ガンダムビルドダイバーズ ブルーブレイヴ   作:亀川ダイブ

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 お待たせしてしまいすみません、第四話Dパートです。
 一週お待たせしてしまった理由は……長くなる病が発動したためです。Dパートで終わるつもりが……終わらず、再構成していました。第四話はEパートまであることになりました。
 ということでまだ終わらない第四話ですが、お付き合いいただければ幸いです。
 どうぞよろしくお願いします。


Episode.04-D『アク ヲ タツ ボウレイ ④』

「さあ、パーティーはここからだ! ハーッハッハッハ!」

 

 リュウジの高笑いを合図に、ガンプラに赤黒いオーラを纏わせたフォース〝大黒龍(ターヘイロン)〟は、一斉に峰刃学園各機へと飛び掛かった。黄金の満月に照らされる中、廃墟と化したホンコン・シティのあちらこちらで、銃弾が飛び交い、ビームサーベルがぶつかり合う。

 大黒龍の攻撃は全体的に力押しで、峰刃学園各機は的確に受け、躱し、反撃していた。しかし単純に、大黒龍のガンプラは、パワーが強い。鍔迫り合いをすれば、赤黒いオーラが一際強く輝いて、刃を捻じ込んでくる。ライフルの応酬になれば、突然ビームの出力が上がる。ヘイロンデカールによる不正――峰刃学園のメンバーたちは、GHOSTとの共同作戦の意味を、その身をもって感じていた。

 

「ひゃはは! ぶっ壊してやるぜーっ!」

 

 まだ声変わりもしていない、キンキンと高い男児の声。(クオリティ)の低い部分塗装をしたクロスボーンⅩ2改が、ビームザンバーを片手にクァッドウィングに突っ込んできた。雑な振り下ろしの一撃を、ライは事もなく回避。稲妻機動で背後に回り込みつつ、ビームセイバーで斬り付けた。

 特徴的な骨十字スラスターの右側二本を切り落とし、機動性を低下させる――させた、はずが。

 

「そんなモン、きくかよーっ!」

 

 切断され、宙を舞う骨十字スラスター。しかしX2改は、上下左右に四本揃った骨十字スラスターからバーニア炎を噴き出し、ザンバスターを撃ちながら後退した。

 

「……ッ!?」

 

 よく見ると、骨十字スラスターは無傷ではない。まるでDG細胞でも仕込んでいるかのように、部位が再生している。それも、凄まじいスピードで。

 ――部位破壊、欠損判定の偽装。敵ガンプラの耐久力表示から見ると、さすがにダメージそのものは入っているようだ。相手が不正デカールを使用していると知らなければ、グラフィックの表示バグかと見過ごしてしまうところだ。

 

「……悪質だな」

「ンだよオニーサン、欲しいのかぁ? リュウジさんに金さえ払えば強くなれるぜ、こんなふうにさあ!」

 

 大黒龍のダイバーは得意げに叫びながら、再び突撃。ビームザンバーを両手持ちで振り下ろす。ライは二刀のビームセイバーを交差させ受け止めるが、X2改の小型機とは思えない膂力に押され、ぐっと膝が沈み込む。

 

「オラァッ! 死ねっ、オラ!」

 

 本当ならば二基が欠損しているはずの骨十字スラスターを四基とも全力で吹かし、ビームザンバーを押し込んでくる。ヘイロンデカールの効果か、明らかに完成度の低いガンプラのはずなのに、そのパワーはクァッドウィングを凌駕している。押し返せないクァッドウィングの姿に、大黒龍ダイバーの少年は押し切れると踏んでさらにスラスターの出力を上げた。X2改はフェイスオープンを作動、まるで舌を出して挑発するかのように、内部機構が露出した。

 だが、ライの表情に変化はない。口元を真一文字に引き締め、鋭く射抜くような目で、X2改を見返している。

 

「……品の無いことだな、少年」

「ハッ、負け惜しみかよ! 峰刃学園とかってのも大したコト……ッ!?」

 

 突如、吹き荒れる暴風。大黒龍の少年の手元から、消える手ごたえ。支えを失ったX2改は顔面から地面に突っ込み、視界(メインカメラ)が塞がれる。

だから大黒龍の少年は、見ることも理解することもできなかった。吹き荒れた暴風は、四枚羽根スラスター全力噴射の余波であることを。クァッドウィングが、稲妻の軌道を描いて背後を取ったことを。カツンという軽い衝撃が、背中に突き付けられたバスターマグナムによるものだということを。

 

「どっ、どこに」

 

 ビュオッ――ォォォォンッ!!

 密着状態で放たれた超高エネルギーの奔流は、赤黒いオーラを突き破ってX2改を撃ち抜き、上半身をほぼ消滅させた。ダイバーの捨て台詞すら残さずに撃墜判定が下され、残った下半身もプラフスキー粒子の欠片となって消え去った。いくら部位破壊の判定を偽装しようとも、機体の半分以上が蒸発してしまえば関係ない。

 

「……不正に頼るからだ」

 

 ヘイロンデカールは、確かにガンプラの完成度判定に不正に介入し、不当に高性能と評価させる。しかし、どれほどガンプラの性能を操作しようとも、ダイバーの実力は変わらない。ガンダムらしくいうならば、「ガンプラの性能差が、戦力の決定的な差ではない」といったところか。今作戦へのGHOSTからの協力依頼が、ダイバーの平均レベルが高い峰刃学園に来たのも頷ける。

 ライはバスターマグナムの粒子残量を確認しつつ、通信ウィンドウを開いた。

 

「……イマ! ガトウ!」

「イマたちはだいじょーぶですよっ、マスター! アンナさん、撃ってください!」

「う、うんっ!」

 

 ターミガンがローラーホイールキックで蹴り上げたSガンダムの改造機を、ガトキャノンのバスターライフルが撃ち抜いた。改造Sガンダムは一瞬真っ赤に染まって膨れ上がり、爆散。赤黒いオーラが辺り一面に吹き散らされる。

 

「いぇーいっ♪ アンナさん、ぐっじょぶなのですよーっ♪」

「ううん、イマちゃんのライフルのおかげだよ」

 

 通信ウィンドウの中で横ピース&ウィンクするイマ、ぺこりと頭を下げるアンナ。ターミガンからの借り物装備であるバスターライフルだが、ガトキャノンが使用しても威力・精度ともに問題ないようだ。

 改造Sガンダムとの戦闘で被弾してしまったらしく、ターミガンのシールドは一つなくなっており、ガトキャノンも肩のシールドを失っている。しかし、戦闘継続に問題はなさそうだ。

 

「へろろんデカールも、イマたちの実力なら問題なしですねっ。とっととやっつけちゃいましょーねっ、マスター♪」

「へ、へろろん……ぷ、ぷくく……」

「…………」

「あれっ、どうしたんですマスター、アンナさん? あっ、敵っ!」

 

 イマはアンナが通信ウィンドウから顔を逸らして肩を震わせているのを不思議そうにのぞき込んでいたが、激しく回転しながら飛んできた大型ビームホークに素早く反応。脚部ビームシールドを展開し、蹴り上げた。

 宙に打ち上げられた大型ビームホークが赤黒く光り、明らかに物理法則を無視した軌道を描いて、投げたガンプラの手に戻っていく。全身に武器弾薬をぶら下げた、重装型のギラ・ズール。峰刃学園退学者、ウダガワとノダの機体である。

 

「げはははは! 良い声で鳴けよ、アンナちゃぁぁんっ!」

「テメェにも死んでもらうぜ、転校生! おいテメェら、やっちまえ!」

 

 ノダの大声に応えるように、大黒龍のメンバーたちが粗野な雄叫びを上げながら突っ込んできた。ウダガワも両手に大型ビームホークを抜き放ち、騒々しく大笑いしながら襲い掛かってくる。

 

「……イマ、近接で行くそ。ガトウ、援護を頼む」

「りょーかいですっ、マスター。アンナさん、これも使っちゃってくださいっ♪」

「はは、はいっ。頑張りますっ」

 

 イマは残り二枚のシールドともう一丁のバスターライフルもアンナに渡した。自分自身は抜刀した二本のビームサーベルを柄尻で接続し、ツインビームセイバーにして構える。

 

「準備おっけーですよっ、マスター♪」

「……悪を、討つ!」

「イマ、いっきまーーすっ!」

 

 飛び出すクァッドウィングとターミガンに先行して、バスターライフルの射線が敵集団を分断した。先頭でやや突出しすぎていたウダガワのギラ・ズールほか数機と、それ以外。ライとイマはまず、先頭集団の懐へと飛び込んだ。

 次々と振り下ろされるビーム刃や白刃の数々。ライは稲妻機動で刃と刃の間をすり抜け、隙を見てビームマグナムを叩きこむ。イマもツインビームセイバーを駆使して切り結び、不意打ちのビームシールドキックで敵機を蹴り上げる。無防備に宙に浮いたところへ、アンナのバスターマグナムが突き刺さる。いくら部位破壊を誤魔化そうとも、一撃必殺の破壊力の前には意味をなさない。その意味で、ライたちはヘイロンデカールの天敵と言えた。

 

「雑魚どもがっ、弾避けにもならねーかよ! げはははは!」

 

 大振りの叩きつけ、大型ビームホークが赤黒い残光を引きながら、振り下ろされる。隙だらけの一撃を、ライとイマは問題なく回避する。空振りの一撃は地面を直撃、その衝撃だけでアスファルトは数百メートルにわたり捲れ上り、地割れを引き起こす。

 

「このパワーなら、負ける気がしねぇぇぇぇっ!!」

 

 半分以上が地面にめり込んだ大型ビームホークを、これもまた力づくで引き抜きながら、そのまま横薙ぎにぶん回す。ビーム属性の衝撃波が斧刃の範囲を大きく超えて発生し、大黒龍の機体が二、三機ほど、巻き込まれて両断された。次々と爆発する大黒龍のガンプラたちの間を、ライとイマは飛び跳ねるようにして前進。ウダガワとの距離を詰めた。

 

「……仲間ごと、とはな」

「アンナちゅわぁんをひん剥くのにぃっ、転校生! てめェは邪魔だぁぁっ!」

 

 またしても大振りの振り下ろし、何の工夫もない叩きつけ。完全に太刀筋を読み切ったライは、あえてビームセイバーを展開せず、バスターマグナムで大型ビームホークを受けた。大量のプラフスキー粒子をため込んだEパックにビーム刃が喰い込み、まばゆい閃光を放って大爆発。ギラ・ズールのメインモニターは、瞬間的に真っ白に焼け付いた。

 

「またどうせ、後ろからズドンだろぉっ!」

 

 力任せに後ろへと薙ぎ払った大型ビームホークが、空を切る。

そして、宙を舞う。切断された、左腕ごと。

復調したギラ・ズールのモノアイに映るのは、回るローラーホイール、渦巻くビームシールド。高々と蹴り上げられたターミガンの右脚が、唸りをつけて振り下ろされる。

 

「変態、滅ぶべしです! イマ必殺の! ビームシールド稲妻落としぃぃぃぃっ!」

 

 垂直落下する脚部ビームシールドがギラ・ズールの肩から胸部に深々と突き刺さり、猛然と回るローラーホイールが装甲の傷口を押し広げていく。

 

「ぐああぁっ!? く、クソガキがあっ! おっぱいもねえくせに俺に触れるなぁぁっ!」

 

 部位破壊判定の偽装により、ギラ・ズールの左腕は数秒で再生。両手でターミガンを引きはがしにかかるが、イマは顔を真っ赤にして怒り、ビームシールドをより深くギラ・ズールへと喰い込ませた。

 

「せせせ、セクハラです通報です逮捕なのですっ! 確かにアンナさんは隠れ巨乳でしかも形も柔らかさもベリーナイスな美巨乳ですが、それは今関係ないのですーっ!」

「え、ちょ、イマちゃん!?」

「うるせえクソガキだな! ガキを剥いたって見るところもねーだろうが! 貧乳に用はねーんだよぉぉっ!」

「むきーっ! 無い胸には無い胸の魅力があるのです! そしてアンナさんの着やせおっぱいは変態さんなんかに見せるにはもったいない美しさなのですっ! ただ大きいだけではないハリと弾力を、イマはこの手で確かめたのです!」

「ちょっ、イマちゃん、やめっ……」

「いくらアンナさんの胸の膨らみが形よく柔らかく機体が被弾するたびにイヤンな乳揺れをしていて連邦軍女性士官の制服が若干窮屈そうなのがむしろフェイバリットで同性のイマからみても魅力的だからって、そんなセクハラは許せないのです! ビームシールド、出力全か……」

「も、もうやめてくださぁぁぁぁいっ!」

 

 ビュゴッ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 二門同時のバスターライフル・フルパワー。アンナの精一杯の大声と共に極太のビームが迸り、ウダガワの重装型ギラ・ズールは断末魔すらなく消滅した。他にも数機の大黒龍機が巻き込まれて爆発、炎と黒煙がホンコンの歓楽街に吹き荒れる。

 その黒煙の中から、そこだけSDガンダム作品になったかのようなコメディタッチでお尻に火のついたターミガンが、ゴロゴロと転がり出てきた。

 

「うわっ、ちちち! ああ、アンナさん、イマもちょっと焦げちゃったのですよ!?」

「…………ちっ」

「えっ!? ちょ、アンナさん!? なんでそんなダークサイドな目でイマを見ているのです!? あと舌打ち、舌打ちしましたよね今っ!?」

「や、やだなぁ、イマちゃん。そんなことないよー。掠っちゃってごめんね?」

「んむー、しょうがないですねー。許してあげますよ、イマは心が広いので! えっへん!」

 

 胸の前で手を合わせるアンナに、偉そうに胸を張って見せるイマ。それとまったく同じ動きをするガトキャノンとターミガン。隙だらけの二人と二機に、しかし攻撃を加える敵はいない。ウダガワの撃墜を受けて、大黒龍のダイバーたちは明らかに動揺していた。

 

「ケッ、雑魚どもが! ウダガワが墜ちた程度でビビりやがってよおッ!」

 

 ノダは視界の隅にその光景を捉えて愚痴ったが、そちらに注意を向けてしまったことを、すぐに後悔させられた。

 

「……破ァッ!!」

 

 三日月の軌跡を描き、振り下ろされる手刀一閃。クァッドウィングの右手刀はギラ・ズールの右腕を正確に捉え、ビームサーベルに勝るとも劣らない切れ味で断ち切った。返す刃で手刀を逆袈裟に切り上げるが、ノダは大きく上半身を仰け反らせて紙一重で回避。しかし腹部にジャラジャラとぶら下げていたハンドグレネードが両断され、暴発した。偶然にもそれが煙幕弾だったため、ギラ・ズールとクァッドウィングの間には濃い灰色のスモークが立ち込めた。

 

「……煙幕か」

「ヒハッ、ツいてやがる!」

 

 これ幸いとノダは後退。クァッドウィングから距離をとった。

ヘイロンデカールの効果で右腕は数秒で再生するが、右手に持っていたビームマシンガンは諦めるしかない。ノダは再生したギラ・ズールの右手に予備のビームライフルを構え、全身のミサイルランチャーを起動した。

 

「デカールの力は、ビームの出力だけじゃねえ! 死ねよ転校生、無限ミサイルだッ!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 次々と吐き出される、大小さまざまなミサイル群。ノダの言葉通りに、その弾幕は途切れることがない。打ち上げ花火のように迷走するミサイルは、そのほとんどが限界高度で自爆するかホンコン・シティの摩天楼にぶち当たって爆発。稲妻の軌道で夜空を切り裂くクァッドウィングには当たらない。

 

「……この弾幕を御しきる技量、貴様にはないようだ」

「そりゃそうだ、いちいち馬鹿みてぇに練習なんてしてられるかよ!」

「……サカキとかいう男は、自力で戦っていたぞ」

「ハハハッ! あのクソチキン野郎と一緒にするなよ、女教師程度にビビる奴なんかと! 俺には弾切れがねーんだからよぉ、逃げ切れねぇだろうが転校生ィィィィッ!!」

 

 ギラ・ズールはさらに背部の対艦ミサイルを発射。これもヘイロンデカールの効果か、多段式ロケットというわけでもないのに飛翔しながら分裂、増殖。猛然と噴煙を噴き出しながら、クァッドウィングに向かって突っ込んでくる。

 

「そうか……ならばッ!」

 

 ライは左手のバスターマグナムを横薙ぎに撃ち、対艦ミサイルをすべて爆破した。弾け飛ぶ爆炎のど真ん中を突っ切り、爆風を背に受けてさらに加速しつつ、クァッドウィングは爪を剥き出しにした猛禽類の如く急降下した。

 

「腐敗しきった貴様の心根……凍りつく(とき)の中で、悔い改めろッ!!」

 

 いや実際に、クァッドウィングはその爪を剥き出しにしていた。

 吹き荒れる寒風。舞い踊る雪風。青銀に煌く、氷結粒子の結晶体。氷塊から切り出したように粗削りな、氷の手掌を振り上げる!

 

「おいクソッ、マジかよっ!?」

 

 ノダはさらにミサイルを発射するが、自動照準任せではロックオンが追いつかない。ライはマシンキャノンを起動、進路上に入り込んだ数発のミサイルを撃ち落とした。その爆炎を突き抜ければ、すでに高度はミサイルの旋回半径の内側、もうミサイルでは迎撃不可能。ほぼ垂直落下の軌道で迫りくるクァッドウィングに、ギラ・ズールはビームライフルを向ける――が、手遅れだった。

 

「ブライクニルッ! フィンガァァァァァァァァッ!!」

 

 大上段からの叩きつけ、炸裂する氷結粒子。冷気嵐が荒れ狂い、青銀の結晶が踊り狂う。一瞬にして聳え立った氷柱の中に、全てのプラフスキー粒子を凍結されたギラ・ズールが閉じ込められている。部位破壊を偽装し、不正に粒子の出力を高めるヘイロンデカールも、粒子の活動そのものを凍結されては効果を発動できない。

 

「クソッ、こんな……デカールがあって、負ける……はずが……っ!」

 

 氷漬けにされ、顔面を鷲摑みにされたギラ・ズールは、唯一自由になるモノアイだけを動かして、クァッドウィングを睨みつけた。しかしライはそんな視線など意にも介さず、ブライクニルフィンガーに力を込めた。

 

「――成敗ッ!!」

 

 気合一声、ギラ・ズールの頭部を圧壊。同時に巨大氷柱は音を立てて崩れ落ちた。落下し砕け散る氷塊が白く冷え切った噴煙を巻き上げ、砕け散った氷の結晶がキラキラと宙を舞う。

 

「……これで」

 

 崩落し切った氷柱の跡で、クァッドウィングは四枚羽根を大きく羽ばたかせた。風圧に白い冷気は吹き散らされ、ホンコン・シティ最奥部の軍事基地、大黒龍のフォースネストの姿が露わになる――その正面ゲートの上で腕組みをして立ち、ライを見下ろすバウンド・ドラッヘの姿も。

 

「……あとは、お前だけだ」

 

 ライはバスターマグナムの銃口を、ピタリとバウンド・ドラッヘへと向けた。

 ライの言葉に合わせたかのように、ホンコン・シティ内部での戦闘も終わっていた。大黒龍のガンプラたちを打ち破った峰刃学園右翼部隊の面々が、ライと同じようにそれぞれの武器をバウンド・ドラッヘへと向けている。

 ビームサーベルが。ヒートショーテルが。ドラグーンが。ドッズライフルが。大黒龍首領、オオグロ・リュウジを照準している。

 アンナもバスターライフルを構え、ガトキャノンを一歩前に踏み出させた。

 

「あなたのお仲間さんは、全滅しました……っ!」

「ごめんなさいするなら、ここが最後のチャンスなのですよー!」

 

 イマは外部スピーカーを最大音量でオン、バウンド・ドラッヘを指差しながら言った。すると、今まで何の反応も示さなかったリュウジが、突然、耐え切れなくなったというように大声で笑い始めた。

 

「クハ……クハハ! ハーッハッハッハッハ! 馬鹿かよテメェらァァァァっ!」

 

 ガパンッ! グワッ、バアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 左腕のドラゴンヘッドがその大顎を開き、赤黒いビームの激流を吐き出した。峰刃学園のサンドロックカスタムが、咄嗟に掲げたクロスクラッシャーごと撃ち抜かれ、爆散。その爆発が号砲となって、全てのガンプラたちが一斉に動き出した。

 

「ごめんなさいだぁ? 冗談じゃねえ! 雑魚が何匹死んだところで、俺さえいりゃあ勝てるんだよォォォォォォォォッ!」

 

 赤黒いオーラが膨れ上がり、竜巻となってホンコンの夜空を衝き上げる。そのヘイロンデカールの力の渦から産み落とされるように、弾き出されるように、サイコガンダムMk‐Ⅱのものに酷似したリフレクタービットが出現した。

 雲霞の如く飛び回るリフレクタービットは学園側のガンプラたちが撃ち込むビームライフルを偏向して逸らし、反撃とばかりにトライブレードのように激しく回転しながら突っ込んでくる。その狙いは極めて正確、コクピット部分だけを抉り取ろうとしてくる。

 

「はわわっ!? だ、ダイバーだけを殺す機械なのですかっ!?」

「イマ、下がれ!」

「え、援護しますっ」

 

 アンナは肩部大口径機関砲で次々とビットを撃ち落とし、隙を見てバスターライフルでまとめて薙ぎ払う。ライは格闘とビームセイバーを、イマはツインビームセイバーと脚部ビームシールドを駆使して身を守るが、落としても落としても、ビットは赤黒いオーラの竜巻から次々と出現し、その数が減る気配はない。

 ライはビットを蹴り砕きながら、赤黒い竜巻の中心で両手を掲げビットの流れを操るバウンド・ドラッヘを真っ直ぐに睨んだ。

 

「……本体を討たねば、終わらんか」

「そうですねっ! いきましょう、マスター! アンナさん! レイドボスバトルなのですよーっ!」

「う、うんっ! やっつけよう!」

「……突撃する。イマ、ガトウを」

「あいあいさーっ♪」

 

 イマは調子良く敬礼などして元気いっぱいにこたえ、ターミガンをビークバギー形態に変形させてガトキャノンの足元に少々足払い気味に飛び込んだ。「ひゃわっ!?」と小さく悲鳴を上げつつも、アンナはターミガンの背に乗り、掴まった。

 

「アンナさん、少々荒いドライブになりますよっ。シートベルトをお締めくださいねっ♪」

「えっ、べ、ベルトっ!? どこっ!?」

「イマ、いっきまーすっ♪」

「うひゃわああああああああっ!?」

 

 戸惑うアンナの返事も聞かず、イマはアクセル全開で飛び出した。同時、ライもクァッドウィングの四枚羽根を大きく左右に展開、予備動作なしの最大出力、全バーニア・スラスター全力全開で飛翔した。追いすがるビットを置き去りにして、進路をふさぐビットを潜り抜け、超高速の全力走行で、地上と空から突撃する。

 赤黒いオーラを爆発的に放出するバウンド・ドラッヘまで、あと五秒――ライはエネルギー切れのバスターマグナムを、投げ捨てた。

 

「……悪を、討つ!」




 次こそ、次こそは第四話の最終パートです。
 出撃したは良いけど宙ぶらりんな部長もちゃんと活躍させる予定です。
 アクヲタツボウレイの本当の意味もちゃんと出てきますので、どうぞご期待ください! ボウレイってGHOSTのことじゃないよ!(ダイレクト伏線)
 感想・批評もお待ちしています!
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