ジンきゅんを連れて仕方なく魔法の森とやらに来てみたが……ふむ、湿気が凄いな。
ジンきゅんもなんかあるのか?どこか嫌そうに見えなくもない。と、いうより狼サイズだから尻尾とかを見ればいいのか?
いや、そこで感情を読み取るとか厳しいんだろうけど。
んで、紅魔館が訳ありで遊びに行けないからというだけの理由でこっちに来た。俺とジンきゅんなら外に行っても平気だろ?とゴリ押しもしたんだが……。
ふむ、ここまで来たのはいいが、アリス・マーガトロイドの家の場所なんて俺、知らないんだよな。そもそもいること以上のことなんて知らんし、調べてものってなかったしな。当たり前だろうけど。
『ご主人、急に立ち止まってどうしたの?少しビックリしたんだけど。あ、そうそう。関係ないといいんだけどさ、やっぱり僕の知るあの樹海と違うんだね。なんかこう、違う感じがするね』
(感じ、というか別物だろうけど。たぶん、僕じゃなくてババコンガとかならなんとなくわか……いや、きついな、ああいう好奇心旺盛には。なにをしでかすか分からないし)
「変な感じ、か。うーん、俺にはよく分からんけど、適当に歩けば家なんて見つかるだろ」
(自信満々に言われてもなあ。要するに行き当たりばったりってことでしょ?道に迷うことになるのがオチだね)
なんかジンきゅんから来る眼差しが呆れにも近い気がするけど…俺の気のせいだろうな、うん。
なんとかなるだろ。森って言ったって
なんて気楽に考えていたら、道に迷いつつある俺。結構歩いたはずなんだけどな…。
木に印でも刻めればいいけど、道具はないし、ジンきゅんはたぶんやめておいた方がよさそうだな。キノコがたくさんあって、面倒なことになっても困る。
確か
『ご主人、ところでどこへ行こうとしたの?なんかいい加減、似たようなところを延々と巡ってるように感じてきたんだけど』
「ん?あぁー…話してなかったか。前にアリス・マーガトロイドって名前の魔法使いがいるって調べたことがあってな。その子とも知り合いになれっかなー…と思って向かってたんだけど、そもそも家の位置すら知らなくてな。んだから今、探してる」
『…つまり、場所が分からないから調べるついでに歩き回ってる…と。行き当たりばったりってことだよね?それ』
(いやいや、顔をそらすってことは肯定してるってことだよ?……仕方ない。最小サイズになってることを利用して、狼のフリでもしてみるかな?あと雷光虫にも協力してもらって逆にあちらに気づいてもらうとしよう。知り合いになれるかどうかはご主人次第だし、せめて顔見知りにはなれるでしょ。―――魔法使い云々はよく分からないしね)
なにを考えてるんだ?ジンきゅんは。
まあ、なんかいい物で木に目印でもつければいけっかね。もっとも今の手持ちじゃ無理だろうけどな。
『とりあえずご主人、無言で別のことしようとするのはいいけど、ちょーっと良い案があるんだ』
「道に迷って困った人のフリでもするのか?」
『……あぁ、人間ならそう考えるか……って違うよ!?むしろ道に迷って困ってるって言うのは現在進行形だからね!?仮拠点の博麗神社にすら帰れないかもなんだよ!?いや、拠点なんて僕がいれば工夫次第で作れそうでもあるけどさあ!そういう問題じゃなくって!』
さすがに作らないぞ、拠点なんて。
ツリーハウスになら興味があるし、住んでみたいと思うが、まずこの森じゃ無理だな。湿気とかが酷すぎて住めたもんじゃない。
確かにそういう問題じゃ、ないけどな。
さすがに首を横に振る。俺でもふざけないさ、こんな時は。
「さすがに作らんよ。んで、なにかあるのか?」
『ご主人の行き当たりばったりよりはマシだと思うんだけどな。別にいいけど。そうだね、雷光虫と共に探す…というのはどうかなってね。もちろん離れすぎないようにはさせるよ。妖怪の中にガーグァみたいな奴がいないとは限らないしね』
「幻想郷にゃ雷光虫なんてツッコミようい……げふんげふん、お前が連れてる虫がいるわけじゃないもんな。んでも、雷光虫と話すなんて能力ないだろ?肉食のジンオウガとガーグァが天敵の雷光虫とで利害一致しただけってはずだったろうし」
ツッコミ要員かはともかくして、だ。雷光虫のことをあえて詳しく言うなら…確か。
ガーグァはくちばしが絶縁体のそれだったから、いくら雷を放つ雷光虫でも食べられる。が、そんなとこに天敵であるガーグァなどを食べるジンオウガがいたって感じだったか。
んで、ジンオウガはジンオウガで攻撃に使えるほどの電力は作れない。
それとは関係ないが、雷狼竜に限らず獄狼竜にもいるらしいが、あっちはなんでいるんだろうな?
なんか今とは関係ないと分かってるが、興味が出てきたな。
『ん、話せるよ?だからやれると思う。―――もっとも、幻想入りとやらをしてからやらかしたことのおかげでさっきから妖怪から避けられてるんだよね。気のせいかなぁ』
「そうか。…うん、そのおかげというか、せいというか。安全ならいいんじゃないか?」
(それを遠くを見るような目で言われても説得力ないんだけどな。しかもなんか真顔だし)
「んじゃまぁ、俺は特にないからそれでもいいや」
『そ、そうなんだ。一応奥の手もあるけど、先にそっちやるね。ご主人はハンターと違って耳が大変なことになるだろうし』
奥の手……耳……。まさか、
いや、ありえないか。むしろ来たら良いなってレベルだろうな。
(咆哮してもその人物が来るとは限らないし、下手なのが来ても困るからね。あと咆哮ってそういう用途じゃないし。分かっててやろうとしたとはいえ、複雑だね。とりあえず雷光虫と話し合ってみるかな?)
しばらくジンきゅんの様子を見てたんだが、なんかボソボソ呟いたかと思うと雷光虫がジンきゅんの周りにふよふよ浮き出した。
あれで会話できてるんなら凄いもんだな。むしろそれをゲームの方でされたらもっと倒しづらくなってただろうな。
「そういや今更なんだが、ジンきゅん。お前…ボクっ娘なのな」
『うん!すごく今更なんじゃいかな!?……ったく、ご主人も気にするの遅いよ。出会ってからずっと“僕”って言ってたのに!?』
自然すぎて気づかなかったんだよ。仕方ないだろ…。
と、いうか一々一人称まで俺は気にしないからなぁ。
そもそもボクっ娘…ボクっ娘か…。モンスターではあるけど、女の子だしな。
―――それもありだな、うん。
(うん、こりゃあそこまで気にされてないな。ゲームでも…だったし。仕方のない人だなぁ)
『あ、そうだ。ご主人も探してね?僕だけじゃあらが出るだろうし』
「はいはい、分かったよ」
雷光虫をまとうジンきゅんとキョロキョロと周りを見回す俺。
これで一緒に歩いてるとか、はたから見ればどう見えるんだろうな。
仕方ないか。俺がなんとか行けるって言ってここまで来たのもあるし。個人的にはジンきゅんと一緒に歩けるとかなので、得である。あるが、さすがにまずいな。
ここにパチュリーやアリスとかがいればいいけど、本当…女性ばっかだな。里とやら以外に男性をほとんど見かけないとかまるで男女逆転みたいに感じるわ。
違うのは分かってるとは言えな。そうも感じるよ。
ここまで女性ばっかりじゃな。
(さっきからご主人、表情がコロコロ変わるんだけど、どうかしたのかな。楽しそうにしたり、悩んだり……。なんか考えてたりする?)
「そこの1人と1匹。なにをしているのかしら。ここは魔法の森よ?」
俺達のちょうど左斜め後ろからそんなことを言われた。
しかも、言い方的に俺達しか該当するのがいないというか…そもそも俺達しかいないが。
一応振り返っておくとしよう。って待て待て。
そこにいる金髪でカチューシャっぽいのに見えるのを頭につけてる少女って今探してた相手じゃないか。確かアリス・マーガトロイド…だよな?
とりあえずあえて探索と答えるか。大体間違えてないはずだしな。
相手に通じればオーケーだろうしな。
「あぁ、そうみたいだな。ちょっと探索ってとこだ」
『でも、探索してたら道に迷ってね。どうしたものかなー…ってね』
そこで何故ため息をつく。
行き当たりばったりで来ただけだと言うのに。
もちろん、目的はスマフォなどで調べたりした幻想郷の住民のうち、1人に会いに来ただけなんだけどな。
「なるほど。そういうこと…。それで、なにを探していたのよ」
「第一森の住民、ってとこだな」
(…第一村人って言いたかったのかな。でも、ご主人もそのネタ知ってるのかな。表情的になんか適当そうし)
「そもそもこの森は普通の人は住まないわよ。いても私や普通の人間とかの魔法使いだけ。だからそのネタとやらは使えないわよ。むしろ使ったら2人しかいない……ええと、過疎村?になっちゃうじゃない」
「村ですらないが、それもそうか」
『むしろそうじゃなくて。あぁ、僕はジンオウガって呼ばれてたんだけど、君は?』
なにを忘れてるかと思ったら、相手の名前を聞いてなかったのか。
この少女も“あぁー”なんて顔してるし。お前も忘れてたのかい。
「なるほど、狼みたいな大きさになってる貴方はそうなのね。それで、そっちの外来人は?」
「俺は神風
名前を聞いたわりにはそっけないんだな。
と、いうか出てきたのか。ジンきゅんと話してて気づかんかったな。
いや、それっぽい足音はしてたが。
「まあ、いいわ。私はアリス。アリス・マーガトロイドよ。今日は疲れたでしょうし、家にいらっしゃい」
「ん、じゃあそうさせてもらうな」
『ありがと?』
その後はときおり「こっちよ」と案内するアリスのあとをついて歩いた。
まあ、結果オーライってね。そう考えていたら、何故かジンきゅんに呆れられた顔を向けられた。
俺、なんも話してないんだけどな。行き当たりばったりを呆れられたのか?
別にいいか。