またもや間が空いてしまいましたが、その間に大変な大ニュースが飛び込んでまいりましたね!
ビ ル ド ダ イ バ ー ズ 新 作 決 定 !
これは期待せざるを得ない。主人公らしき人物とガンプラもチラ見せされましたし、今からもう放送が楽しみで仕方ありません。新しいガンプラも発売されるでしょうし、これはまたビルダー魂が震えますね。
……まさか、私の前作の時のような公式とのネタ被りはもう起きないだろうなあ……ダイバーズが放送されたとき、全世界で私が一番衝撃を受けた自信があります(笑)
兎も角。第六話Cパートです。
今回の主人公は不機嫌眼鏡と腹黒仔犬です。どうぞご覧ください!!
《
鬱蒼と生い茂る巨大樹の森、古代文明を思わせる石造りの階段ピラミッド。おそらくは住民の手作業によるのだろう木造住宅と田畑が、所々で森を切り拓き、小さな集落を作っている――しかし、それらの全てはイミテーション。生い茂る巨大樹は遺伝子操作によってそうなるように品種改良された樹々だし、古代のピラミッドはレジャー施設として建造されたものだ。耕された田畑の地下には厚さ数十メートルもの鋼鉄の円筒がぐるりと巡り、真空の宇宙空間にほんのわずかな人類の生活空間を保証している。
ここは、機械文明を否定して機械仕掛けの円筒に引きこもった、
そんなムーン・ムーンの空を、三機のモビルスーツが翔け抜けた。
「ひあっ、わあっ!?」
飛行するモビルスーツ群の先頭で集中砲火を浴びつつ逃げているのは、アンナのガトキャノン。両肩にシールドブースター、バックパックには大型のビームキャノンと一体化した一対のフライトユニットを備え、さらに追加の大型シールドブースターまで背負っている。大型で重量級のガトキャノンに、高い機動性と飛行能力を与える高機動装備だ。
一方、追いかけるのは、ショッキングピンクでカラーを揃えたカオスガンダムとレイダーガンダム。SEEDの新旧三バカから飛行型可変機枠で揃えてくるチョイスは悪くはないが、色のセンスはかなり独特だ。しかも機体にジュエルシールをキラキラとデコりまくり、見た目はお世辞にもセンスがいいとは言えない。
だが、バカスカ撃ってくるビームの狙いは意外にも正確。可変機本来のスピードも活きており、重量級の機体をブースターの出力で無理やり飛ばしているガトキャノンでは、このまま逃げ切ることができないのは明白だった。
「しし、シキナミ先輩っ。予定地点まで1500ですっ、きゃあ!?」
ビュバッ、ゥゥゥゥン!
SEED系特有の赤と白の極太ビームがシールドブースター表面を焦がし、ガトキャノンの姿勢が乱れる。あまり得意ではない高機動形態の制御に、アンナは舌を噛みそうになりながらもシオミに報告する。
「あと1000っ。じゅ、準備はどうで、ひぃんっ!?」
「落ち着いて、アンナさん。こちらの準備は完了しています」
涙目のアンナに対して、シオミはあくまでも冷静。地形図、事前にマークしておいた地点、敵機の観測情報、予測到達時間。それらを素早く精査して、シオミは改めて頷き、片手で軽く眼鏡の位置を直した。操縦席を取り囲むように表示されていたいくつもの情報ウィンドウを、右手を軽く一振りして全て閉じる。コクピットの全天周モニターに、自分のほぼ全周囲を取り囲む深い樹海と、一方だけ開けた方向に銃を構える自機の腕が映し出される。
部分的にフレーム構造の露出した軽量型MSの腕と、四角い銃身のビーム・スマートガン。それ以外の部分は森林迷彩柄のABCマントに覆い隠されており、シオミのガンプラの全容は見えない。
(仕込みは完璧。経過も良好――大丈夫、ここまでは作戦通りよ)
「ジュンビ、カンリョウ! ジュンビ、カンリョウ!」
「ええ、わかってるわハロ」
ブルーブレイヴのチームカラーである濃いブルーに塗られたハロが、耳(?)をパタパタさせてシオミに告げる。
ブルーバードの艦長席でチーム全員分の情報を同時に捌き、戦術予報をしていたことを考えれば、今扱っている情報量など大したものではない。しかし、自分で引き金を引くということの、なんというプレッシャーか。
「……やってみせる」
シオミはぐっと息を詰めて、実銃そっくりの狙撃用デバイスを構えた。まるでロックオン・ストラトスのようにスコープを覗き込むと、眼鏡のレンズにレティクルが投影される。敵観測情報、ガトキャノンと同期。予定地点まで、あと500……300……100……!
「おお、お願いしますっ、シキナミ先輩っ」
数発の被弾はしつつも、ガトキャノンが目印の巨木の上空を翔け抜けた。数秒遅れてカオスが、さらに一瞬遅れてレイダーが巨木の真上を通り過ぎる。
「ハロっ!」
「リョーカイ! リョーカイ!」
シュババババッ!
ハロはシオミの合図を受け、巨木に括り付けていたトリモチ爆弾を起爆した。宇宙世紀作品で頻繁に用いられる、モビルスーツの動きすら拘束する特殊粘着剤、トリモチ。蜘蛛の糸のように広がった乳白色の物質が一瞬にしてレイダーを絡め取り、その身動きを完全に封じた。
トリモチによる予想外の奇襲に驚くレイダーを、シオミのレティクルがぴたりと捉える。
「動かない的になら、私でも……!」
ビュォォォォォォォォ――ッ!
長く尾を曳く、独特な銃声。ビーム・スマートガンの細く絞り込まれた高出力ビームが、レイダーの腹部を一直線に撃ち抜いた。レイダーは真っ赤な火球となって爆発、トリモチの絡みついたプラスチック片が辺り一面にばら撒かれる。
待ち伏せは想定外だったらしく、カオスの挙動が目に見えて動揺した。足を止めてMS形態に変形、樹海に紛れるように伏せていたシオミの機体へと銃を向ける。
しかし、それはつまり、ガトキャノンに背を向けてしまうという、愚行でもあった。
「さっきはぁ、よくもぉ……」
可愛らしく頬を膨らませて怒り顔を作るアンナは、しかし全く可愛らしくない重火器の数々をカオスへと向け、何のためらいもなくトリガーを引きっぱなしにした。
「お返しですっ!」
ドガガガガガガガガガガガガ! ビュオッ、ビュォォン! バガガガガ! ドガララララララララララララララララララララララララ!
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
――砲声、銃声がしばらく続き、そして鳴りやんだ頃。
「周囲3000に敵影無し……ですが、油断はできませんね。コロニー内なんて、そんなに広いフィールドではありませんから」
「は、はいっ、シキナミ先輩っ。でも、これで3チーム撃破ですから、そろそろ試合も終盤ですね。初出場・初優勝、できちゃうかも……ですよねっ」
シオミは機体に偽装用ABCマントを被せたまま、慎重にスコープを巡らせていた。巨大樹の森にしゃがみ込み、姿勢を低くして銃身冷却とプラフスキー粒子の弾薬変換作業中のガトキャノンがいる。そして、コロニー特有のせり上がっていく地平線を半周したガトキャノンの丁度真上、こちらからは天井に見える地点には、モビルスーツよりも大きな階段ピラミッドがあった――たった今、ピラミッド付近で爆発。火球の大きさからして、あれはモビルスーツが撃破された光だ。
「戦闘は続いています。その油断が命取りになりかねませんよ、アンナさん。残存チーム数は……」
シオミは周辺警戒を続けつつ、マップを操作。この大会では、通常のガンプラバトルと同じく敵の位置こそ表示されないが、各チーム・各機体の生存状況はリアルタイムで公開されることとなっている。
マップ上に表示された残存チーム数は――2。
(……私たちと、あと一つ!? なら、さっきの光は!)
シオミは反射的に、スマートガンの銃口を天井のピラミッドへと振り上げた。ほぼ同時、ピラミッドから飛び上がる――飛び降りる――兎も角、猛スピードでガトキャノンへと突っ込んでいく大型モビルスーツが一機。
「アンナさん、回避を!」
「うわぁひぃぃっ!?」
ドッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッ!
響く轟音、巻き上がる巨大樹の破片と木の根混じりの土砂。そして、
『おーっほっほっほっほっほっほっほっほ!!』
落着の轟音を掻き消すほどの大音量で鳴り響く、高飛車極まる高笑い。
衝突直前にシールドブースター全開で飛び出したアンナは目を白黒させながら姿勢を立て直すことしかできなかったが、シオミはその聞き慣れた高笑いに、深い深いため息を吐いてしまった。
「……ユリネさん。またあなたですか」
どう見ても過積載状態の機体を支えるのは、これまたミサイルやブースターを積んだ野太い脚部が、一本、二本――三本、四本。
その立ち姿はまさに、鉄の猛牛。重火力かつ重装甲の多脚歩行戦車。四本足の大型ドム・タイプが、威嚇するように両手の重火器を高く掲げた。
『さあ! さぁさぁさぁさぁっ、シキナミ・シオミっ! ここであったが百万年ですわーっ!』
『……百年目、だよ……ユリちゃん……』
『ややや、やっかましいですわ、イサミ! 百万年ぐらいの因縁という意味ですわよ!』
「……はぁ。夫婦漫才は聞き飽きましたよ」
シオミ、さらにタメ息。上下に並ぶ複座式のコクピットの中で、真っ白いフリルに
「し、シキナミ先輩……このヒトたち、なんなんです?」
「……腐れ縁、とでも言うべき面倒な人たちです」
シオミはこの短時間に三度目となるため息を吐きつつ、アンナに相手ダイバーの情報を送った。今大会の出場者データに頼るまでもなく、当たり前のようにダイバー情報が表示される。それもそのはず、相手ダイバーは峰刃学園ガンプラバトル部の生徒だったのだ。
峰刃学園高校二年三組、ユリネ・サユリ。同じく二年三組、スナバラ・イサミ。両名共に峰刃学園高校ガンプラバトル部、エレメント〝ディザート・リリィ〟所属――シオミとは、同期入部ということになる。
(私がオペレーターに集中するようになってから、会わなくなったと思っていたけれど……久しぶりにガンプラに乗った途端に、こうなるのね……はぁ)
「部活の先輩さんじゃあないですか。おんなじ大会にエントリーしてたなんて、奇遇ですねっ」
「奇遇……では、ないのでしょうね。彼女の場合は」
「えっ? どういうことですか?」
「いえ、何でも。彼女たち相手に距離をとるのは危険です。アンナさん、中距離以内に張り付いてください。背中の大型砲に注意を、シールドごと撃ち抜かれますよ」
シオミは眼鏡の位置を直して頭の中を切り替え、アンナへ指示を出しつつ、フィールド各所に仕込んだトラップの位置を再確認した。
まともなぶつかり合いでは、機体性能でも自分自身の技量でも、彼女たちには勝てない。アンナのガトキャノンは心強いが、それを計算に入れても、正面衝突は分が悪いだろう。特に、敵機の主パイロットであるスナバラ・イサミの強さは、そう判断するに値する。
(……こうなることも、予測するべきだったかしら……)
狙撃用スコープに四本脚を捉え、トリガーに指をかける。臨戦態勢に入りながらも、シオミはそもそもこの大会に参加することとなった経緯に、思いを馳せずにはいられなかった――
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
GBNにおいて「ナデシコ」と名がつく各種大会やコンテストは、女性ダイバーであることが参加資格となっているのが通例だ。
ガンプラに絡めた多種多様な競技で、女性ダイバーたちが白熱したレースを繰り広げる「ナデシコアスロン」。ガンプラのみならず、ダイバー自身の徒手空拳の技をもぶつけ合う「機動武闘姫伝ナデシコファイト」。ガンプラとダイバー、双方の美を競い合う「マギー&シャフリヤール・ビューティフル・ナデシコガールズ・コレクション」――女性ダイバー限定という華やかさから、美女や美少女のダイバーたちに注目されがちな各種〝ナデシコ〟大会だが、勿論、純粋にガンプラバトルの腕前を競い合う大会もある。
「ナデシコ・タッグバトル・カップ……ですか?」
「は、はいっ。い、いっしょに、しゅちゅじょ……っ」
かぁーっ。そんな擬音が聞こえてきそうな勢いで、アンナの顔は真っ赤に茹で上がった。アンナの声は意外と大きく、峰刃学園ガンプラバトル部のフォースネストたる古城の中庭、そこに作られた休憩スペース中に響き渡っていた。北欧風のベンチやティーテーブルを囲んで休憩していた部員たちのあちこちから、くすくすと忍び笑いが漏れる。
「あわわ……そ、そのぅ……しゅ、出場してもらえませんかシキナミ先輩よろしくおねがいしますっ!」
恥ずかしさを誤魔化すため、アンナは仮想実体表示させたメールアイコンを、両手で勢いよくシオミへと突き出す。真っ赤になった顔は俯かせたままで手紙を突き出すその姿は、傍から見れば、憧れの先輩にラブレターを渡す後輩に見えなくもない。女の子同士の禁断の関係、というやつ――
(――なのですよー! なんて、イマさんがいたら騒ぎ立てるのでしょうね)
ライとイマがガンプラ改造作業のためチームを一時離脱してから、早一週間。エレメント〝ブルーブレイヴ〟として、コウタ、アンナ、シオミの三人で活動するのにももう慣れたが、あれほど鬱陶しかったイマのハイテンションぶりも、いざ、いなくなると寂しいものだ。コウタと二人きりで活動していた去年までと比べると、なんと気持ちの変化したことか。
シオミは手に持っていた縁の薄いティーカップを置くと、眼鏡の位置を片手でクッと直し、アンナからのメールを受け取った。
――女性ダイバー限定大会〝第五回ナデシコ・タッグバトル・カップ〟、通称〝
「……あら? アンナさん、これは……」
アンナが差し出したメールの内容に、シオミは珍しく目を見開いた。
「あ、はい……えへへ。先週のこと、なんですけど……予選、突破しちゃってまして……」
――ガトウ・アンナ&ヒムロ・イマ組。予選第十二組、優勝。本戦への出場権を獲得。
メールにはそう記されていた。それなりに名の知れたダイバーも出場するアレックスカップを、初出場で予選突破とは大したものだ。
だが、シオミが目を見開いた理由は、それだけではない。「ガトウ・アンナ&ヒムロ・イマ組」の後に、括弧付きで記されていた文字。
――(補欠:シキナミ・シオミ)。
「アンナさん、私はいつ補欠に?」
「えっ……あっ、そのぅ……い、イマちゃんが、OKもらってきたよー、って……」
アンナの目が泳ぐ。サンダーボルト版のアッガイ並みに。
言われてみれば少し前、試合のための作戦立案で忙しかった時に、イマが嬉しそうに楽しそうに何か言ってきていたような気がする。
『しおみん先輩っ、忙しそうなところ悪いのですがアンナさんが今ならいけると言うので来ました! 何も言わずにこれにタッチしてしょーにんを! ありがとうございます!』
『ちょ、なにを……あー、もう、面倒ですね。ほら、はい!』
『ひゃっほー! しゅつじょーなのです! アンナさーん♪』
……あの時か。そして、イマが一時離脱してしまったので、ないはずだった補欠の出番が来てしまった、と。イマのセリフとアンナの目の泳ぎ具合からだいたいの事情は察したが、シオミはため息を一つ吐くだけで諸々の言葉を呑み込んだ。
「……この大会は、GBN運営本部公認のものでしたね」
「あっ、は、はい……」
「でしたらこの大会での戦績も、エレメントポイントに換算できますね」
「えっ……じゃあっ」
さっきまでの視線スイミング状態から一転、アンナの表情はぱぁっと明るくなり、人懐っこい仔犬のような笑顔になった。アンナのスカートからふわっふわの尻尾が伸びて、勢いよく振られているのが見えるような、満面の笑みだった。
シオミはため息をつきつつ眼鏡の位置を直し、久しぶりに自身のガンプラをデータストレージから呼び出し、仮想実体化させた。
コウタの、ブルーブレイヴの専属オペレーターとなる前にシオミが使っていたガンプラ――S2アストレイ・グレイズフレーム。
コウタと同じ、SEED系とオルフェンズ系のシルエットがミキシングされたミリタリーテイストの機体が、瀟洒なティーテーブルの上に出現する。
「先輩は大学の説明会で不在ですし……女性限定大会、今の私たちにはちょうどいいですね。やりましょう、アンナさん。
「はっ、はいっ。がんばりましょう、シキナミ先輩っ」
アンナは満面の仔犬のように小さくジャンプして、胸の前で両手をパンと打つのだった。
〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕
――そんな二人に、正負の情念が複雑に入り交じった視線を向ける、女が一人。
「きぃぃぃぃっ! シキナミ・シオミめ、もう一年生とあんなに親しく! なぜわたくしには可愛らしい後輩の一人も寄り付かないのにっ、あんな年中しかめっ面の不機嫌眼鏡女なんかにぃぃぃぃっ!」
「ユリちゃん……あたし、何も見えない……」
「イサミは黙ってなさいっ! この美しき白百合たるユリネ・サユリのいったいどこが、あの眼鏡に劣っているというのかしらっ!?」
「んー……身長?」
「イぃぃぃぃサぁぁぁぁミぃぃぃぃっ! しばらく黙っていてくださるッ!?」
「……あいあいさー」
「ふふっ、それでよいのですわ、イサミ。持つべきものはデカくて強くて頑丈な友人ですわね。生垣を越えてシキナミ・シオミの弱点を探るためにも、さあ、気合入れて肩車を続けるのですわ!」
「そだねー……ユリちゃん、140ないもんね。仕方ないね……」
「わわわ、わたくしはまだこれからなだけですわ! 黙って持ち上げ……あっ、転送しちゃいましたわ!? って本戦開始までもう数分しかありませんわ!? わたくしたちも行きますわよっ、イサミ!」
「あいさー、ユリちゃん……エレメント〝ディザート・リリィ〟。ドドムム・バイン……しゅつげき、しんこー……!」
以上、第六話Cパートでした。
シキナミ先輩にもガンプラに乗ってほしかったのですが、あまり強いとじゃあなんでオペレーターなんだよとなっちゃうので実力的には中の中か、中の下あたり、ただし情報収集とトラップの活用が得意、という感じで描写したいと思います。
第六話はDパートで終わりの予定です。女たちの戦いに乞うご期待です。
感想・批評お待ちしています。どうぞよろしくお願いします!