ガンダムビルドダイバーズ ブルーブレイヴ   作:亀川ダイブ

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 どうもこんばんは。亀川ダイブです。
 第三話もやっとバトルパートに入りました。
 どうぞご覧ください!


Episode.03-B『タタカイ ノ ハジマリ ②』

 仮想インド洋北西・アラビア海。その洋上と上空とには、造形も意匠も、そして出典作品も様々なモビルスーツ運用母艦の類がずらりと艦首を並べていた。

 

「……エレメント戦の初戦としては、運は悪くないほうかしら」

 

 薄暗い照明に、低い電子音。まるで潜水艦のような艦橋に、シオミの声だけが響く。シオミがすっと人差し指で位置を直した眼鏡のレンズには、ホログラム表示されたマップと、十二の輝点が映り込んでいた。

 アラビア海を横断し砂漠の小国・アザディスタンへと侵入しようとする、各エレメントの母艦たち。十二隻中の五隻は、EP(エレメントポイント)消費のない初期装備艦。今回のバトル――十二のエレメントによる対抗戦〝トゥウェルヴ・トライブス〟においては、母艦は戦場には入れないのが通常交戦規定(ルール)だ。だから母艦の戦闘力や運用能力は敵の戦力査定に加味しなくてよいが、ミネバ・バトルロイヤルを終えた時点で母艦を運用できていないということは、部室の使用権を勝ち取れなかった、副賞の追加EPが手に入らなかったエレメントだ、ということでもある。したがって、あの五チームは強敵たりえない。

 残りの七隻中の六隻は、見覚えのある二・三年生エレメントの母艦ばかり。有望な一年生を勧誘して戦力を強化しているかもしれないが、有望な新入部員という意味では、こちらも全く負けていない。

 

『しおみんセンパーイ! バトルはまだですかー! イマ、もう待ちくたびれちゃいましたよー! じたばたじたばたー!』

『い、イマちゃん、落ち着いて。もうすぐだよ』

『…………』

 

 コウタと二人きりだった時にはなかった、格納庫からの騒々しい通信。シオミは意図的にそれらを無視して、様々な情報を映し出す空中パネルの数々を、次々と操作していく。

 

「ただ、問題は……やっぱり、コウメイ先輩のエレメントね」

 

 マップに映し出された、最後の一隻。現実の空母に限りなく近いデザインの大型艦。その甲板上に整然と立ち並ぶ、全く同じ造形の六機の重装型ジムタイプ。

 〝第七位(ミネバ・オブ・セヴン)〟コウメイ・マサヒロ。〝精密兵団(レギオン)〟フォーミュラ・ジム。エレメント〝フォウ・オペレーション〟――この戦場において、明らかな格上。オペレーターによる情報支援のないパイロット六人編成のエレメントにも関わらず、戦場の掌握力は、部内随一。

 

(集団戦闘においては部内でも最強クラスの選手兼指揮官、〝軍師〟コウメイ先輩……エレメントを組んだばかりの私たちで、どこまで食い下がれるか……)

『大丈夫だよ、シキナミさん』

 

 まるでシオミの心を読んだようなタイミングで、コウタが声をかけた。通信画面ごしに微笑みかけ、力強く頷いてみせる。

 

『ヒムロ君も、ガトウさんも、イマちゃんも、君の戦術予報を信じてくれている。もちろん、僕も』

「先輩……」

『だから、行こう。シキナミさん。僕たちの初戦だ』

「……はい、先輩!」

 

 シオミは不要な空中パネルを一斉消去し、制帽を被って艦長席から立ちあがった。ザフトの白制服が勇ましく翻り、シオミに若き女艦長の風格を与えた。同時、主機の鼓動がごぅんと艦全体を震わせた。艦橋の様々なモニター類に、次々と灯が入っていく。

 

「オペレーターよりエレメント各機へ。これより当艦は洋上へ浮上します」

『おおっ! まってましたぁーっ! バ・ト・ル♪ バ・ト・ル♪』

「浮上完了後、カタパルトより各機を射出します。事前に説明した通り、カタパルトからの射出後すぐに転送ゲートに強制突入、エレメントごとに固まって、戦場のランダムな地点に転送されます。転送完了後、即時周囲の索敵を。作戦に最適な地形を割り出します――ガトウさん。あなたは本作戦の要です。慎重かつ迅速な行動を期待します」

『はは、はいっ。頑張りましゅ!』

 

 勢い良く敬礼などして見せるアンナだが、自分が噛んだことに一秒遅れで気づいて、敬礼のまま顔を真っ赤にして固まってしまう。イマが目ざとくも悪戯っ子の表情になって何か言いかけるが、それを遮るようにシオミは言葉を続けた。

 

「索敵については、高性能センサーを持つターミガンに期待しています」

『にひひっ♪ イマにお任せあれですよ、しおみん先輩!』

 

 期待しているという一言に、イマは鼻息も荒く、平らな胸を反り返らせる。

 

「ヒムロさん、コウタ先輩。オフェンスの二人は隠密行動を最優先に。本作戦においては、攻めのタイミングが非常に重要ですから」

『……了解』

『了解だよ、シキナミさん』

 

 それぞれへの声かけが終わったころ、ちょうど艦橋正面にキラキラと陽光を反射する海面が見えてきた。艦の浮上まで、もうあと数秒――シオミはくいっと眼鏡の位置を直し、堂々とした立ち姿で、右手を振り上げた!

 

「――ミネルバ改級〝ブルーバード〟! 浮上!」

 

 飛沫をあげて、海面を突き破る。蹴立てた白波をさらに掻き分けて、海の紺碧よりもさらに濃い、蒼い艦体が躍り出る。

 コズミック・イラの世界観において最新鋭のMS母艦・ミネルバをベースに、GBNで必要となる様々な機能を詰め込んだ艦、ミネルバ改級〝ブルーバード〟。その名の通りの深い深い蒼に塗られた両翼を開き、ブルーバードは洋上から空中へと舞い上がる。吹き上げられたアラビア海の水飛沫が、蒼い翼に切り裂かれ、弾け飛ぶ。

 

「全カタパルト解放――各機、出撃してください!」

 

 艦の両舷に設置されたカタパルトゲートが解放され、ガンプラを載せたフットロックがせり出してくる。

 イマははしゃぎながら、アンナは緊張の面持ちで、ライは睨むような無表情で。そしてコウタは通信画面の中のシオミに、笑顔で頷きながら――それぞれの出撃宣告を、高らかに歌い上げた。

 

『ヒムロ・イマ! ガンダム・ターミガン! いっきまぁーすっ♪』

『ガトウ・アンナ。ガトキャノン・オーク。う、撃ちまくりますっ』

『ヒムロ・ライ。ガンダム・クァッドウィング……敵を、討つ!』

『サツキ・コウタ、エイハブストライク! エレメント〝ブルーブレイヴ〟、出撃します!』

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

 戦場に降りた直後から、どうにもレーダーの調子が悪かった。今回の戦場はアザディスタン、ガンダムOOの世界観のフィールドだから、ミノフスキー粒子もニュートロンジャマーもないはず。荒廃した砂漠に巻き起こる、錆び付いた金属片まじりの砂嵐が原因だろうか……などと考えている間に、この弾幕である。

 

「隊長! こりゃあ正面突破は無理だ!」

「あ、あいつら、どんだけ重火器積んでるんですかぁ!」

 

 ドガガガガガガ! バララ! ドガララララララララララララララララララララララ!!

 前方約3000、モビルスーツなら一手で詰めることのできる距離にある、背の高い廃墟群。おそらくはアザディスタンの中では大規模な都市であっただろう荒れ果てたビルの一群から、その凄まじい弾幕は浴びせかけられていた。

 

「ちっ。開幕から面倒な……!」

 

 乾ききった茶色い巨石群に身を隠し、弾幕から逃れているのは、三機のMS。白を基調とした連邦軍カラーのバーザムが、二機。そして、ティターンズカラーに塗装されたガンダムMk-Ⅱ+Gディフェンサー、俗に言うスーパーガンダムである。スーパーガンダムはロングライフルを右手に抱えているが、少しでも遮蔽から身を乗り出せばすぐにでも蜂の巣にされそうなこの状況では、構えることも難しい。

 

「正面の廃墟内、少なくとも、ビームガトが二門、実弾ガトか機関砲が四門! バルカンとグレネードランチャーもだ! 何機いるんだよあの廃墟に! ……うおっ!?」

 

 慎重に岩陰の向こうを窺っていた連邦バーザムの一機が、側面からの攻撃に晒されていた。振り返ってトンファー型ビームライフルを構え、降り注いでくるミサイル群を迎撃、撃ち落とす。

 

「隊長、右からも攻撃! あそこの油田跡地からだ!」

 

 その攻撃を皮切りに、巨石群東側の焼け落ちた油田施設からもミサイルや機銃の弾幕が襲い掛かってきた。正面からの弾幕に比べればかなり薄くはあるもの、無防備に受け続けていられるものでもない。二機の連邦バーザムと黒いスーパーガンダムは巨石の間を転がるように移動するが、巨石は次々と撃ち壊され、身を隠せるサイズのものは残り少なくなってきた。

 せめて敵の数と配置だけでも確認したいが、レーダーはずっと原因不明の不調のままだ。弾幕からの推測しか、情報がない。

 

「このままじゃあジリ貧だ! どうすんだよ隊長!」

「隊長ぉ!」

「い、今考えてる! ……そうだ!」

 

 隊長は呼び出した空中パネルを叩き、マップの油田跡地後方をマーキング、コマンドを実行した。エレメント共有のEPから100EPが消費され、油田跡地後方に転送ゲートが開かれた。

 

『オレガ、ガンダムダ!』

 

 どこか間の抜けたようなハロの電子音声とともに、転送ゲートからガンダムエクシアが飛び出してくる。出現と同時、エクシアの頭の上にポップアップする〝NPD〟の表示――峰刃学園エレメント・ウォー特別ルールの一つ、〝エース級NPD召喚〟。最大六人編成のエレメント戦において、少数編成エレメントの数的不利を緩和するための方策。二人組エレメントなら一試合に二回、三人組なら一回、EPを消費して、ネームドパイロットの再現AIが操縦するエース級NPDガンプラを召喚できるのだ。

 召喚されたNPDエクシアは、OO劇中の刹那・F・セイエイそのものといった動きでGNソードを展開しつつ、油田跡地へと突っ込んでいった。

 

「おい隊長、勝手にEP使うなよ!」

「油田側は弾幕が薄い、敵も少ないはずだ! NPDと挟み撃ちにするぞ!」

「おいっ、勝手に! ちっ、仕方ねぇ。行くぞ!」

「う、うん! わかりました!」

 

 三機が巨石の陰から飛び出そうとした、その時だった。

 

『クチクシタ! クチクシタ!』

「なにっ!? お、終わったのか!?」

 

 NPDエクシアからの、通信。戦果を誇るように高々と掲げられたGNソードに串刺しにされているのは――鉄華団仕様のモビルワーカーが、二機。

 

「も、モビルワーカーだけ!? 敵は、敵はどこにっ!?」

「……いただく!」

 

 カツン。

 黒いスーパーガンダムの頭頂部に、銃口が突き付けられた。スーパーガンダムの足元に落ちる、大きく広げた四枚羽根の影。逆立ちのような姿勢で頭上に舞う、ガンダム・クァッドウィング――開幕時から続く、レーダーの不調。何機もの敵が撃ちまくっているかのような、激しい弾幕。側面からの、実はモビルワーカーを送り込んだだけの奇襲。それらは全て、本命のオフェンス役が気づかれずに接近するための布石――

 

「――だったのかよぉぉ!」

 

 ドッ、ビュオォォンッ!!

 頭のトサカ部から腰のフンドシ部まで、ガンダムタイプ特有の造形が溢れ出すビームの光に呑まれ、消えた。残った手足とGディフェンサーだけが、ガシャン、ボトリと地面に落ちる。

 

「隊長ぉぉっ!」

「よくもぉぉっ!」

 

 残された二機の連邦バーザムは、トンファー型ビームライフルからビーム刃を発振させ、ビームトンファーとして振りかざす。勢い任せに突っ込んでくる、左右からのビームトンファー。それをライは、鋭い弧を描く回し蹴りでバーザムの腕を蹴り上げて弾き返した。

 

「なっ、なんてカラテだよ!?」

「四枚羽根! 例の転校生ですか!」

「……破ッ!」

 

 バスターマグナムの銃口から、ビームセイバーを展開。ライは気合の一声と共に、大きく二刀を振り抜いた。連邦バーザムの一機はバックブーストでビーム刃の殺傷圏内から逃れたが、もう一機はトンファー型ビームライフルを深々と切り裂かれ、小爆発。姿勢を崩しながらもなんとか着地し、ビームサーベルを抜刀した。

 

「ちっ、ライフルをやられたか……二人がかりで、こいつだけでも墜とすぞ!」

「りょ、了解です!」

 

 飛び退いた連邦バーザムも、再びビームトンファーを構えてクァッドウィングへと突っ込んでくる。それに先行してビームサーベルを構えた連邦バーザムはクァッドウィングへと切りかかり、鍔迫り合いに持ち込んだ。

 

「噂の転校生でも、二対一ならぁ! 今だ、やれぇッ!」

「うんっ! やあああっ!」

 

 交差させたビームセイバーでビームサーベルを受け止めるクァッドウィングの側面から、ビームトンファーでの刺突を狙ってくる連邦バーザム。しかしライは、眉一つ動かさず、静かに呟いた。

 

「……二対一、か。視野が狭いな」

「ま、負け惜しみを言……」

「てやぁぁぁぁっ!」

 

 ガキッ、オオォォォォンッ!

 横槍を入れるという言葉、まさにそのままに。凄まじい勢いで横合いから突き込まれた銀色の穂先が、連邦バーザムのビームトンファーを持つ腕を、根元から根こそぎ吹き飛ばした。

 その槍を持つガンプラは、白と青をメインに差し色の赤と黄、基本に忠実なガンダムカラーに塗装されたストライクガンダム――いや、違う。内部フレームが露出した腹部構造、胸部に内蔵されたエイハブリアクター。そして、ビーム兵器を一切持たない武装構成。顔形はストライクガンダムだが、その機体は間違いなく鉄血のガンダムフレームだった。

 

「……遅いぞ、先輩」

「いやあ、ごめんよ。でも間に合ってよかったよ、ヒムロ君」

「さ、サツキ先輩ですかっ!?」

 

 サツキ・コウタの愛機、エイハブストライク。巨大な突撃槍〝モビーディック・ランサー〟と七基の大型ブースターを備えるバックパック〝シュバルベストライカー〟を装備した高機動形態。名を、シュバルベストライクという。

 

「おいサツキぃ! エレメントを組んだとは聞いていたが、まさか転校生とはなぁ! シキナミちゃんに怒られなかったかよぉっ!!」

「え? いや、なんでシキナミさんに?」

「けっ、そうかよ……このっ、朴念仁がぁぁぁぁっ!!」

「……余所見をするな」

 

 何やら複雑そうな感情をこめて叫ぶ、連邦バーザムのダイバー。しかしライは、彼がシュバルベストライクに気を取られた瞬間を、見逃さなかった。ビームサーベルをカチ上げ、がら空きになった胴体をビームセイバーで掻っ捌く。二重の輪切りになった連邦バーザムは一瞬の間をおいて爆発、プラスチック片と化して散った。

 

「さあ、これで後は君だけだよ」

 

 残った最後の連邦バーザムに、コウタはモビーディック・ランサーを突き付けた。ショット・ランサーの機能を併せ持つこの大型突撃槍は、トリガー一つで連邦バーザムを撃ち抜ける。だがコウタは引き金に指もかけずに、言葉を続ける。

 

「撤退を選ぶんだ。その方が部隊全滅よりは、EPのマイナスも少ないよ」

「……サツキ先輩。僕たちを、バカにしてるんですか?」

 

 ライは無言で、バスターマグナムを連邦バーザムに向けた。当然、トリガーに指はかかっている。しかしコウタは、シュバルベストライクをすっと射線上に割り込ませた。

 

「そんなことないよ。ただ、EPがゼロになっちゃうと、もうエレメント・ウォーには参加できないから。勝敗はつくよ、GBNはバトルだからね。でも僕は部活のみんなと、できるだけたくさん、GBNをしたいんだよ」

「……そんなだから、シキナミさんにも甘い甘いって言われるんですよ、サツキ先輩は……でもその甘さ、僕も嫌いじゃあありません。だって……!」

 

 連邦バーザムのボディから、丁寧にスミ入れされたパネルラインから、赤い光が漏れた。猛烈な熱量を孕んだ、それは爆発の前兆。宇宙世紀系のMSは、核動力で動いている――!

 

「先輩、どけッ! 自爆だ!」

「あはは! サツキ先輩のおかげで、自爆スイッチを」

 

 ドッ、ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

 圧倒的な光の渦が、連邦バーザムの上半身を呑み込み、濁流のように押し流していった。後に残るのは、バチバチと火花を散らす下半身のみ。その下半身も、数秒と立っていられずに膝から崩れ落ち、そして爆発、四散した。

 

「……助かったぞ、イマ」

 

 先ほどまでアンナが分厚い弾幕を展開していた、廃墟群の一番高いビルの屋上。伏せ撃ちの姿勢でバスターライフルを構えるターミガンが、のんきに手を振っていた。クァッドバスターライフルを分割したシングルバスターライフルでの長距離射撃は、狙撃というには荒々し過ぎたが、後詰としての役割は十分に果たしてくれた形になる。

 きっとイマは今頃、ドヤ顔と自慢げなおしゃべりを繰り返していることだろう。しかし、奇襲前に敵に気取られないよう、ライとコウタは遠距離通信を封鎖している。母艦(ブルーバード)にいるシキナミや、イマのいるビルの足元に陣取っているアンナとも、通信は繋がっていない。

 

「これで、彼らは……500EPのマイナス、かあ……」

 

 コウタはモビーディック・ランサーを下げながら、静かに呟いた。

 通常バトルでの被撃墜は、一機あたり100EPのマイナス。三人組のエレメントが全滅すれば、300EPのマイナスだ。そしてバトルへの参加費が100EP。加えて彼らはエース級NPD召喚も使用していたので、このバトルで計500EPを一気に失ったことになる。彼らが撃墜スコアを稼いでいればまた話は違ってくるが、開幕直後に自分たちとぶつかっている以上、その可能性は低いだろう。

 

「……何を沈んでいる、先輩」

 

 言いながらライは、クァッドウィングを巨石の陰にしゃがみ込ませた。イマの狙撃とアンナの弾幕で抑えが利くとは言え、遮蔽もない場所に棒立ちなどするものではない。戦闘の爆音や爆発を感知して、漁夫の利を狙うエレメントが迫ってきていてもおかしくない。

 コウタはシュバルベストライクをクァッドウィングと同じ巨石の影にしゃがみ込ませ、背中合わせになって周囲を警戒する。

 

「難しいなあ、と思ってね。ガンプラバトルは、真剣勝負だから面白い。でも、同じ部活の仲間だから。できれば、撃ちたくないんだ」

「……バナージ・リンクスを、気取るつもりか」

「そんなことはないよ。ただ……性分、なのかなあ。何度シキナミさんに叱られても、治らないから。あはは」

 

 コウタは自虐的に、力なく笑う。ライはその諦めたような笑い顔を見て、視線を鋭くする。

 

「……シキナミは、勝つために知恵を絞ってくれた。イマも、ガトウも、俺も、役割を果たしている。それでリーダーのお前がそんな顔をするのは、裏切りにも等しい」

 

 シキナミやアンナに聞かれる心配もないため、ライの物言いは遠慮のないものになった。しかしコウタは反論せず、「……そうだね。ごめん」と頷いた。そしてモビーディック・ランサーをガンモードに持ち替え、構え直す。

 

「すまない、情けないリーダーで。この失点は、バトルで取り返すよ!」

「……待て、先輩」

 

 立ち上がろうとしたシュバルベストライクを、クァッドウィングが片手で制した。ウィングを小さく畳み、慎重に巨石の端から顔を出す――そして、ライにしては珍しく、感情が顔に出てしまった。

 

「……囲まれた」

 

 アンナとイマがいる廃墟と、ライとコウタがいる巨石群。そして油田跡地を取り囲むように連綿と続く、なだらかな砂丘。その稜線の向こう側に、伏せているガンプラがいる。巨大なバインダー型のバーニアユニットと、長い砲身を持つビーム砲を背負った、重装備のジムタイプ。

 相手はライたちの位置を完全には掴んでいないようだ。手に持った細長いライフルをゆっくりと左右に振る動きは、高性能の狙撃用スコープを使って索敵をしているのだろう。砂漠用迷彩のABCマントを被ったその姿は非常に識別しづらく、ライがその機体に気づいたのは、運がよかったとしか言いようがない。

 しかし、一度気付いてしまえば、他にもほぼ同じシルエットのガンプラが砂丘の稜線に潜んでいるのが見て取れた。砂漠用迷彩のABCマントに身を包んだ、巨大なバインダーを背負うジムタイプ……計、六機。ライたちをぐるりと取り囲むように、不規則に間を開けて伏せている。包囲網が等間隔でないところに、熟練の連携が感じられる。等間隔では、潜んでいる場所が推測されてしまうからだ。

 

「僕にも見えたよ、ヒムロ君。僕たちはまだ見つかってないようだけど……まずいっ!?」

 

 廃墟に近い一機のライフルの動きが、ぴたりと止まった。その銃口が狙う先は、イマがいるビルの根本。包囲に気づいてもいないであろうアンナが、待機しているはずの地点。

 ライの思考が、一気に加速する。アンナが撃たれれば、次はイマだ。遠距離火力の豊富な二機が墜ちれば、近接特化のクァッドウィングと近接寄り高機動型のシュバルベストライクで、見るからに高火力重装備のジムタイプ六機分の弾幕に援護なしで突っ込んでいくことになる。勝機は、薄い。

 しかしここで無線封鎖を解いては、アンナのレーダー妨害のおかげで位置がばれていないという唯一のアドバンテージを、失ってしまう――ライの結論と、コウタの行動は、ほぼ同時だった。通信を開き、そして叫ぶ!

 

「ガトウさん、逃げて!」

「イマ、指定座標を撃て!」

 

 ドッ、ヴァァァァァァァァァァァァァッ!

 ギュドッ、オォォン!

 二種類の砲声が同時に響き、ビームと砲弾が交錯した――




 ……というわけで、第三話Bパートでしたー!
 書いている身としては戦闘パートというのは中々好きなのですが、いかんせん、また私の長くなる病が発症してしまいます。長くなっちゃうバトルの中でも、主人公以外のキャラクターの掘り下げができればなあ、と思うのですが……そう欲張るから長くなっちゃうのでしょうか。
 
 次回は軍師・コウメイとの戦いがメインです。コウメイ・マサヒロのモデルはもちろん中国のあの人なのですが、私はマンガでしか三国志を読んだことがないという(笑)
 
 感想・批評お待ちしています。どうぞよろしくお願いします!
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