ガンダムビルドダイバーズ ブルーブレイヴ   作:亀川ダイブ

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みなさんこんばんは、亀川ダイブです。
第四話も後半戦、大黒龍とのバトルシーンましましでお送りいたします。
どうぞ、ご覧ください!


Episode.04-C『アク ヲ タツ ボウレイ ③』

悪喰竜狩り作戦(オペレーション・ニドヘグハント)〟、開始より五分三十秒。ホンコン・シティ高層ビル群。峰刃学園の第二陣・左翼部隊は、派手な原色のネオンサインがぎらつくビル群を擦る様な低高度で交戦中であった。

 

『撃たせて、いただきますわっ!』

 

 曲線主体の女性的なシルエットを持つ、新緑色のガンプラ――ガデス・アテネは数発のビームキャノンをひらりと躱し、反転。両手で構えたGNロングランチャーを撃ち放った。煌びやかなGN粒子の火線が一直線にホンコンの夜空を貫き、ガデス・アテネを追い回していたハンブラビを撃墜した。

 

『や、やりましたわ……!』

 

 傍受した通信ウィンドウには、可愛らしく小さなガッツポーズをする可憐なプラチナブロンドの少女、ヤマダ・フレデリカが映っている。だが彼女は、背後から迫るMA形態のガブスレイに、フェダーインライフルに収束するメガ粒子の光に、気づくそぶりがない。

 

「仕方ねえか……ゴースト2よりHQ!」

 

 その様子を見かねて、バンは光学迷彩ABCマントの切れ目から、大型マシンガンの銃口を突き出した。

 ゴースト2、ゴーダ・バン。ビルの谷間に潜むのは、GHOST専用機〝絶影〟だ。今次作戦に参加したGHOSTの課員は、総勢九名。バン以外の八名は自前のガンプラで峰刃学園の生徒に偽装しての参加だが、バンだけは絶影に乗り、可能な限り身を隠しながらの参戦となった。

 GHOSTの課員は、運営権限によりバトル中でも即座に絶影への乗り換えが可能だ。絶影に乗っていればB弾(バン・バレット)が使えるが、乗り換えには数秒のタイムラグが発生するし、その間は無防備だ。本作戦の相手〝大黒龍(ターヘイロン)〟は、悪質ダイバーの巣窟。数秒の間すら許されないシチュエーションも予測されたため、GHOSTでも腕利きのダイバーであるバンは、絶影での隠密行動(スニーキング)を命じられたのだ。

 潜入任務故に、彼女に通信を送ることはできない。しかし潜入任務だからと、味方が墜とされるのを見過ごせるバンでもない。

 

「お嬢ちゃんに手ぇ貸すぞ、許可を!」

『うん、あんちゃん! HQよりゴースト2、射撃を許可します』

 

 ある意味では、わかり切っていた返答。GHOST最古参、運営本部やヤジマ本社からの信頼も厚いゴーダ・バンとその妹・レイのコンビには、特別行動権限が与えられている。もう十五にもなったのに幼いころと変わらず自分を「あんちゃん」と呼び続ける妹に、まるで男親のような心配と愛おしさを感じつつ、バンは大型マシンガンのトリガーに指をかけた。

 

「ゴースト2、了解……おっ!?」

 

 撃とうとしたバンの照準を、銀色の塊が遮った。巨大な銀色の物体がガブスレイを貫いて、そのままの勢いで高層ビルの壁面に叩きつけ、縫い留めた。

 それは、MSの全長をも超えるほどの超大型実体剣。バンは作戦前に頭に叩き込んだ――勉強にはスパルタの妹と、何もかもスパルタの腐れ縁の同僚に、女二人がかりで家庭教師されるという屈辱を味わいながら――峰刃学園のダイバーのデータを思い返す。

 

「……超重量級GNソード、クラウソラス。たしか〝第十位(ミネバ・オブ・テン)〟、ジンクスの改造機だったか……?」

『妹を守り尊敬される特権は、兄だけのもの……つまり、私だけのもの』

 

 GHOST技術部謹製の光学迷彩ABCマントによる偽装を、いったいどうやって見抜いたのか。あの超重量の大剣を投擲し敵ごとビルに突き刺すという力業にも納得せざるを得ないような、筋骨隆々のガンプラが目の前に降りてきた。

 〝重装番兵(パンツァーヴェヒター)〟ジンクスⅣ・アガートラーム。〝第十位(ミネバ・オブ・テン)〟ヤマダ・アルベルト。峰刃学園左翼部隊、戦力の中核だ。

 現GHOST総司令ヤマダ・アンジェリカの親戚筋である彼はかつてGHOSTに推薦されたことがあるが、即座に入隊を断っている。その理由はたった一言、「そこに妹がいないから」。あの女傑の親戚というだけあって癖の強い男だろうとは、バンも思ってはいたが……。

 

『GHOSTの方ですね。いつもアンジェリカ従姉様(ねえさま)がお世話になっております。GBNの無事平穏持は、私とて望むところ……ですが、妹は私が守ります。その線引きはしていただきたい』

「…………」

 

 彼のデータファイルに手書きメモで「注:重度妹偏愛(シスコン)」と貼り付けられていた理由を、バンはたった今実感した。自分も(レイ)には甘い自覚はあるが、これほどではない。だがそれはそれとして、潜入任務中に、味方にとはいえ声を聞かれるわけにはいかない。バンは黙って大型マシンガンをマントの奥に引っ込めた。

 

『……了承と受け取らせていただく。いやなに、お仕事の邪魔はしませんよ。では、私はこれで――リカ、なぜ前に出たりした? お兄ちゃんが守ってあげるからと、あれほど……!』

 

 漏れ聞こえてくる通信だけでも、彼の偏愛具合がよくわかる。アガートラームはGN粒子の出力で重い体を強引に跳び上がらせ、妹の下へと急いでいた。クラウソラスの回収すら、後回しにして。

 

「……キャラ濃すぎだろ、峰刃学園」

『う、うん……うちも、あんちゃんがあそこまでになったら、流石にちょっと……だよ。うち、今ぐらいのあんちゃんが好きだな』

「おお、おう。そ、そうか」

 

 レイの何気ない一言に胸をずきゅんと撃ち抜かれ、にやける頬にバンは張り手で気合を入れる。最近、自分とレイの関係は、兄と妹というよりも父と娘のようになってきている気がする。何か家族の団欒のような光景が、浮かんで消える。父、俺。娘、レイ。そして、母は――褐色肌に短い銀髪の同僚の姿が、一瞬、脳裏をよぎった。

 

「いやいや、違う違う。あいつはアレだ、そんなんじゃねぇ」

『ん? どうしたの、あんちゃん?』

「なな、何でもねえよ。ゴースト2、潜入行動を続ける!」

 

 バンは地を這うような低姿勢で絶影を疾駆させ、ビルの合間を駆け抜けた。上空では、敵無人機部隊と峰刃学園が、バトルを繰り広げている。全体的に、峰刃学園が優勢……右翼、左翼共に前線は市街地まで押し上げられ、各エレメントの母艦もすでに上陸している。

 市街地を挟んだホンコン・シティの右翼側では、ミネルバ級らしき母艦が随分と景気のいい弾幕を展開している。右翼側の進攻が速いのも、あの凄まじい弾幕のおかげのようだ。

 

(……右翼側といえば……あいつ(・・・)も、あっちにいるんだったな)

 

 峰刃学園のデータファイルに、あいつの名前があった。先ほど脳裏に浮かんだ、「家族」というキーワードが、GHOST設立直後のあの頃の記憶を呼び覚ましたのかもしれない。

 レイが娘なら、あいつは息子か。顔が見られないのは残念だが、今のあいつは保護された(・・・・・)ばかりのあの頃とは違う。例の事件(ブラックアウト・インシデント)で傷ついた者同士、〝家族ごっこ(メンタルケアプログラム)〟で心の傷を癒していたあの頃とは、もう違う。

 

「ライのやつ……また正義の味方、してんだろうな」

『あ、そうかあ。ライにぃちゃんも、峰刃学園にいるんだったね。お話、したいなあ……』

「この作戦が終わったら、連絡の一つもいれてやるか。な、レイ」

『うんっ!』

 

 ならばこの作戦、きっちり悪質ダイバーどもを成敗して、早く終わらせよう。

バンは突然目の前に飛び出してきたマラサイに大型ナイフを抜刀一閃、一瞬にして首を刈り飛ばし、バックパックにナイフを突き立て、蹴り飛ばしつつ引き抜いた。マラサイは何が起きたのかもわからないままに機能停止し、倒れ伏す――伏した、はずが。

 

「ほう……やっと出やがったか」

『ンっだ、テメェ! こっちが気づく前に攻撃とか、チートかよっ!』

 

 首を飛ばされたマラサイから、赤黒いオーラが立ち昇る。ダメージなどまるでないかのように、首なしマラサイはビームサーベルを抜刀した。見れば、マラサイの両手両足、そして肩のシールドなどに、〝大黒龍〟のチームステッカーがベタベタとセンスなく貼りまくられている。赤黒いオーラは、そのステッカーから根を張るようにガンプラ全体に広がり、全身を包み込んでいるようだ。

 

『ブッ殺すぞオラァッ! クソ陰キャがよォ!!』

「ゴースト2よりHQ。大黒龍所属ダイバーによる試合中の暴言、そして……来たぜ、ヘイロンデカールだ。違法ツールの使用を確認。B弾(バン・バレット)の執行許可を」

『HQよりゴースト2、本作戦中、違反行為が確認できた大黒龍メンバーへのB弾(バン・バレット)執行は、すでに承認されています』

 

 レイの声を聞き、バンは軽く頷いて武装スロットを選択した。その操作に応え、絶影は腰のホルスターから、大型の専用ハンドガンを抜き、構える。すでにB弾は装填済み。悪質ダイバーに鉄槌を下す、その準備は整っている。

 

『あんちゃん、やっちゃえーっ!』

「応よッ! 〝孤軍人狼(ヴェアヴォルフ)〟ゴーダ・バン、絶影! 獲物を掻っ攫うッ!!」

 

 レイの応援に背中を押され、バンは勢いよく飛び出した。

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

 峰刃学園右翼部隊は、ホンコン・シティ市街地の奥深くまで、ほとんど損失を出すことなく進攻していた。散発的に襲い来る敵防衛部隊の無人機は、まさに戦力の逐次投入、愚の骨頂だった。

 大黒龍とて、無法者ではあるが馬鹿ではない。大量に送り込んでいる増援部隊が、最前線にたどり着くことができない事情が、降り注いで(・・・・・)いたのだ。

 

「うわわぁっ! ととと、止まらないですよぅ、シキナミせんぱぁぁいっ!!」

 

 ドガラララララララララララララララララララララララララララララララララララッ!!

 降り注ぐ砲弾、空薬莢。鳴り響く銃声、弾け飛ぶコンクリート片、捲れ上がるアスファルト。高層ビルは数秒で倒壊、敵モビルスーツは蜂の巣になることすらできずに消し飛び、ホンコン・シティの街並みは、射線が通り過ぎる度に廃墟へと姿を変えていく。

 並みのガンプラでは180mmキャノン級の大型砲でしか撃てないような砲弾を、毎分900発、それが二門。G3ガトリングキャノンの制圧力は、凄まじいの一言だった。

 

『その調子です、アンナさん。壊し尽くしましょう、撃ち尽くしましょう、更地にしてしまいましょう。誰も逃げ隠れできないように』

「そそそ、そんなぁぁぁ! それじゃあやってることがぁぁっ、悪役ですよぅ!」

 

 ドガラララララララララララララララララララララララララララララララララララッ!!

 冷静に告げるシオミにアンナは涙目で言い返すが、両手のトリガーはひきっぱなしだ。

 現状、ブルーバードは右翼部隊の最前列に位置していた。やや後方に峰刃学園各エレメントの母艦、ブルーバードと各母艦の間にモビルスーツ部隊が展開し、各艦の直掩と地上での戦闘を行う、という陣形を組んでいる。言うまでもなくこの陣形には、G3ガトリングキャノンの弾幕に味方を巻き込まないようにするという目的もある。

 

「……弾幕の権化だな」

「すっごい投射量ですねー。現実だったら弾薬だけで何十トンもダイエットできちゃってますよ、あれー」

「そうだね、イマちゃん。でもまあ、そこはガンダム作品だから。頭部バルカンだって、弾薬の重量を考えたら……」

『先輩、ヲタトークはあとにしてください。弾幕を抜けた敵機、正面から来ます』

 

 アンナは悪役だなどと言っているが、上空で分厚い弾幕を展開してくれているおかげで、地上部隊は非常に戦いやすかった。地上型の敵機の大半は、弾幕の前に沈黙。可変機構による高高度からの奇襲を封じられた敵の可変機部隊は、瓦礫を遮蔽に、地上からMS形態で突入するしかない。峰刃学園各機は、襲い来る敵部隊との白兵戦に突入した。

 銃弾、砲弾、ビーム弾が飛び交い、切り結ぶビームサーベルの粒子が弾ける。学園側のサンドロックカスタムが、クロスクラッシャーでガブスレイを両断。その側面を突こうとガザCがナックルバスターを構えるが、コウタはブースト全開で突撃、ランサーでガザCの胸部を貫き、沈黙させる。

 

「よしっ、優勢だね。イマちゃん、ライ君、大丈夫かい!?」

「ご心配なくです、こーた先輩っ♪ ではではイマもいきますよーっ♪ れーっつ、だんしーんっ♪」

 

 イマは笑顔も満開に叫び、絨毯を敷き詰めるように弾幕を展開、敵部隊の足を止めた。ほぼ同時、両腕のバインダーを掲げて身を守るギャプランの頭部に、バスターマグナムの銃口が押し当てられる。

 

「……いただく!」

 

 零距離、膨大なエネルギー量がギャプランの頭から股下までを駆け抜けた。その爆発に引き付けられるようにガ・ゾウム部隊がライを取り囲み、ミサイルを一斉射。数十発ものミサイルがクァッドウィングを目掛けて飛び掛かってくる。ライは全方位から迫りくるミサイル群に鋭く視線を一周させると、二丁のバスターライフルを左右に突き出し、まるで射線でミサイル群を切り裂くように、大きく腕を振って一回転。拡散する高エネルギームの粒子がミサイルを薙ぎ払い、爆散させる。

 ビームが拡散し射程が短いというバスターマグナムの弱点を逆手に取った、全周囲迎撃。さらに間を置かず、ライは徒手空拳とビームセイバーで斬り込み、次々とガ・ゾウムを撃破していく。それを目の前にしたイマは、出力を絞ったバスターライフルで援護射撃しつつ、両目をキラキラさせてライの技量をほめたたえる。

 

「おぉーっ、さすがはマスターですっ♪ カッコいいですさいこーですっ♪ イマはマスターのイマでよかったのですよーっ♪」

『イマさん、油断しないでください。後方より敵、アッシマーです』

「はいはーいっ♪」

 

 いつの間にか背後に迫っていたアッシマーが巨大な拳を握り合わせたハンマーパンチを見舞ってくるが、イマは脚部ビームシールドを展開したローラーホイールで回し蹴りを叩き込み、振り上げた両腕を肘からすっぱりと切断。流れるようにビームシールド付きサマーソルトキック、アッシマーは左右に両断され、崩れ落ちた。

 

「にひひひひっ♪ マスターのスーパープレイに元気づけられたイマは、無敵なのですよーっ♪」

 

 満面の笑みで横ピースからのウィンク、実に楽しそうなイマとは対照的に、シオミは深い深いため息を吐いた。

 

『もうなんなの、この子の謎の爆発力……』

「ははは。すごいなあ、イマちゃんは。ライ君好き好きパワー、ってところかな?」

『なんですかその謎パワーは……待ってください、先輩。シティ最奥部、敵基地施設より高エネルギー反応!』

 

 ホンコン・シティ市街地の奥深くにある、高く分厚い城壁に囲まれた軍事施設。大黒龍のフォースネストであるその施設は、ガトキャノンの弾幕に晒され無数の弾痕を穿たれてはいたが、まだ峰刃学園側の誰もそこまで到達はできていなかった。

 その正面ゲートの上に、垂直エレベーターでリフトアップしてくるガンプラが一機。赤黒いオーラに覆われたその機体を、シオミはGHOSTから提供された敵フォースのデータと照合。特徴の一致する機体を割り出した。

 

『……〝大黒龍(ターヘイロン)〟首領、オオグロ・リュウジのガンプラです! 機体名称はバウンド・ドラッヘ!』

 

 バウンド・ドックをベースにした赤と黒のガンプラが、大型のシールドと一体化した左腕を頭上に掲げた。竜の顎にも見える大型シールドがガパリと口を開き、隠されていたメガ粒子砲が姿を現す。その砲口に、バウンド・ドラッヘの全身に何枚も貼られた大黒龍のチームステッカーから、赤黒いオーラが渦を巻いて流れ込んでいく。

 

「……俺様自ら、相手してやるぜぇッ! 良い子ちゃん学園のクソガキどもよォッ!」

 

 リュウジは舌なめずりをして、左腕のドラゴンヘッドを振り下ろした。赤黒い光を収束させたメガ粒子砲の先にあるのは、ブルーバード。G3ガトリングキャノンを撃ちまくる、ガトキャノンへの直撃コースだ。

 

「ハハハッ! 喰らいなぁッ、黒龍撃滅砲(ヘイロン・ブラスター)ァァァァッ!!」

 

 グワッ……バアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 猛烈な放電、巻き上がる衝撃波。撃ち出された赤黒いビームは猛然と渦を巻き、瓦礫も、ビルも、まだ生き残っていた防衛部隊すら巻き添えにして、猛烈な勢いで迸った。

 

『アンナさんっ、飛び降りてっ!』

「はは、はいぃっ!」

 

 アンナは両腕の炸裂ボルトを作動させてG3ガトリングキャノンを切り離し、ブルーバードから急速離脱した。直後、垂直推進用ロケットブースターを全力噴射して無理やり艦首を持ち上げたブルーバードの艦底を、ヘイロン・ブラスターが一直線に抉り取っていった。

 

「しし、シキナミせんぱぁーいっ!?」

「シキナミさんっ!?」

『くぅっ! 艦低部、後部サブスラスター損傷甚大。航行に支障あり……すみません先輩、みなさん。ブルーバード、後退します』

 

 SEED系統の艦船には、高い対ビーム性能を誇るラミネート装甲が採用されている。にもかかわらずバウンド・ドラッヘは、たった一発でブルーバードを後退に追い込んだ。ヘイロンデカールによる出力強化の為すところか。

 ガトキャノンの弾幕がなくなり頭を押さえつけるもののなくなった敵可変機部隊は、ここぞとばかりに上空へと飛び上がった。黒煙を吹きながら後退するブルーバードに烏のようにたかり、ビームやミサイルを撃ちこんでいる。

 

「ライ君、僕はブルーバードの直掩につくよ!」

 

 言うが速いか、コウタは大型ブースターを全力全開、ブルーバードに向かって翔け上がった。ヘビィマシンガンとリニアライフルを連射し、ブルーバードに群がる可変機の群れを撃ち落としていく。

 

「……了解だ。イマ、ガトウを回収する!」

「あいさー、マスター! 乗ってくださいっ!」

 

 イマはターミガンをバギー形態に変形させつつ、ライの足元に滑り込む。クァッドウィングがターミガン・ビークバギーの背中に飛び乗ると同時、ローラーホイールを全力で回転、弾かれたような急加速で飛び出した。

 ガトキャノンが落下したのは、敵防衛部隊のど真ん中だ。クァッドウィングも四枚羽根スラスターを全開、ビークバギーを加速させつつ、すれ違う敵をビームセイバーで切り払い、アンナの下を目指す。

 

「見えましたよ、マスター♪ ド真ん前ですっ」

「……ああ!」

「ら、ライ先輩っ。イマちゃん……っ!」

 

 G3ガトリングキャノンを操作するため、いつもの手持ち式ビームガトリングを装備していなかったのだろう。ガトキャノンは両肩のシールドで身を守りつつ肩部大口径機関砲を撃っていたが、取り囲む大量の敵部隊に対して、その武装はあまりにも心もとない。そんなアンナの心情は、震える声と涙を溜めた双眸からも読み取れた。

 

「た、助けに来てくれたんですかぁっ!?」

「もちろんですよっ♪ ねっ、マスター!」

「……行くぞ!」

 

 ライはターミガン・ビークバギーの背中から跳躍、ガトキャノンに飛び掛かろうとしていたアッシマーの顔面に、飛び蹴りを叩きこんだ。モノアイが割れ砕け吹き飛ぶアッシマーに、イマが追い打ちのバスターライフルを撃ちこみ、撃破。

 

「アンナさんっ、コレ使ってくださいっ」

「う、うんっ。ありがとう、イマちゃん」

 

 MS形態に変形したターミガンが、片方のバスターライフルをガトキャノンに投げ渡す。クァッドウィング、ターミガン、ガトキャノンの三機は互いに背中合わせとなり、それぞれの武器の銃口を、周囲の無人機部隊へと突き付けた。

 ビークバギーの加速に追いつけなかった味方部隊も、すぐ近くまで来ている。敵無人機はまだ多く、バウンド・ドラッヘの粒子砲も脅威だ。だが峰刃学園全機でかかれば、勝機は十分にある。大黒龍の首領によるヘイロンデカール使用も現認できたのだから、GHOSTも動くはず。

 

「……ここからが、本番だ」

 

 ライは操縦桿を握りなおし、鷹のように鋭い目で、バウンド・ドラッヘを睨みつけた。

 そんなライの視線を知ってか知らずか、リュウジは戦場に響き渡るほどの高笑いを上げ、演技がかった仕草で両手を左右へ大きく広げた。

 

「おいおい、良い子ちゃんたちよぉ! 随分と調子に乗ってるが……ここは俺様の庭なんだぜぇッ!」

 

 リュウジの言葉と同時、ホンコン・シティのあちこちに、通常とは異なる、赤黒く染まったノイズ混じりの転送ゲートが出現した。何機かの無人機を押しのけてまで開かれたそのゲートから、大黒龍のチームステッカーを貼り付けたガンプラが、次から次に出現する。

 毒々しい紫色のスラッシュザクファントム、異形の両腕を取り付けたヘイズル改、スパイクだらけのマックスター……続々と現れるガンプラは意匠も塗装も完成度もバラバラだが、どの機体も大黒龍のチームステッカーから溢れ出す赤黒いオーラを身に纏っている――違法ツール、ヘイロンデカール使用機だ。

 そして出現した最後の二機、バウンド・ドラッヘの左右に現れた機体を見た瞬間、アンナは「ひっ」と声を上げ縮こまってしまった。

 

「よぉ、転校生……あの時の礼をさせてもらうぜ」

「アンナちゃぁん、今度こそひん剥いてやるからなぁ? げへへへへへ」

 

 多種多様な装備を下品なほどにぶら下げた、重装型ギラ・ズール。元・峰刃学園ガンプラバトル部の生徒、ノダとウダガワの機体だった。

 

「因縁の相手……ケッ、いいじゃあねぇか」

 

 赤黒く染まった大黒龍の各機を見下ろし、リュウジは満足げに口の端を吊り上げた。そして傲然と胸を逸らし、喜色もあらわに宣言した。

 

「さあ、パーティーはここからだ! ハーッハッハッハ!」

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

 同時刻――ホンコン・シティ沖、峰刃学園ガンプラバトル部艦隊、旗艦〝カルディヤ〟。

 

『――本命が出たようだな。自分の予測よりもちょうど一八〇秒、状況の進行は早い』

「やれやれ、待ちくたびれちまったぜ。で、例の違法デカールは?」

『使用を確認した。GHOSTへの義理は果たしたな。我が方の部隊がすでに交戦中――何の因果か〝ブルーブレイヴ〟が最前線にいる』

「なんともまあ、強運の持ち主だねえ。まったく、ボクもあやかりたいもんだぜ」

『雑談はこれまでにしておこう、ヒビキ。総司令より第三攻撃部隊――出撃だ』

「ふふ、しかたないなあ……了解したぜ、コウメイ総司令殿」

 

 ショウカは悪戯っぽく微笑み、操縦桿を握った。

 峰刃学園旗艦・カルディヤはペガサス級アルビオンによく似た艦影をしているが、カタパルトはホワイトベースのそれに近い密閉式だ。左舷の艦首カタパルトハッチが開き、第三攻撃部隊が待機する格納庫に、ホンコンの海を照らす月明かりが差し込む。

 敵本拠地攻略の大本命、峰刃学園最大の攻撃力を誇る、第三攻撃部隊。その、陣容は――

 

「峰刃学園ガンプラバトル部第三陣、ボク! 出撃するぜ!」

 

 ――青白い月の光を照り返す、神々しささえ感じさせる青銀。ドレスのように身にまとう、どこまでも透き通った無垢なる刃(GNソードビット)。そこにいたのは、ただ一機のガンプラのみ。

 

「〝最上位(ミネバ・オブ・ゼロ)〟ヒビキ・ショウカ! 〝常勝無敗の冷血姫(ゼロ・トレランス)〟ダブルオー・ゼロ! 戦場を、舞い踊る!」

 

 蒼く煌くGN粒子を月光の夜空に舞い散らし、峰刃学園最強にして最高にして最上位の戦女神は、戦場へと飛び立っていった。




 ……以上、第四話Cパートでしたー!

 ライの過去の片鱗など、今後の展開につながる伏線をぶち込んでみました。
一応今作も、最終回までの大まかなストーリーラインは組んだうえで書いているのですが……伏線を貼るたびに、「回収しなきゃ」という自分の中でのプレッシャーが高まっていきます(笑)
 
 今後も週一更新を目指して頑張りますので、どうかお付き合いください。
 感想・批評もお待ちしております。どうぞよろしくお願いします!
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