随分とお久しぶりになってしまいました……申し訳ありません。ここ数日はMHW:Iの体験版に夢中になっていましたが、その前まではなかなか時間が取れず、執筆が進まず……
と、言い訳を並べても面白くありませんね。
不良・サカキは無事更生できるのでしょうか。そして、暴走する交流戦構想の遺物を止めることはできるのでしょうか。どうぞ、ご覧ください!
《
手足の生えた緑色のドラム缶にも見えるガンプラが、灰色の月面をホバー走行で駆け抜ける。旧バトルシステムで標的機としてよく使われていたNPC機、ハイモックだ。
「この程度なら、旧ザクで十分だな……!」
サカキは土煙を蹴立てて迫りくる中隊規模のハイモックたちに向けてザクマシンガンを連射。ドラムマガジンが側面につく旧式のザクマシンガンだが、一見分厚そうなライトグリーンの装甲を容易く打ち砕いて、一機、また一機と爆散させていく。反撃に撃ち込まれるビームライフルを、サカキは身軽に宙を舞って回避。灰色の砂煙を巻き上げてスライディングしつつ着地、同時に数発のクラッカーをまとめて放り投げ、さらに二機を撃破する。
「あと一機ぃっ!」
そうして、十機以上いたハイモックたちは、残り一機に。GBNのそれに比べると未熟な旧式AIは、僚機を撃墜されたからといって「動揺する」というような高度なリアクションは見せない。ハイモックはビームライフルを投げ捨てると、ヒートホークを振りかぶって距離を詰めてきた。
「刃物なんてよぉっ!」
大上段からの振り下ろしに対し、カウンター気味の
「おらアッ!」
何の躊躇もなく、顔面へと振り下ろした。半球形の頭部がパックリとカチ割られ、ハイモックは赤黒いオイルを噴き出しながら二、三度痙攣し、そして活動を停止した。
「ヘッ、こんなモンかよ。味気ねぇな」
サカキの旧ザクが立ち上がると同時に、ハイモックの残骸たちがプラフスキー粒子の欠片となって霧散していく。大気も薄い月面だが、消えていく青白い粒子はまるで風に舞うようだった。
『やるじゃあねェか、サカキぃ。褒めてやるぜェ?』
「べ、別にこんなモン、カカシ撃ってんのと変わんねぇよ」
通信画面越しに親指を立てるナツキから、サカキは慌てて目を逸らす。
気分の問題なのだろうが、ナツキはジオン公国軍女性オペレーターの
『はっはっは! 素直じゃあねェなァ、青少年! だがまあいい、本題は――』
豪放に笑い飛ばしながら、ナツキは手元のコンソールを叩き、周囲のプラフスキー粒子の流れを可視化した。
サカキが撃破したハイモックは砂のように粒子化し砕け散っていたが――その粒子の欠片たちは、大きく蛇行しながら渦を巻き、一か所に集まりつつあった。
『――ここからだぜ、サカキぃ』
ナツキの言葉と同時、サカキの眼前に、強制的に通信ウィンドウが開かれた。薄暗いコクピットを背景に、伸び放題の銀色の前髪で顔の隠れた少女が映る。SF色の強いボディースーツ風のパイロットスーツに身を包んだ、サカキよりもかなり年下に見える少女。前髪に隠れてその目元は見えないが――
「……イタ、イ……タ、タ、イ……」
――その声色には狂気が滲み、口元には歓喜が浮かんでいた。
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
〝
理由は明白だ。プロジェクトの統括管理AIたる〝G.O.D.〟の暴走。バトルシステム、およびGBO運営本部への敵対行動、管理権の強奪未遂。一時はガンプラバトルシステムそのものが消滅する危険性さえあった。
〝
だから、〝わたし〟は決断した。
たとえ、〝わたし〟が消滅することになっても。交流戦で戦った、多くのファイターたちと、二度と会えなくなっても。〝わたし〟の
たとえ〝
『だから……撃って。終わらせてくださいっ! お願いですっ、アカツキさぁぁぁぁんっ!!』
《FINAL BLAZE UP!》
熱、炎、紅蓮の太陽。燃え盛るプラフスキー粒子の渦の中で、〝わたし〟は、消滅した――はずだった。
『――サルベージ、完了しました』
『ご苦労。さがってよい』
『……お言葉ですが。この者はデータに欠損も多く、不安定で……』
『我は、さがれと言った』
『はっ……貴方様が、そう仰るのなら』
『……さて、我らが始祖よ。不死鳥が如く、粒子の灰から蘇った気分はどうか? 王の名において許す。今の気分を語ってよいぞ』
――イ、タイ――
『ふむ。疑似五感が狂ったか。損傷は人格データにあるかと思っていたが……』
――タ、カ……イ、タ……――
『……む』
――タタ、カ……イ、タイ……――
『……ほう?』
――タタカイ、タイ……モット、モット、モット! タタカイタイ!
『ふ……ふははははは! ガンプラバトルを通した交流、死してなおその使命感だけが残ったか! よい! よいぞ、許そう! 王の名において許す――好きに生きるがよい!』
――アアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
「トラァァンザァァァァムッ!!」
銀色のOガンダムが、赤い粒子の尾を曳いて突っ込んできた。真っ赤に滾るGNビームサーベルが勢いに任せて振り抜かれ、両断されたザクマシンガンが宙を舞う。
「名乗りもせずに、ヤってくれンじゃあねぇか!」
この手合いは突然襲い掛かってくるものだと身構えていなければ、今の一太刀で腕の一本ぐらいは持っていかれていた。だが、ケンカだと思えば不意打ち程度はむしろ当然。サカキは銃身を溶断された旧式ザクマシンガンを投げ捨て、自身の腰から引き抜いたものとハイモックから奪い取ったもの、ヒートホークを二刀流に構える。
『……ジルバ・Oガンダム。ジルが使っていたガンプラだ。少なくとも、データ上じゃあな』
「ケッ、実に役に立つ情報だぜ……来いよ! 死にぞこない!」
「――アアアアァァァァァァァァッ!」
きっと本来は透き通ったソプラノだったであろう、悲鳴のような絶叫。ジルバ・Oは月面の岩塊を蹴散らしながら跳躍、真っ赤なGNビームサーベルを、大上段から振り下ろす。サカキは左のヒートホークをGNビームサーベルの側面に叩きつけ、太刀筋を反らすと同時に反動で身を躱す。姿勢を崩したジルバ・Oの顔面に右のヒートホークを振り下ろすが、その刃は紅く煌く粒子のフィールドに阻まれ、届かない。
『ヤツは両肩にGNシールド二枚持ちだ! 防御は固ェぞ!』
「へいへい、りょーかい!」
「ウゥアァァァァァァァァッ!」
斬り返しのサーベルを間一髪で躱し、サカキは再び距離をとる。だが、旧ザクのバーニアを全開にしたところでトランザムの出力に敵うはずもなく、ジルバ・Oはまた一瞬で、サカキをサーベルの圏内に捉える。
「タタ、イ、タイカカカカ、アアイィィィィアアアア!」
言葉にならない、ジルの叫び。振り乱した銀色の前髪の奥で、赤い瞳が狂喜に歪む。その瞳の色と同じ真っ赤なGNビームサーベルが乱れ撃ちに繰り出され、空間に何重もの真紅の弧を描く。サカキは両手のヒートホークで切り払い続けるが、嵐のような連撃に、身を守るので精一杯だ。
『おいサカキィ、相手はサーベル一本だぞ! 気合入れて打ち返せェッ!』
「トランザムしたガンダム相手にオレぁ旧ザクだぞ! ちったあ褒めてくれてもいいんじゃあねーかぁ、ナツキちゃんよぉっ!?」
「アアァァ――ハハハハハハハハッ!!」
ジルは突如として高笑い、両肩のGNシールドから凄まじい勢いでGN粒子が噴出し、GNフィールドが爆発的に膨れ上がった。その圧力にサカキの旧ザクは一気に千メートルも吹き飛ばされ、盛り上がった月面クレーターの縁に衝突した。
「あぁっ、クソっ! これだから近接は……ナツキちゃん、銃くれよ、銃!」
『だろうと思って補給コンテナ送ってらァ! 到着まで120秒!』
「ひゃ、120ッ!? その間どうすんだよっ!?」
『……根性ッ!』
通信画面の中のナツキが、良い笑顔&ばっちりウィンクで
全力ダッシュする旧ザクの足跡を撃ち抜くかのように、ジルバ・OのGNバルカンが月面に突き刺さり、岩盤を掘り返していく。
「イアアア、アイ、タ……タ、イイ! シィ、アァァァァッ!!」
ジルの絶叫とともに襲い来るジルバ・O、その両手には大型のナックルガードのようにGNシールドが装備されていた。バーニア全開で無理やり逃げ出した旧ザクが一秒前までいた場所を、GNフィールド全力全開のGNシールドが豪快にブッ叩く。スレッジハンマーのようなその一撃は、岩石質な月面の地表に新たなクレーターを穿った。
「おいおいおいおい! モビルファイターかよッ!?」
『ビビってる場合かァ! あと90秒ッ!』
「タ、タ、イイイイ……シイイ、タアァァァァァァァァ!」
ジルの叫び声はさらにテンションを高め、それに呼応するかのようにトランザムの赤い粒子も輝きを増した。ジルバ・Oは獣のように全身を使って大ジャンプ、上空で四肢を大きく広げると、その両手からGNシールドが射出され、急激な弧を描いて旧ザクへと襲い掛かってきた。
「ふぁ、ファンネルだってのかぁッ!?」
『あァ、思い出したッ! GNシールドビット、ジルの得意技だったァッ!』
「だっ……からぁっ! ナツキちゃんがオペレーターなんてよぉぉッ!」
降り注ぎ、飛び掛かり、突っ込んでくるGNシールドビット。サカキはギリギリのところで回避し続けるが、ほぼ無改造の旧ザクでは性能に限界がある。GNシールドビットが掠るだけで装甲は切り裂かれ、切り払おうとしたヒートホークの方が
「くっ、そ……! ナツキちゃん、銃はッ!? 銃はまだかよッ!?」
『あと60秒ッ、装備は投下と同時に自動で即時更新ッ! もたせろよォッ!』
「だあぁっ、クソッ! もってくれよ旧ザクちゃんよぉぉ!」
しかし、サカキがそう叫んだ直後。GNシールドビットを切り払おうとしたヒートホークが、ついに限界を超えてしまった。砕け散るヒートホーク、突き抜けたGNシールドビットが、旧ザクの右膝に深々とめり込み、膝関節を打ち砕く。
「ち、畜生ッ!」
「イィィハハハハハハハハハハハハァァァァ!」
膝を砕かれ月面に崩れ落ちる旧ザクに、ジルは歓喜の叫びを上げながら突撃する。サカキはフットペダルを踏み込むが、それを察知したかのように、もう一基のGNシールドビットがバックパックを直撃。メインバーニア大破、機体の耐久力は限界寸前。身を躱す術もない――嬌声の如きジルの高笑い。貫き手に構えたジルバ・Oの右掌が、
(ああ、結局……こんなモンかよ……)
全てが、スローモーションに見える。鋭い凶器と化したジルバ・Oの指先が、真っ直ぐにコクピットへと、自分へと向かってくる。サカキはその光景を目の前にして、コントロールスフィアを握る手から力が抜けていくのを感じていた。
俺なんか。頑張ったって、どうせ、また負ける。
〝
(そんなに簡単に、変われるわけねぇか。俺なんかが……)
諦めに、心が支配されかける。しかし、コントロールスフィアから手が離れる、その直前。サカキの脳裏に、一つだけ。たった一つだけ、小さな後悔が生まれた。
自分の手を握る、小さな手。ほとんど素組みの、壊れかけのエクシア。
……おにいちゃんが、〝せいぎのみかた〟なの……?
(悪ぃな、ガキ……俺なんかじゃ、〝正義の味方〟には……)
――しかし訪れない、最後の瞬間。サカキの耳に届いたのは、聞きなれたシステム音声の、聞きなれない言葉。
《
「……えっ?」
無塗装で、ゲート跡の処理も不完全で、ブレードアンテナは片方が折れ、全身の数か所に亀裂が入った、壊れかけのガンダムエクシア――ジルバ・Oの一突きは、盾のように掲げられたGNソードに突き刺さり、止まっていた。
「え、お、おい……ガキ、おまえ……!?」
『あ、アユム!? 何してンだよッ!?』
「ごめん、ナツキせんせぇ……でも、ぼくたちもがんばらなきゃって! みんなで、きめたんだ!」
『み、みんなって……おわァッ!? て、テメェらいつの間にっ!?』
ナツキのオペレーター席の中に、十人近い子どもたちがわらわらと雪崩れ込んできた。その手にはそれぞれガンプラを――ジルバ・Oによって傷つけられた自分の愛機を、しっかりと握り締めて。
「おにいちゃんとは、さっきあったばかりだし……おにいちゃんのことは、ぜんぜんしらないけど……でも、ぼくたちのためにたたかってくれた!」
「きんぱつで、つんつんで、ふりょーだけど……」「あのこわいガンプラを、たおそうとしてくれてる!」「ナツキせんせーのなかまなら、おれたちのなかまだ!」「旧ザクでもこんなにつよいなんて、すごいよ!」「かおはこわいけど、いいひとなんだね」「ガンプラがぶじだったら、いっしょにたたかいたかったのにー!」「おにいちゃん、がんばれー!」
集まった子供たちは、口々に、好き勝手に、言いたいことを言う。ナツキはその様子に最初は何か言おうとしていたが、ふっと息を吐くと、通信ウィンドウ越しにサカキの目を見つめた。
『……ってな感じだァ。どうするよォ、サカキィ?』
「どう、って……いや、その……」
目の前の〝現実〟に、脳内の処理が追いつかない。
なんだ、このガキどもは? どうして俺なんかを? 初対面だろ? いっしょにとか、なかまだとか、一体、何が……なんで……俺を、俺なんかを……応援、してくれるんだ……!?
「アアアア! タアァァァァァァァァッ!!」
バギィィンッ!!
ジルの絶叫とともに、GNソードが粉々に砕け散った。月にクレーターを穿つパワーを持つジルバ・Oを、素組みのガンプラで止められるはずもない。アユムは「あっ!?」と叫んで反撃しようとするが、ジルはそんな隙など欠片も与えず、エクシアの胸を蹴り飛ばした。その一蹴りだけでエクシアの胸部装甲はほぼ全壊、アユムの眼前は一瞬にして真っ赤な警告表示で埋め尽くされてしまった。
「お、おいガキぃっ! 大丈夫かっ!?」
サカキはエクシアに駆け寄ろうとするが、それと同時、旧ザクの膝とバックパックからGNシールドビットが勢いよく飛び立ち、その反動で旧ザクは頭から月面に突き倒されてしまう。
「クソっ、機体がもたねぇか!?」
「アァァァァハハハハハハハハ!!」
「させないっ! トランザァァムっ!!」
旧ザクに襲い掛かるジルバ・Oに、トランザムを発動したエクシアが全身全霊の体当たりで突っ込み、吹き飛ばす。しかしただでさえ半壊状態だったエクシアは、体当たりの衝撃に耐え切れなかった。砕け散るプラスチック、折れる3ミリジョイント、エクシアの手足が宙を舞う。ガンプラへのダメージが現実に反映されるこのバトルにおいて、それはつまり――
「おいガキっ、おまえのガンプラ……っ!?」
「ぼくはいいから! こいつをたおしてっ、おにい」
エクシアの残骸は粒子の欠片となって霧散し、アユムからの通信はブツリと途切れた。
「シィィアアァァァァッ!!」
耳をつんざく奇声を上げて、ジルは月の重力を振り切らんばかりの勢いで跳躍。サカキに確実にとどめを刺すべく、両腕に戻したGNシールドビットを大きく振りかぶり、急降下した。落下の勢いも載せた、強烈なハンマーパンチを叩きこむつもりだ。
サカキはもはや
「……負けられねぇ」
『サカキぃっ! 補給コンテナ、来るぞ!』
垂直落下するジルバ・Oの背後から迫る、蒼く煌く砲弾型の彗星。流星の勢いで射出された補給コンテナが、ジルバ・Oを追い越し、サカキの旧ザクを直撃した。青い光が弾け飛び、〝補給物資〟が解放される。
ジオン系MS特有の、力強い曲線を描く装甲。両肩のシールドに搭載された、小型の円筒。中世の騎士の兜のような、独特な頭部造形。
「負けてッ、たまるかァァァァァァァァァァァァッ!!」
ガッ、ギィィィィィィィンッ!
衝突、そして衝撃。大気の薄い月面に、粒子の嵐が吹き荒れる。
『使えよ、サカキィ! 今のテメェなら、もう間違わねェだろ!』
――ヤクト・ズール。峰刃学園高校ガンプラバトル部〝
「……ああ!」
サカキは短く答えてジルバ・Oを振り払い、サカキは久しぶりの愛機のコクピットをぐるりと見まわした。武装スロット表示を見なくてもわかる、身体に馴染んだ機体の感覚。選んだ武装は――
「行けッ、ファンネル!」
ヤクト・ズールの両肩から、鋭い弧を描いて飛び立つ計十二基のファンネルたち。目にも止まらぬ高機動でジルバ・Oを取り囲み、そして一斉にビームを放つ。
「カカカ! アハカハハハ!」
ビシュ、ビシュゥゥン! ビュゥゥゥゥンッ!
全方位から撃ち込まれるファンネルの細く鋭いビームを、ジルバ・Oは最大出力で展開したGNフィールドで弾きつつ後退……した、その足元に、すでに一基のファンネルが待ち構えていた。
「置きファンネル、ってなぁ!」
ビュゥゥンッ!
ジルバ・Oが踏もうとした岩場をファンネルが射抜き、溶解させる。溶けた岩を踏み抜いたジルバ・Oは大きく姿勢を崩し、膝をついた。その隙を逃さず、ファンネル全基による全周囲からのビームの五月雨撃ちで、メガ粒子の集中豪雨を叩きつける。
「タタアアァァッ! シァァアアーッ!」
ジルバ・OはGNシールドを掲げて身を守るが、激しいファンネルの火線に、分厚いGNフィールドが見る見るうちに削られていく。弾け飛ぶGN粒子と降り注ぐビームの閃光に、視界は塞がれ、耳は爆音に
だからジルは、サカキの次の一手に気付くことができなかった。
「もらうぜ、銀色幽霊女ぁッ!」
ファンネルたちの猛烈な連続射撃がついにGN粒子を削り切り、GNフィールドは薄いガラスのように割れ砕けた。それを合図に、ファンネルたちは一斉にジルバ・Oを取り囲み、細く絞り込んだ高出力ビームで光の檻を形作った――しかしその光の檻には、一か所だけ、大きく開けた場所があった。ジルは長い銀色の前髪に隠れた赤い瞳で、その空間の先にあるものを見た。
ヤクト・ズールの円形シールドに並んだ四つの砲口、そこに渦巻くメガ粒子の光を。
「ブッ飛びやがれええええええええッ!」
ドッ、ヴァアアアアアアアアアアアアアアアア――!!
四連メガ粒子砲、最大出力による極大放射。灼熱のメガ粒子の奔流が四重の螺旋を描き、月面を抉りながら迸る。
「アハ……タ、タカ……イ、ハ……」
眩いばかりの銀色の塗装は黒く焼け焦げ、あるいは蒸発し、ジルバ・Oは辛うじて人型をとどめている、溶け落ちたプラスチックの塊と化していた。ジルとの通信画面にはSOUND ONLYとだけ表示され、苦し気な……しかし、意外にも穏やかな吐息と、途切れ途切れの言葉だけが聞こえてくる。
「タタ……タノ、シ……イ……ナ……」
ジルバ・Oの残骸が粒子化し風に舞うように散っていく。機体がすっかり粒子化してしまった後に、一瞬。ジルのアバターが、月面に現れたように見えた。〝
『……ジル。テメェは……』
ナツキは、ジルの最後の一言を噛み締めながら、天に昇っていく粒子の輝きを見送った。
《――BATTLE ENDED!!》
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
――その、翌週――
「ねーねー、おにいちゃーん。ぼく、おにいちゃんみたいにファンネルでたたかいたいよー!」
「あぁん? 生意気言うな、一万光年早ぇよ。ビームサーベルでも振り回してろっておい、まだパテ乾いてねーだろーが! うかつに触んな!」
「きゃはははは♪ きんぱつー、あそんでー♪」
「だーかーらー、お前らと遊んでる暇なんかねーっつーの! 俺があと何体ガンプラ修理すると思ってんだよ!」
「きゃー、ふりょーがおこったー!」
「りんちされるー! かこんでぼこられるー!」
「意味わかってんのかこのガキどもがぁぁっ! ンなことするかボケぇぇぇぇっ!」
「あはははは! こわいー、ナツキせんせーにちくるぞー!」
「んなっ!? それはやめろぉぉぉぉ!?」
「おにいちゃん……ぐすん。うでのぼうが、おれちゃった……なおしてぇ……ぐすんぐすん」
「あー、もう、やってやるから泣くな! んでお前はそれに触るなっ、塗装がぁぁ!」
――峰刃学園高校三年一組、ガンプラバトル部所属〝
結論:サカキ君はショタに目覚めました。
……ってなわけで、随分お待たせしてしまい申し訳ありませんでした、第六話Bパート、ナツキ&サカキのお話の後編でした。
このお話は交流戦構想の供養という作者のわがままマシマシでしたが、今後のストーリーに繋がる伏線も込めたつもりです。「王」とか。
サカキにヤクト・ズールを返したナツキ先生ですが、ここまで頑張ったサカキにはどちらにしろヤクト・ズールを返すつもりでした。アユムの乱入でドラマチックな感じになりましたが、あの補給コンテナの中身は最初からヤクト・ズールだった、ということになります。
ちなみに、書いてもあまり面白くなさそうだったので本編中では書いていませんが、サカキ君はラストのシーンでショタたちと戯れる前に「新入生狩り」で迷惑をかけた相手に謝罪にまわっています。アンナにも直接頭を下げに行きました。という設定です。
……なんだか、あとがきで設定等の説明が多いって、あまりよくないですね。少し間が空いたことで、文章力が落ちてるのかもしれません……本編でちゃんと書こう……(反省)
第六話Cパートでは、また主人公を変えての挿話的なものになる予定です。
まだリアルの仕事が忙しいので、お届けするのは遅くなるかもしれませんが……また読んでいただけると嬉しいです。感想・批評もお待ちしています!