ガンダムビルドダイバーズ ブルーブレイヴ   作:亀川ダイブ

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どうもこんばんは。亀川ダイブです。
ブルーブレイヴ第二話Bパート、どうぞご覧ください!


Episode.02-B『ウバイアイ ソラ ②』

 セルリアンブルーのアンダーリム眼鏡をかけたヒビキ・ショウカは、黙って人を蔑むような微笑でも浮かべていれば、まさに〝常勝無敗の冷血姫(ゼロ・トレランス)〟と呼ばれるに相応しい冷徹で嗜虐的な美少女と言えたかもしれない。しかし今、彼女は内心の高揚を隠す素振りすらなく、「ウキウキ」とか「ワクワク」といった擬態語がぴったりくる無邪気な笑みを浮かべ、ホワイトボードにマーカーを走らせている。

 

「ミネバ・バトルロイヤル――キミたち新入部員を加えれば300名を超える我が部において、これは絶対に必要な通過儀礼であり、恒例行事であり、祭り(フェスティバル)だ。毎学期の始めに部員全員参加で行われるこの戦いは、ボクが発案したいくつかのささやかな部内ルールの一つなのだけれど……この戦いはいつも楽しみだ。胸の高鳴りを抑えきれないぜ、まったく」

 

 

《ミネバ・バトルロイヤル 交戦規程(レギュレーション)

 

・部員全員参加によるバトルロイヤル。リスポーンはなし。

・生存ダイバー数が120名になった時点で試合終了。

・試合開始は三日後の部活動開始時刻。

・試合時間は、最大で現実世界(リアル)での部活動終了時刻まで。試合時間終了時点で120名以上のダイバーが生存していた場合、試合は翌日に持ち越しとなる。

・戦場はGBN内、峰刃学園高校ガンプラバトル部フォースネスト、通称〝魔王城〟エリア全域。

戦線離脱(エリアオーバー)は撃墜扱いとする。

・チームを組む場合は最大四名まで、試合前に登録するものとする。チーム内ではフレンドリーファイアは発生しない。

・オペレーターもチームの人数に含む。所属チームのダイバーが一名でも生存すれば、オペレーターも生存報酬を獲得できる。

・チーム外の協力プレイは禁止。(結果的にチーム外での協力と見做(みな)されうる行為については、部長・顧問が個別に判定する。)

・ダメージや部位破壊、撃墜判定などは通常のGBN交戦規定による。

 

 

明文化している(・・・・・・・)交戦規定(レギュレーション)は、こんなところだ――つまりは、300人の部員による、120個分の椅子取りゲーム。君たちの現実(リアル)の体が今いる部室には、120台しかパソコンがないだろう? 新入生を歓迎する春のミネバ・バトルロイヤルの時だけは、二・三年生には自宅PCからダイブしてもらっているのだけれど――学年など関係なく、この戦いの戦績で。まずは一学期から夏休みの間、部室の使用権を勝ち取れるという仕組みさ。いちいち帰宅せずとも、GBNに入れる。一分一秒の練習時間を欲するボクたちにとっては、なかなかに重要度が高いだろう?」

 

 

《ミネバ・バトルロイヤル 生存報酬》

 

・試合終了時まで生存していたダイバーは、次回ミネバ・バトルロイヤル開催まで、部室のPCおよびGBNデバイスの優先使用権を得る。

・生存ダイバーの所属するエレメントは、一名につき500のEP(エレメントポイント)を得る。

 

 

「部室の使用権以外にも、副賞としてエレメントポイントを用意させてもらったぜ。ああ、エレメント制については、あまりよく知られていないのだったなあ。所属するダイバーが50名を超えたあたりから、フォースマスターに与えられる権限で……と、これはまあ、今じゃあなくていいかな。まったく、ボクの悪い癖だぜ。ついついしゃべりすぎてしまう。とりあえずは、ここで勝っておいた方があとあとお得だぜ、とだけ言っておくことにしよう――そしてここからは、明文化していない(・・・)方の交戦規程だ」

 

 ショウカの笑顔が、変わる。口角を吊り上げ、(まなじり)を鋭く光らせた、好戦的な笑みに。

 

「我が部には、GBNにその名を轟かせる凄腕ダイバーが多数在籍している。恥ずかしながらこのボクは、その最上位に君臨しているわけなのだけれど……旧GBO(ガンプラバトル・オンライン)時代の伝統に則って、我が部で最強クラスの実力を誇る十一人のダイバーたちを〝最高位の十一人(ベストイレヴン)〟と称している。ここにいるボクの大親友、アルルとルルカもその一員だぜ」

「きゃはは♪ 〝第二位(ミネバ・オブ・ツー)〟、兄のミカガミ・アルルだよ♪」

「くふふっ♪ 同じく〝第二位(ミネバ・オブ・ツー)〟、妹のルルカだよ♪」

 

 ホワイトボードの左右から、可愛らしくステップを踏んで踊り出す双子の道化師。見た目に男女の別も定かではない小学生のような体格に、ほぼ同じ顔立ち。お揃いの、道化師の衣装。自己紹介をされたところで、どちらが兄でどちらが妹かなど、まるで見分けがつかない。あえて違いを見つけるなら、兄・アルルは靴下が三つ折りソックスで、妹・ルルカはボーダーのオーバーニーソックスを履いている、ということぐらいか――いやしかし、この二人の服装というか衣装は、改造制服とかいうレベルでなく完全にコスプレなのだが、校則違反ではないのだろうか。

 兎も角。ショウカは踊りながら自分の左右に抱き着いてきた二人の頭を撫でつつ、説明を続ける。

 

「ボク自身を含む我が部の〝最高位の十一人(ベストイレヴン)〟は、ミネバ・バトルロイヤルにおいて、自分から攻撃を仕掛けることはない。つまりは、自衛に徹するということを約束するぜ――そうでもしなきゃあ、一瞬で終わっちまうぜ。楽しい楽しい、ゲームがさあ?」

 

 ざわっ……。

 挑発的な物言いに、新入生たちは色めき立つ。確かに、ヒビキ・ショウカは最強で、無敗で、現在進行形で生ける伝説を山積みにし続けている女傑だ。しかし新入生の中にも、その伝説に挑むことを、泥を塗ることをこそ目的として、この峰刃学園に入学した者も多い。腕に覚えのあるダイバーたちにとって、ショウカの言い様は刺激的過ぎた。

 

「……いや、勘違いはしないでおくれよ。ボクは何も、キミたちを侮っているわけじゃあない」

 

 ショウカは熱を帯びた空気に満足げに微笑み、鷹揚に言った。

 

「来るなら来い、と言っているんだぜ。椅子取りゲームも副賞(エレメントポイント)も関係なく、ボクと、ボクたちと、峰刃学園最高峰と、刃を交えたいというのなら――」

 

 ショウカがマーカーのキャップをしめると、きゅぽん、と軽い音が静まり返った広間に響いた。しかし、場にそぐわないその音に、笑いを漏らすものなど誰一人いない。

 

(上々だ。実に、実に、実に上々だぜ)

 

 突き刺さる無数の視線。挑戦的な目、目、目。ショウカは背筋を駆け上がる快感に身を振るわせつつ、新入生を――否、挑戦者の群れを睥睨(へいげい)した。口元の笑みはますますつり上がり、より好戦的に、より野性的に変貌した。まさに〝魔王〟と、まさに〝冷血姫〟と呼ばれるに相応しい、凄惨な笑みに。

 

「――受けて立つぜ、新入生諸君(ルーキーさん)?」

「はいはーい! 質問、しっつもーん!」

 

 場違い極まる能天気な声。張りつめていた空気が変な具合に崩れ、「何だコイツ」という通常なら()(たま)れなくなる様な冷たい視線が集中する。

 誰に? 当然、イマに。

 

「ぶちょーさん、質問がありまーすっ!」

「…………」

「あ、あわわ……ご、ごめんなさい、ごめんなさいぃ……」

 

 ライは頭を抱えて深い深いため息をつき、アンナは顔面を真っ赤に染め上げて高速メトロノームのように頭を下げまくっている。

 しかしイマは周囲の視線の心情もまるで意に介さずとばかりに、ショウカへと質問を投げつける。

 

「私、エルダイバーのヒムロ・イマです! 私のマスターがバトルロイヤルに参加するのですけど、イマも参加したいです! どうせ友達もできないマスターといっしょにぶかつどー(部活動)してあげたいので! イマが勝ったらPC一台、イマ専用にいただきます! ありがとうございます!」

 

 イマはきらきらした目で元気よく言い切ったが、後半はすでに質問でもなんでもない。

 間近で実体実装済み(サラ・プロトコル)エルダイバーを見るのは初めてという者も多く、その奇矯な言動と物珍しさに、先とは違うざわめきが新入生たちに広がる。

 

「うん、いいぜー」

 

 即決即断。ショウカは楽し気に苦笑しながら、事もなくイマに答えた。

 

「フォースに所属するエルダイバーも、ガンプラファイターとして名を上げているエルダイバーも、サラ・プロトコル実用化以降いくらでも前例はある。我が部の顧問様は狭量な方ではないし……いやむしろ、懐が深すぎるぐらいだ。エルダイバーの一人や二人、何ということもないぜ」

「きゃは♪ 面白くなってきたね、ルルカ♪」

「くふふっ♪ 面白そうだね、アルル♪」

 

 ――()くして。峰刃学園高校ガンプラバトル部、新入生歓迎行事にして部室争奪戦〝ミネバ・バトルロイヤル〟開催が下知された。

 試合開始は三日後、部活開始と同時。総勢三百人超のダイバーたちが、己のガンプラと技量を以て、百二十の椅子を取り合うのだ。

 

「それでは諸君、戦場で会うのを楽しみにしているぜ……キミたちは、生き残ることができるかな?」

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

 ――ミネバ・バトルロイヤル、開始から約三〇分。生存ダイバー数は、198人。あと78人のダイバーが脱落したところで、この試合は終了となる。

 

「私たちみたいに、チームを組んでいる人がほとんどでしょうから……試合終了まであと、20から30チームぐらいでしょうか……」

「……ああ。そうだな」

 

 フォースネストコロニーの、ほぼ中央部。魔王城から見ると、天井側にあたる大地。このエリアには、聳え立つ荘厳な魔王城とは対照的な、朽ち果てた古城を中心とした遺跡群が広がっている。乾燥した岩石質な台地には植物もまばらで、全体的に土気色をした荒涼たる土地に、同じ色の石で組み上げられ、そして半壊した遺跡の街並みが延々と続いている。

 遺跡の中でもひときわ大きく、往時は巨大な聖堂かなにかであった建物――をコロニーに移設した、という設定であろう遺跡の中に、ライたちはモビルスーツを潜ませていた。

 

「……イマ。どうだ」

「もうちょっとです、マスター―……むむっ! センサーに感アリです!」

 

 ターミガンの長いトサカ状になった頭頂部センサーカメラだけを遺跡の上からにょっきり突き出して索敵していたイマが、ピンと勢いよく親指を立てた。

 

「遺跡の南、どう見てもえんけーとーぎじょー(コロセウム)にしか見えないアレの中! 戦闘中です!」

 

 ターミガンが捉えた情報を、チームで共有。遺跡群の南端、人間の足では少々骨が折れそうな距離に、外観は現実の世界遺産そっくりな、しかしサイズはMSがその中で十分に暴れまわれるほどに巨大化された円形闘技場があった。弧を描く壁に阻まれてMSの姿は見えないが、濛々(もうもう)と立ち昇る土煙と、振動に剥がれ落ちる外壁の欠片から、闘技場内で戦闘中なのは明らかだ。

 

「なかなかの強敵のようですよ、マスター、アンナさん。少なくとも3チーム10機のガンプラが、あの闘技場内で撃墜されています。現在戦闘中のガンプラは、三機――二対一の状態で、一機のほうが逃げて逃げて逃げ回って、でも闘技場からは出してもらえずにジリ貧ピンチ。そんなカンジっぽいです!」

「に、二対一? 助けてあげ……あ、でもバトルロイヤルだから……うぅん……」

「…………」

 

 困ったように眉をハの字にして考え込むアンナ。

 一方ライは無言で映像とその他の索敵情報を睨みつける。現在の主戦場はコロニーの反対側の大地、魔王城周辺。生存ダイバーの大半がそこで戦闘中の今、このままここに隠れていても、さらに3、40の撃墜は出るだろう。そうなればもう、120個の椅子を奪い合うバトルロイヤルも、最終局面。ほぼ無傷の自分たちは、有利に状況を運べる。

 だが、それは、

 

「……違うな」

「ほぇっ?」

 

 言ってから、アンナは自分が出した変な声に赤面。両手で口を押えて、耳まで真っ赤にして俯く。ライはそんな様子など気にも留めず、クァッドウィングを立ち上がらせた。偽装代わりに肩の上にのせていた瓦礫や石板を払い落としつつ、四枚羽根のガンダムが屹立する。

 

「……コロセウムの戦闘に、参加する」

「りょーかいっ、マスター♪」

 

 イマは「待ってました!」とばかりに元気いっぱいに応え、ターミガンをぴょんと大聖堂跡から飛び出させた。続いてアンナもガトキャノンを立ち上がらせるが、背中の追加シールドを壁に引っ掛けて、壁をまた崩落させてしまった。驚いてしりもちをつくアンナとガトキャノン。

 

「ひゃわわ!? ごご、ごめんなさいごめんなさいっ」

「にひひひひっ♪ アンナさん、誰に謝ってるのですか? そんな重装備なんだから、そのぐらい仕方ないのですよ。どんまいどんまい♪」

「あ、ありがとう、イマちゃん……」

 

 差し出されたターミガンの手を取って、引き起こされるアンナ。ガトキャノンは高機動型MS(ウイングガンダム)素体(ベース)のライとイマに速度で遅れないように、両肩のシールドをバーニアスラスター内蔵型のものに換装している。さらに両肩の大型ガトリング砲もマシンキャノンに載せ換え、空いた背部のスペースにヘイズル系のシールドブースターを搭載している。通常装備とは重量バランスが大きく変化しているため、シールドブースターなどを使わない状態での身のこなしはむしろ鈍化――率直に言って、どんくさくなっていた。

 

(うぅ……恥ずかしいよぅ……ライ先輩の役に立ちたいって、チームに入れてもらったのに……)

「……行けるか、ガトウ」

「ひゃははい! だだ、大丈夫ですっ」

 

 赤くなった頬を俯いて隠しながら、アンナは応える。

 ライとイマには、ミネバ・バトルロイヤル実施の発表から三日間、自分の特訓に付き合ってもらった恩義もある。その恩を返すためにもアンナは頑張ろうと、役に立とうとしているのだが、それがどうにも空回りだ。

 

(がんばれ、がんばろう、がんばらなきゃ、私!)

 

 アンナは両手でぱんとほっぺたを叩き、自分に気合を入れ直した。

 

(よしっ。がんばるんだぞっ、アンナ!)

 

 顔を上げたアンナの前で、クァッドウィングが四枚の翼を大きく開いた。青く透き通ったバーニア光が翼から噴き出し、クァッドウィングはふわりと宙に舞い上がる。

 

「……行くぞっ!」

「あいあいさー、マスター!」

「……はいっ、ライ先輩っ」

 

 旋風を巻き上げて飛び立ち、あっという間に星のように遠くなるクァッドウィング。ターミガンは両足のホイールを猛然と回転させてローラーダッシュで遺跡を突っ切り、それを追いかける。アンナも両肩と背中のシールドブースターを点火、蹴っ飛ばされるような加速度を感じながら、コロセウムに向けて飛び出していくのだった。

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

「くっ、限界か……!」

 

 サツキ・コウタは、額に浮かんだ汗を手の甲で拭った。

 機体の状況は、非常に悪い。シュバルベストライカーも、フルシティストライカーも、とっくにプラスチック片と化してコロセウムの床に転がっている。エイハブストライクに残された武装は、もはや頭部バルカン(イーゲルシュテルン)高周波ナイフ(アーマーシュナイダー)の二つだけだ。

 

「こんなことなら、ハシュマルストライカーも完成させておくんだったな……」

『泣き言は情けないですよ、先輩。二時方向より敵。近接攻撃です』

 

 轟ッ!

 猛烈な風圧が、立ち昇る土煙を吹き散らす。MSの身の丈を超える大剣が、一瞬前までコウタのいた空間を薙ぎ払った。

 

「ふうっ。助かるよ、シキナミさん」

 

 彼女の声がなければ、終わっているところだった。コウタは視界の隅に小さく映るオペレーター画面に向かって、軽く頭を下げた。しかし、そこに映る怜悧(れいり)な少女は冷たい無表情を欠片も動かさず、代わりにメガネの位置をくいっと直して、次のオペレーションを事務的に告げた。

 

『いえ、仕事(ブカツ)ですから。正面、近接攻撃。直撃コースです』

「ちょ、直撃って!」

 

 飛び退いた次の瞬間、またしても大剣が土煙を吹き散らして、振り抜かれた。その風圧に、剣圧に押されて土煙が晴れ、大剣の主が姿を現す――ジンクスⅣをベースに、手足を何倍にも太く頑強に鍛え上げた、銀色の巨人。そのシルエットは筋骨隆々、素組みの倍以上のプラスチックを使っていそうな仕上がりだ。そして、右手の大剣も、左手の大楯も、その巨体に相応しい巨大さである。

 銀色の巨躯に巨大な質量兵器と重厚な実体盾という、重さと頑丈さに全てを賭けているかのようなそのガンプラは、ジンクス系特有の禍々しい四ツ目に鬼火のような光を灯し、コウタを睨みつける。

 

「どうしたんだい、コウタ君。逃げてばかりじゃあないか」

 

 超重量級のガンプラに似合わない、軽やかな口調に、爽やかな声。通信ウィンドウに現れた顔も、白銀色(プラチナブロンド)の長髪をなびかせる、涼しげな美丈夫だった。彼は汗の一筋もかいていない顔に柔らかな微笑みを浮かべつつ、剣呑な超重大剣を高々と振り上げた。

 コウタはガクガクと笑いだしそうになる膝頭をぐっと握って抑えつつ、彼に問うた。

 

「……同級のよしみで見逃してもらうってのは、なしかな。アルト君」

「ふ……ふは、ふははははは! 冗談がきついなあ、コウタ君。私の愛する妹に銃を向けて……生きて帰れるつもりかぁぁぁぁッ!!」

 

 怒りに喉も張り裂けよと絶叫、そして突撃。銀色のジンクスは、その超重量を噴き出すGN粒子の推進力で無理やり跳び上がらせ、質量に任せた叩きつけを見舞おうと、エイハブストライクへと襲い掛かる。

 

「私と妹の前に立つものは! この私が、〝第十位(ミネバ・オブ・テン)〟ヤマダ・アルベルトが、全て断つ!」

 

 〝最高位の十一人(ベストイレヴン)〟が一人、〝第十位(ミネバ・オブ・テン)〟にして〝重装番兵(パンツァーヴェヒター)〟、ヤマダ・アルベルト。

 常識外れの超重兵器を自在に操るその膂力(りょりょく)の前に、いかなる防御も無意味。コロセウムに転がる十数機分のガンプラの残骸は、全て彼がその大剣で叩き潰したものだ。その圧力が、迫力が、今コウタへと向けられている。

 

『先輩。当たれば一撃死です』

「わ、わかってるさ!」

 

 あくまでも事務的なシキナミに、コウタは虚勢を張って叫び返す。アーマーシュナイダーを両手に構えているが、こんなものは気休めにすらならない。あの攻撃は、躱すしかない。コウタはフットペダルを踏みこみ、エイハブストライクの膝を曲げ腰を落とした。

 

(ぎりぎりまで引き付けて、躱して、太陽炉にアーマーシュナイダー……これしかない!)

 

 エイハブストライクに残された武装で、あの装甲の塊のようなジンクスにダメージを与える方法は、限られている。コウタは賭けに出ることにした。

迫りくる銀色の巨躯、振り下ろされる大剣。直撃の刹那を見極め、エイハブストライクは地を蹴って飛び出し――

 

「んなっ!?」

 

 バキィンッ! 

 右膝、破砕音。ストライカーパックをすべて失うほどの激戦は、エイハブストライク本体にもダメージを蓄積させていた。バランスを失い、倒れ伏すエイハブストライク。その上から、天が落ちてくるほどの圧迫感で、巨大な刃が振り下ろされる。

 

(くそぉっ……今期も、ダメだったか……!)

 

 やけにゆっくりと感じる時の中で、コウタは唇を噛んだ。入部から二年が過ぎ、三年に進級しても。コウタはただの一度も、ミネバ・バトルロイヤルで生き残ることができていなかった。理由はわかっている。「余計な手出し」だ。今回だって彼と――よりによって〝最高位の十一人(ベストイレヴン)〟と、事を構えるつもりはなかった。でも、どうしても。チームを組んだメンバーでは、なくとも。苦戦している人を見ると、手助けせずにはいられない。

 

(また、シキナミさんに叱られちゃうな……)

 

 なぜか自分のオペレーターをほぼ専任で勤めてくれている、後輩の声が聞こえてくるようだ。「先輩はお人好し過ぎます」「もっと勝ちにこだわってください」「しゃっきりしてください、情けないですね」などなど。事務的な口調で自分を叱責する、彼女の幻聴。今回もまた、叱られちゃうな。諦め気味に、自嘲する。

 ――と、そこまで考えて、コウタは気づいた。大剣がエイハブストライクを叩き潰すのが、いくら何でも遅すぎることに。

 

「……なんだい、キミは。また邪魔者かな」

 

 超重の大剣は、コウタの真上を逸れてコロセウムの床を叩き割り、深々とその身を喰い込ませていた。そしてその側面を、爆裂するように花咲く氷の結晶(・・・・)が――否。白く荒々しく氷結した手掌(・・・・・・)が、抑え込んでいた。

 

「……通りすがりの、新入部員だ」

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

「お兄、さま……新入、部員……?」

 

 額を接するほどの至近距離で睨み合う、銀色の巨人と四枚羽根の騎士。その様を、コロセウムの最上段、辛うじて崩れずに残っている貴賓席から見下ろす少女がいた。

 兄と同じ、丁寧に手入れされた白銀色(プラチナブロンド)の髪。人形のように透き通った肌と、碧い瞳。

 

「わたくしも……お兄さまの、お役に立たなきゃ……!」

 

 少女の言葉に応えるように、MSの光学迷彩が解除される。

 そこに現れるのは、萌えるような新緑色の女神。戦闘兵器というにはあまりにも優美な曲線を描くその機体から、GN粒子の輝きが溢れ出す。

 

「……ガデス・アテネ。ヤマダ・フレデリカ。参ります……!」




今回もまた説明が多め……構成力の不足を痛感しています。
ところで、事務的な口調で叱られるのってすごく興奮す(ry

……すみません。拙作は作者の惜しみないガンプラ愛と、ほんの少しの特殊性癖でできています(笑)

次回こそはバリバリの戦闘シーンになる予定です。ご期待ください。
感想・批評もお待ちしています。どうぞよろしくお願いします!

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