己の胸の穴より流れ出るのは、鮮血と意識。
けぃんの脳裏に浮かぶ、あの日の事。
興味。
昨夜の事が気になって仕方無かった。
寝ている家族よりも、早く目を覚ますと、静寂よりも静かに、そっと起き出す。
誰にも気づかれない様に家を出た。
向かったのは北の森。
何かを期待し、心が踊る。
栄里の庵。
そこは、そう呼ばれている場所。
かつて、栄里という隠遁(いんとん)した僧侶が住んでいた庵があったからだと言われている。
向かうに連れ、木々が薙ぎ倒され事の大きさが見て取れた。
「何か、すげー事になってるな…。」
何故かその惨劇に、期待が高まる。
見付けた。
金属…と言っても知っている物は鉄ぐらい。
故に鉄と呼ぶ。
それで造られた大きなものが、バラバラになり、焼けた痕(あと)を付けていた。
まだ、きな臭い。
「お星様って鉄でできてるんだ…。」
そう確信したけぃん。
それに呼ばれるが如く、目の前に立った。
鉄の箱。
それも表面が焼けただれた鉄の箱。
大人が人抱え程の大きさ。子供が抱えるのは無理そうである。
「中に何か入ってるのかな?」
それは、けぃんには宝箱に見えた。
思案。
「どっか開けるところは無いかな?」
自問自答し、箱の周りを見て回る。
隙間。
何かの拍子にでも出来たのだろう。箱の蓋に隙間が見える。
「ここに棒を入れたら、開くかも!」
突破口を発見した。
てこの原理。
「これなら入りそうだ。」
その隙間に、落ちていた鉄の棒を差し込む。
「よいしょ!」
力一杯こねた。
独特の金属音を上げ、蓋が上がる。
開放。
そして、中を覗き込むけぃん。
「何だこれ?」
それは、どう見ても、
「卵?」
色は、肌色に近い。
我々が知っているもので表現すると、ラグビーボールといったところのサイズ。
そう、皆さんご存じの『アノ卵』。
「これって宝物なのかな?」
両手を入れ持ち上げる。
「そんなには、重くない…。」
そのまま掲(かか)げ、お日様に透かした。
「何か、動いてる?」
けぃんにそう見えた。
「よし、みんなに見せてやろう。」
決め、抱きかかえると、村へと駆け出した。
走る。
途中。
気付く。
視界の下。
何か?
下げた目線の先。
「あれ? 割れてる?」
卵の上部に、十文字の切れ目が走っていた。
自然と足が止まった。
「!?」
驚いた。
卵の切れ目がゆっくりと開いた。
「中に何かある?」
覗き込む。
暗転。
視界が闇になり、意識も闇に落ちた。
目覚める。
「うっ、うぅ…。」
頭痛。それも酷い。
「ここは?」
頭を振りながら、体を起こす。いつの間にか倒れていた。
『キョロキョロ』そう呼ばれる行為。
辺りを見回す。
「森…。」
そして、見付けたものは…。
「卵。」
繋がる記憶。
「あーっ! 思い出した。」
「確か、卵を運んでたら中から何か出て…。」
更に『キョロキョロ』。加え、踏み出す右足。
違和感。
『ぐにゅ』音がした。
右足が何かを踏んだ。
無意識で、そちらを見た。
慌て、右足を上げた。
「何、これ?」
観察し、
「蟹かな? 死んでるみたいだけど…。」
人間の大人の頭程もある蟹に似たもの。だが、決定的に違うのは長い蠍の尻尾があると言う事。
これも、皆さんご存じの『アレ』です。
「えっ!?」
足元の異変に気付き驚く。
慌て、振り向く。
「そ、そんな…。」
愕然。
沈黙。
「怒られる!」
思わず声に出た。
異変の正体。
それは、長く伸びた影。
振り向き見たお日様が、もう夕刻だと告げていた。
「早く、帰ろう!」
けぃんの頭から、アノ卵の事が失念した。
村に帰ると、本人の予想の通りに、大目玉を食らった。
そして、翌日村が襲われた。
「………!」
「け……!」
「けぃ…!」
「けぃん!」
抱きかかえる拝一刀の呼ぶ声に、現実へと帰ってくる。
「お侍さま…。」
最後の言葉となった。
そして、世界から色が失われた。
事切れるけぃん。