オルガブレイド   作:シン・ファリド

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ようやく2/10終わったのかと思うと先は長いですね()



第3話 戦
第3話 戦 第1節 「名を冠する者たち」


とある場所の、雲海の底深く。

そこに存在するのは、かの者達、「イーラ」の基地の様な場所。

モノケロスという名の彼等の船が、港に到着し、シンとメツ、ザンテツが中から出てくる。そしてそれを1人の男が出迎える。

 

 

「お帰りなさい、シン」

「ヨシツネか...」

 

青い鎧を纏い、眼鏡を身に着けた男が口を開く。名はヨシツネ。

 

「天の聖杯の目覚め、誤算でしたか?それとも...まぁ僕の脚本には最初から書かれていましたけど」

「終わってからなら何とでも言えるよねー。っていうかヨシツネ、アンタ小者っぽーい」

「うるさいよカムイ」

「あらこわーい♪」

 

ヨシツネ達の上の方から声がすると、ヨシツネのブレイド、カムイが飛び回りながら降りてくる。

 

「他の3人はどうした?」

 

メツがヨシツネに訊ねる。

 

「サタヒコはスペルビアの”工場”を視察に。我が愛しの”妹”はいつもの狩りですよ。きっとまた、たくさんのドライバーが餌食にされているに違いない」

「例の千本狩りか。コアの数を集めればいいってもんでもなかろうに...で?ヴィダールはどこだ?」

「今戻った、ヨシツネ。...シン達の方も終わっているようだな」

「ヴィダール。何をしていた?」

「少し外に出て情報を集めてきた。どうやら、例の定期便が出航したようだ」

「アーケディアでの洗礼か。律儀な奴らだ...」

 

ヴィダールと呼ばれた仮面の男が、シン達の使っていた船とはまた別の船から出てくる。シンの仮面とは違い顔すべてを覆うそれは、感情の変化を他に悟らせない。

 

「...聖杯の現在位置はわかるか」

「誰に聞いているんです?わかるに決まってるじゃないですか。...カムイ!」

「へいへーい」

 

カムイはエーテルを操作すると、アルストの地図のような物を作り出す。その中の、グーラと同じ形をした地点に、青や赤の光が見える。

 

「現在、グーラ領を街から離れるように移動してますね」

「街を離れてだと?そっちにゃ何もないだろう」

「そのまま外に出るのかもしれない」

「...そうか。定期便と聖杯か...定期便は俺が行こうか?」

「いや、お前はメツやヨシツネと聖杯を追え」

 

ヴィダールが定期便の対処に向かおうとするが、それをシンが止める。

 

「了解だ。なら定期便はお前が?」

「いや...」

 

そう言うと、シンが一瞬光に包まれる。そしてすぐに姿を現すが、その仮面の色は変化していた。

 

「此処からは...”私”の出番だ」

「なるほどな」

 

「ところで、二アはどうします?」

「所在が知れたのか?」

「えぇ。ほら、この光点。波長からみてビャッコのものじゃないかと。どうやら天の聖杯と一緒に行動しているみたいですねぇ」

「...君の好きなようにするがいい」

「なるほど...ではお言葉に甘えて」

「モノケロス、このまま使わせてもらうぜ」

「ああ。構わない」

 

会話を終えると、シン...いや、シンとよく似たその男は、港を立ち去っていった。ヴィダール、メツ、ヨシツネもまた、出発の準備を始めた...。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?そいつは何だ?」

「雲海羅針盤。サルベージャー必携、雲海の地図みたいなもんだよ」

 

レックスが懐から物を取り出してきた。どうやら羅針盤らしい。

 

「ここをこうして、こうやって...今日何年の何日だっけ?」

「ええっと、神暦4058年の9月5日です」

 

すぐさまホムラが答える。...ん?9月5日...クガツ・イツカ...!?

 

「今は...9月5日で...俺は...オルガ・イツカだぞぉ...なんだよ...結構似てるじゃねぇか...」

「は?」

「...何言ってんのさアンタ」

「意味不明ですも」

「...すみませんでした」

 

ちょっとふざけたら三方向からきつめのツッコミが飛んで来やがった。っていうかしれっとミカが一番シンプルかつ辛辣だな!?ある意味流石だぜミカァ...

 

「まぁまぁ。で、年月日を入れると...ね?」

 

そう言ってレックスは羅針盤を皆に見せる。なるほど、こうやって生き物である以上決まった場所に留まらない巨神獣(アルス)の現在位置や距離関係がわかるんだな。随分便利じゃねぇか...

 

「世界樹にはここグーラからが一番近いようじゃの」

「問題は船だな」

「街からの船は全て軍が管理してますから」

「まぁ、無理だよね」

「だよなぁ...うーん、どうするか」

 

いざとなりゃあ奪ってでも...いや、皆を危険に晒す訳にはいかねぇしな...

 

「船に乗れればいいのかも?トラ、いいとこ知ってるも。グーラのお尻のところで船造ってる人がいるも。センゾーじいちゃんの知り合いだった、ウモンっておっちゃんも。ジジョーを話したら貸してくれるかも」

「へっ...光が見えてきたじゃねぇか!いくぞおめぇらぁ!」

 

俺達は、早速グーラの尻付近に向かうことにした。

だが、その途中で俺らの前に、とんでもねぇ奴が現れやがった...。

 

 

「ぐぅっ!?」

 

急に俺の背中に、弾丸みてえなもんが突き刺さる。その一撃でぶっ倒れたが、すぐに俺は起き上がってその正体を確かめた。

 

「こいつは...鳥の羽か?」

「鳥の羽...まさか!」

「...話してる暇もなさそうだよ、オルガ。敵が来る」

「ん?」

 

ミカが向いてる方を見ると、でっけぇ鳥が飛んでやがる。ほんとにこの世界にはいろんなのがいんだな...ん?どうしたニア。青ざめた顔して。

 

「あいつ...『狙撃のゴス』だ!獲物を一度見つけたら容赦しないってことで有名なモンスターだよ!」

「もっ!?逃げるも!!危険すぎるも!!」

「いえ、相手は空を飛べますも。逃げても追いつかれるのは明白ですも」

 

おいおい...とんでもねぇのに目を付けられちまったな。けどここで退くわけにはいかねぇ!

 

「逃げ場がねぇんなら倒して進むだけだ。強いっつったって不死身の化け物じゃねぇんだ。なら俺達鉄華団にやれねぇ訳がねぇ!だろ、ミカ!」

「あぁ。俺達の道を邪魔する奴は、どこの誰でも全力で潰す」

「ったく...まぁ、アンタならそう言うと思ったけどさ。いいよ!やってやろうじゃんか!」

「ももも...団長、カッコいいも!トラもやってやるもー!!」

「オレ達はこんなところで止まってられない!行くよ、皆!」

 

全員が武器を構えたその時、羽ばたきながらこちらの様子を伺ってるだけだったゴスの方も動き出す。

さっき俺の背中に突き刺さったのと同じ黒い羽を、今度は何個も同時に放ってくる。だが俺にはあの力があるから、全弾俺のところに飛んでくる。それを俺は受けきって、反撃をお見舞いする。

 

「『カウンターアタック』!」

 

その一撃は頭にしっかり命中する。だが向こうもバカじゃねぇのか、遠距離攻撃が意味をなさないと判明した瞬間飛び回りながら爪で攻撃する方法に切り替えてきやがった。

 

「うわっ!」

「レックス!」

「傷はアタシが治す!『ヒーリングハイロー』!」

「サンキュー、ニア!」

 

二アがツインリングの片方を掲げると、緑色のエーテルの波が辺りに広がる。仲間の傷を癒やすアーツだ。やるじゃねぇかニアァ!

 

「空中戦は任せるも!ハナ!」

「リョーカイですも」

 

ハナが足のスラスターから火を噴かせながら空へ飛び上がり、トラから受け取ったシールドを展開させてドリルにする。そして勢いよく突撃し、素早く動くゴスの羽を掠める。なんだよ...案外どうにかなりそうじゃねぇか。

 

「この調子ならいけそうじゃねぇか?」

「...いや、アイツが恐ろしいのはこっからだよ。」

「なんだと?そりゃどういう意味だ、ニア」

「アイツは、弱ると大きな声で叫んで仲間を呼ぶって、本に書かれてた。」

「何!?そいつを止める方法はねぇのか!?」

「確か...水と闇の強いエーテルを短い間に連続でぶつければ、モンスターの仲間を呼ぶ行動は封じれるって聞いたことある。けど、水はアタシとビャッコで何とかできても、闇は...」

 

ゴスの攻撃を回避しながら、とんでもねぇ事実を知る俺。しっかし、どうにかできる方法がわかってんのにそれを実行できねぇっつーのはかなりきついもんだな...

 

ホムラは炎。ビャッコは水。ハナは確か...地って言ってたな。ん...?待てよ?

 

「そういやミカは、何の属性なんだ?」

「...あー、わかんない。試してみる」

 

そう言ったミカは、俺からメイスを受け取り、それにエーテルを込めて、放つ。

その一撃はゴスに直撃するとまではいかなかったが、ダメージを与えれている。

 

「今のエーテル...闇だも!すごいも!」

「本当か!よーし、後は当てるだけって訳だな!」

「隙はオレ達で作る!ニアとオルガは構えといて!」

「あぁ!」

 

即席の作戦通りにレックス達は動き始める。にしたって隙を作るってどうやる気だ...?

 

「トラ!これ使って!」

「わかったも!」

 

そんな会話の後、2人は変な仮面を付ける。なんだあれ...?

そこから少しすると、今までこちらを満遍なく狙いに来ていたゴスがレックスとトラだけを狙うようになった。

んで、どこか怒った様な声をあげながら突進していくゴスを、トラがシールドで受け止める。

 

「今だぁっ!」

 

すかさずレックスがアンカーショットを放ち、上手く身体に巻きつける。そしてそのアンカーをハナが掴んで、思いっきり引っ張り、後ろに投げ飛ばす。

 

「転倒したも!今がチャンスも!」

「わかった!行くよビャッコ!」

「了解です、お嬢様!」

 

二アがビャッコの上に飛び乗り、ツインリングをゴスの方に投げつける。ツインリングはゴスの身体を切り刻むように飛び回った後、ニア達の方に戻ってくる。それをニアは飛び上がりながら手で、ビャッコは口で一つずつ掴む。そして...

 

「「『メイルシュトローム』!」」

 

落ちてきたニアと、下で構えていたビャッコが、×の字を刻むような斬撃を叩き込む。なるほど、これがあいつらの最高の一撃って訳か!だったら、俺らだって負けてられねぇなぁ!

 

「行くぞ、ミカァ!」

「わかってる」

 

俺からメイスを受け取って、一発、二発と全力でスイングした後に、思いっきりアッパーをぶちかます。いつぞやのメツの時とは違い、ゴスの巨体は流石に打ち上げられなかったが、俺らのやることは変わらねぇ。

 

「「『レイジオブダスト』」ッ!!」

 

上に投げられたメイスを俺が飛び上がって掴み取り、落下の勢いを乗せてメイスを叩きつける。

その時、さっきのニア達の攻撃で蓄積してた水のエーテルが、メイスに込められてる闇のエーテルと反応したのか、その二つが混じり合ったような爆発が起きる。それに見事に俺は巻き込まれ死んだわけだが、その爆発を一番モロに喰らったのは間違いなくあいつだ。

 

「どうだ...?」

「まだ、倒せてはないみたいだよ」

 

それでもゴスは起き上がり、敵意を見せる。そして、さっきまでは聞かなかったような声を出して叫び始めるが...何も起きない。

 

「なるほど、今のが仲間を呼ぶための声って訳か」

「けど、呼ぶことはできない!」

「あぁ。このまま畳みかけるぞお前らぁ!」

 

そっからも、俺達は戦い続けた。そして、遂に...!

 

 

 

キィィィッ...

弱々しい声を出しながら、ゴスが墜落し、消えていく。他のモンスターを倒した時と同じ感じだ。ってことは!

 

「倒せた、ってことか?」

「みたいだね」

「よーしっ!これで先に進めるね!」

 

無事先へ進めるようになった俺達。と、ふと横を見ると妙な墓みてぇなもんが...こんなもんさっきまであったか?狙撃のゴス、って書かれてるが...

 

「あぁ。それは『名を冠する者の墓』。あんまり軽々と触れない方がいいよ?」

「あ?なんでだ?」

「その墓に再戦の意志を示すと、モンスターが蘇るんだってさ。今までこの墓自体みたことなかったから信じてなかったけど...墓が出てきたってことは、多分本当だよ」

「エェ゛ッ」

 

急いで飛び退く俺。あんなんとまた戦うとか冗談じゃねぇぞ!

 

「...ってそんなことより!さっさとウモンって人のとこにいくぞ!」

「そうだね。よし、行こう!」

 

当初の目的を思い出し、俺達は改めてグーラの尻目指して出発した。

 

 

 

 

 

 

「おっちゃーん、ウモンのおっちゃーん、どこにいるもー?」

「誰だも?人が仕事中だってのに騒がしい奴も...って何だ、トラじゃないかも」

「久しぶりも、おっちゃん」

「おう、久しぶりも。1年ぶりくらいも?」

「うん、ちょうどそのくらいも」

 

俺達が進んでいった先には、小さめの造船所があった。んで、その中に入ってみると、結構大きめの船が停まってて...あと、一人...いや、一匹か?のノポンが出てきた。どうやらこいつがウモンみてえだ。何となく想像はしてたが、ウモンもノポンだったのな。

 

「にしても、1年見ない内にずいぶんでかくなったも。オトモもたくさん連れて...」

「おっちゃん、レックスのアニキ達は、オトモじゃなくてオトモダチも」

 

友達か...悪い気はしねぇが、俺らはそんなもんじゃねぇぞ!

 

「いーや違うなトラ。俺達鉄華団はなぁ...家族だ!」

「...ということだから、オトモダチじゃなくて家族も!」

「そうか!トラの家族かも!家族が増えるのは良いことも!...ところで今日は何の用でここに来たも?」

 

おおそうだ、本題に入らねえとな。

 

「実はウモンのおっちゃんに船を貸してもらいたくて来たも」

「船?船だったらトリゴの港にたくさんあるも。なんでわざわざこんなとこまで来たも?」

「ん...そ、それは...」

 

やべぇ!なんとか誤魔化せトラァ!!!

 

「トラ、ハナを作るのに金全部使っちゃったんだってさ」

「そ、そうも!それで、気分転換にちょっと船旅したいなぁ...なんて思ったんだけども、船代が...」

 

よーしミカ、ナイスフォローだ!

 

「そんなテキトーな嘘ついちゃって、大丈夫なんだか...」

「金を使い果たしたのは嘘じゃないし、いいんじゃない?」

「そうだぞニア。しょうがねぇ」

「...はいはい。そういうことにしときますよっと」

 

後ろで小声で話す俺達。だがこれも楽園に行くためだ。許してくれよウモンさん!

 

「ハナ...それってセンゾーさん達が研究してた?」

「ハナですも。よろしくおねがいしますですも」

「おおーっ!これがその!いやーすごいも!さすがセンゾーさんの孫も!よしわかったも。そういうことだったらいつでも船を...と言いたいんだけども今は無理も。実はこの船...未完成なんだも...」

 

言われてみると確かにこの船、未完成じゃねえか!!くっそ、ここにきて...

 

「あとちょっとで完成なんだけど、材料が足りなくて作業が止まってるも」

「ってことは、もしオレ達が材料を集めてきたら...」

「もちろん、急いで船を造って貸してやるも」

「決まりだな!いくぞお前らぁ!!」

「わかったも!皆で材料集めに行くも!」

 

よーし、さっそく出発だ!何事も早い方がいいからな!!

 

「...ところで、材料って何が必要なの?」

「おぉ、忘れてた」

「えーと、パズルツリーとダイヤオークだも」

「...それ、こんなかにあったりしない?」

 

そういうとミカは、火星ヤシをいつもいれてるのとは反対側のポケットから、木材だの植物だのを取り出す。

 

「ミカお前、いつの間にそんなもん見つけてたんだ...」「トリゴに向かってる途中で。火星ヤシ、もうすぐ無くなっちゃうから代わりになりそうな物ないかなーって」

「なるほどな...」

 

お前、チョコレートと火星ヤシ大好きだからな...チョコレートはともかく、火星ヤシは多分この世界には無いだろうしな。

 

「もっ...どっちもあるも。しかも必要な分以上にも!これで船体は完成するも」

 

ミカ...一体どんだけ採取してたんだよ...

 

「何にせよ手間が省けていいじゃん!」

「じゃあ、完成を待つとしましょうか」

 

ってなわけで、外も暗かったし、俺らは造船所で一夜を過ごすことにした。




ユニークと戦闘させないと気が済まない病 そろそろ控えます

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