ガンダムビルドダイバーズ ブルーブレイヴ   作:亀川ダイブ

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 週一ペースには少し遅れてしまいましたが、第7話最終パートです。
 長く続いたトェルヴ・トライヴスもついに決着です。
 どうぞご覧ください。


Episode.07-F『ソウキュウ ヲ マウ ⑥』

「あぁっ……マスター、ごめんなさいですっ!」

 

 ターミガンの手を離れたツインビームサーベルが高々と宙を舞い、ビーム刃を消失させながら砂漠に落ちて突き刺さった。それを追うように、ターミガン自身も倒れ伏す――その胸に、大きな風穴を開けて。

 

「楽しませてもらったぞ。予想以上にな」

 

 感傷はその一言だけに留め、コウメイは銃身が焼け付き白煙を上げるロングライフルを投げ捨て、即座にビームサーベルを抜刀する。しかしその時には、すでに小型軽量のGNアサシンは、フォーミュラ・ジムの懐へと切り込んでいた。

 

「……お命、頂戴ッ!」

 

 左手のアサルトナイフの、鉤状になった切っ先をフォーミュラ・ジムの手首に喰い込ませる。即座に追撃、ビームサーベルを封じられたフォーミュラ・ジムのコクピットを、右手のGNビームダガーが狙う。

しかしコウメイは両脚を完全に脱力、急に腰を落として狙いを逸らさせた。GNビームダガーはフォーミュラ・ジムの喉元を突き、頭部カメラ・センサー類との接続が一斉に遮断、全天周モニターの何割かが死に、コクピット内が薄暗くなる。「たかがメインカメラを」というお決まりのセリフが脳裏をよぎるが、それを口に出している暇などない。コウメイは自身のダメージも覚悟で、腰のグレネードランチャーを起動した。重量級のこちらと、見るからに軽装甲の敵機。生き残るのは、こちらだ。

 

「付き合え、ヤマダの!」

「ッ!?」

 

 ズボボンッ!!

 小型グレネード弾がゼロ距離で爆発、流石にフォーミュラ・ジム自身もフロントアーマーが吹き飛び腹部装甲が黒焦げになったが、機体フレームに及ぶ損害はない。爆破の黒煙からバックステップで脱出し、ビームサーベルを構える――が、取り落とす。先のアサルトナイフの一撃で、右手は完全にイカレたようだ。

 

「……自分もまだ、精進が足りんか」

「トランザムッ!」

 

 グレネードの黒煙を突き破り、左手左脚の吹き飛んだGNアサシンが飛び出してくる。高圧縮GN粒子を全面開放、全身を真っ赤に煌かせての強襲……否、これはもはや捨て身の肉弾だ。過剰なGN粒子供給により真っ赤に灼熱したGNビームダガーが、烈火の如く燃え盛る。主推進器たるバーニア・バインダーを片方失っているフォーミュラ・ジムに、トランザムを避け切る運動性能はもはや残されていない。

 

「ハァァァァッ!!」

 

 裂帛の気合で振り抜かれたGNビームダガーが、フォーミュラ・ジムを切り裂いた。腹部装甲のど真ん中、ほとんどのジム系MSのコクピットがあるその位置を――確かに、切り裂いては、いるのだが。

 

「……ッ!?」

「自分でも驚くよ。自分にこんな執念があろうとはな」

 

 撃墜判定を下され、粒子の欠片となって消えていくフォーミュラ・ジム。その右膝の追加装甲内に仕込まれていた炸薬式パイルバンカーが、GNアサシンを貫いていた。

 

「ここまで手の内を晒したのは初めてだ、ヤマダの従者」

「フレデリカ様……申し訳ありません……!」

 

 相打ち――双方同時の撃墜判定である。

 フォーミュラ・ジムとコウメイ、GNアサシンとスズはそれぞれガンプラごと粒子化し、待機フィールドへと転送された。

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

 超重装の銀巨人、ジンクスⅣ・アガートラーム。

 四枚羽根の荒鷲、クァッドウィング・ゼロ。

 両者の外見や戦闘スタイルは天と地ほども違うが、根本の設計思想は実は驚くほどに似通っている。

 ある目的に特化し、それを実現するための機体設計――つまり、近接格闘戦闘による一撃必殺。

 アガートラームは鉄壁の防御力と超重大剣(クラウソラス)によりそれを成し、クァッドウィングは稲妻機動とバスターマグナムを駆使する、ただそれだけの違いだ。よって、この両者が真正面から一対一の決闘を行った場合……一撃必殺と一撃必殺の、壮絶なぶつかり合いとなるのだ。

 

「ハァァァァッ!」

「……せいッ!」

 

 唸りを上げて振り下ろされる超重GNソード〝クラウソラス〟に、両腕のビームトンファーを側面から叩きつけ、軌道を逸らす。クァッドウィングを脳天から両断するはずだった超重量の刃は代わりにトリントン基地の管制塔を真っ二つにして、その下の地面まで叩き割った。

 

(弾けないまでも、逸らせるならば……ッ!)

 

 クァッドウィングはアガートラームの盛り上がった肩アーマーを蹴って跳躍、ゼロ距離でこそないもの、至近距離からのバスターマグナムを二連発で撃ち放つ。超高熱量を収束した蒼いビームの閃光は、二発まとめて超重GNシールド〝アクラドラーヴ〟と、そこに展開した頑強なGNフィールドに弾き散らされ、防がれる。

 

「……ッ!」

 

 予想通りではあるが、あまりにも硬い。ライは奥歯を噛み締めつつ、剣の間合いには一歩遠く、銃の間合いには近すぎる程度の距離をとって着地。腰を落として左右のビームトンファーを上下広く開いて構える。

 

「ふぅん。中距離以上では決め手に欠けるのは、お互い様だと思うがね。それとも、キミは主義主張を捨てたカスタムを、その新しい四枚羽根には施したのかな。いや、パワーと重量差をスピードで埋めるなら、助走距離が必要ということか」

「……好きにしゃべる男だ」

「そういうキミは相も変わらず寡黙だねぇ。ガンダム作品が好きならば、このシチュエーションで小粋なトミノ節でも返してもらいたいところだ、なあっ!」

 

 滑走路を蹴り割って跳躍、アガートラームの巨体が宙を舞う。超重大盾(アグラドラーヴ)を前面に押し出した、攻防一体の強襲。

 とてつもない打撃力を誇る盾打突(シールドバッシュ)は、クァッドウィングの稲妻機動の前に空振りする――が、それをカウンターウェイトにした横薙ぎのクラウソラスが背後に回ったクァッドウィングを胴切りに――したかと見えたが、それは青白いバーニア光が残した残像に過ぎず、ライはすでにアガートラームの頭上でバスターマグナムを構えて――いたライの眼前に、流れるように跳ね上げられたクラウソラスの切っ先が迫り――くるが、即座にライフルをトンファーに切り替え四枚羽根フルブーストの回転斬りで太刀筋を逸らし、同時にアガートラームの肩口を切りつけながら急降下、懐に潜り込む――のを、アガートラームは膝蹴りで迎撃、分厚い膝部装甲をクァッドウィングの顔面に叩きこみ、吹き飛ばす。

 時間にすれば10秒にも満たない攻防を経て、両者は再び一刀一足には少し遠い程度の間合いで睨み合う。

 

「ほう……そのビーム刃、以前戦った時よりも随分と切れ味が良いようだね」

「…………」

 

 アガートラームの肩口には、深くはないが、ビームに焼かれた刀傷が一筋走っていた。一方のクァッドウィングは、重量級の膝蹴りを顔面で受けて、右のブレードアンテナがへし折れている。痛み分け……いや、僅かにだが、ライのダメージが大きいか。自ら飛び退いて衝撃を逃がしたおかげで各種センサー・カメラ類が無事なのは、幸運と言える。

 アガートラームの一撃は、クァッドウィングにとって、掠るだけでもかなり痛い。攻撃を避け続ける限りはノーダメージだが……一方のアガートラームは、避けない。当たってもほぼ無傷だからだ。そんな相手に長期戦では、ジリジリと追い詰められることは必定だ。

 ライの集中を乱さぬためか、オペレーター席からの音声はなく、シオミからの情報支援は視覚情報のみになっていた。その表示によれば、戦場に残るはもはやライとアルベルトのみ。ここで自分が奴を討てるかどうかが、そのまま勝敗を決することになる。

 

「出し惜しんで、勝てる相手でもない、か……」

 

 ――やはり、あれを使うしかない(・・・・・・・・・)

 ライは両腕のビームトンファーの刃を収め、腰の後ろに吊るした。自由になった両手を正拳に握り、徒手格闘の構えをとる。ガンダム作品で拳法と言えば流派東方不敗だが、ライの構えはそれとは違い現実の古流空手に近いものだった。

 

「……カラテ・スタイルか。大剣相手に近距離より近い至近距離での格闘戦という選択は、模範解答だね。間合い潰しは大型武器殺しの基礎基本だ。はやりキミは一見すると優等生な選択肢をとるのだけれど、それで終わりでもないだろう?」

「…………」

「たかが部内試合だ。妹の敵は討たせてもらうとしても……新型機の手の内を晒してまで勝敗に拘る一戦でもあるまいよ。違うかな?」

「……貴様の傲慢に付き合う義理はない。そして……」

 

 クラウソラスでクァッドウィングを指すアガートラームに、ライは四枚羽根を大きく展開して応えた。各スラスターに青白い光が収束し、いつでも飛び掛かれるのだという戦意を剥き出しにする。四基のウィングスラスターから溢れ出した熱波が、旋風となり灰色の砂塵を巻き上げる。

 

「――ここで退いては、俺の正義が廃る」

「ハハ! 言うねえ! ならば期待させてもらおうか……ヒムロ・ライ君!」

「……参るッ!」

 

 両者、跳躍――アガートラームはこの期に及んで隠し玉を使ってきた。後方に向けた大楯(アグラドラーヴ)表面のGNフィールドを爆発的に増大させ、その反動で超重量級MSにあるまじき超加速で飛び出したのだ。瞬間的にはクァッドウィングにすら迫る速度を得たアガートラームは、その勢いをそのまま攻撃力へと転化。裂帛の勢いで突き出したクラウソラスの切っ先が、クァッドウィングを縦一閃に貫いた!

 

「違う……っ!?」

 

 アルベルトは、確かに貫いたという手応えとともに、違和感に戸惑う。今まで幾百幾千のガンプラを貫き、叩き斬ってきたが、この手応えは、違う。通常のプラスチック材でも、KPSでも、軟質パーツでもない。金属パーツに近い硬質な、しかし脆すぎる感触。あえて例えるなら……

 

「……氷、かっ!?」

 

 クラウソラスに貫かれたクァッドウィングは、氷の欠片となって砕け散る。氷結粒子による、質量のある残像――切った実感もあるとなれば、〝実体のある幻影(ヘイルヘイズ)〟とでもいうべきか。

 砕け散った青白い氷の粒子は吹き荒れる旋風に巻き上げられ、雪風となって舞い踊る。吹き荒ぶ猛吹雪の収束する先は、渾身の突きを繰り出し、大きな隙を晒すアガートラームの背後。稲妻の軌跡を曳いたクァッドウィングの掌に、渦巻き荒れ狂う白銀の氷結粒子が凝縮され、氷の手掌を形成する――それも、左右両掌に!

 

「一人でダブルフィンガーとは恐れ入る!」

 

 絶対的に不利な姿勢から、シールド防御を間に合わせたアルベルトの技量は、流石と言える。しかしライが、クァッドウィング・ゼロか繰り出した新たなるブライクニルフィンガーは、どれだけ分厚くともシールド一枚で防げるものではなかった。

 

「アヴァランチッ! フィンガァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 ヒィン――ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!

 連打、連打、連打、連打に次ぐ連打、連打連打連打連打打打打打打打打打打――!

 氷結粒子を纏う左右の掌が、息もつかせぬ猛連撃を叩きこむ。青銀の氷結フィンガーが連撃の嵐となって荒れ狂うさまは、まさに掌打の大雪崩(アヴァランチ)。絶対の重防御を誇るアガートラームの大楯が、凍り付いては砕け散り、砕けては凍結し、見る間に形を失っていく。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

「くっ、なんというッ!!」

 

 猛連撃の勢いに押し込まれ、アガートラームはついに地面に叩きつけられた。同時、限界を迎えた大楯が、氷塊となって砕け散る。アガートラーム本体の装甲にアヴァランチフィンガーが叩き込まれ、アガートラームの巨体が凍り付き、打ち砕かれ、重装甲が穿たれていく。

 だがアルベルトは、まだ勝負を諦めていなかった。いかに強力な攻撃でも、いや強力だからこそ、奴自身にも無視できないダメージを蓄積しているはずだ。この連撃を耐え切れば――こちらにも、奥の手(・・・)の準備はある。

 

「これでッ! 砕けろおおおおおおおおッ!」

 

 大きく振りかざした右掌を打ち下ろす、会心の一撃。かつてバスターマグナムの一撃にすら耐えたアガートラームの頭部追加装甲が粉々に砕け散り、その下に隠されていたジンクス系の四ツ目顔が露出した。続く左掌の一撃が分厚い胸部装甲を鷲摑みにし、荒々しい氷結粒子の氷柱を周囲に発生させながら、ギリギリと握り潰していく。

 

「認めよう、ヒムロ君。キミの攻撃力は、いや破壊力は! 我がアガートラームを討ちうると! しかしな、まだ終わらんよ!」

「……破ァッ!」

 

 気合一声、冷気嵐が爆裂する。無数の氷柱が一瞬にして林立して崩壊し、白銀の雪煙が辺り一面を覆い尽くした。濛々と立ち上がる雪煙を突き抜けて、クァッドウィングは空高く飛びあがり、そして急激な弧を描いて着地する――と、同時にガクリと膝をつく。

 アヴァランチフィンガーは、そもそもの仕組みからして無理がある技だ。ダイバーギアに設定を入力しているときも、何度エラーや警告メッセージを出されたかわからない。故に、アヴァランチフィンガーの使用は、クァッドウィング・ゼロの全身全霊を使い果たす。

 氷結粒子最大活性化の為に余剰熱量を放出し続けた四枚羽根はボロボロで、稲妻機動はもう不可能だろう。氷結粒子を展開し続けた両腕も、バンとの模擬戦でも起こったフレーム凍結現象の直前を綱渡りし続けて摩耗し、赤や黄色のエラーメッセージがいくつも表示されている。

 

「待っていたぞ、その瞬間をッ!」

 

 雪煙が吹き散らされ、凍結したクレーターから一機のガンプラが飛び出した。ジンクス系のシルエットはアガートラームには違いないが、特徴的な重装甲のほとんどをアヴァランチフィンガーに粉砕され、残った装甲も自ら脱ぎ捨て、一部フレームなどは剥き出しになるほどの軽量機へと変化していた。

 

「……装甲を捨てたか」

「この〝ネイキッド〟を見せるに相応しい強敵だよ、キミは!」

 

 赤い四ツ目にトランザムの光を宿し、両腕から高圧縮GNビームスパイクを噴出させるアガートラーム・ネイキッドは、獣じみた低姿勢で地を駆け、膝をつくクァッドウィングに迫った。

 

「装甲の耐久限界など実に久しぶりだが……我慢比べは、私の勝ちだ!」

 

 動けないクァッドウィングの顔面に、GNビームスパイクを叩きこむ――

 

「……いや、俺の勝ちだ」

 

 ――ことが、できなかった。

 

「こ、これ……は……っ!?」

 

 ネイキッドに僅かに残された装甲を、突き破るようにして。無数の氷柱が、ネイキッド自身の内側から生え、貫いていた。

 ライは全身の関節から火花を散らすクァッドウィングを立ち上がらせ、刻一刻と氷柱に侵食されていくアガートラーム・ネイキッドに相対した。

 悪喰竜狩り作戦、対バウンド・ドラッヘ戦。違法ツールの力で巨大化したバウンド・ドラッヘを、ブライクニルフィンガーの一撃では凍結しきることができなかった。この時点で、一撃必殺というコンセプトは破綻する。しかしそれは、氷結粒子の出力を上げれば解決するというものでもなかった。

 ゴーダ・バンとの模擬戦。限界を超えて炸裂したブライクニルフィンガーは氷結粒子の暴走を招き、自分自身すら氷漬けにした。凍結による破損部位の補修という予想外の効果を生みこそしたものの、実戦で使えるものではなかった。

 それらの解決策が、一撃必殺ならぬ、連撃必殺(・・・・)。出力を抑えたブライクニルフィンガーを両手に展開して短時間に無数に叩きこみ、時間単位破壊力(DPS)を劇的に向上させる、〝アヴァランチフィンガー〟という力技だ。

 力技は同時に荒業でもあり、氷結粒子の暴走ほどではなくとも、自身のダメージは避けられない。故に、アヴァランチフィンガーは絶対に〝必殺〟でなければならなかった。

 たとえ相手がMAでも、フルアーマー装備でも、PS装甲でも。DG細胞に侵されていようと、サイコフレームが結晶化していようと、第二形態・第三形態をもっていようと、確殺できる破壊力が必要だ。

 暴走の危険から、氷結粒子の高出力化は不可能。連撃必殺とはいっても、機体への負担を考えれば、連撃回数にも限界がある。ならば、破壊力を高めるためにできることは、何か。

 

「――〝粒子発勁〟」

「ま、まさか……氷の粒子を……っ!?」

「……どんな重装甲でも、第二形態でも……ガンプラである以上、粒子発勁は防げない」

 

 プラフスキー粒子を浸透させ、内部からガンプラを破壊する絶技〝粒子発勁〟。旧バトルシステム時代から存在するガンプラバトルの技法だが、それを実戦レベルまで極めたダイバーは少ない。その数少ない使い手であるメイファ・李・カナヤマに師事し、ライは限定的ながらも粒子発勁を身に付けていた。

 それが、汎用性を捨て氷結粒子の制御に特化した粒子発勁――〝粒子発勁・六華〟。連撃必殺の要にして、アヴァランチフィンガーの真髄である。

 

「貴様の独善と傲慢……凍りつく(とき)の中で、悔い改めろ……!」

「ふっ……私を墜としたこと、誇りたまえよヒムロ・ライ! 妹のことなど関係なく! キミは、私の……ッ!」

 

 次々と内側から突き出す氷柱に埋め尽くされ、ほとんど人型を失ったアガートラーム・ネイキッドの胸のど真ん中に、クァッドウィングは槍のように引き絞った手刀を突き入れた。

 

「……成敗ッ!」

 

 再度、冷気嵐が炸裂し、白銀の雪風が辺り一面に吹き荒れる。視界を埋め尽くす白い嵐に混じって、撃墜判定表示がポップアップし、プラフスキー粒子が空に昇っていくのが見えた。

 

《――BATTLE ENDED!!》

 

 システム音声が、試合の終了を告げる。いつの間にかトリントン基地周辺は夕闇に沈んでおり、戦火に荒れ果てたオーストラリアの荒野は、全体にオレンジ色に染まっていた。そんな中、場違いに氷結したクレーターを覆う雪煙が晴れ――そこに立つガンプラは、クァッドウィング・ゼロ、ただ一機であった。

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

《第七回部内試合 トゥウェルヴ・トライブス 試合結果(リザルト)

 

第一位 〝ブルーブレイヴ〟  サツキ・コウタ  /エイハブストライク

第二位 〝ヤマダ近衛騎士団〟 ヤマダ・アルベルト/ジンクスⅣアガートラーム

第三位 〝精密兵団(レギオン)〟     コウメイ・マサヒロ/フォーミュラ・ジム一号機

 

最多撃墜賞――ヒムロ・ライ/クァッドウィング・ゼロ 撃墜数:12

※フィールドギミック(核弾頭誘爆)による撃墜は数に含まない。

 

 

「へぇ、ヤマダ君を倒したのか。例の転校生君が。撃墜数もすごいなぁ」

「ヤマダ殿と言えば、撃てども斬れども伏すこと無き強者ではないか。栄えし者も何時かは没する……諸行無常よ」

「ゼンちゃん、戦ってみたくなっちゃった?」

「そりゃあ、ね。興味はあるよ。でも今は、紅白戦の準備がなぁ……あと、〝ちゃん〟はやめてっていつも言ってるだろう、カノン」

「あらあら、うふふ。ごめんなさいね。昔のクセって治らないものねえ」

「あーもう、オイラたちもいるってのにイチャつかないでほしいッスよー、せんぱーい。ねー、アイラ?」

「……………………(こくん)」

「ほらー、アイラもそーだって!」

「これこれキド殿、ゼン殿とカノン殿は旧知の仲、拙者らの口出しするものではないぞ」

「いや、いいんだよチャド……ああ、そうだ。君たちに行ってもらおうかな。キドくん、アイラくん」

「……………………?」

「へ? 行くって、何に?」

「僕は紅白戦の準備から手を離せない。だから転校生君の……いや、ブルーブレイヴの今の戦力、ちょっと見てきてほしいんだ」

「あー、そーいえばここ、コウタ先輩のとこッスね。ゼンさん、ずっと気にしてたッスもんねー、コウタ先輩のコト。まあ、行くのはいいッスけど……知らないッスよ?」

「何だい、気になることでも?」

「いやいや、そーじゃないッス。実力がどうとかわかる前に……オイラ、全員グッチャグチャにしちゃうかもッスよ。ねー、アイラ?」

「……………………(にやり)」




 以上、第七話最終パートでしたー。
 強化されたクァッドウィング、粒子発勁を身に付けたライは、“最高位の十一人”を打ち破るほどの実力者となりました。
 ライの修行シーンなどはばっさりカットしたので粒子発勁関連は唐突に見えるかもしれませんね。一応、拙作の世界線における粒子発勁の第一人者であるメイファに弟子入りしているシーンを第六話で描いていますので、それでお許しくださいませ。

 かなりの間が空いての連載再開でしたが、とりあえずの目標である第七話完成まではこぎつけました。今後もペースは落ちるかもしれませんが、できるだけ続けていきます。お付き合いいただければ幸いです。

 感想・批評もお待ちしています。どうぞよろしくお願いします。

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