「おーちーてーるー!?」
落下しながら、助かる方法を探すため周りを見回すと、
お嬢様風の女の子、猫を抱えた女の子、金髪でヘッドホンを身に着けた男の子が一緒に落下している。
どうするどうするどうする!?
焦った私はあることを思いつく。
「そこの三人!私に捕まって!」
三人は私の服に掴まった。
「『ナース』!」
体が黒い靄に覆われると、看護師のような白衣ではなく、汚れが付いた白衣に、頭には顔まで覆った白い布をかぶっている姿になった。
左手を握りこむ。その間に地面にどんどん近づいていく。
そして、手を開き、陸地に向かってブリンク(瞬間移動)した。
ナースの固有能力はブリンク、今、この状況においては最も適しているといってもいい能力だ。
この能力のおかげで湖?池?にダイブすることなく生き残ることができた。
私につかまっていた三人は陸地についたということに驚いていたが、その後、こんなことをした張本人に向かってだろう、罵詈雑言を吐き捨てていた。
はぁ~三人が落ち着くまでアドオンとかの確認でもしようかな。
頭の中に浮かんでいるパークの能力を確認し始めた私だったが、
「…い…おい、聞いてるのか?」
私はその声に反応し、後ろを振り返ると、金髪少年が私に話しかけていた。
少年は私の今の姿に興味津々なのか、目を輝かせている。
しかし、少女二人は幽霊でも見たような目でこちらを見ている。
私は仕方なく、今の姿、『ナース』の姿を解除し、元の姿に戻す。
私の転生後の姿は、黒髪黒目の少女。
服装としては黒いワンピース………ワンピースといいましたが喪服です。
「さっきの姿のままでも俺は平気だったんだけどな。」
「後ろのあの子たちの目を見れば、すぐに元の姿に戻りますよ。」
金髪の少年は少女たちのほうを見る。
少女たちは物凄いスピードでうなずいている。
「ところで、私に何か用事でもありましたか?」
「今自己紹介をしてたっていっても聞いていなかったようだから改めて、俺の名前は逆廻十六夜、で、後ろの二人は」
「私の名前は久遠飛鳥よ。よろしくね。」
「…春日部耀。よろしく。」
金髪少年が十六夜さん、お嬢様風少女が飛鳥さん、猫を抱えている少女が耀さん。
「はい、覚えました。」
「で、あんたの名前は?」
「私は狩多夜月です。趣味は鬼ごっこ、よろしくお願いします。」
自己紹介も終わったので気になったことを三人に伝えることに、
「あの、そこにいる人に気付いていますか?」
「あぁ気付いてるぜ。」
「あら、あなたも気づいていたのね。」
「風上に立たれたらいやでもわかる。」
全員の視線が茂みに向くと、ウサ耳を付けた女性が出てきました。
「や、やだなぁ御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「…」
「あっは、取りつくシマもないですね!…あの、喪服のあなた様はど、どこを見ているのですか?」
私はウサ耳女性に近づくと、
「そのウサ耳は本物?」
「え、ええ、本物ですぎゃ!?な、何を!?」
私は我慢できずについウサ耳を握りしめてしまいました。
すると、
「へえ?このウサ耳って本物なのか?」
十六夜君がウサ耳をつかみ、飛鳥さん、耀さんも同じようにつかむ。
そこから時間がたち、
「あ、あのぉ、まだ満足してないのですか?」
「まだまだ、あと5時間くらい。」
「御三人様!この方を何とかしてください!」
私は三人がウサ耳から手を離した後もモフモフを堪能していた。
「それもそうだな。いいかげんこの状況について説明してほしいからな。ほら、離してやれ。」
しぶしぶ、本当にしぶしぶウサ耳から手を離す。
「やっと放していただけました…ごほん!では、改めまして、ようこそ、箱庭の世界へ!」
そこからはウサ耳女性もとい黒ウサギによる箱庭の説明が始まった。
といってもおそらくですがこの説明は箱庭世界における本当に常識中の常識でしょう。
説明を聞いていると、私たちはどうやらこの黒ウサギの所属するコミュニティに所属することになっている気がするのですが…そこは追々考えましょうか。
一通りの説明を終え、黒ウサギが所属するコミュニティに向かうことになったのですが、
「ちょっと、世界の果てを見てくるぜ!」
十六夜さんは黒ウサギに気づかれないよう音を立てず猛スピードでどこかに行ってしまった。
「十六夜さんだけどこかに行くのはずるいと思うので私もどこかに行きます。」
私は十六夜さんとは別の方向に向かって歩き始める。
飛鳥さんと耀さんは特に何も言わずに黒ウサギについていくようです。
歩き始めて20分ほど経ったあたりで立ち止まった私は、
「先ほどから私のことをずっと見ている人がいるようですがどこのどちら様でしょうか。」
そういうと、木々の間から一羽のカラスが出てきました。
出てきたカラスは猛スピードで私に突撃したと思うと、霧状になり、私の体に入った。
「な、なんだったのでしょうか…うん?」
動揺しているのもつかの間、頭の中に様々な情報が流れ込んでくる。
内容は新キラー、新サバイバーの能力、新しいステージの情報、そして、現実の世界に反映される能力の強化でした。
「これは能力のアップデートということでしょうか…」
とりあえず、視線の正体も分かり、能力のアップデートも行われ、私としては嬉しいことです。
気になることもなくなったので巨大な天幕に覆われている都市?に向かうことにします。
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ようやく都市に到着した私は黒ウサギの言っていたギフトゲームに参加し、お菓子にお金、服といった勝ち取った景品を抱えながら徘徊している。
徘徊している最中、綺麗な並木道が目に入り、そこを歩いていると何かのお店の中に入っていく耀さんを見つけました。
「気になります。あのお店、すごく気になります。『レイス』」
建物の物陰に隠れながら能力を使い、『レイス』になる。
手に持っている鐘を叩くと、『レイス』の姿は一瞬にして消えた。
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白夜叉によるギフトゲームに勝利した十六夜、飛鳥、耀は白夜叉からギフトカードと呼ばれるものをもらった。
十六夜のギフトネームが正体不明だったため白夜叉が動揺していたこと以外は特別なことは起きなかったのだが、
「あの、白夜叉様。」
「なんじゃ?」
「ギフトカードをもう一枚もらってもいいでしょうか?」
「なぜじゃ?」
黒ウサギは悲しそうな顔をし、
「実はもう一人、箱庭に訪れた方がいたのですがいなくなってしまい、その方のためのギフトカードをいただけないでしょうか。」
「そういうことであれば……ほれ、ギフトカードじゃ。」
「ありがとうございます!」
黒ウサギは白夜叉からカードを受け取ったその瞬間、
カン コン
鐘のような音が聞こえると黒ウサギの後ろから手が現れ、ギフトーカードを奪った。
「貴様、何者だ。」
白夜叉は警戒し、黒ウサギは後ろを恐る恐る振り返る。
黒ウサギの後ろにいたのは鐘と人間の頭蓋骨が付けられた武器を持っている不気味な大男だった。
急いで白夜叉たちのもとまで移動した黒ウサギは、警戒しながらも男の様子をうかがう。
白夜叉が作り出したこの空間にどうやって侵入したのか。いつからいたのか。どうして誰も気づかなかったのかなどなど、疑問は尽きない。
白夜叉と黒ウサギは警戒しているのだが、なぜか十六夜たち三人は何か話し合っている。
「どうする?」
「言ったほうがいいんじゃないかしら。」
「私も飛鳥に同意。」
話し合いが終わったのか、三人の中から十六夜が出てくる。そして、男に近づくと、
「狩多、いつからいたのか気づかなかったぜ。」
十六夜はにやりと笑い、そう言う。
その言葉を聞いた男の体が黒い靄に包まれる。
「よくわかりましたね。十六夜さん、飛鳥さん、耀さん。」
黒い靄が晴れた場所にいたのは喪服を着た少女、狩多夜月だった
「狩多さん!無事で何よりです!」
黒ウサギは狩多に抱き着きながらどこにいたのか、何をしていたのかなど聞いている。
「黒ウサギ、もしやその者が先ほど言っていた者か?」
「はい!」
「ふむ…」
白夜叉は何かを考えているようだが、一度やめ、狩多に近づき、狩多のギフトカードを奪いとり、ギフトを確認し始める。
そして、
「狩多といったか。もしこの者らに手を出すようなことがあれば何があろうとも貴様を殺すぞ。」
とてつもない殺気を放ちながら狩多にそう言った白夜叉は、ギフトカードを返し、黒ウサギたちを店から出した。
事情が分かっていない黒ウサギたち4人は狩多に視線を向けるが、
「今は何も言えませんよ。私があなたたちを信用したその時にお話します。」
それからは他愛ない話をしながらノーネームのコミュニティに向かう。
コミュニティにたどり着いた十六夜たちが目にしたものは荒廃した場所だった。
動物もいない、植物もない、建物も崩れ落ちている。
「どうやら前途多難なコミュニティに入ることになりましたね…」
狩多はそう言いながらも先に進んだ黒ウサギたちの後を追い、コミュニティの本拠に向かった。