ガンダムビルドダイバーズ ブルーブレイヴ   作:亀川ダイブ

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第七話Cパートです。

コウメイ・マサヒロの策略とは?
そして、更生したアイツも活躍する予定!?

どうぞお楽しみください。


Episode.07-C『ソウキュウ ヲ マウ ③』

 MSN-04IIナイチンゲール。ガンダム好きなら言わずと知れた化け物じみたその巨体が、轟音とともに崩れ落ちた。

 

『……こ、コウメイ……っ! 読んでいたのか、同盟の事を……!』

「あの組分け表を公開されれば、このぐらいの予想はつく。君がリーダーになることも、な」

 

 涼しげに答えるコウメイ・マサヒロに対し、ナイチンゲールのダイバー……同盟軍のリーダーであった三年生男子は何か恨み言を投げつけたらしいが、それはガンプラの爆発音に掻き消され、コウメイの耳に届くことはなかった。

(ふん。部長(ヒビキ・ショウカ)の思惑に乗せられている感が強いが……まあ、いい。他人の掌で踊ってみせるのも、また一興だ)

 

『隊長。同盟軍の通信回線、掌握しました』

「ご苦労。こちらに回せ」

 

 言いながらコウメイは、砂漠用迷彩を施されたABCマントを脱ぎ棄て、コロニーの残骸の頂上へとフォーミュラ・ジムを踊り出させた。射撃への警戒も何もない、不用心極まりない行動だったが、今このタイミングで彼を撃てるガンプラなどあるはずもない。このエリアは彼とその仲間〝フォウ・オペレーション〟が完全に制圧しており、周囲に散らばって潜伏する同盟軍に指示を出すはずのリーダー機はたった今、撃墜されたばかりなのだ。

 コウメイは高みから辺りを睥睨し、演技がかった仕草でフォーミュラ・ジムにロングライフルを掲げさせる。

 

「同盟軍の諸君。見て聞いていることと思うが、我々は諸君らのリーダー機を撃墜し、通信網を掌握した。よって我々は諸君らを殲滅することも、解散を命じることもできるわけだが……あえて自分はここで、下種な戦術を採ろう」

 

 掲げたライフルの銃口を、コウメイはゆっくりとトリントン基地へと向けた。

 

「今この瞬間より、私が盟主だ。同盟全機、合図があるまでその場で待機。逆らう者は、我が隊がその背中を撃つ」

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

「な、な、なんだってーっ!? つまりどういうことなのですかマスター!」

 

 大仰に驚いておきながら何も理解していないイマが、真剣な顔でライに尋ねる。ライは珍しく自分が手汗をかいていることを自覚しながら、イマに答えた。

 

「……30機近いMS部隊を、〝軍師〟コウメイが指揮する」

「えぇっと……うーんと……マジヤバイじゃないですかマスターっ!?」

『ご理解いただけたようで何よりだ、エルダイバーのお嬢さん』

 

 コウメイが口元に微笑みを浮かべるのと対照的に、イマはジタバタあわあわ、アンナは両手で口元を押さえて涙目になり、ライは眉間のしわを深くした。シオミはギリリと奥歯を噛み締めながらも、各種センサー類をフル稼働、何とか敵の布陣を把握しようと手を動かし続けている。

 その中でコウタはがっくりと肩を落として苦笑い、ため息を吐きながら言葉を返した。

 

「君のガンプラ道精神のおかげで、僕らは全滅していないということかな。コウメイ君」

『圧倒的な多勢に無勢。しかも自分は、逆らえば撃つと脅して軍を動かしている。下種と自覚してこの戦術を採るゆえに、ガンプラ競技者として、せめてもの免罪符として、この通信を送った』

「僕たちと組んで同盟軍の方を何とかするって選択肢は、今更もう選べないんだろうね」

『諸君らは十分に強敵だよ、サツキ・コウタ。前回のトゥウェルヴ・トライブスからさらに成長した諸君らは、もはや難敵とさえ言える。特に、新型の四枚羽根――一対一の近接戦闘では、自分たちはもはや、ヒムロ・ライには勝てない。故に、物量に頼るのだ』

 

 同盟乗っ取りを実行しながら、こちらの戦闘データも収集していたということか。実に抜け目ない。またも情報・戦略両面で後手を踏んでいることに、シオミは唇を噛む。

 

『自分はすでに、勝利への式を組み上げている。どう戦うか見せてくれ、〝ブルーブレイヴ〟の諸君……この通信終了から90秒後、我々は攻撃を開始する。以上だ』

 

 通信が切れるのと同時、レーダーの映りが一層悪くなった。砂嵐だらけのレーダー画面の中で、何とか捉えられた敵機の配置が、次々と変わっていく。同盟軍MS部隊への、コウメイの作戦指揮が始まったのだ。

 

「ささ、サツキ先輩っ、シキナミ先輩っ。さ、作戦は……!」

 

 涙目のアンナは震える声で操縦桿を握り、とりあえず両手のガトリングを基地の外へ向けた。しかしその銃口はカタカタと震え、弾をばら撒くにしても頼りない。

 

「落ち着いて、ガトウさん。大丈夫、考えて動こう……敵の基本戦術を数の利を生かした包囲殲滅戦と想定。シキナミさん、基地施設内の遮蔽物をリストアップよろしく」

『ビームライフル程度なら防げるものは多いですが、メガ粒子砲クラスを防げるものはごく少数です。籠城戦ではジリ貧ですが……打って出るには、あまりにも数が……!』

 

 〝軍師〟とまであだ名されるコウメイ・マサヒロのこと、ガンプラ道精神などというセンチメンタリズムを持ち出してきてはいても、作戦指揮は徹底して現実主義だ。この後さらに〝最高位の十一人〟が二人もいると考えれば、クァッドウィングに近接戦闘をさせることすらなく、数の暴力で遠距離からすり潰してくるに違いない。

 今回、ブルーブレイヴ各機の装備は突撃するクァッドウィングを支援するため、遠距離攻撃兵装が充実している。ガトキャノンとターミガンはシールド複数持ちで、フルシティストライクも射撃耐性の高いナノラミネート装甲だ。包囲されても多少は持ちこたえるだろうが……反撃の糸口が、見つからない。

 都合よく、そして空気を読まず、〝第八位(センセイ)〟あたりが包囲網の後ろから突っ込んできてはくれないかと期待してしまう。

 

(ダメ、そんな偶然なんて。攻撃開始まであと60秒、何か作戦を……戦術を……!)

「だいじょーぶですよ、しおみんセンパイっ! 力量が物量をひっくり返す! ガンダムの世界では、よくあることなのです! にひひっ♪」

「あはは。楽天的だなぁ、イマちゃんは」

『ああもう、何笑ってるんですか先輩っ。物量をひっくり返すなんて、何か決め手になるものがないと……!』

「ふふん! 決め手ならイマにお任せなのです! ローリングバスターライフルで、こう、グルっときゃわっ!?」

 

 がっしゃーん。イマが何も考えずに振り回したバスターライフルが、格納庫のシャッターをぶち壊した。幸い、バスターライフルに損傷はないようだが――と、その時。シオミの眼鏡が、きらりと光った。

 

『……イマさん』

「あわわ、ごごご、ごめんなさ……」

『お手柄です』

「……へ?」

 

 怒られると思って身構えていたイマの口から、変な声が漏れた。シオミは手早くコンソールを操作し、壊れたシャッターの奥にあったものを、全員の画面に共有した。

 

「……そうか、トリントン基地……0083の序盤なら、確かにこいつは……!」

『はい。これは、決め手になります……!』

 

 同盟軍攻撃開始まで、あと30秒。シオミは一瞬で組み立てた作戦を全員に伝え、コウタの「それで行こう!」の一言で、ブルーブレイヴは動き出した。

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

 攻撃まで……3、2、1、0。

 

「同盟全機、攻撃開始」

 

 トリントン基地をほぼ全周囲から取り囲んだ同盟軍MS部隊は、色とりどりのビームとありったけの実弾を、一切の遠慮なくぶっ放し始めた。その様はまるで絨毯爆撃。基地を挟んだ対面の味方を誤射しないよう、やや打ち下ろし気味のビームが次々と基地施設を抉り、降り注ぐ砲弾やグレネードが次々と炸裂する。

 そんな鉄火豪雨の中を、ライたちブルーブレイヴは、2・1・1のフォーメーションで突破しようとしていた。

 先頭の二機はターミガンとガトキャノン、バギー形態のターミガンに騎乗したガトキャノンがシールドを前面に掲げ、文字通りチームの盾となって爆走している。続く二番手は、ターミガンに速度を合わせて張り付くクァッドウィング。そして殿にはフルシティストライクが、四丁ライフルで直撃コースのミサイルや砲弾を迎撃しながら続いている。

 

「ふむ……一見、実直な手だが……」

 

 戦力を集中させての一点突破。数で劣るブルーブレイヴに取れる手段はそう多くないが、ベーシックな手を選んだものだ。ならばこの次の彼らの動きは、大きく四つ想定できる。

 パターン1、あの勢いのまま包囲網を突き抜けて距離をとり、追撃部隊を各個撃破する。

 パターン2、包囲部隊の中に突っ込み、同士討ちを避けたい部隊の混乱に乗じ、中から崩す。

 パターン3、包囲部隊の中で四枚羽根を暴れさせ、射撃型三機で指揮官を討ちに来る。

 パターン4、包囲部隊の中で射撃型三機を暴れさせ、四枚羽根が指揮官を討ちにくる。

 

(……3、4はないな。自分の位置はまだ把握されていない。仮に自分の首を獲れても、チームの損耗が大きすぎる。〝第十位〟や〝第八位〟と戦えなくなる。サツキ・コウタは一位を捨てる男ではない。ならば……パターン1、か)

 

 コウメイはフォウ・オペレーション各機から送られてくる映像とデータを睨み、ブルーブレイヴの出方にアタリをつけた。

 

「ブレインよりレギオン3、4、5、6へ。部隊を動かし、敵をできるだけ足止めせよ。ただし、戦力の温存を優先。最終的には突破させて構わん。各機を絶対に四枚羽根の間合いに入れず、射撃による面制圧を徹底させよ。レギオン2は部隊を基地西方に移動、敵の側面を叩け」

 

 レギオン各機からの『了解』との返答とともに、同盟軍各部隊が、コウメイの思い描いた通りに展開していく。基地の東に展開していた5機ほどを、基地の南北から西へ回り込ませる。レギオン2の指揮下には、機動力の高い空戦型を集めている。いくら足止めしても包囲網は突破されてしまうだろうが、突破したと思ったところに空と背後からの十字砲火を浴びせてやれば、殿のサツキ・コウタぐらいは落とせるだろう。

 

『敵部隊、包囲網突破目前。基地北西方向へ進行中』

「構わん、予測通りだ。25秒でレギオン2部隊が到着し――」

 

 その時、クァッドウィングが、コウメイの予想を裏切る動きを見せた。四枚羽根ブースターから青い炎を噴き出して、突然進路を反転。走り去る仲間に背を向けて、再び包囲網の中へと突っ込んで行ったのだ。得意の稲妻機動すらかなぐり捨てた、ただスピードのみを求めるかのような猛烈な直線加速。その手には、離脱する直前にガトキャノンから受け取ったシールドを構えている。

 

(パターン3だったか……今更? 意味がない、このタイミングでは。ならば……!?)

『隊長……!』

「意図は不明だが、封殺する。レギオン4、撃て」

『了解』

 

 コロニーの残骸にバイポッドを据え付けたレギオン4のロングライフルが、超音速の砲弾を吐き出した。音を置き去りにした徹甲榴弾がクァッドウィングのシールドに突き刺さり、炸裂。ただでさえ耐久限界間近だったシールドは粉々に吹き飛んだ。しかしクァッドウィングは多少姿勢を崩しながらも飛び続け――腕に抱えたモノ(・・・・・・・)も、取り落とさなかった。

 それは、トリントン基地の格納庫に眠っていた、〝決め手〟となるもの。ホバー機能を持つ太い脚も、特徴的な両肩のバインダーも切り落とされ、胸部と頭部だけになってはいたが……それでもコウメイには、それがあの機体であると一目でわかった。

 ジオン系MSのような分厚い胸部装甲に、どう見ても悪役面にしか見えないガンダム顔。バーニア・スラスターの類が一切ない、四角い箱のようなバックパック。

 

「GP-02……だと……!?」

 

 0083スターダストメモリー、その最序盤でトリントン基地から強奪されたガンダムタイプ。今回のフィールドがトリントン基地である以上、オブジェクトとして配置されていてもおかしくはない。勿論、ガンプラとして使うことなどできはしないが……他のオブジェクトと同じように、ビームサーベルで斬れるし、撃てば爆発する。

 ――そう、爆発するのだ。

 

「いかん、奴を止めろっ!」

『……遅いな! 〝軍師〟ッ!』

 

 コウメイは慌てて叫んだが、時すでに遅し。ライはフットペダルを蹴り込んでほぼ垂直に急上昇、GP-02の胴体を、地面に叩きつけるように真下に放り投げた。同時、胸部マシンキャノンが火を噴いて、落ちていくGP-02を――アトミック・バズーカ用の核弾頭を格納したバックパックを、撃ち抜いた。

 

 ゴバッ……ォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 圧倒的な光と熱の大渦が、トリントン基地を呑み込み焼き尽くし、砂漠に突き刺さったコロニー落としの残骸をへし折り薙ぎ倒す。吹き荒れる熱波と膨れ上がる超高熱の火球が何体かのガンプラを呑み込み、蒸発させた。

 

「くっ……ふふっ、まったく。運まで味方につけられては敵わんな。レギオン各機、損害報告!」

 

 倒壊するコロニー残骸から寸前で脱出し、コウメイはフォーミュラ・ジムを砂漠に伏せさせた。砂漠迷彩のABCマントを身に纏い、景色と同化する。僅かに頭を上げて周囲を窺うが、熱波に巻き上げられた砂ぼこりで、何も見えない。

 しかしあの規模の爆発ならば、同盟軍の機体はかなりの損害を受けただろう。そして位置的に、レギオン4、5はまず間違いなく爆発に巻き込まれている。かなりの痛手だ。しかしそれでも、まだこちらの数的有利は覆らないが……そこで、コウメイは違和感を覚える。

 

「レギオン各機、状況を……そうか、これが狙いか」

 

 通信が、断絶している。

 砂の嵐を映しだす通信画面は、ミノフスキー粒子の影響によるものではない。核爆発はその絶大な破壊力以外にも、強烈な電磁パルスを発生させるのだ。勿論MSの電子機器は高度な電磁波対策をしているのだが、それでも、この近距離で核爆発に対面すれば、通信機器の不調ぐらいは出るというものだった。

 

(ミノフスキー粒子と電磁パルス、二重の障害で通信もレーダーもまるで聞かない。砂ぼこりで有視界戦闘も難しい。と、なれば我が方は同士討ちを警戒するが……あいつらは、遠慮などしないのだろうな)

 

 コウメイがそう考えた丁度その時、爆発音が鳴り響いた。この音は、MSが墜とされた音だ。

 ブルーブレイヴの反撃が、始まったのだ。

 

「ふっ……計算の甘さを思い知るのも、悪いものではない……!」

 

 コウメイは自嘲するように言い捨て、フォーミュラ・ジムを跳躍させた。

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

 起死回生の核弾頭を、ライ先輩は見事に炸裂させてくれました。そのままライ先輩は上空に退避し、同様に空へと逃げてきた飛行型ガンプラと戦っています。空という領域で、クァッドウィング・ゼロの四枚羽根を超える運動性を発揮できる機体など、そうはいないでしょう。

だから、何も心配はいりません。

 だから私は、私の仕事をするだけですっ。

 

「やっちゃいますよーっ♪ こーたセンパイっ、アンナさんっ♪」

「ああ! 全周囲に弾幕展開! とにかく撃ちまくろう!」

「は、はいっ。ガトキャノン、撃ちまくりますっ」

 

 ドギャギャッ! バガラララララララララララララララッ! ガンガンッ、ガガンッ!

 私たちは核爆発の火球が収まると同時に進路反転、たった今突破してきた包囲網に向けて再び突っ込んで行きます。とはいっても、吹き荒れる砂ぼこりと電波障害に目も耳も塞がれたような状態、敵機の姿など確認しようもありません。

でもラッキーなことに、今のガトキャノンの装備は弾幕特化の重装備。イマちゃんのターミガン、コウタ先輩のフルシティストライクも、大型火器を持つ遠距離型。つまり今の私たちは、ただ撃ち続けるだけで、相当なプレッシャーを与えることができるのです。

 

『みなさん、必ず固まって動いてください。少数の優位を活かす立ち回りを徹底しましょう』

 

 シキナミ先輩の言わんとすることは、トロい私にだってわかります。私たちがこのまま包囲網の内側に入り込めば、相手チームは同士討ちを避けるため、自由に射撃できません。一方私たちは、前後左右に撃ち放題です。

 私たちが包囲部隊の内側に食い込んだ頃、ようやく砂ぼこりも晴れてきて、相手チームからの反撃がちらほらと始まりました。電波障害もなくなってきたようで、相手チームのガンプラたちが少しずつ連携を取り戻し、陣形を整えてきます。

シキナミさんの情報支援によれば、核弾頭によって12機を撃破。同盟軍の4割程を削ることができましたが、盟主たるコウメイ先輩の居場所はいまだ不明、とのことです。

 

「ほりゃー! てぇーいっ!」

 

 しかし、私たちの勢いは止まりません。同盟軍のガンプラたちがフォーメーションを立て直した所へ、イマちゃんがバスターライフルをお見舞い。ジョニー・ライデン風カラーのアクトザクが吹き飛ばされました。あれは確か、二年の先輩のガンプラだったはずです。

 

「悪いけど、逃がさないよ!」

 

 コウタ先輩の四丁ロングライフルが発砲音を重く轟かせ、六本腕に魔改造されたガンダムヴァサーゴが爆発四散しました。あのガンプラの持ち主は、私は知りませんが……ごめんなさい。私たちも、負けたくないんです。

 足を止めずに撃ち続ける私の視界に、チカッと鋭い光が刺さりました。思わず目を細めながらもそちらを見れば、そこにいたのは砂丘に伏せてロングライフルを構える、グレーとオレンジのジム・タイプ。〝軍師〟コウメイ先輩の手足、フォウ・オペレーションのガンプラ、フォーミュラ・ジムです。

その銃口が狙うのは、どう見ても私。撃たれる前に気付けてよかった。まだまだ下手くそな私ですけど、少しは周りが見えるようになってきたようです。兵装スロット選択、左サブアーム展開、シールドを――

 

(……あっ)

 

 ――左のシールドは、さっき、ライ先輩に――っ!?

 ギュドッ、オォォォォンッ!

 

『ガトキャノン、脚部大破!』

 

 シキナミ先輩の声に、焦りの色が混じります。それもそのはず、重力下で脚をふきとばされたMSなど、的にしかなりません。ガトキャノンは砂漠に激しくヘッドスライディング、私はその衝撃に揺さぶられながらも、最後の意地で叫びます。

 

「私、ここで砲座になりますっ。足を止めないでっ」

「そんなっ! イマが運びますからっ!」

「……っ! 行くよっ、イマちゃん!」

 

 変形しかけたターミガンの腕を無理やり引っ張って、フルシティストライクは全速力でこの場を離脱していきました。私はその後姿を見送りながら、スラスターを吹かしてガトキャノンを砂丘の斜面に座らせました。その間にも何発か実弾やらビームやらが直撃して、さらに右腕と頭を吹き飛ばされてしまいましたが、両肩と左手のガトリングはまだ使えます。

 私は満足に身体も動かせず射角も限られる中で弾幕を張りますが、周囲にはざっと6機ほどの敵MSが。私の弾幕を掻い潜りながら、集中砲火を浴びせてきます。残る一枚きりのシールドの耐久力が、見る見るうちに減っていきます。

奥歯を食いしばって涙をこらえる私に、シキナミ先輩からの通信が届きました。

 

『アンナさん。コウタ先輩は、隊長としての判断を……』

「わかってます。ケガさせて足止め、助けに来たところをドカン……ですよね」

『……すみません。その場での弾幕展開、お願いします』

「はいっ、了解です。ガトウ・アンナ、撃ちまくりますっ」

 

 私は精一杯の笑みを浮かべながら言い、そして自分から通信を切りました。シキナミ先輩には、まだ動けるコウタ先輩たちへのオペレーションに集中してもらうべきですよね。

 そんなことを考えている間に、ついに右のシールドまで持っていかれてしまいました。もう、身を守るものは何もありません。私は唇を噛み締め、トリガーを引き絞るのですが、

 

「ひっ、きゃあっ!?」

 

 ガガンッ、ズガガガガガンッ! ビュオォォォォンッ!

 両肩のガトリングが吹き飛び、左腕がビームに焼かれました。砂丘の向こうから、掌からビームサーベルを伸ばしたゼイドラが、迫ってきます。その隣では、クロノスが胸の砲口にビームバスターをチャージ中です。AGE系の敵MSはみんな怪獣みたいだなあ、なんて思いながら――それでも私は、胸部マシンキャノンのトリガーに、指をかけます。

 

「せめて、武器の一つでも……装甲の1ミリでも……削ってやるんだからぁっ!」

 

 振り上げられる、ゼイドラのビームサーベル。その切っ先が、私に向けて振り下ろされる、その瞬間。

 大きな影が、現れたのです。

 

「勘違い、すんなよ」

 

 それは、ジオン系の曲線的なシルエットの、やや大柄なガンプラでした。右手に構えた大きな円形シールドでビームサーベルを受け止め、ゼイドラの前に立ちはだかります。

 

「これで償おうとか、許されようとか、思っちゃいねぇ。ただ、偶然、あー、その……だな……」

 

 両肩のシールドバインダーに、ずらりと並ぶファンネル。中世の鎧兜のような、独特な頭部装甲。通信画面に映し出される、トゲトゲの金髪頭。私のトラウマが、高校生活最初の暗い思い出が、蘇りかけて――でも、私は気づきました。サカキ・リョウさんの目付きの悪い三白眼が……その瞳に宿る光が、以前とは、少し違っていることに。

 

「……さ、サカキ・リョウ……せん、ぱい……?」

「あ、あんたにセンパイなんて呼ばれる資格はねぇよ。俺は、ただの……あー、クソッ!」

 

 ヤクト・ズールはシールドを跳ね上げてビームサーベルを払い、ゼイドラの腹に強烈な前蹴りを叩きこみました。突然の闖入者に、周囲のMSたちはざわめきながらも、それぞれの武器を構えます。サカキ先輩はがしがしと乱暴に頭を掻くと、吹っ切れたように叫びました。

 

「通りすがりの、バカな不良だよ! ――行けっ、ファンネルっ!」

 




以上、第七話Cパートでした。

イマのラッキーでフィールドギミック(というべきか?)を発見、同盟軍の包囲をなんとか突破することができました。今回のようなイマのご都合主義パワーは今後も重要な要素になる予定です。(ダイレクト伏線宣言)

久しぶりすぎる再開なのに、読んでいただけて喜びにむせび泣いております。今後もお楽しみいただければ幸いです。

次回も一週間程度での更新を予定しています。ご期待ください。
感想・批評もお待ちしております。
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