この夏は更新頻度が落ちまくりだったので、八月中になんとかここまでは頑張ろうということで、連続更新してみました。
第六話の追加シナリオ?番外編?的な感じです。いつもの半分以下の文字数ですが、お楽しみいただければと思います。
「おぉーっ♪ 見てくださいマスター、アンナさんとしおみん先輩、じゅんゆーしょーだそうですよー♪」
作業机の端にホログラフ表示された中継画面が映し出すのは、GBN内のニュースサイトによるナデシコ・タッグバトル・カップの速報だ。優勝〝ディザート・リリィ〟、準優勝〝ブルーブレイヴ〟――強豪校として名高い峰刃学園からの参加チームがワン・ツーフィニッシュということで、大きく取り上げられているようだ。
HGFCシャイニングガンダムの空箱に腰かけていたイマが、ぴょいんと跳ねるように立ち上がった。キラキラおめめから星を散らして頬を紅潮させ、ガッツポーズともダンスともつかない謎の動きで興奮を表現している。
「……ああ。そうだな」
ライは画面に目を向けつつ、踊るイマの近くから青の塗料瓶を動かした。興奮したイマが塗料瓶に足を突っ込んだら、有機溶剤でイマの
一度、部室でその作業をしていたら何人かの男子部員が鼻息荒く見学を申し出てきたので何となく気に入らずガンプラバトルでボコボコにしてやったが――
「ほらほらマスター、お祝いの舞いをご一緒に! なのですよーっ♪」
――全長15センチ程度しかない拡張実体状態のイマだが、こうも無邪気にはしゃいでいる姿を見るのは、まあ、悪い気はしない。もし自分に年の離れた妹でもいたら、こんな気分なのだろうか。
(同じ〝妹〟でも……レイとイマでは、まるで違うな……)
ヤジマのセーフハウスで過ごした〝家族〟との日々が脳裏に浮かび、ライの仏頂面がわずかに緩む。六年前、あの男のアジトから救出されたばかりレイとライは、何もできない子供だった。
レイは、心の傷から、ライは、罪悪感から。
しかし、そんな何もできない幼い二人以上に不器用で、そして同じように傷ついていた大人二人が、一生懸命に〝家族〟をやろうとしてくれていた。
その姿にライは再び前を向く勇気をもらったし、レイは日に日に笑顔を取り戻していった――それから一年が経つ頃には、レイは本来の世話焼きっぷりを取り戻し、親代わりだった大人二人を尻に敷くほど元気になった。
『もう、あんちゃん! 服は脱いだら洗濯機へ! ラミアねぇちゃん、お仕事の時はあんなにカッコイイのになんでおうちでは裸でフラフラするの! ライにぃちゃん、食べ終わったらお皿片づけなきゃだよっ!』
「ひゃっほーっ♪ イマが出場できなかったのは残念ですが、勝ちは勝ちなのですよー♪ にひひっ♪」
しっかり者のレイが踊り狂ってはしゃぎまわるイマを見たら、なんというだろうか。
画面は切り替わり、試合のハイライトへ。アンナのガトキャノンが、四本足のドム・タイプと激しく撃ち合っている。ライはその様子を横目に、再び作業へと戻った。
作業台に置かれているのは、濃淡二色のブルーとガンダムホワイト、そしてアクセントに落ち着いたゴールドや鮮やかなレッドの塗装が施されたパーツたち。
「さて……」
ライは軽く目を閉じ、深呼吸を一つ。バンとの一騎打ちを経て頭の中に結実したイメージを、再確認する。瞼の裏に浮かぶ新たなる愛機の姿……それを構成する機体各部のパーツたち。ゆっくりと瞼を開くと、イメージと寸分たがわぬパーツたちが作業机の上でものも言わずに佇み、組み上げられるのを待っていた。
ライはガンプラを作るときに、塗装前の仮組以降に機体を組み上げることはしない。仮組の段階で念入りに擦り合わせと調整を行い、そこから一機に塗装、全パーツの乾燥が完全に終わってから組み上げる、という手順をとる。
だからライ自身も、彩色された新たなる愛機とは、これから初対面ということになる。
「……やるか」
ライはまず赤く塗ったクツ部を二つ並べ、アンクルアーマー、スネ部、ヒザ関節、大腿部……といった具合に、下から順に組み上げていく。そうしてそこに現れるのは、ウィングガンダムを素体に、シャイニングガンダムの意匠を組み込み、進化したクァッドウィングの姿。
ヒールを高めに調整したクツ部の上に、クァッドウィングから引き継いだフィン状のアンクルスラスターを搭載。引き締まった脚部は、ガンダムらしいホワイトをメインに、金色のマルイチモールドと二種類のブルーで色分けをして完成度を上げている。縁を削り込んだフロントアーマーとサイドアーマーは刃物のように鋭く、リアアーマーには新型のバスターマグナム二丁を吊るしている。
クリスタルがきらりと光る胸部もプラ板加工でディティールを足しており、丸みを帯びていたイメージを一転、多角的で攻撃的なシルエットに変えている。攻撃的なシルエットは鋭く天に向かって伸びる両肩のアーマーにも表れており、一回り太く頑強に改造された腕部と相まって、攻撃力を高められていることが見て取れる。頭部のブレードアンテナ、ウィング系特有の頬あても丁寧に削り込まれて鋭さを演出しているが、顔の造形そのものはシャイニングのそれに近くなっている。
そして、大胆にもほぼ全面を濃淡二色のブルーで塗装し、まさに蒼き翼となった四枚羽根。翼そのものもプラバンの加工により大型化されており、猛禽類の如き力強さがひしひしと感じられる。
「マスター、ついに……」
いつの間に謎のダンスをやめたのか、イマはライの肩の上にちょこんと座っていた。
「ついに、完成なのですねっ!」
イマは興奮した声色で言い、ライの手の中の新機体に熱い視線を注いだ。ライは無言で頷き、完成した新たなる愛機をダイバーギアにセットした。瞬間、プラフスキー粒子の碧い輝きが機体を包み込んだ。機体のあらゆる情報が粒子を介してGBNのシステムへと読み込まれ、それがヒムロ・ライの新たなるガンプラであると認識。
「ここからは、イマにお任せなのですよっ、マスター♪」
イマは満面の笑みでぴょいんとライの肩から飛び降り、ダイバーギアに掌をあてた。得意の瞬間転送で
「さあさあマスター、教えてください。このガンプラの、お名前はっ?」
クァッドウィングから引き継いだ四枚羽根と、さらに攻撃的になったシルエット。クァッドウィングの、自分自身の原点である〝高機動かつ一撃必殺〟に立ち返った、新たなる力。
「……ゼロ、だ」
古今東西様々な書籍や情報をあたり、新機体の名称を考えた。現実・空想を問わず、ネーミング辞典などにもヒントを求め、イマには「中二病の再発なのです!」などと茶化されたりもしたが、ある意味、そうでもなければここまでガンプラバトルになどのめり込みはしない。
そうして考えに考え抜いた結果――結局これ以上に、自分の〝
だからライはゆっくりと、噛み締めるように、繰り返した。
「この機体の名は……クァッドウィング・ゼロだ」
以上、第六話番外編でしたー。
ライの新機体が完成したので、どうしてもお披露目したく、このような形にしてみました。次回こそ第七話、クァッドウィング・ゼロも出撃してのバトルとなる予定です。今後の展開にご期待ください!
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