なんとか週一ペースを維持していますが、いつまで続けられるだろう……
そんな第三話Cパートです。
砂漠の真ん中に聳え立つ廃墟、その南に巨石群、その東に油田跡地。なだらかな砂丘に囲まれた、疑似的な盆地。弾幕とモビルワーカーを囮にして獲物を誘い込み、釘付けにし、そして本命が奇襲をかけるには、最適な土地と言えただろう――だが、それだけではまだ
「策士、策に溺れる――その可能性を無視するべきではない。十分に高い数字だ」
シキナミ・シオミは十分に優秀なオペレーターだが、サツキ・コウタ一人のためだけに作戦を立てている時期が長かった。それ故に、大局的な戦術というものの経験が不足している。サツキ・コウタ一人を勝たせる戦闘指南はできても、せいぜいエレメントの作戦立案はできても、トゥウェルヴ・トライブス全体を見通した戦術の構築において、〝軍師〟コウメイ・マサヒロに勝るものではない。
「君たちが派手に弾薬を消費して客寄せをしてくれたこの9分と57秒間、自分たちは実に安定して戦果を上げさせてもらった――だが、もう、十分だ」
派手な弾幕は広範囲に銃声を響かせ、漁夫の利を狙った分隊がこの地に集まってきた。マサヒロたちフォウ・オペレーションはこの砂丘盆地周辺に潜み、集まってくる分隊を難なく撃破し続けた――そして、トゥウェルヴ・トライブス開始から10分31秒。すでに四分隊十三機のガンプラと二機のNPD機を撃破し計1500EPを稼いだフォウ・オペレーションは、余裕をもってライたちブルーブレイヴを包囲していた。
「……レギオン2よりブレイン、配置完了」
「レギオン3よりブレイン。高層ビル屋上に狙撃手を確認」
「レギオン4よりブレイン、四枚羽根は発見できず」
「5よりブレイン、サツキ・コウタも見えない」
「レギオン6よりブレイン、ガンキャノンタイプを捉えた。指示があれば撃つ」
マサヒロの眼前に浮かぶ空中パネルには〝
廃墟の中にガンキャノンタイプが一機。ビル群や瓦礫を遮蔽として利用しているが、脇が甘い。射線が通る地点が残っている。盆地全域に及ぶ謎のレーダー障害は、このガンキャノンタイプの両肩にあるシールド型の特殊兵器が原因のようだ。表面装甲を大きく展開したシールドの内側に、複雑なパターンを
一方、ビルの屋上の改造ウイングガンダムは――正直、お話にならない。瓦礫に見えるよう偽装したシールドを頭から被っているようだが、文字通り頭隠して尻隠さずの状態。巨石群から見ればちゃんと偽装できているのだろうが、横や後ろからは、ご覧の通りだ。シキナミ・シオミがそのような指示を出すはずはないから、おそらくダイバーの頭の方が少々残念なのだろう。直接撃ってもいいし、ビルを崩落させてもいい。どちらにしろ、一手で獲れる。
転校生とサツキ・コウタはまだ位置が掴めていないが、十中八九、巨石群に潜んでいるだろう。ガンキャノンタイプと改造ウイングガンダムを撃てば、何らかの動きを見せるはずだ。動いたところを、レギオン4と5に狙撃させる――
「――勝利への式は組み上がった」
マサヒロは、エレメントのメンバーに聞かせるつもりで、お決まりの口癖を呟いた。上げていたバイザーを下ろし、操縦桿を握る。
「廃墟内の敵エレメント後衛二機を撃ち、四枚羽根とサツキ・コウタを誘い出す。レギオン2は4、5の支援。自分はいつも通り、不測の事態に備える――では、始めよう」
レギオン各機の緊張が、高まる。しかし歴戦の兵士である彼らにとっては、緊張すらも射撃の精度を高めるスパイスに過ぎない。マサヒロは糸目気味の目をさらに細め、短く下命した。
「レギオン3、6。仕事だ――撃て」
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
「ガトウさん、逃げて!」
「イマ、指定座標を撃て!」
ドッ、ヴァァァァァァァァァァァァァッ!
ギュドッ、オォォン!
ほぼ同時に鳴り響く、二種類の砲声。そして交錯する、ビームと実弾。
極超音速で飛来した鉄鋼榴弾が、私の目の前で、ガトキャノンの胸のど真ん中を貫きました……いいえ、違います。正確には、
(す、すごい……本当に、シキナミ先輩の戦術予報通りになった……っ)
一気に空気が抜け、しぼんでいくガトキャノン。私の
ゼロコンマ数秒遅れてもう一発、鳴り響く実弾の砲声。廃墟群で一番高いビル、その屋上で伏せているイマちゃんのターミガン……の、これまた雑なダミーバルーンを撃ち抜きます。ダミーバルーンが手に持っていた一発だけなら撃てるバスターライフルが、ガランと音を立てて高層ビルから落下します。イマちゃんのクァッドバスターライフルは、四丁のバスターライフルに分割して、他にもあと三か所、隠れているダミーバルーンに持たせてあります。シキナミ先輩の采配です。
それはそれとして、私とイマちゃんを撃ったつもりになっていた敵の狙撃手さんは、きっと今頃、目を真ん丸にして驚いていることでしょう。だって、
ガトキャノン・オークの、数ある換装ユニットの一つ。両肩に登載した、電子戦用装備〝ジャミングシールド〟。普通に臆病な私としては居場所を知られずに戦いたいので、とてもお気に入りの装備です。
けれどもどうやら、私が作ってしまったこのシールドはとんでもないシロモノだったようで。シキナミ先輩が作戦を立案するにあたって、私たちのガンプラの性能を精査していた時の事でした。
『……ガトウさん。あなた、なんて凶悪な装備を……』
『え? な、なにか悪いことでもしてしまいましたか? ご、ごめんなさいっ』
『いえ、謝ることではないですよ。素晴らしい……いえ、凄まじい工作技術です。あなたがビルダーではなくてファイターだったことを、対戦相手は後悔するでしょうね』
シキナミ先輩が、なぜ私のジャミングシールドを〝凶悪〟なんて言っていたのか、正直、今もピンと来ていません。
私はただ普通に臆病だから身を護るための装備が欲しくて、頑張ってコツコツとチマチマと、お兄ちゃんたちにもらったガンプラ用の金属パーツに電子回路状のパターンをエッチングし続けただけです。ガリガリと。ゴリゴリと。一週間ぐらい、ずっと。
だからこの装備が発揮する機能も、努力した結果だと普通に思っていました。一定範囲内全てのガンプラのレーダーもカメラも各種センサーも、
『……一番凶悪なのは、ガトウさん。装備というより、あなた自身かもしれませんね』
『えっ? な、なんでそんな……私は普通に頑張っただけですよぅ……』
この機能は発動してしまえば敵も味方も関係なく影響下に入れてしまうので、仲間にすら私の居場所はわかりません。しかも、このデータ偽装は一度露見してしまえば同じバトル中に二度は使えません。だから特にチーム戦では使いにくいと思っていたのですが……
『戦場において、そのたった一回の完全ステルスにどれほど価値があるか、わかっていないようですね……いいでしょう。今回のトゥウェルヴ・トライブスは、貴女を要として作戦を立案させてもらいます』
ドォォンッ!!
爆発音が私の意識を、思索から現実へと引き戻しました。廃墟群を取り囲むなだらかな砂丘の稜線、ライ先輩が指定した座標です。撃たれた重装ジムタイプは、何の対応も取れていませんでした。それもそのはず、撃ったはずのターミガンは命中の瞬間にダミーバルーンにすり替わり、そして全く警戒もしていなかった背面から、ビームが襲い掛かってきたのですから。
イマちゃんに撃ち抜かれた大型バックパックは大爆発、本体も誘爆し大破、行動不能。一機撃墜です。エレメントを組んだばかりの新参に過ぎない私たちが、〝
「にひひっ♪ めぇぇぇぇちゅぅぅぅぅ! めーちゅーですよ、アンナさんっ♪」
「うん、そうだねイマちゃん……じゃあ、行こうっ。作戦、第二段階だよっ」
はしゃぐイマちゃんに頷き返し、私はきゅっと表情を引き締めます。
シキナミ先輩が、私とイマちゃんに伝えてくれた本当の作戦。第一段階は、囮と弾幕で敵エレメントを抑え込んだうえでの、前衛による奇襲。そして、第二段階――派手な弾幕によって、漁夫の利を狙う別エレメントをおびき寄せ、隠れていた
集団戦闘に長ける〝
兎も角。私は私を狙った砲撃の弾道から逆算し、敵機の位置を特定。間にビルを挟んだまま、その方向へとガトキャノンの全身の砲口を向けました。狙撃ではなく弾幕による、かなり力技の壁抜き射撃です。
私はもう効果のないジャミングシールドを解除し、精一杯の気合を込めて、叫びました。
「ガトウ・アンナっ。ガトキャノン・オークっ。撃ちまくりまぁぁぁぁすっ!」
回る銃身、吼える銃声。噴き出す銃火、飛び出す銃弾。
数えきれないほどの空薬莢を滝のように吐き出しながら、私とガトキャノンは
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
ライとコウタの目には、間違いなく、アンナとイマが撃たれたように見えた。しかし、敵の狙撃と同時に迸ったバスターライフルの光は敵の背後からフォーミュラ・ジムを撃ち抜いていたし、廃墟とビルの屋上に残っているのは、ダミーバルーンの残骸だけだった。
「……!?」
「シキナミさん! 状況を!」
砂丘に伏せたフォーミュラ・ジムが為す術もなく爆散するのを巨石越しに見ながら、コウタはブルーバードに通信を繋いだ。通信画面に現れたシオミの顔は、いつも通りに冷静沈着ながら、どことなく自慢げに見えた。
「シキナミさん、その表情って……まさかだけど!」
『黙っていてすみません、先輩。そういう作戦です。ガトキャノンが弾幕を展開します。姿勢を低くしてください』
ガトキャノン一機の弾幕とは思えないほどの銃弾が辺り一面にバラ撒かれ、廃墟ビル群が蜂の巣になって崩落していく。灰色の粉塵が猛烈な勢いで巻き上がり、砂丘盆地の内側を覆い尽くすほどに広がった。
粉塵による即席の煙幕。同時にスモークグレネードも使用したようだ。巨石群から離脱するにはいい目晦ましだが、これではこちらからも敵が見えない。
『ガトキャノン、ターミガンの索敵情報を共有。レーダーに表示します』
当意即妙とばかりに、シオミからの情報支援が入った。イマが一機撃墜し残り五機となったフォーミュラ・ジムたちの現在位置が、全てレーダー上に表示された。既に1から5までの番号が、シオミによってマーキングされている。
敵は相変わらず砂丘盆地を囲んではいるものの、アンナとイマを警戒して、稜線の向こうへと後退し、さらに移動中。この動きは、集結するつもりのようだ。ライがそう思うのと同時、シオミがマップ上にピンを打った。その地点は、ライが予想した敵の集結地点とほぼ同じ。のみならず、敵集結までの予測時間と、敵の到着順の予測までもが表示された――優秀なオペレーターだ。ライは内心、感心した。
『敵部隊は集結し、連携して我々を撃破する作戦だと推測します。ターミガンが後方から奇襲をかけ、敵の集結を妨害、時間を稼ぎます。前衛部隊は速やかに行動開始、合流する前に4番、5番を撃破してください』
「……了解」
「わかったよ、シキナミさん」
ライとコウタは地を這うように低空飛行し、濃い煙幕の中を一直線に翔け抜けた。レーダー上、4番と5番の敵機は最も自分たちに近く、シオミが予測した敵の集結地点には遠い。まずは4番5番の二機で合流しようとしているように見える。
しかし、飛翔するクァッドウィングの四枚羽根は、シュバルベストライクの七基の大型ブースターは、それを許さぬほどに速かった。
「ちぃッ、もう来たか! 転校生!」
「……遅いッ!」
煙幕を吹き散らし、クァッドウィングは天高く飛翔。背中のバインダーを大きく開きホバー移動する4番の頭上へと、躍り出た。
ライはアザディスタンのぎらつく太陽を背にして、胸部マシンキャノンを撃ちおろした。降り注ぐ大口径機銃弾がフォーミュラ・ジムの厚い装甲を叩くが、流石に〝
「豆鉄砲ではなぁっ!」
「だったら、これでぇぇっ!」
続いて、砂丘の稜線を削るようにして突撃したシュバルベストライクが、ストライカーパックから伸びる細身のライフルを連射した。リニア方式で撃ち出された実体弾が4番の姿勢を崩すが、装甲を穿つまでには至らない。コウタはランサーを突き出して突撃、しかし4番は大型バインダーのバーニア出力で無理やり立ち上がり、身を躱した。
「サツキ・コウタか。相手に取って、不足はないがな!」
フォーミュラ・ジム背部の大型砲が、ライとコウタへと向けられた。ヴェスバー独特の発射音と共に威力重視の重粒子ビームが発射され、稲妻機動で回避するクァッドウィングの肩を掠める。コウタは左手のシザーズシールドでガードしつつ、後退。
ライとコウタはやや距離を開けられてしまい、中距離からの撃ち合いになる。その間も、フォーミュラ・ジムは
『オペレーターより情報支援!』
「……ッ!!」
再び4番の頭上を抑えかけたライは、シオミの声と同時にマップに追加された情報を見て、急転換で上空へと逃れた。直後、クァッドウィングがいた空間を、加速粒子ビームによる砲撃が翔け抜ける。弾速重視のヴェスバーを撃ったのは、5番のフォーミュラ・ジム。4番が急襲されたのを受け、集結よりも援護を優先したようだ。マップ上の敵集結予測地点は更新され、敵部隊全体として、こちらへ向かって来つつある。1番、2番、3番はイマとアンナが抑えてくれると信じて、ライは目の前の二機に集中する。
上空からマシンキャノンをバラ撒き、二機を分断。その空間にコウタがランサーを突き出して喰い込み、連携を断ち切る。しかしその位置は、相手にしてみれば挟み撃ちのチャンス――
「だから甘ちゃんなんだよぉっ! サツキ・コウタぁぁ!」
ホバー走行で派手にドリフト、砂煙を巻き上げつつ、4番はヒートブレード付きのロングライフルをコウタに向けた。同時、5番はヴェスバーを起動、ライへの牽制射撃の構えを見せた。チャンスだからこそ、まずは確実にコウタを仕留める。ライに手出しはさせない。〝
だが、
「スイッチ!」
「了解」
ライとコウタも、このエレメント・ウォーに向けて、訓練を積んでいた。たった三日間の、付け焼刃と鼻で笑われても仕方ない程度の、しかしそれでも真剣な特訓だった。
だからたった一言で、ライとコウタは動けた。
コウタは自分に銃口を向ける4番を無視して、モビーディック・ランサーを豪快に真横に振り抜いた。シュバルベストライクの膂力と大ぶりな横薙ぎの遠心力を載せた
ライは5番の撃ったヴェスバーが装甲表面を焦がすのを感じながらも、落雷のように急降下。モビルファイターの頑丈さを持つ拳を鉄槌の如く叩き込み、4番のロングライフルを叩き折った。
「なん……ッ!?」
「……だとぉッ!?」
自分を狙う敵を無視して、仲間を助けるためだけの
だが実戦では、こうも有効に働くではないか。敵が連携を得意としているほど、仲間を信頼しているほど、このスイッチは敵の虚を衝ける。目の前の危険を仲間に丸投げしておいて、自分はその仲間を守ろうとするなど、普通は考えない。
(サツキ・コウタ……単なるお人好しでもない、か……)
予想以上にうまくいってしまった連携に何よりライ自身が驚いていたが、敵の驚きはそれ以上だ。この隙を逃す手はない。
「てやぁぁぁぁっ!」
コウタはランサーを振りかざし、5番に追撃。5番はひしゃげて潰れた右腕をかばいながらも、腰のグレネードランチャーで応戦。ホバー走行で距離を取ろうとするが、シュバルベストライカーの加速力の方が上だ。5番は逃げきれないと悟るや、地に足を付けてヴェスバーを連射。コウタは撃ち放たれる重粒子ビームの間を器用に潜り抜けるが、さすがに数発は避け切れず、ストライカーパックのリニアライフルは失ってしまう。だが、ガンプラ本体はほぼ無傷。突撃の勢いのままに5番の懐に飛び込み、その胸のど真ん中に、モビーディック・ランサーを突き立てた!
「ごめん、撃ち抜くよ!」
「くっ! すみません、コウメイ隊長ぉぉぉぉっ!」
ガッ、ォォオオンッ!!
硬質な炸裂音、ショット・ランサーが射出される。超硬質の穂先が猛烈な回転と共に撃ち出され、フォーミュラ・ジムの肉厚な胸部に大穴を穿ち、貫通した。ゴーグル・アイから光を失った5番は、崩れ落ちるように砂丘に膝をつき、そして爆散した。
「ちぃッ、四枚羽根め! 十分に戦力は評価していたつもりだったが!」
「…………ッ!」
ホバー走行で距離を取ろうとする4番に、ライは稲妻機動で喰らい付いていた。加速粒子と重粒子を織り交ぜたヴェスバーの乱射を躱し、絶妙なタイミングで足元に転がされるグレネードの爆発を回避する。このガンプラ、手数が多い。フォウ・オペレーションが得意とする中距離以上での集団戦闘に持ち込まれていたら、かなりの強敵だっただろう。
「……だが、もう俺の距離だ」
ライはバルカンの牽制射撃を前に飛び込むことで躱し、左のバスターマグナムを抜いた。
4番もそれに応じ、ホバーの出力を一層上げて、反転前進。格闘の間合いにまで自ら距離を詰め、両手にビームサーベルを抜刀した。
「まだだ! まだ終わらんぞ!」
「…………!」
閃く二刀流のビーム刃を、ライは跳び上がって回避。それを予期していたかのように、ヴェスバーの銃口が向けられている――しかし、威力重視の重粒子モードのヴェスバーでは、稲妻機動を描くクァッドウィングを捉えるには遅すぎた。ライは4番の背後に回り込む。4番は左右のビームサーベルを振り向きざまに薙ぎ払うが、共に空振り。直後の隙を狙い澄ました右掌底打ちが、4番ジムの顔面に叩きこまれる。砕けたゴーグル・アイのクリアパーツをまき散らしながら、仰け反り倒れるフォーミュラ・ジム。その腹部コクピットハッチに、カツン、と軽い音を立てて、バスターマグナムの銃口が突き付けられた。
「……いただく!」
「レギオン4よりブレイン。すまない、墜とさ……」
ドッ、ビュオォォンッ!
超高エネルギーの光が膨れ上がり、フォーミュラ・ジムを呑み込み、焼き尽くした。その熱量は砂丘の一部をも蒸発させ、砂漠のど真ん中にガラス質に焼結したクレーターを残した。
『直近の敵影、消失しました』
通信画面の向こうから、シオミが落ち着いた声で告げた。声には抑揚がないように思えるが、その表情にはほんの少しの安心感がにじみ出ている。
「ありがとう、シキナミさん。今日も的確な情報支援だね」
『べ、別にそんな……って、違います。お話はあとです、先輩。ターミガンが敵MS、2番、3番と交戦中。ガトウさんにも向かってもらっていますが、前衛部隊も至急、救援に向かってください。……あと、気になる情報が一つ』
今も何枚もの空中パネルを操作して、情報を整理しているのだろう。指先と視線を忙しく動かし続けながら、シオミはやや低い声で告げる。
『敵1番……コウメイ先輩の機体が、レーダーから消えました』
「…………」
「コウメイ君が?」
〝
『……先輩、ヒムロさん。嫌な予感がします。合流を急いでください』
「わかったよ、シキナミさん」
「……了解」
マップ上に、ターミガンと敵部隊との交戦地域がマークされる。砂丘の起伏で視界は遮られているが、クァッドウィングのスピードなら数十秒で突入できる距離だ。ライはウィングスラスターを開き、クァッドウィングを飛翔させる。間を置かず、シュバルベストライクも飛び立った。
「イマちゃんには、重い役割を任せきりだね。急がないと……」
眉尻を下げて悔やむコウタの言葉に、ライは「大丈夫だ、先輩」と応えた。
全速力で飛行し、ものの十秒程度でイマの戦闘地域がライの視界に入ってきた。波のようにうねる砂丘と岩石質の荒野が入り交じる砂漠地帯に、先ほど撃墜したのとまったく同じガンプラ、フォーミュラ・ジムが二機。そして――
(……出撃時は、なぜ
「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっほおぉぉぉぉぉぉぉぉう♪」
通信機から響く、テンションの上がり切ったイマの嬌声。そのボルテージの高さに呼応するかのように、派手に砂漠を飛び跳ね駆け回るガンプラが、一機。しかしそのガンプラは、ターミガンと同じカラーリングをしていたが、どう見てもモビルスーツには見えなかった。
四つの車輪を猛然と回転させ、砂を蹴り飛ばしながら爆走する機体。
「にひひひひーーっ♪ 何人たりとも、ビークバギーフォームとなったイマとターミガンの前はぁぁっ♪ 走らせないのですよーーっ♪」
どう見てもMSサイズの四輪バギーにしか見えないガンプラが、戦場を引っ掻き回しているのだった。
……以上、第三話Cパートでしたー!
消えたコウメイ。ひゃっはーするイマ。果たして次でちゃんとまとめられるのでしょうか。誰よりも私自身が心配です。(笑)
次回もお読みいただければ幸いです。
感想・批評もお待ちしております!