幻想郷を、雷狼竜と共に   作:篠崎零花

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第13話 俺と雷狼竜は大図書館で

……幻想郷は春の終わりかけだったのが、やけに雨が降ったりするようになってきた。雷雨もときおりある。

 

 

ふむ、ついに梅雨だな。だが、おかげさまで少し肌寒い時はジンきゅんと共に寝たりできていい。

しかも水の滴る良い雷狼竜になるから、なおさらいい。帯電状態のジンきゅんも映える時がある。……いや、そんなにその状態をあまり見れてないが。

 

「紅魔館の大図書館へ一緒に遊びに行かないかと誘いに来たら…あんた、ジンオウガ相手になにしてるのよ。またモフモフと言いながらなでたりしてないわよね?」

 

「心外だな。ちゃんと見られても平気なように心の中でモフモフと言いつつジンきゅんをなでてるつもりだぞ」

 

ジンきゅんが小さな声で『声に出てる時があるんだよなぁ…ご主人』とか言ったが、気のせいということにしておこう。思わず出てないとは否定しきれんし。

蓄電殻とか帯電毛とか5分から10分ほど触って癒されてるわけだし、毛並みも悪くするわけじゃないし。むしろよくするわけだし。雷光虫にはなにもしてないからジンきゅんにとって損はないはずだが……

 

 

「それはともかく、紅魔館へ行く?私の用事は大図書館にあるし、あんたら…主に結輝、あんたにとってメリットの方が大きいと思うけれど。ジンオウガが来てもいいようにと本棚に耐雷をつけてもらったし」

 

そのあとに霊夢が「私も多少協力したからジンオウガがそこで帯電状態になっても平気なハズだけども……」とか小声で言った。聞こえてるぞ、俺に。ジンきゅんもなんか顔をそらしてるぞ?聞こえてないフリされてるんじゃないのか?

 

 

(まあ、この幻想郷でご主人以外に僕のことを知っているのはそこにいる博麗霊夢だけだもんね。仕方ないとは思うけど、さすがに本棚への耐性が多すぎない?耐弾幕とかまであるのに?やれやれ、相当なことがない限りはそこでじゃれたりなんてしないのに。フランだってじゃれる場所を考えてくれるというのにさ)

 

 

「それで、結輝達。紅魔館の大図書館へ行く?行かない?どっちにするかはあんた達に任せるわ」

 

『そうだねぇ、僕はいいかも。最近あの子と遊んでないような気がするから』

 

(あー…たぶんこのジンオウガが言っている遊び相手ってフランドールのことだよね。性別騒動が紅魔館のホールで起きた後に遊んでいたとかどうとかっていつだったか忘れたけど霊華から聞いたし。―――あの霊華がいつ紅魔館へ行ったかはともかくとして、ね)

 

 

お、頷いた。

「分かったわ。んじゃ、もう少しで行く予定だから、来るならちゃんと準備しておいてちょうだい。ジンオウガとやらをモフってる場合じゃないんだからね?」

 

もう寝起きで十分したからもうモフるという名のなでなではしないんだけどな。だからしばらくはいいんだけど。

とろこで本になんか用事でもあるのかね?別になんでもいいか。

都合のいい誘いだし。里や他の場所でよさそうな場所はジンきゅんと探せばいいし。ある意味ジンきゅんとのデートにもなって一石二鳥だな!

よし、そうとなれば準備するか。

 

『やれやれ、ご主人はそういう時はほんと行動的なんだから……』

 

「べ、別にいいだろ。どんな理由であれ、俺的には得なんだ。好きな子がこの幻想郷に1人と1頭いるほど幸せなことはないんだしな」

 

(それって関係ないんじゃないのかい?……いや、雷狼竜(ぼくたち)などが大好きなご主人だからそう感じるのはしょうがないんだろうけどさ。困ったご主人だ)

 

 

どうであれ、紅魔館へ行くきっかけができたのはいいことだ。

ふーむ、なにを着て行こうか。それとも物か情報でも持っていくか…。悩むな。

 

 

ん?足音がするが…感じからして霊夢がまた来そうだな。でもさっき、俺得な話をしたばっかりだろう?

 

「あー、結輝、ジンオウガ。あんた達ってもう1人追加で来る人がいてもいいかしら?」

 

「紅魔館へそのまま行っても怖がられないやつ、いたか?」

 

『博麗の巫女である霊夢、外来人のご主人、妖怪でもなんでもない珍しいモンスターの僕…………いないねぇ』

 

あ、霊夢がなんか苦笑いした。

なんかおかしなことでも言ったっけか?

 

「ジンオウガ、1人抜けてるわよ。高麗野あうんっていたでしょ?その子よ」

 

「1人?って、その子かよ!

 

(いやまぁ、うっかり教えるのを忘れてたんだけどね。高麗野あうんと結輝はほとんど会わないからなぁ。そもそも会う機会の方が少ないってのが正しいかな)

 

『あー、高麗野あうんのことかい?ふむ、僕“も”忘れてたね。それで、連れてく人って?』

 

おお、本題に戻すの上手いな。

 

「厳密的には人じゃないんだけどもね。そのあうんを連れてく予定よ」

 

そういや高麗野あうんって…もしかして、帰ってきたのを教え忘れてたのか?ダメだろ、それ。

まぁ、かくいう俺もすっかり忘れてたが。なにせほぼほぼパチュリーと仲良くなれることばかり考えてたし。

 

 

『あれ?いつの間に帰ってきたのさ。前まで出かけてたらしいのに』

 

「先週に帰ってきてたのを教え忘れてたのよ。ほら、ついうっかりってやつ」

 

(うっかりで通じるか不安だけどね…あはは……。ほとんど霊華と一緒にそういう話をしているもんだからすっかり、ね)

 

なんで霊夢(こいつ)、遠くを見るような目をしてるんだ?まあ、いいや。

 

「そうか。別にいいよな?紅魔館へ行くのかわんないだし」

 

『いいんじゃないかい。僕もご主人と同じく誰が増えようが増えないが関係ないし』

 

「あー、はいはい。ならいいわね。今から行くから準備しててちょうだい」と呆れたような口調で言うと霊夢は出て行った。

呆れる要素あったっけか?首をかしげるしかないな。

 

 

別にいいか。準備とかしとくべ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準備とかもろもろして、境内にジンきゅんと出ると霊夢とこまいぬ……というか犬?みたいなあうんがいた。

 

「あっ、霊夢さん。来ましたよ、結輝さん達」

 

性格は特にそれっぽいよな。尻尾を幻視してしまいそうだが……いや、あるらしいんだったな。忘れてた。

 

「ええ、そのようね。んじゃ、あうんには悪いけど、一緒に行くわよ。こま犬として見ていたという時期のこと、たくさん聞かせてもらうんだからね」

 

「…………そう言いながらほとんど自分の調べ物ばかり読んでるじゃないですかー。まあ、以前の霊夢さんでしたら今みたいに私のことを扱いませんし、神仏をむげにしてないだけいいのですが。本人には悪いですけど、こうなってもらってありがたいばかりです」

 

(ま、まあね。一応あうんの話は聞いてたりするけど…だからってあうん以外が半目で呆れたように私のことを見なくてもいいんじゃないかな?小鈴ちゃんちだけじゃ調べきれないのもあるんだから、仕方ないんだけどね。……それとも、あうんが後半言ったこと?うぅん、呆れられるとこないでしょ)

 

『それはそれでいいのかな、と思わずツッコミたくなるけど。そだね、行こうか。ご主人もはやく動かない大図書館の魔法使いへ会いに行きたいだろうし』

 

ジンきゅんは話が分かる奴だな。

……それにしてもやけに常識人な気がするんだが。ツッコミ役としてはいいかもしれん。

 

「俺的には前の霊夢でもいいが、パチュリーとの仲介してくれるだけ良いと思ってる。んで、行けるなら行こうぜ」

 

なにせ仲良くなりやすいよう、やってくれるからな。怪しまれないようにもしてくれてるっぽいし。大助かりだ。

そう考えるとなんか俺と霊夢の関係って、友人や親友ってかもう幼なじみのような感じに思えてきた。

 

「それもそうね。行きましょうか」

「はーい」

という霊夢とあうんのやりとりを聞いて、ジンきゅんの方を向く。……おお、目があったぞ。

とりあえず頷いてみると向こうも頷いた。分かってくれたのか。ならそのままついていくとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館へ行く道中、高麗野あうんとやらが“霊夢さんには悪いんですけど、中身が今のようになってもらって嬉しいんですよね”とか話していた。……そりゃ霊夢も複雑そうな顔をするわけだ。なんとも言いにくいだろうしな。

だからといって部外者の俺とかがなんか思うわけじゃないけど。

 

っと、紅魔館とかが見えてきたし、もうつくか。ジンきゅんに乗ってると早く感じるんだな。そんなに乗ってない気さえするんだが……降りない訳には行かないよな。パチュリーんとこ行くわけだし。

 

 

「美鈴、大図書館へ行かせてもらえる?本とか読みに来ただけだから」

 

「霊夢さんは本当、来た理由を堂々と言いますね…」

 

「間違ってはないもの。小鈴ちゃんとこだけじゃ無いものもあるし、仕方ないわ」

 

(“今の”紅白…いや、霊夢はよく紅魔館へ来るが、相変わらず図書館…か。まあ、妖怪退治が激しくないだけマシか。以前のほぼ無差別敵だったからな…)

 

そーいや紅美鈴ってあんまり居眠りしないのな。と、いうか今の季節が春からもうすぐ夏だというのにまだ暑くないのか?

いや、半袖だからまだ分からんが。

パチュリーとかも外に出れば貴重な半袖をおがめるのか…!?

 

(ご主人はまたパチュリーのことでも考えてるんかね。やれやれ、どうせしょうもないことなんだろうけど)

 

「いつものね。んで?その1人と1頭はなに?悪さしないことは分かってるんだけど、一応ね」

 

『悪さというか、なんというか……レミリアがなにもしなければ、次はなんともないんじゃないかな?』

 

今のジンきゅん、呆れてる雰囲気がすっごい出てる感じがするな。なんとなくそう感じるだけだが、まあジンきゅんは可愛いから仕方ないな。

 

「あー…お嬢様が?妹様と違ってお嬢様はどちらかと言えば好奇心旺盛だから私にはなんとも。それに担当は門番と庭師だからね」

 

「へぇ、なるほど。んで、俺達は大図書館にいるパチュリーと暇つぶしに。霊夢とあうんがなんか調べものするらしいからその間な」

 

「ま、あんた達に悪影響はないんだし、通らせてもらうわよ」

 

返事は聞かないけどな、と言わんばかりに入ってくのな。でもたぶん、このネタが通じるの知ってそうな今の霊夢ぐらいだろ。

……そういや多麻の奴、なにかと共通話題があったのはいいものの、やけに幻想郷のことを信じてたっけか。

画面の向こうにあるから行けなくて残念に思っていた頃とはいえ、なんだったんだろうな。別に構わんけど。

話しやすかったし。

 

 

『…ご主人、背中にいるのはいいけど頬ずりはそろそろやめようか。中にはいるんだし、ね?』

 

「せっかく久しぶりの背中なんだ。紅美鈴まで見られてるんならとことん平気だろ?」

 

(博麗神社からたまにしてきてるのにまだするのかい?ほんと、困ったご主人だ)

 

ん〜、やっぱりジンきゅんの背中は格別だな。雷光虫がいるとか関係ないしな。ジンきゅんの背中でいて、やることがやれるのに静電気など気にしてはいられんっ!俺は頬ずりをするぞ、霊夢ー!

 

 

「とりあえず、そろそろやってることをやめるかジンオウガから降りたらどうかしら?もう大図書館前よ」

 

だからってそこまで呆れんでもいいんじゃないか?

ま、そんなんでやめる俺でもないが。

 

「あー、そだなー…んじゃ、降りるのはあとで」

 

『パチュリーの前でも頬ずりするのかい?ご主人』

 

「ええと…「あうん、彼女はジンオウガよ」あ、そうでした。よくジンオウガに乗っているこの人はなんともないですね」

 

「きっと牙竜種竜盤目四脚亜目雷狼竜上科ジンオウガ科みたいな感じでなんかあるのよ」

 

「おー、待て待て。ついていい嘘とダメな嘘ぐらいは分かるだろ、紅白ー」

といいつつ、ジンきゅんから降りて霊夢の頬をもてあそびに近寄る。

……上手いこと阻止しおるぞ、こいつ。というか、種族名全部言いやがった。こいつはもう詳しいだけじゃない気がする。

今度語り合ってみるか。もしかしたら色々と話し合えるかもしれない。それにあわよくばこの霊夢からジンきゅんを幻想郷全体に伝えてもらえるかもしれん。

今度時間とれっかな。

 

 

『やれやれ…。高麗野あうんだったよね?今度しっかり僕のことを教えてあげるね』

 

「あ、はい。色々と聞くかもしれないですけど、宜しくお願いします」

 

 

「そんなことよりその手を止めない?いい加減大図書館に入りたいのだけど」と霊夢が言い切る前か言い切ったあとに扉の開く音が左からした。

おや?大図書館の様子が…

 

「誰が外でふざけてるのかと思ったら……霊夢と神風結輝じゃない。霊夢はとりあえず入ってくりゃいいじゃない。前ほど血気盛んじゃないんだから。それでおまけは、雷狼竜と高麗野あうん…と。はいはい、いつものことだけど下手に暴れたり、本を盗ってかないでちょうだいね」

 

呆れた顔をするパチュリーもまたいい。あとめっちゃ手慣れてきたな、対応が。

とりあえず俺は先に入らせてもらうぜっと。

 

 

(さて、私もそのまま大図書館に入るかな)

 

「あっ、霊夢さん。無言で進むのは酷いですよー」

 

『やれやれ、この幻想郷は賑やかなもんだね』

 

「そうね、博麗霊夢がああなってからは大図書館も賑やかすぎて困ったものだわ」

 

(まんざらでもなさそうな顔にも見えなくはないけど…言わなくていいか。僕が気にすることじゃないし)

 

 

 

 

 

なんかあとから俺以外に霊夢とあうんが、ジンきゅんとパチュリーが入ってきたな。あとジンきゅんそこに混じらせろ。

 

「んじゃ、また呼ぶまで自由にしててもらえるかしら」

 

「へーい」

『そっちこそ』

 

そのまま高麗野あうんとやらを呼ぶと奥に消えたな。その入れ替わりで小悪魔が来るとかすげぇな。しかもなんか挨拶だけしてったし。

そのあと小悪魔がため息ついたように見えたけど、別に聞くことでもなさそうだな。

 

 

 

俺はパチュリーとちょっと話してみっかなー。

 

「…それで、神風結輝。今日は何か用?ジンオウガ…はあとで協力お願いね」

 

あー、なんて話すか。そのまんまじゃつまらんだろうし……うーん

 

『ん?あぁ、今日はいいよ。雷光虫にもそこそこ充電できてるし。なんだったら帯電状態に移行しようか?』

 

「今はやめてもらえるかしら。まだ読みかけの魔導書とかに障壁をはってないから…。あと対応しきれないわ」

 

「あ、俺も混じる。んで話しよう」

 

 

(それ、真顔でいうことかい?ご主人……おおよそ僕達雷狼竜の話であること以外想像つかないから、ね。あ、パチュリーもそろそろ慣れてきたのか半目になった。仕方ないね、雷狼竜のことなら亜種でも派生でもなんでもござれなご主人だし)

 

パチュリーだけでなく、小悪魔も呆れるのはなんでだ?不思議なもんだ。いや、ジンきゅんもっぽそうだな。

雰囲気がそんな感じだし。まあ、あとで聞けばいいか。

 

 

 

 

 

んで、そのあと普通に話に来たと伝えたら「最初からそう言いなさい。ま、ジンオウガという子から色々調べられるからいいんだけど。それに貴方からも情報を聞けるからいいわ」なんていわれた。

おぉ、ほんと雷狼竜とかのことに詳しくてよかった。獄狼竜とか極み吼えるジンオウガも込みで、な。

話してるうちに仲良くなれるべ。

 

なにせ距離が短く感じてきたからな。

さて、今回はなにを話そうかなー、と考えつつジンきゅん、パチュリーと共に大図書館のもう少し奥へ進んだ。

その日は有意義な時間を過ごせたと俺は思う。

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