ガンダムビルドダイバーズ ブルーブレイヴ   作:亀川ダイブ

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どうもこんばんは。
第二話、ようやく最終パートです。
どうぞご覧ください!


Episode.02-D『ウバイアイ ソラ ④』

「あああ、アカツキ先生! ぼぼ、ぼくと、付き合」

「ブチ撒けるぜェェッ!!」

 

 ちゅどぉぉぉぉん。重装型のレギンレイズ、爆散。

 

「ナツキせんせぇ、女の子同士でも愛」

「ぶっとべェェッ!!」

 

 ちゅどごぉぉぉぉん。ピンク色のスローネドライ、爆散。

 フォースネストコロニー中央、魔王城・城門付近。戦場のど真ん中に、もう何発目になるかわからない盛大な花火が上がった。

 

「……ッたく、なんでどいつもこいつも撃つ前に話しかけてくンだァ? ルールわかってンのかよォ」

 

真っ黒焦げのプラスチック片となって墜落する生徒のガンプラたち。落ちていく先にはすでに、同じように撃墜された生徒たちのガンプラの残骸が山となっている。その光景に困ったように言い捨てつつ、ナツキはぽりぽりと頭を掻いた。そのモーションを検知して、ナツキが乗るガンプラも同じ動きをする。

 真紅の装甲と重装備を身にまとう、典型的なジオン系MS。名を、グフリート・改八型(エイトカスタム)

 一年戦争時のジオン系格闘型MSであるグフとイフリートを組み合わせ(ミキシング)、さらに二門のジャイアント・バズと二枚のミサイル内蔵シールド、二基の二十八連装ミサイルランチャー、二本の大型ヒートホークを装備し、高火力・重装甲、そして機動・運動性能という相反する要素を、高いレベルで両立させた機体だ。

 

「奇襲の一つもかけりゃァいいのに、わざわざ通信開いて真正面から何か叫びながら……どうせ爆発で何も聞こえねェのに、何がしてェんだウチの部員たちは」

 

 教え子たちの不出来を嘆き、ため息を吐く。黒焦げにされた生徒たちが勇気を振りしぼって言いかけていたセリフは、どうやらまったく聞こえていないようだ。

 ――長丁場のミネバ・バトルロイヤルも、もう終盤。ショウカとのチェス対決を譲ってやった(・・・・・・)ナツキは、魔王城の門番を自ら買って出た。ナツキも〝最高位の十一人(ベストイレヴン)〟の一人である以上、自分から攻撃を仕掛けることは禁じられている。それでもガンプラバトルに興じたいのであれば、一番の激戦区で待ち構えるのが上策……そして丁度、もう一つ。いや、ついでにもう一人のこと(・・・・・・・)についても、そろそろ動いておきたいところだったのだ。

 

「なあ、どう思うよサカキィ?」

 

 本当にわかっていない様子のナツキの言葉に、サカキは被せるようにため息を吐いた。

 

「アンタはもうちょっと、察しと言うか……」

「お? なんだァ、サカキ。はっきり言えよ、聞いてやるぜェ?」

「いや、別に……なんでもねぇっす。次、来るぜ。ザクⅢ改!」

 

 悪戯っぽく笑うナツキ。本当の本当に、気づいていないらしい。サカキはため息をもう一つ、せっかく考えたであろう告白(セリフ)を言い切ることもできずあえなく散っていった同級生だか後輩だかも知らない部員たちに「相手が悪かったな」と弔辞を送りつつ、旧型のザクマシンガンを構えた。

 今のサカキのガンプラは、無改造の旧ザクだ。キットこそオリジン版で関節機構などは比較的新しいタイプのものだが、それ以外は基本的なゲート跡処理とスミ入れ、艶消しトップコートぐらいしかしていない。

 

『テメェら、ガンプラで人様に迷惑かけてンだ! 学校での補習だけで終わると思うなよォ!』

 

 という顧問(ナツキ)の一喝は、もう三日前のこと。以来サカキたち三人組は学校での補習と反省文、奉仕作業に加えてGBNでのボランティア活動にも駆り出されていた。この旧ザクは、自分のガンプラを使うことを禁じられたサカキたちが、GBNでのボランティア活動用にナツキから押し付けられたものだ。

 留年か進級かの分かれ目だった春休みの補習も結構な地獄だったが、今回の補習はそれ以上に地獄だった。約束を破り、後輩の女の子を怖い目に合わせたことを考えれば、それも当然。サカキは愚痴を言い(そしてナツキにヘッドロックからの拳で頭グリグリされ)つつも、補習とGBNでの奉仕作業をした。

 しかしあとの二人は、二日目からもう、学校に来なかった。自主退学したそうだ――そして、その時、初めて知った。本来なら三人とも即時強制退学だったのを、ナツキが理事長に掛け合って、その期限を先延ばしにしてくれていたことを。あの後輩女子(ガトウ・アンナ)の親に、頭を下げに行ってくれていたことを。

 

『……やってらんねぇだろ、サカキさん。バックレようぜ』

 

 補習を最後まで受けて下校するサカキの前に現れた二人は、そう言ってバイクの鍵を投げ渡した。しかしサカキは一秒だけ掌の上の鍵を見詰め、無言で投げ返した――そしてまただらだらと愚痴を漏らしつつ、そしてナツキに頭をグリグリされつつ、サカキは今日もGBNにダイブし、使いたくもない旧ザクで部活動に参加したのだ。

 

「ハッハァ、まだ来るかよ! テメェ相当に恨みを買ってンなァ、サカキ! 挑戦者が次から次にじゃねェか!」

「いや、お目当てはセンセだろ……ま、気持ちはわかるけどよ」

「あァ? 何か言ったかァ?」

「な、何でもねぇっすよ!」

 

 サカキは誤魔化すように大声で叫び、ザクマシンガンのトリガーを引いた。合わせ目消しもしていないモナカ構造のザクマシンガンの精度は、使い慣れたヤクト・ズールのビームマシンガンとは比べ物にもならず、敵を掠りもしない。

 

「ンだよ、サカキ! 自分のガンプラじゃなきゃあその程度かァ? あのヤマダと〝第十位(ミネバ・オブ・テン)〟争いをしてた頃を思い出せ! やればできる、ってなァ!」

「ふ、古い話すんじゃねーよ!」

 

 古傷をくすぐられ、狙いがブレる。他の奴に言われたらすぐにでもぶん殴るところだが、なぜかナツキに言われてもそんな気にはならない。他の奴が言外に含める「前は強かったのに」というじめじめとした雰囲気が、ナツキの言葉には全くないからだろうか――と、その時。ブレた銃弾が何の偶然か、突っ込んでくるザクⅢ改のモノアイを貫いた。よろよろと蛇行したところへ、グフリートのジャイアント・バズで爆撃。おそらくはナツキ目当てで突っ込んできた一部員は、何も言えないままに撃墜されてしまった。

 

「ぃよっし、一機撃墜っと! 顧問で〝第八位(ミネバ・オブ・エイト)〟とはいえ、部のルールだからな。オレもルール通り勝ち残って、部室でGBNさせてもらうぜェ! ハッハァ!」

「ったく。センセのくせに、子供かよアンタは」

 

 無邪気にガッツポーズを決めるナツキの笑顔に、サカキは軽くため息を吐く。

 コロニー上空を見上げれば、濃紺の宇宙を移す天窓に表示された残りダイバー数はあと121となっていた。

 試合終了まで、あと一人。次に誰かが撃墜されれば、今期のミネバ・バトルロイヤルは終わる。

 

(チッ。適当に死ぬつもりだったのに……生き残っちまったじゃねーかよ)

 

 いまいち性能の低い旧ザクのレーダーを信じるなら、周囲数キロに敵影はなし。どうやら、最後の一人になるのは自分たちではなさそうだ。

 部室の使用権を勝ち取ってしまったら、きっとナツキはサカキの居心地の悪さなど無視して、むしろそれも罰の一部だとでも言わんばかりに、部室でGBNをさせるのだろう。部員に、部長に、そして例の後輩女子に頭を下げて、部室の一番隅の端にでも、目立たないように座って……もう一度、ちゃんと、部活に戻る。

 

(面倒くせぇ……まったく、面倒くせぇことさせてくれるぜ、ナツキちゃんよお)

 

 そんな日々を想像して、サカキはこの三日でもう何度目かのため息を吐く――ただしその口元は、微かに笑っているようだった。

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

「あらためて、名乗らせてもらおう。〝第十位(ミネバ・オブ・テン)〟ヤマダ・アルベルト。〝重装番兵(パンツァーヴェヒター)〟ジンクスⅣ・アガートラーム」

「……ヒムロ・ライ。ガンダム・クァッドウィング」

 

 構える二者の間に流れる、束の間の静寂――しかしそれは、彼ら以外によって打ち破られた。

 

「きゃああああっ!」

 

 絹を裂くような悲鳴。それは悲鳴にも関わらず気品を感じさせるものだったが、その後に続いた墜落の爆音は、ライの耳朶を遠慮なく打った。

 墜ちてきたのは、曲線的なデザインをした緑色のガンプラ――フレデリカのガデス・アテネ。落下の衝撃はGNフィールドで相殺したようだが、そもそも機体はボロボロだった。右手と右足は喪失、全身に無数の弾痕が穿たれ、手持ちの武器も失っているようだ。

 

「へへん、どーです! やってやりましたよっ、マスター! えっへん♪」

 

 通信画面にでかでかと現れたイマのドヤ顔だが、その頬が黒く煤に汚れている。サブカメラで確認すると、ターミガンはコロセウムの端、石造りの観客席の上に腹ばいになって倒れたまま、グッと親指を立てていた。

 

「私たちもちょこっとだけ、やられちゃいましたケド……てへへ」

 

 言いながら、イマはばつが悪そうに舌を出す。ターミガンが腹ばいになっていたのは、何もイマが楽をしたかったからではない。ターミガンの両脚が、膝から下が、まるごと消失していたからだ。観客席の少し離れた場所には、銃身が焼け爛れもはや使い物にならないであろうクァッドバスターライフルも転がっている。

 

「ま、まだ撃墜判定はされていません。私たちは大丈夫ですから……っ」

 

 その隣でアンナのガトキャノンも、片脚を失った状態で観客席に倒れ込んでいる。両肩のシールドと両手のガトリング砲も、破壊されてしまったようだ。しかし、ひび割れたゴーグルアイは光を失っておらず、まだ機体は生きていると訴えている。

 

「……後は、任せろ」

 

 通信ウィンドウ越しに頷き返し、ライは再度、アガートラームへと向き直る――が、拍子抜けしてしまった。

 

「リカ、大丈夫かリカぁぁぁぁっ!?」

 

 超重大剣(クラウソラス)を投げ捨て、ガデス・アテネにすり寄るアガートラーム。クァッドウィングに無防備な背中を晒し、さらにはコクピットハッチまで開いている。アルベルトはさすがにコクピットから飛び出すことまではしていないが、今にも飛び出さんばかりの勢いで身を乗り出し、形の良い眉を歪めて妹に呼び掛けている。

 

「何で前に出たりしたっ! お兄ちゃんが全部片づけてあげるからと、あれほど!」

「も、申し訳ありません、お兄さま……」

 

 ガデス・アテネのハッチも開き、兄とよく似た豊かに波打つ銀髪の美少女が、顔を出す。儚げな美貌に似合わず、額に汗など浮かべているが、その表情はどことなく自慢げだ。おどおどとした瞳の奥に、やり遂げたという満足感が見え隠れする。フレデリカは兄に訴えるように、ほんの少し声を強くして言った。

 

「り、リカは、お兄さまの役に立ちたくて……お相手の支援型のガンプラ、二機と相打ちまで持ち込みましたから……!」

「無駄なことを!」

 

 ――フレデリカの、表情が。ぴしりと音を立てて、凍り付いた。

 

「おまえはそんな危ないことなんてしなくていいんだよ、リカ。お兄ちゃんが全部片づけてあげるから、リカは後ろで待っていればいいんだ。弱いくせに前に出たりして、お兄ちゃんを心配させないでおくれ、私の可愛いリカ?」

「で、でも、リカは……お兄さまの、お役に……」

「いいから下がりなさい、リカ。おまえに苦労なんてさせないよ。この程度の相手なんてお兄ちゃん一人でなんとでもなるんだから、大人しく下がりなさい。おまえは、私の言うことを聞いていればいいんだよ」

 

 凍り付いた表情が、さらに温度を失い、曇っていく。フレデリカは力なく項垂れたまま、消え入りそうな声で、一言だけ呟いた。

 

「はい……お兄さま……」

「よしよし、良い子だね、リカ。あとはお兄ちゃんに任せなさい」

 

 アルベルトは安心したように息を吐き、慈愛に満ちた表情でフレデリカを見下ろしながら、コクピットハッチを閉じた。そしてゆっくりと、アガートラームを振り返らせる。地面に突き立っていたクラウソラスを引き抜き構え直し、先ほどまでの妹への猫なで声とは一転、地獄の底から響くような低く凄みを帯びた声で告げる。

 

「我が愛する妹を傷つけた、重罪……断罪せざるを得ないッ! トランザムッ!!」

 

 びりびりと、声圧が衝撃となって響き渡る。アガートラームから噴き出すGN粒子が一瞬にして赤く染まり、機体全体を包み込んだ。太陽炉の出力を限界まで引き上げる特殊スキル、トランザムだ。赤く輝くGN粒子がクラウソラスに浸透し、ただでさえ一撃必殺級の破壊力を、過剰殺戮(オーバーキル)級にまで高める。

 しかし、その猛烈なプレッシャーを前にして、ライの心は別の次元を彷徨っていた。

 

(……あの、言葉……あの思考は、まるで……ッ!!)

 

 よみがえる記憶。少年時代の記憶。薄暗い部屋。取り囲む画面、画面、画面。唸りを上げるファン、冷却装置の山。星の数ほどの計算を繰り返す、機械、機械、機械――少女。幼い、稚い、少女の姿――

 

『……ライ君。あなたは、私の言うことを聞いていればいいんですよ』

 

 笑う、嗤う、哂う、男。黒い、暗い、闇のような、蛇のような、冷笑。でも、俺は――俺は――言われるが、ままに――

 

「あわわわわ、まま、マズイですよマスター! トランザムライザー級のエネルギー量が、あのどデカい剣に集中していますっ!」

「この試合(ゲーム)は、生き残れば勝ちですっ。に、逃げてください、ライ先輩っ」

 

 二人の声に、意識が引き戻された。吹き荒れる高圧縮GN粒子の豪風、深紅に染まった銀色の巨人。今にも飛び出さんとする巨躯の番兵を前にして、ライは握り締めていた右拳を掌打の形に構え直した。

 

「――ここで退いては、俺の正義が廃る」

 

 強制排熱機関、粒子冷却機構、全力全開(フルドライブ)。不要な熱量が陽炎となってウィングスラスターから排出され、同時にクァッドウィングの右掌から、青白銀色の冷却粒子が噴出する。

 

「ははっ! それが噂の、氷のシャイニングフィンガーか!」

「……来い、ヤマダ・アルベルト。お前は、俺の正義に反する……ッ!」

「ならば行かせてもらおうか、妹の分までッ! はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 紅く染まった銀の巨人が、粒子をまき散らし土煙を蹴立てながら、猛然と突撃した。アガートラームは重量のわりに柔軟でスムーズな動作をしていたが、今のアガートラームの突撃力は、それ以上。高機動型のMSに勝るとも劣らない。重量と速度の乗算からはじき出される破壊力にGN粒子の出力まで加われば、もはやその一太刀は戦術兵器に近い。

 ライはブライクニルフィンガーを構ええたまま低く腰を落とし、ウィングスラスターを大きく左右に展開した。眼前に迫る、城塞が如き巨躯。高々と振り上げられた超重大剣(クラウソラス)。だが、粒子そのものの活動を凍結させるブライクニルフィンガーは、どんな攻撃であろうとも停止させる!

 

「貴様の独善と傲慢……凍りつく(とき)の中で、悔い改めろッ!!」

「断るッ!」

 

 右掌を突き出すクァッドウィングの頭上を、ライの動きを模倣したかのような稲妻機動で、アガートラームは跳び越えていった。トランザムの出力で無理やり軌道を捻じ曲げたような稲妻機動は流石に本家本元のクァッドウィングには及ばなかったが、それでも、ブライクニルフィンガーを空振りさせるには十分だった。

 

「……ッ!?」

「妹を撃ったのはッ! 貴様らだなァァッ!!」

 

 アルベルトは怒声を張り上げながら着地、その後の一瞬の硬直すらトランザムの出力任せにキャンセルして、観客席へと――そこに倒れ伏し身動きの取れないターミガンとガトキャノンへと、クラウソラスの切っ先を向け、突撃した。

 

「ほあーーっ!? こ、ここでイマたちですかぁーーっ!?」

「い、イマちゃん逃げてっ」

 

 アンナはガトキャノンに残された右肩のマシンキャノンを撃つが、アガートラームにとってそんな銃弾など豆鉄砲以下。ましてやトランザムの勢いまで乗せた突撃が、止まろうはずもない。

 

「イマっ、ガトウっ!!」

 

 ライはウィングスラスターを全力で逆噴射、超鋭角で機体を反転させ、飛び出した。いくらトランザム中でも、アガートラームは重装備の重量級ガンプラ。生粋の高機動型であるクァッドウィングの全速力なら追いつける。

 

(間に合え……ッ!!)

 

 しかし、間に合わない。ブライクニルフィンガーがアガートラームを捉えるよりも、クラウソラスがイマとアンナを両断するのが、先だ。ほんの一秒ほどの差だが、このままでは、間に合わない。

 

「とどけぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 それでも、ライは手を伸ばした。氷結粒子を纏った右掌を、前へ前へと伸ばし続ける。ジオングのような射出機構も、石破天驚拳のような飛び道具も、この手にはない。だが必死で、我武者羅に、先を行くアガートラームの背中を掴もうと、ただひたすらに手を伸ばす。

 後、一歩。だが、アガートラームの剣は、クラウソラスは、今まさに――

 

「お兄さま、危ない!」

 

 割り込んできた、新緑色のガンプラ。満身創痍のガデス・アテネが、トランザムの出力を全て加速に回し、アガートラームとクァッドウィングの間に滑り込んできた。必然、ライのブライクニルフィンガーはガデス・アテネの顔面を鷲摑みにし、巨大な氷柱を出現させる。

 

「なん、だとッ!?」

「リカっ!?」

「お兄さまは、わたくしがお守りしま……」

 

 ただでさえ撃墜寸前だったガデス・アテネは、その一撃で完全に沈黙。クァッドウィングがガデス・アテネの頭部を握り潰すのと同時、氷結粒子の氷柱は崩壊し、辺り一面に冷え切った粒子結晶と凍てつく旋風が吹き荒れた。

 

《――BATTLE ENDED!!》

 

 戦闘終了を告げるシステム音声。コロニーの天窓に映し出された人数表示は、フレデリカの戦闘不能(リタイア)を受けて、120となっていた。この瞬間、フォースネストコロニー内の全てのガンプラはその活動を完全に停止させられ――アガートラームが突き出した超重大剣は、ターミガンの目の前わずか数センチのところで、止まっていた。

 

「た、助かっ……た……?」

 

 気の抜けたようなイマの呟き。イマは空気の抜けた風船のようになって、ぐんにゃりとコクピットにへたり込んでしまった。アンナも半泣きに張りながら、「よかったあ」と座り込んでいた。

 

「……ヤマダ・フレデリカ」

 

 ライはクァッドウィングの掌に残った新緑色のプラスチック片を見詰めながら、彼女の名を呟いていた。氷結粒子が雪のように降る中、ガデス・アテネの残骸は、何も言わずに闘技場の地面に散らばっている。

 

「……決着は次の機会だ、ヒムロ・ライ君」

 

 通信機を通さない、アルベルトの肉声。見ればアルベルトは、生身でアガートラームの頭の上に立ち、クァッドウィングを見下ろしていた。ライもコクピットハッチを開け、クァッドウィングの掌へと飛び乗った。足元に転がる新緑色のプラスチック片を踏まないように気をつけながら、ライはアルベルトを見上げた。

 

「君もまた、我が愛する妹に危害を加えた。私の撃墜予定リストに、君の名を加えておくことにするよ」

「……好きにしろ」

「ともあれ、今回のミネバ・バトルロイヤルはこれにて終了。我が妹は、見た通りまだまだ弱くてね。なんとか部室を使えるようにしてあげようと頑張ったのだけれど……上手くいかないものだね、ガンプラバトルというものは」

「……彼女は、強いぞ。お前が思う、何倍も」

「おや、妹を擁護してくれるのかい? ありがたいけれど、惚れちゃあダメだよ、ヒムロ君。リカは、私のものだ。リカを愛していいのは、私だけだ――だから」

 

 銀髪の美丈夫は、ライの言葉などどこ吹く風。爽やかな美貌に余裕の微笑みを浮かべながら、演技がかった調子で、ライに告げた。

 

「私以外に墜とされてはいけないよ、ヒムロ・ライ君。妹を傷つけた人間を裁くのも、また兄の役目なのだから」

「…………」

 

 あくまでも涼しげな流し目と、感情を押し殺した猛禽の目。見下ろすアルベルトと見上げるライの視線は交差し合い、互いに一歩も譲らない。

 試合終了を受けてバトルシステムがダイバーとガンプラをフォースネストへと転送し始め、景色が、ガンプラが、ダイバー自身が、粒子の欠片となって消えていく。しかしその間も二人はただ黙って睨み合い、粒子の最後の一かけらが転送され切るまで、目を逸らすことはなかった。

 

 

 

 

〔Gundam Build Divers BLUE BRAVE〕

 

 

 

 

《ミネバ・バトルロイヤル 試合結果(リザルト)

 

 峰刃学園高校ガンプラバトル部 総勢302名中 生存120名

 

 生存者 三年生、54名

     二年生、38名

     一年生、24名

     エルダイバー、3名

     教師、1名

 

最多撃墜賞  〝第六位(ミネバ・オブ・シックス)〟シシガミ・キド

最小被弾賞  〝第零位(ミネバ・オブ・ゼロ)〟ヒビキ・ショウカ

       〝第二位(ミネバ・オブ・ツー)〟ミカガミ・アルル

       〝第二位(ミネバ・オブ・ツー)〟ミカガミ・ルルカ

 

 生存者には、次回のミネバ・バトルロイヤル開催まで、部室の優先使用権を与える。

 また副賞として、今期エレメント・ウォーにて使用可能な500EP(エレメントポイント)を与える。

 

 私立峰刃学園高等部ガンプラバトル部 顧問 アカツキ・ナツキ

                   部長 ヒビキ・ショウカ




 ……と、言うことで。第二話Dパートでした。
 新入生歓迎会「ミネバ・バトルロイヤル」もようやく終わり、次回からはいよいよガンプラバトル部の活動が本格的に始まります。
 しかしたぶんきっと、次回の更新はガンプラ紹介のコーナーになると思います。できるだけ早くお届けできるように頑張ります。

 今回は今後の展開に関わる伏線をがっつり入れてみましたが、どうでしょうか。ライの過去に関わっている蛇のように笑う丁寧語の男とかいったい誰なんでしょう。まったく予想もつきませんねそうですね。知りたいあなたは前作「ドライヴレッド」を読もう!(ダイレクトマーケティング)

感想・批評お待ちしております。今後もよろしくお願いします。

12/23 追記
都合により、クァッドウィングのガンプラ紹介を第二話終了後から、第一話終了後に移動しました。ご了承ください。
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