな。新しい環境ということで、精神的にも疲れていたから仕方ないけど、どうせならメタナイトがこの世界に来た経緯も聞いてみればよかったな。まあ、これから聞く機会はいくらでも来るだろうから、そこまで気にしてはいないが。
「ふわぁ~~…メタナイト卿、おはよ~」
「そちら側に洗面所があるから、顔を洗って来い。そうしたら朝食をとりにいくぞ」
メタナイトが指し示した方角を見ると、確かに洗面所があった。部屋自体は全体的に質素だが、トイレやバスルーム等、最低限のものは備わっているようだ。あれ、そういえば俺たちってトイレってするの?アニメではデデデはしていたけど、俺たちはどうやって…いかん。深く考えるのはよそう。そんなことを知っても、得をする者は誰一人としていない。
「顔洗ってきたよ~。じゃあ、早速行こう。場所はどこ~」
「案内するからついてきてくれ。また、初日は色々あってできなかったが、鎮守府内の案内もしなければならない。そこで今日行う予定なのだが、それでいいか?」
実際昨日は結構バタバタしていたんだよな。自己紹介した後は自由に時間を過ごせるかと思ったら、鎮守府に新しく加入するための手続きをする必要があった。そしてまた、この手続きがそれなりの量であり、一言でいえば、大変だった。
まあ、ここは軍部施設だし、そういうときに準備する書類とかに、時間を要さざるを得ないのも仕方のないところだろう。一方提督であるメタナイトは執務に時間をとられてしまう。だからなんやかんやで、メタナイトと話ができたのも結構遅い時間だった。
「うん、いいよ~。メタナイト卿が直々に案内してくれるの~?」
「本来ならば、そうしなければいけないところではあるが…今日はなかなか時間の都合がつきそうにない。すまないが、案内役の艦娘を頼んであるから、その者と一緒に鎮守府内を回ってほしい」
「忙しいならしょうがないよね~。謝ることなんかないのに~」
「いや、忙しいことを理由に、自分の本来すべきことができないということなど、そもそもあってはならない。まず、そんな状況を招いていること自体、私の力不足以外のなにものでもない。部下である艦娘はよくやってくれているというのに…自分の至らなさを恥じ入るばかりで、もっともっと、しっかりしないといけないところだ」
なんていうか、本当こう、ストイックだな…メタナイトのことを無能だと思っているやつなど、少なくともこの鎮守府の中には一人としていないだろうに。なんならむしろ、それこそ叢雲も言っていたように、がんばりすぎていて、少し心配をしている艦娘も少なくないんじゃないだろうか。
「そっか~…大変なんだねぇ…」
「仮にも一つの組織の長を務めているわけだからな。規模もそれなりにあり、大変ではない方がおかしい―よし、食堂に着いたぞ。昨日も少し話した通り、この鎮守府には、間宮や鳳翔の店だけではなく、一部の艦娘が中心となって、食堂で料理を提供してくれる。間宮の店は昼間、鳳翔の店は夜しか開いていないこともあり、売店などもあれど、朝はほとんどの者が食堂で食事をとることになる。というわけで、好きなメニューを選んで、厨房にいる艦娘に注文してくれ。食堂はここ以外にも複数あり、それぞれ、リーダーの立場にいる艦娘と、その者の下でサポートしてくれる艦娘がいる。リーダーとなる艦娘の担当食堂は月ごとによって変わるが、今月は―」
厨房を見てみると、そこには一人の艦娘と思しき姿が見えた。
「提督、おはようございます」
「大鯨か、おはよう。うん?ここの食堂の担当は、今月は速吸だったはずだが…?」
「今日だけ代わってもらいました。朝食をとった後に、カワサキさんを案内するということでしたから、せっかくなら早めにお会いできればと思いまして…」
「それで執務室に最も近いこの食堂の当番をすることにしたのか」
「はい、その通りです」
そう嬉しそうに答える。このことからしても、やはりこの艦娘もメタナイトのことを慕っているということがよくわかる。
「急に仕事を押し付けたばかりか、我々の都合に合わせてくれるとは…気を遣わせたようですまないな」
「これぐらい大したことではありませんし、提督の方こそいつも私たちの都合を優先的に考えて、行動をとってくださります。そんな提督の力になれるのなら喜んで行いますよ。それに、代わってもらった速吸さんに今日のことを話したら、私も提督さんに頼ってもらえるようもっと頑張らないと…といった感じで、気合を入れていましたよ。少し羨まし気にもしていましたし」
メタナイト、本当に人気がすごいな。まあ、メタナイトファンの俺からしたら、それはそれで嬉しいし、なんなら少し鼻が高いまである。
「そう言ってくれるとは嬉しい限りだ。今後とも十分に頼らせてもらうぞ。それでは、今日はカワサキに鎮守府内の案内をよろしく頼む」
「はい、お任せください。カワサキさん、潜水母艦の大鯨です。今日はよろしくお願いしますね」
「うん、こちらこそよろしく~」
この大鯨という艦娘は、俺にも愛嬌良く声をかけてくれた。うん…この人は間違いなくできた人だ。あんな自己紹介があった後でも、俺に優しく声をかけてくれる人が、伊良湖さん以外にもいるなんて…そういえば
「あ、今思い出したんだけど、店を出す準備について何も考えていなかったね~。メタナイト卿どうしよ~か?」
「物の移動などもあることだし、すぐにカワサキが駆け付けなくともよい。その場所も最後に大鯨が案内することになっている。それくらいの時間にはカワサキにも手伝えることがあるだろう」
このメタ様用意周到である。俺が心配することなんて何もなかったな。
「わかったよ~。じゃあ、朝食が終わったら大鯨さん、よろしくね~」
「そうですね、ある程度片付けが終わりましたら、一緒に鎮守府内をまわりましょう。…そういえば私残念ながら、昨日カワサキさんの顔合わせの場に、参加することができなかったんですよ。ですから案内をするときにでも、ぜひそのときのことを教えてくださいね!」
「そ、そ~だね~、ハハハ…」
うん、そんなところだろうと思った。これでまた俺に幻滅する艦娘が一人増えるわけだな。ははは、そろそろガチで泣いてもいいよね…
補助的な艦娘は、比較的カワサキと絡ませようかと考えています。