「美味い、美味いよホムラ!」
「うまうまだもー、ほっぺおっこちちゃうもー!」
「こんな美味いモン食ったのは120年ぶりじゃ」
「アトラの料理もおいしかったけど、ホムラの料理もいいね」
トラの家に置いてあった食材を使って、ホムラが料理を作ってくれた。で、それを皆で食べてるんだけど...おいしいな、これ。
「久しぶりの料理なので、腕がなまってたらどうしようって思ってたんです」
「なまるどころか、最高だよホムラ!」
「火星ヤシと一緒に食べても合うね」
「へぇ、ヤシかぁ。一個貰ってもいいかな?」
「ん。どうぞ」
「サンキュー!...ん゛っ!?」
「あ、ハズレだね」
「な、なんだよそれ!?」
火星ヤシも、ハズレさえ引かなきゃ美味しいんだけどね。人に渡す奴に限って大体ハズレちゃうの、なんでだろ?
「それにしても不思議だも...ホムラちゃん、火を使うブレイドだも?さっき水道管ぶっ壊した時も火の力使えてたも」
「そういえばそうだね、あのカグツチとかいう帝国のブレイド、あれもホムラと同じ火を使うブレイドだったけど、向こうはかなり影響を受けてた。でも、ホムラだけ影響を受けてないのが何か変だったりするの?」
まだこの世界のことは詳しくない。聞けることは聞いとかないとね。
「この世界には、エーテルっていう属性の力があるも。火とか水とか風とか...他にも色々あるも。ドライバーもブレイドも、このエーテルの力を源にするも。で、火は水に弱いも。だからあのブレイドのねーちゃんは、水ばしゃーんしてパワーダウンしたも」
「でも俺とホムラの力は問題なく発揮できたぞ」
「どうしても?」
エーテル...だからあのエーテル遮断ネットとかいう奴がブレイドの弱点なんだな。
「えーっと...私の属性、火じゃないので...」
「もももー!?火じゃないのに、何で火の力使えるも!?」
「そ、それには結構複雑な事情が...」
「どしても?その複雑なジジョー、すっごくキョーミあるも!」
「え、えーと、それは...その...」
複雑な事情、か。
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「...お久しぶりですね、セイリュウさん」
「うむ。昔とは随分と印象が変わったのぉ?」
「色々、ありましたから」
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...きっとあのじーさんは分かってて黙ってるんだろうな。だったら話を逸らした方が良さそうかな。
「ダメだよトラ。ホムラが困ってる。」
「もー...」
「三日月の言う通りだ。いいかトラ、人には言えない事情ってもんがあんの。だよね?」
「ごめんなさい、そのうちお話できる時がくれば必ず」
「いいよそんなこと。さ、それよりニア達を助けること、考えよう」
レックスが自分と同じ意見で助かった。にしても、天の聖杯って一体なんなんだろ。バエルみたいな伝説だけの存在って訳でも無いみたいだし。
「まずは街に出て情報を集めないとだも」
「ふむ...しかしワシら既にお尋ね者になっているかもしれんからのぉ。特に、天の聖杯であるホムラや、見慣れぬ服装をしている三日月は目立つ」
「ごめんなさい...」
「え?あー...なんかごめんな」
「ダイジョウブだも、トラにいい考えがあるも」
...なんか嫌な予感がするな。
「...何これ」
「でも、これなら私だってバレませんよね」
「でもこれ...まあ、いいか」
流石に犬の耳の付いたパーカーを着せられるなんて思わなかった。っていうか、なんでこんなに小さいノポン族のトラが人間用の服持ってんだろ。
「さ!アニキのトモダチ、探しにいくも!」
場所は変わり時は少し遡って、戦艦到着直後のトリゴ基地港。
「メレフ特別執権官!いかがなされました、突然のご来訪とは...前もってご連絡くだされば、歓迎の催しを開きましたものを」
「生憎、その手のモノは苦手でね。常に辞退させて貰っている」
「何を仰います。メレフ様程のお方、万全の体制をもって遇さねばネフェル陛下に顔向けできません!」
戦艦でスペルビア本国よりやってきたメレフ。そしてそれを出迎えるモーフ。
一見敬意を持った態度で出迎えているようにも見えるが、その実、モーフは少し前にバーンからある話を聞いていた。それは、天の聖杯がグーラに向かったかもしれないという話だ。天の聖杯は強大な力を持っていると伝説でも語られる存在であるため、モーフはそれを手に入れることで、本国への凱旋や、バーンに売りつけることで大金を手にする、といった計画を考えていた。そのためには、メレフより先にホムラを手に入れなければならない。だから、こうして必死に足止めしようとしているのであった。
「いかがでしょう、これより晩餐の準備をさせます。メレフ様にはそれまでの間...」
「随分と早かったですね。到着は明日かと思ってたのに」
「カ、カグツチ様」
モーフの後ろから、カグツチがやってくる。自身のドライバーが到着したという報告を聞き、港に来たのだ。
「天の聖杯が見つかったのならば、急がせもする。おかげで船のエンジンは整備工場行きだがな」
「天の聖杯!?な、なぜそれを」
つい、本音を漏らすモーフ。
「何か問題でもあるのかね?モーフ君」
一瞬、目つきの鋭くなるメレフ。
「い、いえ。滅相も、ございません」
「聞けば、イーラのドライバーを捕らえたという。どこにいけば会えるのかな?」
「えっ?会って、どのような...」
モーフからしてみれば、イーラのドライバー...つまりニアは、天の聖杯自信でもなければそのドライバーでもない。捕まえても自分は得はないのに真面目な兵士が勝手に捕まえてきた、程度の認識でしかなかったので、つい疑問に思ったのだ。
「モーフ君。どこに行けば会えるのかな?」
「はっ、はいっ!すぐにご案内を!」
メレフの気迫に気圧され、モーフは従わざるを得なくなる。
一体何の目的で?まさかあのドライバー達も天の聖杯について何か知っているのか?
様々な考えを巡らせながら、モーフはメレフをニアとオルガの下へ案内した。
「さて、どうみたってお偉いさんのあんたが俺を呼びつけた用件はなんだ。言っとくが仲間を売る気はねえぞ」
「ふっ、よくわかってるじゃないか。だがその気がないのは困るな」
独房に放り込まれてたところで急にこのメレフって奴に呼び出され、こうして話してるのが今の俺の状態だ。二アはすでに呼ばれた後みたいだな。ミカもいねぇしこっから脱出すんのは難しいか...
「だが、この街の外に出たという報告はない。いずれ見つかり、そして捕らえられるだろう」
「っ!待ってくれ!あいつらは俺の言うことを聞いて動いてただけなんだ!頼む!俺ならどうにでも殺してくれ!何度でも殺してくれ!首跳ねてそこらに晒してくれてもいい!だから...!」
あいつらはこんな所で止まっていい奴らじゃねぇ!あいつらには行きたい場所があるんだ...!
「知らないのか?天の聖杯の力は天を裂き地を灼く。彼等の目的次第では、放っておくことはできない。イーラのドライバーと行動を共にしていたとなれば、彼らがイーラの仲間である可能性もある」
「イーラ?違うな!あいつらは...あいつらは鉄華団だ!」
咄嗟に嘘ついちまったが...悪の組織の一員扱いよかよっぽどマシなはずだ...!
「そうか。だが仮に彼らがイーラとは無関係で、その「鉄華団」の仲間だとしても、その団の目的が不明である以上、見逃してやることはできないな。」
ごもっともだ。名前が知られてねぇってのは不便でならねぇな...。
「それと、だ。君にはもう一つ聞きたいことがある。君のブレイドである、あの少年のことだが」
「あぁ?ミカがどうしたってんだ」
「ミカ...やはり知らぬ名だな。あれ程の力を持っているのなら、名前が知れ渡っていてもおかしくないと思ったのだがな。あの力、どうやって得た?」
「知らねえよ。俺もあいつも生きてく為に目の前のもんにしがみついて進んできたんだ。それにあいつは強くなきゃ生きていけねぇことを俺以上によくわかってる。そんだけだ」
「なるほどな...」
なんか考え事してんな。まさか今の発言だけで何か察したってのか...いや、流石にねぇか。
「メレフ様、何か気になることでもありましたか?」
「カグツチか。そういう風に見えたか?」
「えぇ」
その通りだ。やはり長年のつきあいともなれば、そういった起伏も読み取れるものだな。
「...二人のドライバーの話に嘘がなければ、あの少女はイーラとの関わりを断ったようだ。そしてあの見慣れぬ服装や名、それに反してお前と互角に戦えるほどの実力。不思議なものだな...まるで異世界から急に現れたかの様だ。」
「そのようなことが起こり得るのですか?」
「わからんさ。この世界にはまだまだ我々の知らぬことが溢れている。ただ...」
「ただ?」
───「知らねえよ。俺もあいつも生きてく為に目の前のもんにしがみついて進んできたんだ。それにあいつは強くなきゃ生きていけねぇことを俺以上によくわかってる。そんだけだ」───
「彼らには彼らなりの意志がある、ということだけはよくわかったよ」
「...なるほど。では...聖杯の件、どうします?」
「引き続き捜索...の必要もないな。話を聞く限り、彼らは仲間らしい。ならばそれを利用させてもらうだけだ」
「...承知しました」
さて...天の聖杯のドライバー。一体どれほどの者か、試させてもらおうか。
ちょっといつもより文字数少ないな ゆるして