モーフのブレイドに固有名ないの呼び辛すぎる
モーフの戦い方は、陰湿って言う他ねえような戦い方だった。
ひたすらブレイドの後ろに回って、そっから銃を撃ってきたり爆弾放り投げてきたり、だ。
んで、楯にされてるあいつはブレイドだから傷は再生する、と。
下手すりゃ永遠に続きかねないが、少なくとも俺らの負けはありえねぇ。
「なんなのよこいつらっ!攻撃しても全部あの変な前髪の男の方に飛んでくし!あーもう!早くあいつら潰しなさいよ!この役立たず!」
ほら見ろ。楯扱いしてたブレイドに攻撃まで任せ始める始末だ。銃弾なんて俺がいる限り俺の仲間に当たりはしねぇ。あと変な前髪で悪かったな。
んでもって、そのブレイドの守りも、そろそろ突破できそうな頃合いだ。だろ、ミカァ!
数十分前、艦内の通路にて...
「そういやミカ、ここにきてから戦ってるときに何か言ってないか?」
「え?あー...レックスもホムラも、戦ってるときそんな感じじゃん?」
「言われてみればな...」
通路を走りながら、俺はミカに気になってたことを聞いてみる。言われてみると、確かにレックス達は戦闘中に声掛けをしている。
「しかし、お前がそういうことするのは珍しいだろ?」
「周りに合わせてみようかなって。それにオルガも叫んでたじゃん。技名」
「あれか?あれはその場のノリで付けただけだしよ...」
「でも格好良かった。俺も何か欲しいな」
...ミカ、ブレイドになって色々変わったな。前までなら絶対こんなこと言ってなかったぞ。
「...!」
ふと、ミカが何か思いついたような顔をした。
「どーした?」
「いいのが思い浮かんだ。俺らしい技。次の敵で試してみる」
「おぉ、いいんじゃねぇの?楽しみにしとくぜ」
結局次の敵とはいっこうに出会わず、今このモーフってのと戦ってるんだが...ミカ、お前ならいきなり本番でもいけんだろ?
「やっちまえ、ミカァ!」
俺はミカのメイスを思いっきり宙に放り投げた。それをミカが受け取って...手に装着したワイヤークローを消し、代わりにいつぞや使ってた滑空砲を出現させ、手に取る。
モーフのブレイドの正面に立ち、まずは滑空砲を一撃、直撃させて敵の動きを封じる。
その後、滑空砲を消して、すぐさまモーフのブレイドの懐に飛び込み、メイスを両手で大きく構えて1回、2回と左右に力強くスイング。
そして、そのメイスを相手に向けて構え、トドメの突きをお見舞いする...!
「...『鉄華戦闘機動・ブロウ』」
なんだよ...結構かっこいいじゃねぇか...
その一撃をまともに受けたブレイドの方は紙くずの様に吹っ飛ばされる。あのモーフって野郎もそのブレイドの後ろにいたもんだから、巻き込まれて一緒に壁に叩きつけられる。
「なぜ...こんな子供達に...聖杯を手に入れて...本国へ...凱旋...」
それだけ言い残すと、モーフの奴は気を失った。ブレイドの方も、倒れたまま動かねぇようだ。
「俺らの勝ちだな」
「二ア達を処刑しようとするからだ」
「違う...こいつらはアタシ達を本国へ送ろうとしてた!」
「ん?俺は知らねえぞ?」
「たまたま聞かされてないだけだよそれは!レックス、三日月、罠だよこれは!」
「罠?じゃあニア達が処刑されるって触れはウソ!?」
「でも、どの道来なきゃ皆は捕まったままだった」
「...そうだよ!罠とかそんなの関係ない!」
ふっ、俺達鉄華団は例え罠が前にあっても、罠ごと噛み砕いて進むからな!まあ、今回は俺はその罠にかけるための餌扱いだったわけだが...
「アニキ!今は話してる場合じゃないも!はやく逃げるも!」
「ご主人が正しいですも。追っ手がくる確率は高いですも」
「そうじゃな、急ごう。まずは街の外へ逃げるんじゃ」
「よーし、行くぞお前らぁ!」
俺達は格納庫を後に、外への道を走っていった。
戦艦の外にでて、連絡橋を越えて、もうすぐでスペルビア軍の基地からも出られるっていうまさにその時だった。
俺達の行く手を、青い炎が阻む。
「この炎は!」
「あいつか!」
ホムラとレックスがその正体に気付く。無論、俺らも気づかねえ訳がねぇ。
青い炎の奥からやってきたのは、カグツチとかいうブレイドと...俺を呼びつけて尋問してきやがった...メレフって奴だ!前はカグツチの方が持ってた蛇腹双剣を、今回はメレフが持ってやがる。なるほど、あいつはドライバーだったってわけか!
「今度はドライバーと一緒ってか」
「炎の輝公子...メレフ!」
「メレフ?」
ビャッコはあいつについて知ってるみたいだ。にしても大層な肩書きだな...
「スペルビア帝国、特別執権官メレフ。帝国最強のドライバーにして、同じく帝国最強のブレイド、カグツチの使い手」
「最強×最強でチョー最強ってわけか」
「だがそれがなんだってんだ、俺らはこんな所で止まるわけにはいかねぇんだ!」
「いい闘志だ...仲間のために我がスペルビアの戦艦に乗り込んできただけのことはある」
相手がどんだけ強かろうと、それを乗り越えて俺らは進んでく!それだけだ!
「アンタでしょう...アタシ達が処刑されるってウソの情報を、レックス達の耳に入れるよう細工したのは!」
「良い勘をしているな。そう、君は君で利用価値がある。しかし...」
「レックス達はもっと利用価値がある」
「少し違うな。翠玉色のコアクリスタルは天の聖杯の証し...そのブレイドが真に天の聖杯であるのなら、私にはやるべきことがある」
「ああ?なんだそりゃ」
あれか?国のために天の聖杯の力を自分の物にするってか?んなことさせねぇぞ!
「空を裂き大地を割るその力...二度と世界を灼かせるわけにはいかない」
「ホムラが世界を灼いただって?いい加減なことを言うな!」
「知らないのか?500年前の聖杯大戦での出来事を。3つの
「あんな馬鹿でかいもんを3つも...!?」
「全て歴史が語る事実だ」
その言葉を聞いた俺達は、ホムラの方を見る。ホムラは俯いて何も言わねぇ。本当...なのか...?
「...わかったぞ。ホムラを戦争の道具にするつもりだろ!誰がそんなことさせるもんかっ!」
「そのような力を野放しにできない、と言っている」
「いやだ、と言ったら?」
その瞬間、メレフが蛇腹双剣を展開し、後ろの青い炎も勢いを増す。
「力尽けでも君達を拘束する」
「...だったら全力で言ってやる。ぜーったいに!い!や!だ!」
その言葉を合図に、レックスが腰にしまった剣を抜き、二アもツインリングを、トラもハナシールドの中心からドリルを展開し、構える。
俺もミカのメイスを両手で強く握り、いつでも始められるように構えておく。
「ふっ...ならばその意志、等しく力で見せてみろ、少年!」
「『ローリングスマッシュ』!」
「『ぐんぐんドリル』!」
レックスが大きく前転しながら剣を地面に叩きつけ、炎を起こし、トラはドリルを回転させながら突撃する。
だが、メレフは双剣を振り回してそれを軽くいなす。
「だったら後ろから!『ジェミニループ』!」
「俺も行くぞ!」
二アがツインリングにエーテルを纏わせて、思いっきり投げる。俺はメイスを引き摺りながら走っていき、当たる間合いで振り上げる。だが...
「そうはさせません」
カグツチがエーテルでバリアを作り出し、俺達の攻撃を防ぐ。届かねえか...!
「隙だらけだぞ?『蒼炎剣・弐の型・明王』!」
攻撃を弾かれた俺がよろけたその一瞬に、双剣を左、右と連続で振り上げ下ろして攻撃し、続けて双剣を同時に振り上げ叩きつける。それをモロに受けた俺は燃え上がりながら吹っ飛ばされる。
「オルガ!」
「俺は死んでも生きてられるからよ...止まるんじゃねぇぞ...」
「あの男...一度死んだのか?だが、すぐに...」
衝撃でやられた俺だが、すぐさま起き上がり戦いを続行する。流石の特別執権官様も驚きを隠せねぇみてぇだ。
「俺は殺したって死なねえ体でな!悪いが勝たせてもらうぜ!」
「さて、ブレイドの方は...変化なしか。ドライバーが死んでも記憶と身体を保っていられるブレイド...やはり君たちは謎が多いが、今はひとまずその強大な力を封じさせてもらおう」
「は?んなもん無理だって...ヴァァァァァァ!!」
メレフが剣を振るうと、俺の足下に炎が出現し、俺を焼く。だがこんなもん、すぐに...
「こんぐらいどうってことね...ヴァァァァァァ!!」
くっそ、確かに生き返ったのに、またすぐにやられちまった!なにが起きて...
「見た所君は、多少の傷で死に至る。だが、ブレイドはコアには戻らず、君自身もすぐに蘇生する。蘇生の際に移動することはできない...ならば君の足下に常に炎を発生させておけば、君は何も出来ないだろう?」
ちっ!俺の弱点をあっさり見抜きやがった!そうだよ、その通...ヴァァァァァァァァァ!!
「オルガ!...だったら俺が」
ミカが炎を浴びながら俺の落としたメイスを拾い、メレフに向かっていく。だが...
「そして、いくら君が強かろうとブレイド単体で出せる力には限界がある」
ミカの攻撃を捌いていくメレフ。まずいな、こりゃあ...
「そろそろ終わりにしようか。『蒼炎剣・弐の型・烈火』!」
メレフが双剣を交差させて構え、それを解くと同時に炎を解き放つ。
爆発に巻き込まれ、レックス達全員を吹っ飛ばす。
剣を地面に刺して何とか倒れずに耐えたレックスとホムラに追撃を加え、ホムラは倒れちまった。
「ホムラ!」
ホムラを守ろうと、双剣の攻撃を一つの剣で防ごうとするレックス。だが、状況が悪いのは誰が見ても明らかだ。
「はぁっ!」
「ぐうっ!」「ああぁぁっ!!」
メレフの一撃がレックスの腕を焼いたとき、ホムラも一緒にダメージを受けている。なんでだ?命を分けた影響か?くっそぉっ...自力じゃこの炎から抜け出せねぇし、誰かに助けてもらうにもあいつに隙が無さ過ぎる...
「どうした!君の意志の力とはその程度のものか!」
言い放ちながら次の一撃を放ち、レックスが倒れる。だがレックスも立ち上がり、反撃をお見舞いする。メレフはそれを受け止めつつ、宙返りで退く。
「ホムラは渡さない...聖杯とか力とか、ホムラをもの扱いしてるお前なんかに!」
そう言いながら、苦しい中で敢えて笑ってホムラに手を差しのべる。ホムラもその手を掴み、立ち上がる。
「ホムラには行きたいところがあるんだ!その気持ちを、お前に閉じ込められてたまるかっ!」
レックスがホムラの力を借りて剣に炎を纏わせ、それを掲げる。いけえっ、レックスッ!
それを振り下ろして放った一撃。威力はかなりのもんの筈だが、それでも奴には通じねぇ。
「直線的で分かりやすい攻撃だな。天の聖杯といえど、ドライバーがこれでは...」
容易く炎を弾くメレフ。その炎は...こっちに飛んできてるじゃねぇか!!ヴァァァァァァ!!!
爆風に巻き込まれたおかげで、偶然にも脱出成功だ!よし、俺も一撃入れてやらぁ!いつものあの技だ、名前を付けるなら、そう!
「『カウンターアタック』!」
まんまじゃねぇかって?いいんだよそんなのは!
とにかく、俺の受けたダメージを強化して銃弾に込め、相手に返すこの技!流石に効くだろ!?
「っ!」
「メレフ様!」
ちっ...咄嗟にカグツチの方がバリアを貼りやがった。なんつー反応速度だよ...
「だ、大丈夫か?皆...」
「何とかね...」
「俺はまだまだいけるぞぉ...」
「オルガ、抜け出せたんだね。これ返しとく」
「おおミカ、サンキューな」
ミカからメイスを返してもらった俺は、いつでも始めれるように構えておく。
「あの二人、すんごく強いもー」
倒れっぱなしだったトラとハナが起き上がる。皆、無事みたいだな。
「このままじゃオレ達...何とかしないと...何とか...あいつの属性は火、火は水に弱い...水...」
「水ならあるよ」
「三日月?」
「街の外の、給水搭。この街に来る途中で見た」
ミカ、よくそんなことまで覚えてるな...よし、道は開けた!あとは突っ走るだけだ!
「皆!あと少し、走れるか!?」
「え?ああ!」
「よしっ、来い!」
戦いの中で、出口を塞いでた炎は消えてやがる。今が好機ってやつだ!
「ホムラ!最大火力いける?」
「はいっ!あと二回ぐらいなら!」
「十分!」
街の外に出てしばらく走ったところで止まり、追いかけてきたメレフの方に向き直る。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
さっきと同じ様に、剣を掲げて炎を纏わせるレックス。
「いっけぇぇぇ!!!」
「芸が無さ過ぎるぞ、少年!」
当然さっきと同じ様に、あいつに簡単に止められ、弾かれる。そしてそれは、さっきと同じ様に俺のところに飛んでくる。だから、俺も...!
「もう一発いくぜ!『カウンターアタック』!」
「...当たらない...いや、当てる気の無い軌道?何が狙いだ?」
メレフの言う通り、俺の一撃はメレフから大きく逸れた位置を狙った。そりゃそうだろ、何せ俺たちの狙いは...!
「予想通り!」
レックスがアンカーを俺の狙った場所...給水搭の柱に向かって打ち、巻き付ける。俺のさっきの反撃には、ホムラの炎の力が込められてる。だからそれは、金属を熱して、柔くする。
「ハナ!頼む!」
「リョーカイですも」
トラと一緒にいたハナが、足のスラスターから火を噴いて飛び上がり、レックスの近くで着陸する。
「貯水タンクだと!?狙いはそれだったか!」
「今更気づいても遅いぜ!やっちまえ!レックス、ハナァ!」
レックスとハナが力を込めてアンカーを引っ張る。
阻止しようとするメレフだが、ホムラやミカ、ニアやビャッコの足止めを受け、失敗する。
「引けぇーっ!」
給水搭は見事にぶっ倒れ、辺り一面が水浸しになる。火属性のあいつらは力が弱くなるが、聞いた話じゃホムラはんなもん関係ねぇらしいな!
「うおおおおおおおおおおおお...!」
「しまった!」
「「『バーニングソード』ッ!!」」
水浸しの中で炎の大技ってわけで...見事に水蒸気爆発ってヤツが起こった。
んで、その爆発の起きてる間に俺達は無事、逃げ出すことに成功した。
...まさか、傷一つないとはな。
「心外だな」
「何がです?」
「このメレフ、まさか戦いで手を抜かれるとは」
「あの少年がですか?」
「そうだろう?当てることもできたはずだ。なのにわざと外した...」
「機転も効くようですね」
─────その気持ちを、お前に閉じ込められてたまるかっ!────
天の聖杯...あの少年と共にあるのなら、解き放ってみるのもまた一興か。
いずれまた会うことになるだろう。その時にはまた今一度...
「...追ってこないようですね」
「逃げ切れたみたいだね」
「とりあえず、一休みしよう...もう限界~」
「トラもー...はひはひも~」
止まるんじゃねぇぞ...って自分に言い聞かせて走り続けたからな。流石に俺も疲れたぜ...
「...じゃあね」
「お世話になりました。皆さんの旅のご無事を願っています。では...」
...あぁそうか。そういやニア達とはここでお別れだったな...残念だが...
「ねぇ、ニア」
「ん?なんだよ、三日月」
「来ない?鉄華団に」
「...え?」
ミカにしては珍しいな。去る奴を引き止めるなんて。
「前に言ってたよね。居場所はあそこにしかないって...」
「あ、あぁ...」
「そんな事は無い。鉄華団は、仲間を...ニアを歓迎する。だろ?オルガ」
「そりゃそうだ」
「それに俺も...折角できた仲間と離れちゃうのはやだしね」
ミカ...確かに、団員の居場所になってやって、いつかみんなでどっかに辿り着く。鉄華団ってのはそういうもんだったよな。勿論、ニアの居場所にだってなってやるさ。
「やだしって...ふふっ」
「ん?なんかおかしなこと言ったっけ」
「いや...年相応に我が儘だって言うんだなって」
「まあミカもそういうとこあるからなぁ。この前なんて『連れてって』ってねだってきやが...ヴァァァァァァ!!!」
「ちょっとオルガ黙ってて。で、どうするの?ニア」
「...分かったよ。アンタ達になら、アタシもついて行きたいかな。楽園目指すんだっけ?本当にあるんだろうね?」
「あぁ。ホムラが故郷は楽園だって言ってた!だからある!」
レックスが横からここぞとばかりに喋る。まあホムラは嘘をついてる風にはぜんぜん見えねえしな。
「そ。...緑溢れる天空の大地、か...。伝説が本当なら”アタシら”だって...」
「あ、だったらよ。レックス達も来るか?鉄華団」
「いいの?」
「あぁ?いいに決まってんだろ!」
「じゃー遠慮なく!」
「トラもいくもー!」
「ご主人は遠慮が無さ過ぎですも」
「もっ!?」
いいもんだな、こういうの。
よーし、新生鉄華団、本格始動だぞぉっ!!
ごめんなさい レックスとホムラのイチャイチャキャンプは尺の都合で消えました はい