「それで、二アが捕まってる
「ちょうど雲海が引いたみたいじゃから、ホムラの言っていた大樹の根っこを目指すべきじゃろうな」
トラがハナを起動させ、俺達はいよいよ戦艦へと乗り込む。タイミング良く雲海が引いてくれたみたいだから、予定通り根っこから乗り込むことになった。
「あの根っこが伸びていたのはガレグロの丘の少し先だったも。ここからだと、階段を一番上まで上ってから吊り橋を渡って門をくぐれば、ガレグロの丘に着くも」
「スペルビア帝国軍の見張りは大丈夫でしょうか?」
「スペルビア帝国軍の基地周辺は厳重に警戒してるけども、ガレグロの丘までなら問題ないも」
「決まりだね」
「はりきって行きましょうも」
さて、皆を助け出さなきゃ。
「あれが
「へー。立派だね」
「これもインヴィディアとの再戦に向けた帝国の準備のひとつというわけじゃの」
「あ、見て。あそこ。ホムラの言ったとおり根が搬入口の下まで伸びてる。この下から回れそうだな、行こう!」
ガレグロの丘に着いた俺達。じっと眺めたことはさっきまでなかったけど、この戦艦、よく見るとかなり大きいな。皆を捜すのは結構大変そうだ。
そして、木製の倉庫の屋根を飛び移ったり、はしごを登り降りしたりしながら俺達は下へ降りていく。途中で、オルガなら死んでたなって思うような着地の衝撃も味わいつつ。
伸びた木の根っこの先端までたどり着いた俺達は、戦艦を下から見上げる。
「結構高さがあるなぁ」
「俺のワイヤークローやレックスのアンカーは多分届くけど...ホムラ達はどうする?」
「俺が上から引き上げるよ。待ってて」
そう言うと、レックスが最初に登り、上からアンカーを垂らす。俺も登っておこっと。このワイヤークロー、便利だな。
「まずはホムラから。捕まって」
笑顔を浮かべてこっちを見るレックスだった。けど...ホムラが捕まった瞬間、一気に表情を崩して体制もよろける。
「うっ!お、重い...」
その勢いは、サルベージャースーツのヘルメットに入っていたじーさんが咄嗟に飛び出すぐらいだった。
「ご、ごめんなさい!」
レックスの言葉を聞いたホムラがすぐさま手を離し後ろに退く。結果アンカーは凄い勢いで上に戻っていき、レックスは尻餅をつく。
「い、いってぇ...」
「レディーに向かって重いとは、デリカシーのない奴じゃの」
「駄目だよレックス。失礼だ」
重いなんて言ったら、失礼だからね。そういうとこはちゃんとしとかないと。
「そうだも!デリカシーないも!」
「ごめんなさい!本っ当にごめんなさい!」
「い、いや、そういう意味じゃなくて...」
下からトラの叫び声と、謝るホムラの声が聞こえてくる。レックス、そういうつもりじゃなかったのかもしれないけど誤解を生むようなことは言うもんじゃないよ。
「確かにトラより重いも。でもそれは、立派にセーチョーしてる証拠だも!いいことだも!すっごくいいことだもっ!」
それ、フォローになってるのかな...?
なんて言ってると、突然ハナが足のブースターから火を噴き出しながら飛び上がり、一気に上まで登ってくる。
「ハナが引き上げますも。さあ、捕まってくださいも」
レックスが再びアンカーを垂らす。それにホムラが捕まると、今度はさっきみたいなことにもならず無事ホムラを引き上げれた。
「凄い力だ...」
「ハナは人工ブレイド。このくらいラクショーですも。ゴンザレスだって引き上げられますも」
ゴンザレスって如何にもモンスターって名前してるけど...ホムラ、どうみても気にしてるように見えるし。
その後、特に何事もなくトラも引き上げ、無事潜入に成功した。
搬入口から中に入り込み、トラ曰くクラウドタンク室っていう部屋を通り抜ける。中に住み着いていたモンスターも倒して道を開き、はしごを登って上の階へ上がる。
「なっ...侵入者!?くそ...大人しくしろってんだ!」
「お前こそ大人しくしてろ...!」
やっぱりというか案の定というか、スペルビアの兵士が見回りをしていた。けど、向かってくる度に全部潰して先に進んだ。
「...ご主人。この辺りのどこかにブレイドがいますも」
「ハナ、そんなことがわかるのかも?」
「はい。何かブレイドの波動って感じですも」
辺りに鍵のかかった部屋が多くある通路に着いたところで、ハナがそんなことを言い出す。どうやら近くにビャッコがいるみたいだ。
「片っ端から開けてみましょう」
「だね。それが一番早いや。」
ってことになったから、俺がメイスでぶっ壊して、ホムラが焼いて穴を開けるって方法で、それぞれドアを片っ端から開けていった。いやこれ開けたって言わないな。まあいいか。
そして何個目かのドアをホムラが焼いて、その先には...
ビャッコがいた。
「あのう...ヤケドとかしてませんか?」
「ホムラ、だから火が強すぎだって」
「ごめんなさい、加減が難しくて」
開いた穴を覗き込みながら、そんな話をするホムラとレックス。
「ホムラ様、レックス様!」
「おぉ、無事じゃったか、ビャッコ」
「間に合ったみたいでよかった」
「よかったもー」
「ほらご主人、やっぱりここにいたですも」
「
「ビャッコ、いきなりで悪いけど二アがいる場所わかる?」
「もちろんです。私と同調した、たった一人の方ですから」
トラとハナの説明を終えて、ビャッコを部屋の外に出す。
「...ところで、三日月様がいればオルガ様の場所は分かる筈なのでは?」
「え、そうなの?...あ、なんかわかった気がする」
「適当だなぁ...」
どうやら、ブレイドはドライバーの居場所がわかるらしい。覚えておこう。
「助けに行こう。処刑なんかさせるわけにいかない」
「はい。お願いします」
ビャッコをチームに加えて、艦内を駆け回る俺達。
入り組んだ通路を走り抜けて、2人の兵士が入り口を見張っている部屋を見つける。
「間違いありません。あそこです!」
「よし、行こう!」
躊躇なんてしない。してられない。
俺達は兵士に向かって走り始める。
「なんだ貴様ら!」
「テロリストの仲間か!」
「仲間だけど...テロリストなんかじゃない!」
レックスのその声が合図となって、戦闘が始まった。
扉の見張りを任されてるだけあってか他の奴らより強そうだ。けど、負けてはいられない。
兵士が銃で攻撃してきたけど、ドライバーと俺はそれぞれの手にした武器で弾き、ブレイドの皆はエーテルでバリアを作って防ぐ。
「お返しだっ!」
レックスが剣を振るって炎を放つ。炎は上手く敵兵に当たり、片方の兵士を怯ませる。
「やらせるかよ!」
もう片方の兵士がグレネードを取り出し、投げる。流石にあれは危ない...!
「させないも!」
グレネードが爆発するが、大した被害はでなかった。
トラが咄嗟に飛び出し、背負った盾を使って防いでくれたからだ。
「守るのはトラ達の役目だも!」
「ですも」
...オルガの負担も、この世界なら少しは減りそうだね。
まあ、とりあえず今は...
「あっぶねぇ、なぁ!」
こいつらを潰す、ただそれだけだ。
「ホムラ、とどめ頼む!」
「はいっ!...『フレイムノヴァ』!」
エーテルを使って熱を生み出し、それを使って攻撃する。ブレイドって色んなことができるんだな...
ホムラの一撃で兵士が完全に倒れる。
「よし!これで中に入れる!」
「うん、早く二アを助けよう」
俺達は兵士の守っていた扉を開け、中に入っていった。
...独り、だな。
前にもこんなこと、あったなぁ...
捕まって、閉じ込められて...
あの時は、シンが助けてくれた...
でも、もうあんな事はないんだろうな...
分かってるけど...それでも...
ガチャッ
扉の開く音だ。もしかして...
「シン...」
「ニア、生きてる?」
...三日月...?何でこんなところに...?
「大丈夫か、ニア!」
レックスまで...逃げろって言ったのに...?
「三日月、レックス...アンタ達...」
「遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」
ビャッコ...アンタも助けてもらえたんだ...よかった。でも...
「いいんだ。誰も来てくれるはずないって、思ってたから...」
「は?あんた何言ってんの?」
「三日月...?」
「仲間は見捨てない。捕まった仲間を助けにくるのは、当然のことだ」
そう言って三日月は手を差し伸べてくれた。かつて、シンがアタシにそうしたように...
「...ふっ、やっぱ凄いよ、アンタ」
「別に?普通でしょ」
アタシはその手を掴んで立ち上がった。もしかしたら、アタシの居場所は...。
「アニキ達、脱出ルート見つけたも!」
「ノポン族...?」
ノポン族が開いた扉に体半分隠しながらこっちを覗いてる。
前はいなかったけど...新しく仲間を見つけたのかな...?
「お力を貸してくださった...」
「新しい仲間だ」
やっぱりそうだったみたいだ。
「よ、よろしく...」
「さぁ、こんなところに長居は無用じゃ!オルガも助けだして、さっさと脱出するぞ!」
じーさんの声が聞こえてきたと思ったら、ホムラ、これまた見たことない...ロボット?が同じように顔を出してきて、そのロボットの子の頭にじーさんが乗っていた。
..随分と増えたなぁ...
「あーいたいた。ほんとにブレイドってドライバーの場所わかるんだね」
「おぉ、ミカ」
「おぉじゃないよ。こんなところで捕まって...ほら、いくよ」
「待て待て待て!急いでるのは分かるが引きずるな!待てって言って...ヴァァァァァァァ!!!」
いきなり扉がぶっ壊れるから何事かと思いきや...ミカ達が助けにきてくれたみてぇだ。けど引きずるのは勘弁してくれよミカァ!!
通路を走りながら、俺達はドライバーとブレイドについてとか、今まで何があったのかとか、色々と話を聞いた。色々と大変だったみたいで、迷惑かけちまったな...
んで、ブレイドにはロールっつー役割があって、それは攻撃、回復、防御の三種類あるとか。
ホムラは攻撃だし、ビャッコは回復。ハナって呼ばれてるこの新しい仲間は防御なんだとよ。だがハナに関しては、トラっていうこのノポン族曰く「設定を変えれば何でもできるも」だそうだ。
で、一緒に戦ってるブレイドのロールによってドライバーの戦い方も変わるんだとよ。
...因みに、俺は仲間を守るのが役目だからてっきりミカは防御になるのかと思いきや...「誰がどう考えても攻撃も」だとよ。まあ、そりゃそうか...
さて、そんな話を聞きながら進んでると、俺達は格納庫前の扉にたどり着いた。
「もももー、鍵が掛かってて開かないも」
「ハナの力でも無理そうですも...」
「もうちょっとだってのに...!」
「どこかに鍵があるはずじゃが...」
鍵なんて探してたら時間がかかっちまう。だったらここは...
「関係ねぇよ、んなもん!」
「オルガ!?でも、どうやって...」
「ハナ1人じゃ無理なんだってな?じゃあ、全員の力を合わせるだけだろ!」
「そっか、それなら...!」
よーしお前ら、いくぞぉ!
「「『バーニングソード』ォッ!」」
「「『メイルシュトローム』!」」
「「『ジェットカムカム』!」」
「『レイジオブダスト』」ッ!!」
全員が、それぞれのブレイドと力を合わせて放った一撃。
その全てが扉に直撃し、扉は見事木っ端微塵だ。
「よし、これで脱出できる!」
俺達は、外に向かって走り出した。だが...
「逃げ出す気なんでしょうけど...そうはいきませんよぉー!」
出口の方から、捕まってるときに見かけた男...確か名前はモーフっつったか。そいつがブレイドと思われる重装備のでっけぇ怪物を連れてくる。
「イーラのテロリストを捕らえたという実績が、取り逃がした汚点になってしまうのは困るの。翠玉色のコアクリスタル、お前は天の聖杯ぃ!いまいましいけど、メレフの読み通りだったというわけね」
「ホムラのことを知っている?お前もホムラを狙っているのか!」
「お前もぉ?当たり前でしょー!天の聖杯、その力は空を裂き大地を割る、アルスト史上最強のブレイドォ!聖杯を求めない者は、その価値を知らない愚者のみ!そして私は愚者ではない!だーから私は聖杯を手に入れ...」
パァン!
「ごちゃごちゃとうるさいな...!」
ミカの奴、長話を聞くのに飽きたのか、それとも欲まみれのクズ野郎にイライラしてたのか、とうとう発砲しちまった。だがモーフの奴、素早い動きで後ろで控えてたブレイドの後ろに隠れやがった。
「チッ...じゃあこれなら!」
今度は横に回り込んで、そこから射撃する。だが、モーフはまたブレイドが攻撃を受けるように移動しやがる。
「あいつ...!ブレイドを楯にするような戦い方を!」
「はぁ?何を言ってるのぉ?ブレイドはいくら傷ついても再生する。けれどドライバーが死んでしまえば元のコアに戻ってしまう」
「だからブレイドが楯になるのが当然だって?アンタ最低だね、身体の傷は再生しても、ココロの傷は、なかなか癒えないんだよ!」
...?ニアの奴、まるで自分のことみたいに言って...
「はーっははーっ!私にはブレイドの気持ちがわかるんですってー?お優しいドライバー様もいたもんねぇー?」
しっかし本当に腹立つ野郎だなこいつ。
「ミカァ!お前らぁ!そんな戦い方じゃあ俺らにはかなわねぇって教えてやろうぜ!」
「ああっ!俺達の力、見せてやろう!皆行くよ!」
多分今年最後の回かな 格納庫の鍵取りに行くとこは特に見所ないしすっ飛ばしました いいよね?