ガンダムビルドダイバーズ ブルーブレイヴ   作:亀川ダイブ

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 こんばんは、亀川ダイブです。
 先週は更新できず、すみません。リアルの方がたてこんでまして……
 お待ちいただいていたみなさま、お待たせいたしました。
 第3話最終パートです! どうぞよろしくお願いします!

 


Episode.03-D『タタカイ ノ ハジマリ ④』

 シオミはずらりと並んだモニター類に油断なく目を配り、流れゆく情報と映像を同時並行的に処理していた。フォーミュラ・ジム二機を撃破し、敵の集結地点に急ぐ前衛のライとコウタ。集結地点に乗り込んで、四輪MA形態の機動性で引っ掻き回すイマ。かなり遅れて、主戦場へと向かうアンナ。コウタ一人のオペレーションをしていればよかった前シーズンまでとは、仕事量が桁違いだ。

 

(それでも……見落としたとは思えない……)

 

 指一本でメガネの位置を直しつつ、シオミは全ての情報を洗い直す。〝第七位(ミネバ・オブ・セヴン)〟コウメイ・マサヒロの機体が、忽然と姿を消した件についてである。

 

(先輩たちが4番5番を墜としたところまでは、確実に捉えていた。その後の数秒間の電波障害は、ごく普通のチャフだった。でも、そのあとに……!)

 

 ほんの数秒、ある限定された範囲だけ、レーダーが乱れた。それは、アンナのジャミングシールドのような反則級の特殊装備ではなく、チャフグレネードなどの通常の撹乱手段によるものだった。しかし、問題はその後。せいぜい十秒程度の電波妨害が終わってクリアになった画面上に、マサヒロの姿はなかったのだ。

 

(嫌な、感じだわ)

 

 いくら探しても、見つからない。レーダーを妨害された範囲内にあるものは、砂丘だけ。あえて言うならば、最初にターミガンが不意打ちのバスターライフルで撃破したジムの残骸は転がっているが、まさかそれが動き出すということもないだろう。

 シオミは索敵の種類を電波、熱源、光学と、思いつく限りに切り替えながら戦場を探った。前衛二機が敵2番3番との交戦距離に入るまで、あと30秒程度。ジャミングシールドとモビルワーカーを積むためにシールドブースターを外したガトキャノンは足が遅く、短距離のブーストジャンプを繰り返しながら合流を急ぐが、交戦距離に入るにはさらに30秒はかかる。

 

(それまでに、突き止めないと……!)

 

 気を急かすシオミに、アンナから通信が入った。

 

『し、シキナミ先輩っ。みんな、大丈夫ですかっ? イマちゃん、一人で囮みたいになっていますけど……』

「ターミガンのMA形態は、陸上での機動・運動性能に非常に優れています。ガトウさんは、そのまま最短ルートで援護に向かってください」

 

 心配そうに眉をハの字にするアンナに、シオミは冷静に返す。いつも通りに事務的なその声色が、言葉だけの気休めを言われるよりも、アンナを安心させた。

 

『……あっ、イマちゃんが撃ったガンプラ……GBNでよかったあ。本当にバラバラになっちゃったら、可哀そうですもんね……』

 

 シオミの声掛けで周りを見る余裕が生まれたのか、アンナはちょうど着地した地点に転がっていたフォーミュラ・ジムの残骸に目を向けた。焼け焦げたプラスチック片。ゴーグルアイの割れたジムヘッド。特徴的な背部大型バインダー。なんとなく、シオミもその画面に目を向ける――そして、戦慄した。

 ガトキャノンの足元に転がる、焼け焦げたフォーミュラ・ジムの右腕(・・)

 そして、同じ砂丘のふもとにも、また右腕(・・)があった。

 半分砂に埋まりつつも、損傷のまったくない右腕が、刃を出していないビームサーベルを握ったまま転がっている。

 

「ガトウさんっ!」

 

 ガトキャノンの、合流最短ルート。ほんの数秒の電波妨害。すでに一機撃墜され、その残骸が転がっている砂丘。アザディスタンの戦場跡地、遺棄された兵器群や金属片が埋もれた砂漠。

 〝軍師〟コウメイ・マサヒロ。自ら泥を――否、砂を被ってまで、こんな奇策をとってくるとは。

 

「跳んで!」

『ほえ?』

『――遅いな』

 

 砂丘を突き破り、怒涛の勢いで飛び出すフォーミュラ・ジム。真紅に染まったゴーグルアイ。噴出する、真っ赤なビームサーベル。ガトキャノンの腹部中央、コクピットハッチに寸分の狂いもなく突き立てられた灼熱の切っ先が、装甲を焼き切って自分の目の前に迫ってくる光景。それが、アンナがこの試合で見た最後の光景となった。

 

「コウメイ先輩……っ!」

 

 シオミは表情を変えないよう努めたが、無意識に唇を噛んでしまっていた。

 私が、見落とさなければ。気づいていれば。〝軍師〟の異名をとるコウメイ・マサヒロが、三機もの仲間を失って、3対4の数的不利なまま試合を進めるはずがない。ましてや、人数差が広がるのを覚悟で姿を隠して、何も仕込まないはずがない。

 

『――誇れ。最初の奇襲だけは(・・・)見事だった。計算を狂わされたよ』

 

 オープンチャンネルでそれだけ言うと、マサヒロのフォーミュラ・ジムは砂に潜るため外していた大型バインダーを再び装備し、飛び立っていった。

 そう、砂丘に大型バインダーが転がっているのもおかしかったのだ。最初の一機は、ターミガンのバスターライフルで大型バインダーを撃ち抜いて撃破したのだから。レーダーや情報に頼るあまり、目の前の光景が見えていなかった……!

 

(読まれていた……読み切れなかった……全部……っ! 私の、ミスだ……っ!)

 

 いつから? どこまで? 次から次に浮かんでくる疑問と後悔を無理やり飲み込んで、シオミは眼鏡の位置を直した。努めて冷静に、動揺を押し殺して、事務的に告げる。

 

「オペレーターより各機へ。ガトキャノン、撃墜されました」

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

 ウイングガンダムが持つ専用シールドは、バード形態で機首となる部分だということもあって、鳥の頭か嘴かといった形状をしている。それを三枚、ほぼ円錐形を描くようにくっつけてフロントカウルとし、あとは両肩と両足首のローラーホイールを四輪車のように展開すれば、ガンダム・ターミガンのMA形態(ビークバギーフォーム)は完成である。

 寝そべり変形などと揶揄される簡易変形の一種ではあるものの、専用シールドを利用したフロントカウルは頑丈で、肩と脚の関節機構がそのままサスペンションとなる四輪の走破性は非常に高い。敵陣に突っ込み、走り回って引っ掻き回すには最適だ。

 

「ひゃっはー♪ 今のイマは、砂漠の爆走美少女なのですよぉぉぉぉっ♪」

 

 起伏の激しい砂丘に張り付くような軌道で、猛烈な砂煙を蹴立てて爆走する。クァッドバスターライフルは分割してダミーバルーンに持たせてしまったので、今のターミガンの主武装は、通常のバスターライフルが二丁である。背部のサブアームでそれを構え、遠巻きにターミガンを包囲するフォーミュラ・ジムに向けて乱射している。

 2番と3番のフォーミュラ・ジムはイマによる奇襲で一瞬は混乱したものの、すでに連携を取り戻し、ターミガンから一定の距離をとりつつ後退している。反撃のロングライフルやヴェスバーも散発的で、小賢しく駆け回るイマを撃墜しようという気迫は、あまり感じられない。

 

「にひひひひっ♪ きょーごー(強豪)峰刃学園の先輩さんといっても、イマの敵ではないのですっ♪」

 

 しかし、調子に乗ったイマでは、変に消極的な2番と3番の真意には気づけない。

シオミに余裕があればイマへの助言ができたかもしれないが、この時シオミは、姿を消したマサヒロを探すことに気を取られていた。そして、ライとコウタはまだここまで30秒はかかる距離にいる。なおかつ、2番と3番は、イマをライたちから引き離そうと誘い込んでいた。

 ――だから、

 

『オペレーターより各機へ。ガトキャノン、撃墜されました』

「えっ、アンナちゃんが!?」

 

 シオミの報告に驚き急ブレーキをかけてしまったのは、完全に、イマのミスだった。

 

「ブレインよりレギオン2、3。攻撃開始」

「レギオン2、了解」

「レギオン3、了解」

 

 今までの消極的な射撃が嘘のような、ヴェスバーとロングライフルの一斉射撃。重粒子ビームと徹甲榴弾が雨霰とターミガンに襲い掛かり、頑丈なはずのフロントカウルが一息に吹き飛ばされてしまった。

 

「ほああーーっ!?」

 

 弾着の衝撃で吹き飛ばされ、宙を舞うターミガン。イマは空中でバギー形態を解除、バスターライフルを手に持ってMS形態へと変形する。しかし着地すらできないうちに、追い打ちの弾幕がターミガンの両手からバスターライフルを吹き飛ばし、狙い澄ました徹甲榴弾の一撃が顔面を直撃した。

 

『イマさん、後退してください! 先輩たガッ、ピッ』

 

 シオミの声が雑音と共に途切れた。頭部損壊による、通信機能の大幅ダウン。シオミがマップにマーキングしてくれた後退ルートも、ライとコウタの位置表示も、掻き消えてしまう。ただ、ターミガンはウイングガンダムの改造機なので、胸部中央のサーチアイにより目の前の敵を見失わずにすむことだけは幸運だった。

 

「ふ、ふふん! たかがメインカメラをやられただけなのですよーっ!」

 

 イマは強がってお決まりのセリフを言ってみるが、だからといって打開策があるわけではない。とりあえず足を止めないように両足のローラーホイールを回し続け、次々と襲い来るヴェスバーとロングライフルを掻い潜る――しかしそれでも、一発、二発と被弾してしまう。

 

「ほああ! うひゃあばばばば!!」

 

 そしてついに、ヴェスバーが脚部に直撃。足首ごとローラーホイールが大破し、ターミガンは砂丘を削り取りながら豪快に転倒した。

 ガクガクと、全身を揺さぶる衝撃。イマはコンソールにしがみ付くようにしてそれに耐えながら、ターミガンにビームサーベルを抜刀させた。転倒し無防備になった自分にトドメを刺しにくるに違いないという直感に従ったものだったが、〝軍師〟コウメイが指揮する〝精密兵団(レギオン)〟は、わざわざビームサーベルを突き立てに来てくれるような相手ではなかった。

 ぽん、ぽん、という軽い破裂音と共に、宙を舞う無数の円筒形。それは、フォーミュラ・ジムが腰のランチャーから射出したグレネード弾による、飽和爆撃。ターミガンのバルカンとマシンキャノンを総動員しても、到底全部は撃ち落とせない――それほど大量のグレネード弾が、緩い放物線を描いてターミガンへと降り注いだ。

 

「ま、マスターたちが来てくれたら、おにーさんたちなんて! ギッタンギッタンにしてくれるんですからあーっ!」

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドォンッ!

 砂丘を丸ごと吹き飛ばす連続爆発が、イマの捨て台詞を呑み込み掻き消した。

 

『……ターミガン、撃墜されました』

 

 冷静であろうと努めるシオミの声に、僅かな震えが混じる。

 レーダー上からターミガンの反応が消える瞬間を、ライは奥歯をギリリと噛み締めながら見詰めることしかできなかった。

 

「……わかっている」

 

 ライは低く呟きながら、フットペダルを踏みこんだ。ウィングスラスターはすでにオーバーヒート寸前で、これ以上速度が上がるわけでもない。どうあがいても、あと十数秒かかる。その十数秒の時間と距離が、イマとアンナを撃墜させてしまったのだ。

 

『敵2番と3番は後退。まもなく1番……コウメイ先輩と合流します。形勢は2対3、数的不利です。シュバルベストライクとクァッドウィングの武装でこの不利を覆すには、近接格闘戦を挑むしかありません』

「多少の被弾は覚悟のうえで、突撃するしかないみたいだね」

「……わかっているッ!」

 

 最後の砂丘の稜線を越えると、フォーミュラ・ジムの姿が確認できた。三機が互いに適度な距離をとった、三角形のフォーメーション。味方に射線を遮られることなく、全火力を前面に投射できる陣形だ。

 

「ヒムロ君、僕のガンプラは対射撃防御が高い鉄血(オルフェンズ)系だ。前に出るから、僕を盾代わりに」

「……いや、突っ込むッ! 横から撃て、先輩!」

 

 コウタの言葉を切って、ライはクァッドウィングを急上昇させた。青く宇宙まで抜けるような砂漠の空に、クァッドウィングは矢のように翔け上がっていく。迎撃の弾幕が打ち上げられるが、稲妻機動で全弾回避。翼をすぼめて雲を突き抜けると、反転、弾丸のように急降下した。

 

『ヒムロさん、一人で突っ走っては!』

「仕方ない……僕も突っ込むよ、シキナミさん!」

 

 ライから一手遅れて、シュバルベストライクも突撃する。コウタはライの言葉を信じ、地上スレスレを敵陣の側面へと回り込むようなルートをとる。モビーディック・ランサーの根本に内蔵されたヘビィ・マシンガンを連射しながら、距離を詰めていく。

 

「ほう、中央に来るか。有効な手だが――」

 

 一方マサヒロは一瞬でライの意図を察し、むしろ誘い込むように弾幕を緩めた。ライはそれに気づきながらも速度を落とさず、弾丸の勢いのまま、敵陣の三角形の中央へと降り立った。同時、待ち構えていたマサヒロのヴェスバーがライを捉えるが、

 

「イマを撃ったのは……貴様かぁッ!!」

 

 ライはマサヒロを無視し、ビームセイバーを展開して2番へと斬りかかる。2番はロングライフルの銃身下部に装備したヒートブレードを起動、受け太刀からの鍔迫り合いへと持ち込む。こう密着してしまえば、仲間を巻き込む可能性を考え、威力の高い火器は使えないはずだ。だから、マサヒロの次の一手は――ライが予想した通りに、マサヒロはロングライフルを構え、ヒートブレードを起動した。

 

(よし、近接格闘なら俺の領域だ……!)

 

 しかし、その次の〝精密兵団(レギオン)〟たちの行動は、ライの予想を裏切るものだった。

 

「有効だが甘いな、転校生――レギオン2、任せるぞ」

「はっ!」

 

 2番は短く答え、ライを抑え込みにかかった。クァッドウィングも単純なパワーでは負けていないが、フォーミュラ・ジムとの間には、重量と体格で大きな差がある。突撃で注意を引き、コウタに側面をとってもらうつもりが……自分の方が、抑え込まれている状況。

 

「――レギオン3、行くぞ」

「了解」

 

 マサヒロはブレード部を赤熱化させたロングライフルを剣客のように脇に構え、ヘビィ・マシンガンを撃ちながら突っ込んでくるコウタに、自分から飛び込んでいった。3番も同じくヒートブレードを赤く加熱し、シュバルベストライクに向かっていく。

 

「くっ……先輩!」

「貴様の相手は私だぞ、転校生!」

「…………ッ!」

 

 2番からの圧力(プレッシャー)が、一層強まる。ライはヒートブレードを斜めに滑らせて鍔迫り合いを解き、再び斬りかかるが、それも防がれまた鍔迫り合いに。

 フォーミュラ・ジムは明らかに射撃重視万能型の機体構成だが、ダイバー自身の剣の扱いが上手い。さすがは〝第七位(ミネバ・オブ・セヴン)〟率いるエレメントのメンバー、全方位に隙がない――ライは感心しつつもまたヒートブレードを横に流そうとするが、今度は足捌きで抑え込まれた。この男は何が何でも、ライを逃がさないつもりのようだ。

 ヒートブレードを構えた二機のフォーミュラ・ジムがコウタに襲い掛かるのを視界の端に捉えながらも、ライは、目の前の敵の相手をせざるを得なかった。

 

『先輩、ヒート兵器は鉄血(オルフェンズ)系MSの天敵です。実弾もビームも弾くナノラミネートコーティングですが……!』

「わかっているよ、シキナミさん。熱には弱い、だよねっ!」

 

 鉄血のオルフェンズ劇中、ガンダムグシオンが放った焼夷弾は、オルガ・イツカらの乗るイサリビの装甲を焼いた。ナノラミネートコーティングが熱に弱いという設定――設定の作り込みとしては賛否両論あるが、この設定はGBNでは正式に採用されている。そして様々なガンダム作品が一堂に会する故に、GBN特有の新しい設定が生まれていた。

 宇宙世紀(UC)系のヒート兵器が、鉄血(オルフェンズ)系のナノラミネートコーティングの天敵となる、という設定だ。

 

「僕の機体特性に合わせて、ビームサーベルじゃなくヒートブレードで斬りかかる! 流石だね、コウメイ君!」

「――自分は常に最適解を求めているだけだ。知っているだろう、サツキ・コウタ!」

 

 ガッ、キィィン!

 ぶつかり合うモビーディック・ランサーとヒートブレードが、お互いを弾き合う。その隙を逃さず、3番が大上段からヒートブレードを叩きつけてくる。コウタは左腕のシザーズシールドでそれを受けるが、すぐにナノラミネートが限界を迎え、シールドは溶断されてしまう。

 

「一撃分も、もたないか……!」

「――好機!」

 

 まるで精密に計測し、綿密に打ち合わせたかのような連携。3番がコウタの前から飛び退くと同時、入れ替わりにマサヒロがヒートブレードによる刺突を見舞ってきた。コウタはランサーの腹でその切っ先を受け止めるが、ランサーはすでに何か所もナノラミネートを焼き切られ、ボロボロの状態。ヒートブレードは傷ついたランサーの穂先を抉り、深々とその切っ先を喰い込ませた。

 

「――レギオン3、やれ」

「了解っ!」

 

 3番はシュバルベストライクの背後に回り込み、大きく真横に、三日月を描くようにヒートブレードを振り抜いた。ガンダムフレーム特有の細い腰が――ナノラミネートに守られ、通常兵器相手になら十分な強度を持っているはずの腰部フレームが、ヒートブレードの熱量に、ナノラミネートごと叩き斬られる。

 

『せ、せんぱぁぁぁぁいっ!!』

「ごめん、みんな……っ!」

 

 胴斬りにされたシュバルベストライクに、マサヒロはダメ押しのロングライフルを撃ちこむ。被弾に歪んだ装甲の隙間を抜いて、徹甲榴弾がエイハブリアクターに直撃・炸裂。シュバルベストライクは派手に爆散した。

 

「さて。あとは貴様だけだな、転校生――レギオン2!」

「わかっていますよ、隊長!」

 

 コウタの撃墜と同時に2番はクァッドウィングの腹を蹴飛ばして距離を取り、ロングライフルを構えた。3番とマサヒロも、クァッドウィングが一手では詰められない距離をとって、ロングライフルをライへと向けた。

 

「自分は貴様を、完全な近接特化型と分析している。故に――」

 

 三機のフォーミュラ・ジムが、三方向から、三つの銃口でライを狙う。その照準には、ブレも狂いも何もない。ライは思考を加速させ、取るべき手段を考える。銃口の向き、敵の位置取り、生き残る道を探るが、隙が無い。見つからない。

 

「くっ……だが、まだッ!」

「――絶対に近づかない。射撃で終わらせてもらう」

 

 ギュドッ! ギュドギュドドオォォン!

 それ以上の長口上も、油断も傲りも侮りもない。マサヒロが言い終わるや否や、三発の銃声が砂漠の空に響き渡った。〝精密兵団(レギオン)〟の名に恥じぬ正確無比な射撃が、三方向からクァッドウィングを射抜く。

 一発は、腰部を右斜め後ろから左斜め前へ。リアアーマーを撃ち抜き、内部で炸裂。腰関節を砕き、クァッドウィングの下半身の機能を奪った。

 もう一発は、脇腹を左から右へと一直線に貫いた。多くのMSにおいてコクピットか主動力源のどちらかが配置されている胴体ブロックに大穴を穿ち、その機能を完全に破壊した。

 そして、最後の一発は――

 

「――ほう。意地、というものか」

 

 ――最後の一発は、凍り付いていた。

 マサヒロが撃った、胸部中央を真正面から撃ち抜くはずだった一発。腰部を破壊され腹に大穴が空き、辛うじて立っているだけのクァッドウィングは、しかし氷結した右掌を大きく前に突き出していた。光の角度によって青にも銀にも見える氷結粒子の掌の上で、徹甲榴弾が炸裂できずに凍結させ(とめ)られている。

 腰と腹の二発だけで撃墜判定は下され、すでに勝負はついている。しかし、最後の一発を凍結させ、腰を砕かれてなお二本の足で砂漠に立つその姿は、見る者に何かを語り掛けるには十分な迫力を持っていた――マサヒロはそれを、ライの〝意地〟だと受け取ったのだ。

 

「まったく、計算しきれないな――だがその不確定要素、自分は嫌いではないぞ」

 

 レギオンの半数が墜とされ、自分自身が砂に潜るような奇策まで使わされた。結果は勝利だが、学ぶべきことの多い試合となった。マサヒロはコンソールを叩き、対戦相手のデータを閲覧する。そしてフッと口元を緩め、不敵に笑った。

 

「サツキは良い新人を捕まえたな――」

 

 氷のシャイニングフィンガー使い、ヤマダ兄と一騎打ちした男、サカキを討った男、エルダイバーの主――入部数日にしていくつもの噂に彩られた転校生、ヒムロ・ライ。噂にたがわぬ尖ったビルドのガンプラを使うダイバーだった。最後に見せた意地の一手は、記憶に留めるに値する。

 そしてもう一人――ガトウ・アンナ。マサヒロには、彼女の方が警戒すべき相手と思えた。ファイターとしての腕は、未熟も未熟。しかし、あのジャミングシールドやモビルワーカーなど、目を見張る工作技術がある。彼女がビルダーとしての能力を自覚し始めたら――エレメントの中での彼女の〝立ち位置〟が確立されたら。

 エレメント〝ブルーブレイヴ〟。果たして彼らは、戦局を動かす新風となるのか――

 

「ガトウ・アンナ。ヒムロ・ライ。貴様たちの名、覚えさせてもらったぞ」

《――BATTLE ENDED!!》

 

 試合終了を告げるシステム音声と共に、アザディスタンの乾いた風が、戦場を吹き抜ける。

 峰刃学園エレメント・ウォー、今季初戦〝トゥウェルヴ・トライブス〟。その勝利を飾ったのは、〝第七位(ミネバ・オブ・セヴン)〟コウメイ・マサヒロ率いる、エレメント〝フォウ・オペレーション〟であった――。




 以上、第3話Dパートでしたー。
 
 ……最後のマサヒロの言葉に、イマが「あれ? 私の名前がありませんよ? むきー!」とじたばたする姿が目に浮かぶのは私だけでしょうか(笑)

 フォウ・オペレーションは軍師コウメイの指揮の下、常に人数有利を確保しつつ戦うというスタイルで描いてみました。
 最初の奇襲に成功、さらにライとコウタの働きで、主人公サイドは4対3の有利を取ります。しかしマサヒロは妨害工作&弾幕しかしていないアンナが単純な戦闘力は低いことを見抜き、奇襲で意趣返し。さらに主人公たちが合流する前にイマを落とし、あっという間に状況を2対3に逆転させます。
 ライとコウタを墜とす時も、先走ったライを抑え込み、コウタに二人がかりで攻撃。最終的にはライを三人がかりで囲んで撃つ。
 可能な限り数的有利を作ることを意識し、連携をとるマサヒロたちなのでした。

 次回はガンプラ紹介ができたらいいなー、と思っています。
 感想・批評もお待ちしています。どうぞよろしくお願いします!
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