今回のお話は、第七回部内試合後のサイドストーリー的なものです。登場人物は、ヤマダ・フレデリカとその従者、スズです。
そしてさらに今回は、ハーメルンの他の作者さんとのコラボ回でもあります『【新約】ガンダムビルドダイバーズEW 〜死神は自由気ままに空を舞う』を連載中の、suryu-さんとコラボさせていただき、一部設定を共有しております。どうぞご覧ください!
――第七回部内試合後 ヤマダ・フレデリカの私室にて――
「ごめんなさい、スズ……私のGNフィールドが、もっと強ければ……」
「おっしゃらないでください、フレデリカ様。スズの方こそ、任務を果たせず申し訳ありません」
時間は夜の十一時。柔らかな間接照明に照らされ、飾り気は少ないが質のいい調度に囲まれた、落ち着いた雰囲気の寝室。部屋とベッドの隅に積み重ねられているぬいぐるみがガデッサ・ガラッゾ・ガッデス・ガガというガ系MSのオンパレードでさえなければ、育ちのいいお嬢さんの寝室として、何の不自然も感じさせないだろう。
そんなほのかにイノベイター風味の寝室で、柔らかなベッドに腰かけている少女が二人。
一人は、ふわふわの飾り布をセンス良く配置した、16歳の少女としてはやや幼く見えるデザインのパジャマに、16歳の少女というには非常に発育に恵まれまくっている肢体を包んでいる、フレデリカ。
そしてもう一人は、旅館の浴衣でももっと飾り気があるだろうというような、ほとんど布をその形に切って縫っただけに見える無味乾燥な濃紺の浴衣に、無駄な起伏の(そして魅力的な起伏も)まったくないスレンダーな肢体を包んでいる、スズである。
「せっかくスズが、私のガデス・アテネまで隠してチャンスを作ってくれていたのに……」
「ブルーブレイヴのエルダイバーが、あのような手段にでるとは誰も予測できませんでした。油断のならぬ小娘です」
「……また、負けちゃいましたね……お兄さまのお役に、立ちたかったけれど……」
「フレデリカ様……」
フレデリカは悩まし気にため息を吐きながら、ガガのぬいぐるみをぎゅっと胸に抱き、丸っこくデフォルメされたコーンスラスターに顎をうずめる。その姿に、スズは思わず手を伸ばしかけるがすぐにひっこめ、ぐっと胸元で拳を握る。
友ではあっても、主人と従者。ヤマダ家のような上流階級においては、凡人には想像もつかないような特殊な上下関係が存在するのだろう。
――さて、唐突ではあるがここでスズの内面を包み隠さず描写してみようと思う。第三者である読者諸兄であればこそ、キャラクターの内面を知る神の視点を持てようというものだ。
はぁああああああぁぁぁぁんリカ様かわいいリカ様マジ天使リカ様ほんっとお人形さんみたいなその髪その目その佇まい尊い! マジ尊い! 尊みがトランザムしてない瞬間がないんですけどその自覚あります!? ぬいぐるみに顔うずめてため息とかどこのお姫様ですかあなたはいや実際お姫様みたいなものですがというかリカ様リアルに私のプリンセス! だいたいですね、何ですかそのパジャマは。小っちゃいころからサイズこそ変われどなんですかそのずっと可愛い系! 可愛い系、というかリカ様が可愛いそのもの、可愛いという概念は今ここで人類の最高値を更新し続けている! ああそうパジャマですよ、パジャマ! また成長して! あっちこっちまた成長して! そのパジャマオーダーメイドでしょう、リカ様がいろいろと成長するたびに寸法取り直す私の身にもなってくださいよ、もう毎日測定したいんですよいっそのこと! まあリカ様の寸法なんて私のこの目で毎日ミリ単位で把握し続けているわけですが、ちょっと食べすぎちゃったかもっておやつのシュークリームのことを後悔しているリカ様はえげつないかわいかったですけど、あの時ウェスト0.2ミリしか変わっていませんでしたから! スズが保証します、リカ様は多少ふくよかになってもそのかわいいに拍車がかかるだけの話ですから! それにリカ様はまずその胸の膨らみに栄養が行っちゃうお方ですから! その成長したリカ様がふりふりのパジャマでぬいぐるみを抱いてタメ息なんて私はこの世界で尊さに殺された唯一の人間になりたい! そして転生したい、リカ様のぬいぐるみに転生したい、いやむしろそこ変われおまえリカ様にぎゅってされてるからって調子乗るんじゃねーぞそこは私が転生したスズぐるみがリカ様にぎゅってされる場所だろうがあああああああああああああああああ!
――ニュータイプとは、誤解なくわかり合える人類の革新という。しかしとりあえずヤマダ・フレデリカは、自分がニュータイプでなかったことを幸運に思った方がいい。理解できたとて、わかり合えるとは限らないのだから。
「ねえ、スズ?」
「ンひゃいっ! なな、何でしょうリカ様!?」
珍しく素っ頓狂な声を上げたスズに、フレデリカはころころと笑いつつ、すっと身を寄せてきた。
「あら、珍しい。昔の呼び方、久しぶりにしてくれたわ」
「あっ、いえ……も、申し訳ありません、フレデリカ様」
そう言ってスズは、ガンプラバトルの時のような、キリッと口元を真一文字に結んだ、険しい表情を取り繕う。そうなったスズはもう昔の呼び方はしてくれないとわかっていたフレデリカは、ふっと軽く微笑んで、話を続けた。
「あなたのガンプラ、性能が上がっていたわね。何か新しく改造したのかしら」
「はい。一部、塗膜が剝がれていましたので……思い切って、全塗装し直したのです」
「まあ、そうなの! その時に何か工夫を?」
フレデリカはダイバーとしては、バトルよりもガンプラ制作が好きなビルダータイプだ。ガンプラバトル部の部内試合には真面目に参加しているし、バトルで兄の役に立ちたいというのも本音だろう。しかし彼女の瞳が一番キラキラ輝くのは、やはりビルダーとして興味を惹かれるような話をしている時だ。
スズはそんなキラキラしたフレデリカの期待に答えたくて、他の部員やダイバーには絶対に教えない、GNアサシンのステルス性の秘密を語った。
「はい、塗料を変えてみたのです……フレデリカ様、リアルの店舗で、ガンプラ専門店以外をお使いになったことは?」
「いえ、ないわ……でも、興味はあるの。いいお店があるの?」
「はい。ミラージュコロイドでのステルス性向上は、私の制作技術では頭打ちになっていたのです。潜伏する分には問題なかったのですが、戦闘への応用は厳しくて……そこで、ステルス系の機体を使うダイバーたちの一部で、噂になっていたショップに立ち寄ってみたのです」
スズは言いながらダイバーギアを取り出し、そのショップの情報をホログラム表示して見せた。
店の名前は、〝ジャンク屋 廃車達の栄光〟。大手によるガンプラ専門店ではなく、それどころか、模型屋などでもないようだ。
「えぇっと……車屋さん……?」
「店主の趣味のようです。車とガンプラと、どちらが……と言われると、私も常連というわけではないので、わかりかねますが。ただ、ここの〝死神塗料〟という塗料シリーズは、発色もよくて、GBNでステルス性がプラスに評価されると好評なんです」
「へぇ、面白いのね。場所は……あら、ここからならそれほど遠くないわね」
嫌味の無いフレデリカの一言に、スズは苦笑。「それほど遠くない」というセリフは、常識的には車か電車での移動を基準に考えるが、ヤマダ家のご令嬢たるフレデリカは、自家用ヘリ基準でものを言っているのだ。
「フレデリカ様、私も確認したわけではありませんが……おそらく、こちらのお店にはヘリポートはないかと」
「あら、そう……だったら、行くにはどのぐらいかかるのかしら……」
世間知らずのお嬢さま、自家用ヘリを封じられて、本気で悩みだしてしまった。オンラインショップで塗料だけを買うこともできるが、こういった買い物は棚に並んでいるものを眺めることにも意味があるものだ。特にビルダー気質の強いフレデリカなら、実地に赴くことを望むだろう。
「私が行ったときは、電車で小一時間ほどでしたが……もちろん、新幹線ではありませんし、指定席もありませんよ。フレデリカ様、乗ったことないのでは?」
「ええ、恥ずかしながら……でも、乗ってみたいわ。行きましょう、スズ!」
「私は、構いませんが……フレデリカ様、本当に大丈夫ですか? パーサーもコンシェルジュもいないんですよ。お供できるのは私だけになってしまいますが……」
「ええ、いいわ。だったらスズと二人でデートになるわね。楽しみ!」
――デートになるわね。楽しみ!
――デートになるわね。楽しみ!
――デートになるわね。楽しみ!
――デートになるわね。楽しみ!
ンほオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
――その後まもなく、二人それぞれの床に就いた。
フレデリカはベッドの中で柔らかい布団に包まれながら、明日のお出かけに胸をワクワクさせながらいつの間にか眠りについた。
スズは自室に戻り……枕に顔をうずめてゴロゴロジタバタし、秘密の日記帳に一気に50ページも思いの丈を書き連ね、それでもギンギンに眼が冴えて寝付けず、鍛錬場でぶっ倒れるまで汗を流して気絶するように寝落ちしたという。
以上、第七話サイドストーリーでしたー。
拙作はバトルバトルまたバトルで進んでいくことが多いので、キャラの掘り下げがしたくなったら今後もこのような形をとってみようかな、と思っています。
また、今回はコラボ回ということで『死神塗料』等の設定を共有させていただきました。許可していただいたsuryu-さん、ありがとうございましたー!
死神塗料をお買い求めのお客様(笑)は、『【新約】ガンダムビルドダイバーズEW 〜死神は自由気ままに空を舞う』をチェックしてみてくださいね!
感想・批評もお待ちしています。どうぞよろしくお願いします。