ダイバーズでは割とスーパーロボット系の必殺技が多いように感じましたので、そちらに寄せてみました。どうぞご期待ください!
――私立
赤煉瓦の壁に囲まれた敷地内には、初等部・中等部・高等部の校舎はもちろん、複数の運動場と体育館、中高別々の運動部棟と文化部棟、その他にも学校生活に必要と思われる設備が整然と乱立。三千人学生のほぼ半分が寄宿する学生寮まで含めたこの一帯は、若干の
「はわー。あるんですねぇ、こんなところが
学内バスの停留所『高等部・職員室前』から、三つ目。『高等部・文化部棟前』に降り立ったライのカバンから、イマはきゅぽんと顔を出した。
「すごいですね、マスター♪ 顧問のセンセーさんの言っていた通りですよー♪」
「……ああ」
「あのセンセーさん、すっごい美人さんでしたね! 身長も高くてすらっとしてて! しかもその上、強い強いとウワサの部長さんとタイマンを張れる唯一のダイバーだとか! そしてさらに検索検索ぅ! なんとぉー! 旧
「……そうか」
「にひひーっ♪ テンション上がってきましたよーっ♪ 学園都市! 美人の顧問教師! そして超絶カワイイ相棒の私! まるでラノベの世界ですよ、マスター! これはついにマスターにも、どっきどきの学園ラブコむぎゅ」
エンジンがかかり始めてきたイマを、ライは無表情かつ的確にリュックに押し戻し、ポケットからスマートフォンを取り出した。つい先ほど入部届を提出しに行った高等部職員室で、ガンプラバトル部の顧問から強く勧められた学内ナビアプリを起動する。
(……なるほど。勧めてくるわけだ)
画面上に折り重なるように表示される、各文化部への案内表示。その数は、一見して百近い。無数の標識に埋め尽くされた文化部棟の地図は、さながら迷路のようだ。
「ひっどいですよー、マスター! まだイマはセリフの途中だったのにー!」
ぷりぷりと怒った声とともに、スマートフォンの画面にGBNでのダイバー姿のイマが乱入してきた。ぷーっとほっぺを膨らませながら画面内の多すぎるアイコンをキックやヒップアタックで押し退け蹴っ飛ばし、目的の場所――ガンプラバトル部の部室だけを残して、きれいに掃除する。
「……助かる」
「ふ、ふんっ。べ、別にマスターのためなんかじゃ、ないんですからねっ」
ぷいっと顔を逸らすイマだが、その頬は少し赤らみ、ツインテールにした髪の先を忙しなく指先でこね回していた。
その後も事あるごとにテンションを上げようとするイマを軽くいなしつつ、ライはガンプラバトル部の部室に向かった。文化部棟内はそれなりに人気も多く活気があったが、勧誘やその他の声がかかることはなかった。二年生からの中途編入であるライだが、これほどのマンモス校ともなると、同級生であっても顔見知りでないことも多いのだろう。左腕に巻いた二年生の腕章のおかげもあって、ライは新入生と間違われることはなかった。
「まあこんな目つきの悪い不愛想男に好き好んで声をかける人なんてそうそういるわけむぎゅ」
スマートフォンの中でしゃべればリュックに押し戻されることもないのに、わざわざ
ライはドアの前に立ち、ノックをしようとしたが……様子がおかしい。
「これは……どうしたんでしょうね、マスター?」
部屋の中がざわついているのが、ドアを隔ててさえ伝わってくる。ライはノックをしてみるが、返事はない。それから三秒だけ待ってから、ライはドアを開けた。
「…………」
部屋の中は、思っていた数倍の広さがあった。普通のホームルーム教室よりも明らかに広い空間に、十二台×十列、計百二十台ものデスクトップパソコンと、それにつながるGBN専用デバイスがずらりと並んでいる。強豪とはいえ部活動の一つに過ぎないガンプラバトル部に、さすが私立学園、と言いたくなる大盤振る舞いである。
しかし、壮観にすら思えるその光景に対して、部員はまだ十名程度。単純にまだ他の部員が集合していないだけだろうが、それにしても、その十名程度のほぼ全員が全員、部室前方の大型スクリーンの前に集まって、眉をひそめてしゃべっているというのは異様だった。
「またやってるよ、あの先輩たち……最低……!」
「旧校舎のPC室に、GBNデバイス持ち込んでんだろ? そこまでして、することかよ……」
「わざわざウチのフォースネストから入ることもないだろうにさ。迷惑だぜ、マジで」
「……あの新入生の子も、可哀そうにな。目ぇつけられちゃって、運がないわ」
「あいつら……もうしないって、約束したのに……」
「先輩。あの人たちがそんな約束、守るわけないですよ」
誰も気づかないので、ライは無言のまま集まっていた部員たちの近くまで歩み寄った。音もなく出現した見慣れない男子に部員たちは驚き、慌てた様子で声をかけるが、すでにその時、その言葉はライの耳には入っていなかった。
「…………!」
大型スクリーンに映し出された映像。GBN内、峰刃学園のフォースネストから受注された、あるミッションの中継。少女ダイバーのガンプラを三対一で囲み、下品に笑いながら撃ちまくるダイバーたち。所有する全
「……ッ!」
ライはぎゅっと力を込めて拳を握り、慌てふためく部員たちを押しのけて、手近なパソコンデスクにあったGBNデバイスを装着した。
「……イマ!」
「りょーかい、マスター!」
イマは凛々しくリュックから飛び出し、抜き手に構えた右手首をパソコンのUSBポートに挿入。GBNへのアクセスを確立し、自分自身を
「え、エルダイバー!? 本物!?」
「生で、初めて見た……!」
「僕も……って、違う! だだ、誰だよ君は! ここはガンプラバトル部の……!」
どうやら三年生らしい男子生徒が、我を取り戻した様子でライに詰め寄った。ライの腕章が二年生のものだと気づいて少し勇気づけられたようだが、それでもかなり腰が引けているその男子生徒の眼前に、ライは勢いよく、胸ポケットから引っ張り出した書類を突き付けた。三年男子は短く悲鳴を上げ、しりもちをつく。
「……ヒムロ・ライだ。入部する」
「同じくイマです♪ よろしくどーもです、センパイさんっ♪」
獲物を見下ろす猛禽類のようなライと、可愛らしく横ピースを決めたイマ、そして顧問の判子がきちんと捺された入部届。三者をぐるぐると数周見比べて、数舜迷った挙句、三年男子は引き
「よ、ようこそ……ガンプラバトル部へ……」
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
「……あ、あの……あなた、は……?」
「……通りすがりの、転校生だ」
ライは短く告げ、抱きかかえていたガトキャノンを地面に下ろした。すでに撃墜判定が下される直前だったのだろう、ガトキャノンは地面に足を付くと同時に全身に次々と小爆発を起こして崩れ落ち、コクピットの辺りに《DOWN!!》の文字がポップアップする。つまりこの戦いは、ライが味方として乱入しなければ、アンナは全ての
「おいコラ! てめぇ、転校生! 邪魔してんじゃねーぞ、オイッ!」
「入部テストに乱入なんてさあ、マナーがなってないんじゃないのかよ、コラぁッ!?」
「女の子前でヒーロー気取りですかぁ~、転校生クンよぉ~?」
また言い換えれば、ギラ・ズール三人組は、食い散らかす直前の獲物を目の前で奪われたようなものだ。三人はあからさまに語気を強めて威圧しつつ、チンピラそのものといった様子でビームホークを抜き放つ。
ライは剣呑なビーム刃の輝きにも眉一つ動かさず、ぐったりと動かなくなったガトキャノンを、遮蔽物になりそうな廃ビルの壁面に寄り掛からせた。まるで自分たちを無視するかのようなその動きに、三人組の苛立ちはさらに増す。
「聞いてんのか転校生ッ! テメェも身包み剥がれてぇか!」
凄まじい剣幕で怒鳴りつける、ヤクト・ズールのダイバー。アンナは思わず「ひっ」と短く悲鳴を漏らして
(せっかく助けに来てくれたけど、転校生さんも、このままじゃ……!)
途切れない怒声に耳を塞ぎつつ、アンナは震える声でライに言った。
「も、もういいですから……わ、わたしは、大丈夫ですから……このままじゃ、あなたまで、ひどい目に……」
こんな私に巻き込まれてしまっては、申し訳ない。こんな見ず知らずの私の不運に、付き合うことなんて。
そんなアンナの思いに反して、ライの返事は迷いなかった。
「――ここで退いては、俺の正義が
静かに、だがこの上なく力強く。音量ばかり大きく騒ぎ立てる三人組の声よりも、よほどはっきりと、その言葉はアンナの胸を打った。アンナの口から出かかった悲観や
しかし、形勢は三対一。しかも、AI制御のNPCではなく、ダイバーが操作するカスタムガンプラだ。見るからに武装を強化しファンネルまで積んでいるヤクト・ズールはもちろん、取り巻きの二機のギラ・ズールも、フルアーマーといっても過言ではない重装備。アンナを救出する際の突撃で三機ともビームマシンガンを砕かれてはいるが、それは数ある武装の一つを奪ったに過ぎない。
「大丈夫ですよ、新入生のおねーさん♪」
「ひゃん!?」
突然後ろから抱き着かれ、アンナは小さく悲鳴を上げて跳び上がってしまった。見れば、先ほどまでライと一緒にいたはずのイマが、アンナの首に手を回して抱き着いている。
現在、ライとアンナはチームメイト扱い。そのため、二人のガンプラの仮想コクピット同士をデータ転送の応用で行き来するなど、エルダイバーであるイマには朝飯前なのだ――などという事実を知るはずもないアンナは、この数分間でひっきりなしに我が身を襲い続ける非日常に、ひたすら心臓をバクバクと躍らせるばかりだった。
しかしイマはそんなアンナにはお構いなしに、どこか自慢げな表情でライを、そして彼のガンプラを見上げ、アンナに言って聞かせるように語る。
「絶対正義モードになったマスターは、もう止められません――誰にも、ね」
イマの言葉に応えるかのように、ライは、愛機に銃を抜かせた。
腰の両側に懸架されていた細身のビームライフルを、左右に一丁ずつ握り、構える。深く腰を落とし、銃口で敵を突き刺すようなその構えは、まるで銃を拳にした格闘技。大きく広げられた四枚のウィングスラスターからはアイドリング状態のバーニアの光が漏れ、今にも飛び出さんばかりに震えている。
「クソっ、めんどくせぇ……オイお前ら、やっちまえ!」
「はいよ、ボス! 男はお呼びじゃあねぇんだよぉぉッ!」
「げはは! 叩っ斬ってやるぜーっ!」
ビームホークを振り上げて、左右から挟み撃ちに襲い掛かるギラ・ズール。そのビーム刃が振り下ろされるよりも、早く、速く、そして鋭く。ライは、愛機を飛翔させた!
「ヒムロ・ライ。ガンダム・クァッドウィング――悪を、討つ!」
ドンッ! 吹き荒れる衝撃波、消えるクァッドウィング。ギラ・ズールのメインカメラが辛うじて捉えたのは、青いバーニア光の航跡のみ。ギラ・ズールのダイバーたちが次に確認できたのは、右のギラ・ズールの胸と頭に、ライフルの銃口がカツンと突き当てられる音だった。
「ンだとぉっ!?」
「……いただく!」
ビュオ、ビュオォォンッ!
二連続で響く、
「す、すごい……!」
「ふふん、当然です。なんたってマスターは、私のマスターなのですから♪」
目を見張るアンナに、自分のことのように胸を張るイマ。
残ったギラ・ズールの下半身は火花を散らしながら倒れ、爆発。プラスチック片混じりの爆風がもう一機のギラ・ズールを煽り、姿勢を崩す。
「な、なんだとおっ!?」
突然の出来事に、状況が飲み込めず狼狽える左のギラ・ズールのダイバー。姿勢制御が遅れアスファルトをまくり上げながら着地、体勢を崩しつつもなんとか両足での
「畜生ッ!」
ほぼ反射的にビームホークを振り下ろすが、そこにはすでにクァッドウィングの姿はなく、ビーム刃は空を切る。目に映るのは、残るのは、青い光の軌跡のみ。光は稲妻のような鋭角を描いてギラ・ズールの背後に回り込み――次の瞬間、武器弾薬を満載したギラ・ズールのバックパックに、押し当てられるライフルの銃口。遅れて吹き荒れる衝撃波と轟音。
「出たぁーっ! マスターのお得意、〝素早い奴はだいたい背後に出現がお約束アタック〟だーっ!!」
「クソッ、忍者かよテメェはぁぁっ!」
ビュオォォンッ!
ダイバーの断末魔をかき消す銃声。胸部に風穴があき、一瞬の間をおいて大破爆散。広がる爆炎を背景に、クァッドウィングの悪役じみた鋭い
「ふ、ふひ……ふは、は……ふははははは! いいぜ、本気でやってやる! ファン、ネルゥゥゥゥッ!!」
一分にも満たないたった一度の攻防で、味方は全滅。冗談のような機動・運動性能。一撃必殺のゼロ距離射撃。ヤクト・ズールのダイバーは引きつった笑いを浮かべながらも、ファンネルを全基展開した。自分自身は四連メガ粒子砲を内蔵した大型の円形シールドで身を守り、全十二基のファンネルを、クァッドウィングを取り囲むように配置する。
「どれだけ素早かろうと、全方向からの射撃ならよぉ!」
サイコミュにより誘導される、小型軽量の機動ビーム砲台、ファンネル。小型ゆえに小回りが利き、軽量ゆえに足が速い。一発のビームの出力は低くとも、大量のファンネルはそれだけで脅威。迎え撃つにも回避するにも、それこそニュータイプ並みの反応速度が必要なのだ――というダイバーの思考は、
「いないっ!?」
ファンネルの檻の中心に、クァッドウィングは影も形もなかった。残された青い光の軌跡は鋭角的なターンを繰り返して檻の
「うおぉぉぉぉっ!!」
「ふぁ、ファンネル! 行けぇぇ!!」
片腕を失ったヤクト・ズールはホバー移動で後退、入れ替わりにファンネルたちがクァッドウィングへと迫りくる。上下左右に立体的に展開して、蜂の群れのようにクァッドウィングを囲い込むファンネルたち。ギラ・ズールにわざわざヤクト・ドーガの武装を載せるような改造をするだけあって、そのファンネル捌きは中々のものだった。
ライはファンネルの動きを冷静に見極め、的確に回避するが、その射撃は十二基中の十一基までが囮。本命の十二基目の射線はライの死角から撃ち込まれ、残った左のビームライフルを撃ち抜かれてしまう。
「ははっ! 武器がなけりゃあぁぁぁぁっ!!」
主武装を二丁とも破壊。好機と見たヤクト・ズールは、距離をとったまま、四連メガ粒子砲を連続放射。ファンネルの檻の中に、クァッドウィングを押し留める。
(……やはり、上手いな)
虚実織り交ぜて押し寄せるファンネルの弾幕に、ライは内心、感心していた。回避に専念すれば避け切れないではないが、攻撃に転ずる隙が、なかなか見つけられない。先に倒したギラ・ズールの二人とは、ガンプラファイターとしてのレベルが違う。
「……なぜだ」
「あぁン!? なんだぁ、転校生! 命乞いでもする気になったかあッ!!」
ヤクト・ズールは、シールド裏から小型ミサイルを連射。ライはそれを頭部バルカンで撃ち落としつつ、ダイバーへと問いかけた。
「……なぜ貴様は、格下を狩るような真似をする」
「ふはははは! 命乞いならもっとわかりやすくなぁッ!」
「このファンネル、相当な訓練を積んでいる……そんな男が、なぜ?」
――ほんの、一瞬。激しいビームの応酬の中で、誰も気づかなくてもおかしくないような、ごくわずかな時間。ファンネルの動きが、鈍った。
「……転校生。てめぇ、死ぬほど負け続けたこと、あるか?」
「……ある」
「そうかよ……だったらわかるよなぁッ!?」
ヤクト・ズールのシールドに、メガ粒子の輝きが収束する。四連メガ粒子砲全力全開での最大放射の構えだ。同時、十二基のファンネルも、クァッドウィングの逃げ道を塞ぐように取り囲む。
「負けると悔しい! 勝つと嬉しい! だったら勝てる戦いだけを続けりゃあ、ずっとハッピーでいられるだろうが! ひゃははははははは!!」
ドッ、ヴァアアアアアアアアアアアアアアアア――!!
四門のメガ粒子砲火線、そして十二基のファンネルからのビーム。逃げ場なく埋め尽くされたその中心で、ライは冷淡に呟いた。
「……そうか。残念だ」
四枚のウィングスラスターが唸りを上げて青い光を噴き出し、クァッドウィングは弾かれたように飛翔した。迫るビームの檻を掻い潜り、メガ粒子の奔流をすり抜け、ヤクト・ズールへと突撃する。
「あ、当たらねぇ!? なんだよ、なんでだよクソがぁっ!」
亜光速で迫る粒子ビームよりも、ガンプラは速くは動けない。ならばなぜ、クァッドウィングは瞬間移動の如き超絶機動が可能なのか。
「――ということを、今からイマがご説明いたしましょう!
その秘密は、四枚のウィングスラスターにあるのです! 猛禽の翼が如き四枚羽根は、当然ながら
ということですよ、新入生のおねーさん!」
「す、すごい早口だけどよくわかったよイマちゃんありがとう!」
「さらにさらにぃ!」
「え、つ、続くの!?」
「ウィングスラスターの排熱を処理する高性能冷却機構と、モビルファイターの機体構造の合わせ技! マスターの、クァッドウィングの最大最強の必殺技! その名も――!」
怒涛の如きビームとメガ粒子の弾幕。その僅かな隙間を翔け抜け、クァッドウィングはヤクト・ズールに肉薄した。もはや射撃の距離ではなく、ヤクト・ズールはシールドを投げ捨て、腰からヒート剣付きビームサーベルを抜刀する。しかし、やはり、もう遅い!
「貴様の心根の弱さ……凍りつく
クァッドウィングの右掌から、青銀色のプラフスキー粒子が噴き出し、輝く。溢れ出す粒子の輝きは渦を巻いて膨れ上がり、五本の指と掌の形となり――そして、
吹き荒れる寒風、舞い踊る雪風。ヤクト・ズールに掴みかかる、氷結粒子による必殺の掌打!
「ブライクニルッ! フィンガァァァァァァァァッ!!」
大上段からの打ち下ろし、叩きつける氷掌。炸裂する氷結粒子、ヤクト・ズールを呑み込み聳え立つ氷柱。周囲の大気は一瞬にして凍り付き、真っ白な冷気嵐が爆裂する。
「な……んだよ、これ……!?」
氷漬けにされたヤクト・ズールの中で、ダイバーは茫然自失としていた。ブライクニルフィンガーによる機体の損傷は、それほどでもない。先にライフルで撃たれた右肩の方が、ダメージは大きいぐらいだ。しかし、機体の全ての機能が――否。正確には、全てのプラフスキー粒子の活動そのものが、極限まで冷却したプラフスキー粒子によって
凍り付いてなお青銀に煌くブライクニルフィンガー。その氷掌は巨大な氷柱の中に腕ごとめり込み、ヤクト・ズールの顔面を鷲摑みにしている。クァッドウィングは氷結粒子と同じ色に染まった両目をひときわ強く輝かせ――
「――成敗ッ!!」
気合一声、握り潰す!
ヤクト・ズールの頭部は完全に圧壊し、同時、氷柱も砕け散る。崩れ落ちる氷塊、舞い散る氷結粒子。ヤクト・ズールの胴体は、崩壊する氷柱とともに割れ砕け、氷の下敷きとなった。
《――BATTLE ENDED!!》
戦闘終了を告げるシステム音声と同時、ニューヤーク市を覆っていた曇天は、青く晴れ渡った。降り注ぐ雪の結晶が陽光をキラキラと反射して、まるで宝石のように空間を彩る。青と銀に煌く絵画のような景色の中で、四枚の翼を誇らしげに広げ、堂々と屹立するクァッドウィング。
「ヒムロ・ライ……さん。ガンダム・クァッドウィング……!」
颯爽と現れ、悪を挫き弱者を守る。その姿はまさに
アンナは自分の胸もとできゅっと両手を握りしめながら、小さくその名を呟くのだった。
――と、いうことで。ブルーブレイヴ、第一話のBパートでした。
第一話はあと、Cパートで終了の予定です。
今作ではできるだけ短く多く更新したいと思っているのですが、バトルが始まるとやっぱり長くなりがちですね……書きたいことと文章量のバランスをとるのが難しいです。前作とのつながりとか、今後のための伏線とか。
報告ですが、ガンプラ制作も現在進行中です。どうぞご期待ください!
感想・批評お待ちしております。どうぞよろしくお願いします!