「ここがトリゴの街か」
「結構広いじゃねえか...」
でっけぇ化け物から逃げ切った...逃げ切った?
まあ何にせよ、あいつをどうにかした俺達は、無事トリゴの街に辿り着いた。ようやく休めんのか...
「変わらないな...」
「ニア?」
「...なんでもない」
ニアが少し俯く。グーラ出身の人間にしか分からない何かがあるのか?ま、なんでもないって言ってるし気にするこたぁねえだろう。
「さて、と。宿屋までは案内するよ。そこでお別れだ」
そう言うとニアは一番に歩き出す。別れか...まあ、仕方ねえか...
さ、んじゃ俺達も行くか。
「...ん?」
俺達は街中を歩いていた。んで、掲示板を見つけたんだ。
そこには、手配書が貼ってあった。帝国の反逆者、イーラの者がどうのこうのって書いてあるな。その手配書の人相書きにはあのシンの顔があった。イーラってのがあいつらの組織名か。なるほどな。
んで、手配書は3つあったんだ。まあ当然っちゃ当然なんだがな。
で、シン、メツときて最後の一人はやっぱり...
「何だこれは...もしかしてこれがアタシ!?」
ニアかと思ったんだ。だが若干違った。
ニアとビャッコが混ざった...よくわかんねえ謎の生物が描かれていた。
「何とも上手く特徴を捉えた人相書きで...」
「えっ?何だってぇ!?」
「あぁいえ、どうやら私とお嬢様の情報がごっちゃになっているようですね。これは心外」
まあ、特徴を捉えていない訳じゃあねえな。二人分混ざってるだけで。
「しっかしまあ、こんだけ似てなけりゃあバレて追いかけ回されねえかもしれねえし、一周回っておもしれぇからいいんじゃねぇの?なぁニア」
二アを落ち着けようと思って言った冗談だったんだ。
「いい訳、ないだろ!」
グシャー
「俺も死にたくて死んでる訳じゃねえし、俺死にやすいからよ...いきなり殴るんじゃねえぞ...」
ダメだったみてえだな。
「うーっ...きーっ!」
怒りが収まらない二アは、その手配書を引っ掻いてビリッビリに破いちまいやがった。
「さぁ、他に勇気のあるものはいないか!君のその勇気で、明日のスペルビアを支えるんだ!あーもちろん、月々の給料だけじゃない。恩給だって出る!勲功を積めば、爵位だって賜られる!偉大なるスペルビア皇帝、ネフェル陛下のために、君の勇気を見せてくれ!さあ名乗り出よ、明日の英雄よーっ!」
先に進んでいくと、兵士みたいなのが二、三人、旗を立てて演説してやがった。
「なんだあれ...胡散臭っ」
「ドライバースカウトか」
「ドライバースカウト...?」
「最近じゃ、街中でドライバーを募集してんだ」
どうやら悪質な勧誘とかではねえらしい。にしても、国の兵士が街中でスカウトってことはつまり、一般人を兵士にするも同然のことだろ?何処の世界でも戦事情はあんま変わんねえな...
「同調できる者は日々減っています。軍人の中にもいなかったのでしょう」
「ドライバーを募集とか同調って、何のこと?」
「見た方が早いよ」
レックスはその辺の事情はまだ察せてないみたいだな...
まあ見た方が早いってニアも言ってんだ。ここは見物といかせてもらおうぜ。
「やめなよ兄ちゃん、危ないよー!」
「兄ちゃんにもしものことがあったら、ボクたちどうすればいいの?」
「わ、わかってるさ。だけど、もしこの僕がドライバーになれたら...」
あれがドライバー志望の人か。ところで危ないってどういう...
「どけ!青びょうたん」
「うわぁっ!」
おい、別の奴が横から割り込んで突き飛ばしていきやがったぞ。ああいうのは気に食わねえが、指名手配中のニアがいる以上街中で騒ぎはあんまり起こせねえしなぁ...
「さあ、俺にふさわしいブレイドよ、力を貸してもらおう!」
その間にも、その割り込んできた奴がコアクリスタルに手を触れちまった。んでそいつは、なんか黄色い光に包まれながら足がガクガクしてやがる。なんだ?どっか痛めたのか?あんな真似するから罰が当たったのかもな。
「ありゃダメだな」
「じゃな」
その様子を見ていたニアとじーさんが口を開く。ダメってそりゃどういう意味で...
「おおおおおぉ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ブシャァッ
な、なんだ!?今あいつ、身体中から血噴き出して倒れたぞ!いくら因果応報っつってもやりすぎじゃねえのか!?
「おおっとぉ、これは見かけ倒しだぁ!残念!」
兵士が2人出てきて、すぐにそいつを運び出していく。
「残念!じゃねえよ!今血噴き出してたじゃねえか...」
「コアの負荷に耐えられなかったんだよ」
「残念ですが、資格のない者がコアクリスタルに触れるとああなってしまうのです」
俺の疑問にニアとビャッコが答えてくれた。なんだよ...結構おっかねえじゃねえか...
「負荷に耐えきれないと流血か...阿頼耶識みたいな物ってことだね」
「その、アラヤシキ?ってのが何なのかは知らないけど、納得できたならいいや」
ミカも理解できたみてえだ。そういや阿頼耶識の方も情報量に耐えきれなくてやべえことになりかけた奴が何人かいたな...
「兄ちゃん!」
「だ、大丈夫だ。兄ちゃん、絶対にドライバーになってお前達に良い暮らしをさせてやる」
家族のために、危険な道でもって関係無く...俺みてえじゃねえか...
そんな強い意志があるんだ、きっとやれんだろ!
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
そいつはコアに触れ、さっきの奴と同じ様に叫びだした。だがこいつは、さっきの奴とは違い、震えてはいなかった。これなら、もしかすると...!
「おめでとう、かな」
ニアがそう呟いた一瞬後に、そのコアは槍に変化し、あいつの横にブレイドが誕生した。
「や、やったぞー!」
「兄ちゃん!」「やったね兄ちゃん!」「兄ちゃーん!」
「コアクリスタルが、武器になった...」
「ブレイドとは、ああして誕生するんじゃよ」
「え?でもオレの場合は...」
なるほどな。人間がコアクリスタルに同調してブレイドが生まれるってのは、ああいうことか。でもホムラは最初っからコアクリスタルじゃなかったような...
「アンタの場合は特別。ホムラ、天の聖杯なんだろ?だったら何が起きたっておかしかない。っていうか、命分けて貰うとかもうすでに理解不能。まあ、横にもっと理解不能なのいるけどな!」
「理解不能で悪かったな!俺だって好きで何度も死んでる訳じゃねぇって言ってんだろ!」
「ところでその天の聖杯って何?
レックスが話に割って入ってくる。まあ確かにそれは俺も気になってたがな。
「アタシだって、伝説のブレイドってことくらいしか知らされてない。っていうか、本人に直接聞きなよ。さ、行くよ。後は叙任式とか、つまんない式典ばっかさ」
言い終えた二アは、とっとと先に進む。
じゃ、俺らも行くか...っと、ミカがなんか不思議そうな顔してるな。
「どうした、ミカ」
「いや、大したことじゃないんだけどさ。俺、さっきのあのブレイドを始めて見た気がしないんだよね。なんか...実際に見た覚えはないのに、知ってる...みたいな」
「なんだそりゃ...ここに来るまでの道のりで何人かドライバーもいたし、他人の空似ならぬ、他ブレイドの空似とかじゃねえのか?」
「そうかも...まあ、いいけど。じゃ、皆を待たせちゃ悪いし、行こっか」
「そうだな」
「...それにしても、コアクリスタルに触れるとブレイドが生まれてくるだなんて、やっぱすごいよなぁ...」
「私達ブレイドの本体はコアクリスタルと呼ばれる、宝石に似た素子なんです。触れた者に適性があった場合のみ、自身の体細胞を増殖させて分離体を生み出す...それがブレイド」
「なるほどな...」
「へぇ...」
ホムラがブレイドの仕組みについて詳しく説明してくれる。コアクリスタルが本体か...二アが前に「ドライバーが死ぬかコアクリスタルを破壊されない限り大丈夫」って言ってた理由がよくわかったぜ。
「っていうか、始めて知ったみたいな感じだけど、三日月はブレイドなんでしょ?オルガは知ってるんじゃないの?」
「あぁ、そういえばあの時はニアしかいなかったね。俺とオルガ、異世界人だから。俺はこの世界にくるときに、なんかブレイドになってた」
「...全然意味がわからないんだけど」
「大丈夫、アタシもよくわからん。この世界のことについて2人が知らなさすぎる理由は納得できたけど」
ま、普通はそうなるわな...他の世界じゃ同じ境遇の奴らもいたが、ここにはいねえみたいだしな。
「まー要するにじゃ。ドライバーとコアクリスタルが運命的に巡り会ってこそ!ブレイドが誕生するということじゃな」
「生まれ出るブレイドの容姿は千差万別。人に近いものから私のようなものもおります」
「ドライバーの個性や精神が反映されてるって説もあるね」
「ドライバーとブレイドの出会いは、とっても神秘的なんですよ!」
嬉しそうに語るホムラ。そういや...ホムラもさっきのブレイドみたいに誰かから生まれたのか...?それとも天の聖杯だから自力で生まれられるー、とかなのか...?
「一同!抵抗するな」
誰かの声がしたと思ったら、さっきの兵士と同じ格好の連中が来やがった。何の用だ...?
「その者、帝国に仇なす反逆者、イーラの者であろう!」
「イーラ...ち、ニアは違う!」
「そうか?白き獣のブレイドを連れたグーラ人のドライバー、手配書の人相書きにそっくりではないか!」
「似てねぇよ!!」
即座に否定するニア。絵の上手さと似てる似てないは別だからな。他の2人はまじでそっくりだったが。
「で、オルガ。俺どうすればいい?あいつら潰せばいいの?」
「いやお前、流石にそれはまずいだろ...まだ様子見だ。やるのはあいつらが仕掛けてきてからでも遅くねえ」
別にあいつらは今の所俺らの邪魔をする敵じゃあねえ。可能なら穏便に済ませてえところだが、さて...
「ふん。ところでそこの2人、見た所お前らもドライバーの様だが、登録ナンバーは?」
「え?と、登録...」
「あぁ?んなもん知らねぇに決まってんだろ!」
「すべからくドライバーとなった者は、アーケディアへ届け出なくてはならない。登録ナンバーがないということは、さてはお前、モグリのドライバーだな?」
「違う!オレ達は...」
「お前達を連行する!申し開きは、領事閣下の前でするがいい!」
結局戦闘になっちまうみてえだ。まあ、なるならなるでこっちだってやってやるよ!
「レックス、オルガ。今からアタシとビャッコで仕掛ける。その隙にアンタ達は...」
「行くぞミカァ!俺達の前に立ち塞がる奴は、どこの誰だろうとぶっ潰す!」
「あぁ。邪魔する奴は全部敵だ」
二アがなんか言いかけた気がするが、無視して俺達は突撃する。
「...あの人たち聞いてないけど」
「みたいだね...しょうがない、いくよ!」
「て、抵抗するのか!?来るのか!?ひ、怯むな!相手は少数...取り囲んで引っ捕らえ...」
「パクス警備長!包囲網、破られました!」
「つ、強すぎる...!流石はドライバー!」
へっ、当たり前だろ?俺が本気なら、ミカはそれに応えてくれる。そうなりゃお前らに勝ち目なんてねぇ!
「レックス、オルガ。今だ!」
「逃げんのか?」
「当たり前だろ!?ほら早く!」
「しょうがねえか...退くぞミカァ!」
逃げることにした俺達の前に、いきなり青い炎の壁が現れる。
「ま、待ってくヴァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「オルガ!くっ、何なんだこの炎の壁は!」
急な炎の出現に、俺は巻き込まれ見事に炙られちまった。
「騒がしいですね。せっかく束の間の休暇を楽しんでいたのに」
振り返ると、青い服を着て双剣を構えた女が歩いてきていた。炎を発生させたのもこいつのようだ。
「カ、カグツチ様」
「カグツチ?ブレイドか!でもドライバーは?」
「私のドライバーは現在、ある任務で遠征中です。今は私一人」
「ふははははは!カグツチ様は、スペルビアの宝珠とも呼ばれる、帝国最強のブレイド。ドライバーなくしてもこの力、観念しろ!」
「...オルガ、下がってて。こいつ多分強い。俺がやる」
いくら生身の戦闘にまだ慣れてないっつったって、ミカがそこまで言うとは随分やるみてえじゃねえか...
「けどな、この世界じゃドライバーがブレイドの力を借りて戦った方が強いんだろ?お前は補助に回ってくれ」
「あ、そうだった」
「お前...んじゃそういうわけだ。ミカがここまで言うんだ、あいつは相当強い。お前らも気ぃ引き締めろよ!」
「言われなくとも!」「わかってるよ!」
「翠玉色のコアクリスタル...まさかとは思ったけれど...いいでしょう。パクス警備長、殺生は禁じます。彼等を生きたまま捕らえなさい」
「はっ!おいっ、例のものを」
向こうは向こうで何か話してたみてえだが...関係ねぇ!
よし、行くぞお前らぁ!