「それじゃあ借りてくも、おっちゃん!」
「ありがとう、ウモンさん!」
「サンキューな!」
「おー!船旅、楽しんでこいもー!」
俺らは完成した船に早速乗り込んで出発する。勿論お礼を言うのも忘れねぇ。が、最後の一言で嘘ついてるのを思い出しちまって少し申し訳なくなったぞ。後で詫びるから許してくれ!!
「これが世界樹...」
広い広い雲海の上を進み、いよいよ世界樹が近くに見えてくる。ほんとにでっけぇな...
「こんなに近くで見るのは初めてだよ」
「...見て。周りの雲海、滝みたいになってる」
「うわぁ...すごい流れだね。落ちたら助かりそうもない」
ミカの言う通り、世界樹の周りの部分の雲海は滝みたいになっていて、間にはでっけぇ空洞が出来上がっていた。こりゃあそう簡単には行かせてくれなさそうだな...
「来たのはいいけど、どうやって向こう側に行ったらいいんだ?ねぇ、ホムラ...ホムラ?」
そう言ってレックスがホムラに話しかけてみるが、ホムラは何やら真剣な顔で雲海の方を眺めていた。何か気になることでもあったか...?
「...逃げて、レックス!ここにいちゃだめ!」
「に、逃げろって?どうしたんだよいきなり...」
「そうだぞホムラ!俺らはあそこ目指して進んでるんだろ?なんで逃げ...ヴヴヴァァァァァァァ!?!?」
俺が喋りかけた丁度その時。船が思いっきり揺れて、俺は見事に壁に体を打ちつけて希望の花を咲かせる。
「おい...何が起きたってんだ!?」
すぐさま起き上がって前を見ると...そこにいたのは...
紫色の、龍だった。
圧倒的な巨体と威圧感を持って現れたそいつを見て、俺はとっさにあのモビルアーマーを思い出したくれぇだ。そんだけの化け物が、今目の前にいる。
どうする...?ミカはどうやらバルバトスを呼べねぇみてぇだし、ホムラの言ったように逃げるしかねぇのか...!
「サーペント!」
...ん?ホムラ、あいつのこと知ってんのか!?
グォァァァァァァアァ!!
だが、ホムラの叫びを無視するように、ヤツは吠える。敵意剥き出しじゃねぇか...!
「サーペント?」
「早く!」
「わ、わかった!」
レックスがホムラに聞いてみるが、当のホムラはとにかく逃げろって言いたげだ。実際逃げないとやべぇのは伝わってくるし、レックスも操舵輪を全力で回して船をUターンさせる。
「やめて、サーペント!どうしたの?私の声が聞こえないの?...まさか!」
ホムラが心当たりがあるかのような反応を見せるが、アイツは...サーペントはお構いなしに尻尾を雲海に叩きつける。やめろ!その巨体でんな真似するのはやめろ!!
急いで逃げる俺達。しかし、追撃は来なかった。
「...あいつ、帰ってったよ」
「本当だ。どうしたんだ?あいつ突然...うわっ!?」
「どうしたレック...なんだありゃぁ!?」
「あれ...インヴィディアの
サーペントが世界樹の方に帰って行き、安心したのも束の間。目の前にはでっけぇ鯨...型の
「や、やばい...食われる!」
あろうことかあの野郎、吸い込み始めやがった!完全に食う気じゃねぇか!!
んでもって結局俺らは、船ごと全員飲み込まれちまった...。
「いてててて...」
「どうやら、なんとか助かったみてぇだな」
「だね...とりあえず皆の無事を確かめないと。ホムラ!皆ー!」
「ミカァ!お前らぁ!無事かぁ!」
ここは...
ひとまず合流を優先することにした俺らは、大きな声で皆を呼んでみる。
「こ、ここです...」
声のする方を向いてみると、ホムラが立っていた。
...周りが暗いせいでよ...ホムラの服の緑色の光が目立っててよ...しかもその光の形と場所のせいでよ...正直刺激がつよピギュッ!!
「ダメだよオルガ。欲がダダ漏れだ」
「勘弁してくれよミカ...無事でよかったけどよ」
合流早々ピギュッされた俺。まあ、俺が悪いから仕方ねぇか...。
「いってぇ...」
「も~」
他の皆もやってくる。どうやら全員無事みてぇだな。
「皆さん、出口を探しませんか?インヴィディアの街は背中の方にあると聞きます。何とかそこに出ることができれば...」
ビャッコの提案だ。だが出口を探すのには賛成だな。このままここにいると、下手すりゃ消化液の類に溶かされそうだしな。
「...あそこ、今何か光りましたも。誰かいるですも」
「まさか?見間違いじゃないのかい?」
「見間違いじゃないですも。ふわふわーと動いてましたも」
ハナが急に言い出す。ん?ふわふわ...光...
「まさかそれってあれか!?人魂とか、そういうやつか!?」
「いやそんなわけないだろオルガ!変なこと言うなよ!」
「いやいや、案外ほんとにそうだったりしてー!」
「レックスもよしなよっ!そういうの!」
「何だニア、怖いのかよ?」
「く、くだらないって言ってんだよ!子供かよっ!」
「やっぱ怖いんだ。そっかー、二アは人魂が怖いのかぁ」
ここぞとばかりに煽るレックス。俺はあんまり人のこと言えねぇけどな!!
「うっさいなぁ...て、あれ?ホムラは?ホムラがいない!」
「え、さっきまでそこに...ホムラ、ホムラ!」
「...ホムラならさっき...いや、面白そうだし言わなくていいや」
「...おい待てミカ、何企んでんだ...?」
「別に?大したことじゃないよ」
どうやら俺らのやり取りはレックス達には聞こえてないらしい。無事みてぇだから安心したが、ミカのやつ何考えて...
「呼びましたぁ?」
「うわぁぁぁっ」
「ヴヴァァァァァァァ!?」
いきなり俺らの後ろから声がした。振り向いてみるとそこにいたのはホムラだった。
「な、何やってんだよ!やめろよ、そういうの!」
「何って、向こう側をちょっと確認に。どうしたんです?」
さてはミカの奴、こうなることを予想して敢えて言わなかったな!?
で、当のミカはというと...ちょっと笑ってるぞあいつ!!横にいる二アも小馬鹿にするような笑みを浮かべてこっちを見てやがる!!!
「ん、おお。随分と明るくなったわい」
悔しがる俺とレックスを余所に、ホムラは小さめの炎の球体を作り出し、辺りを照らしていた。
「ハナもお手伝いしますも」
「もっと明るくなったも!」
ハナも、目からビーム...ならぬ目からライトで前を照らす。これでだいぶ見やすくなったな!
「こんだけ明るけりゃあなんも怖がる必要はねぇな。出口を探すぞ!」
そうして俺らは、出口を探すために
走り回ってたどり着いたのは、他より明るめの大空洞だった。じーさん曰く、インヴィディアの
だが、そう上手くいくことなんざそうそうねぇ。案の定というかなんというか、邪魔が入っちまうわけで。
「待ちな」
声と共に、人が2人、上から飛び降りてくる。片方はでっけぇ大男で、もう片方はフードで顔がよく見えねぇ。
その後から、鳥...いや、鳥人と、やたらでっかい腕を浮遊させて構えた女剣士も降りてくる。多分こいつらはブレイドだな。
更に更にその後ろに、2人の男。それぞれの横にいるのは、前にグーラで見たのと似たブレイドだ。
「この辺りじゃ見ない顔だな。さしずめ漂流してる最中に、
「!まさかてめぇも...」
翠玉色のコアクリスタルは天の聖杯の証。グーラで嫌という程聞いたフレーズだ。それを知ってやがるってことはこいつもホムラを狙ってやがるかもってことだよな!
「なるほど...噂は本当だったみたいだな、ヴァンダム」
横のフードの男が口を開く。...ん?なんか今の声聞き覚えがあるような...?
「噂って何のことだ」
「ドライバーなら誰しも一度は耳にする伝説のブレイド、天の聖杯。それが500年ぶりに目覚めたって噂のことさ」
「しかし、そのドライバーがお前みたいなガキだってのは流石に予想外だけどな」
「オレがドライバーじゃいけないのか?」
「別にいけなかねぇな。...そいつが普通のブレイドなら、な」
「だがそいつは普通じゃねぇ。お前にゃ過ぎたシロモンだよ。小僧、天の聖杯とその剣を渡しな」
ちっ!やっぱり予想通りか!
「まさかお前もホムラを!誰が渡すもんか!」
「あぁ!俺らには辿り着くべき場所がある!それまで止まるわけにはいかねぇんだよ!」
すぐさま俺らも戦闘態勢に入る。
「威勢だけはいいな、小僧...」
「まあいいさ。やんちゃするガキを叱ってやるのは大人の役目だからな。...行くぞ、ニューツ」
「了解であります!」
「よぉしスザク、あの小僧は俺達でやるぞ」
「分かったぜ、ヴァンダム」
2人の男がそれぞれのブレイドから武器を受け取り、構える。戦闘開始だ、行くぞお前らぁ!!
「『マッスルスラッシュ』!」
「『ソードバッシュ』!」
リーダー格の大男...ヴァンダムが、両手に持った斧を交差させながら突撃してくる。対するレックスも剣で突きそれを止める。
ニアとトラは...後ろにいた2人と戦ってるみてえだな。
相手もドライバー4人、こっちもドライバー4人。1対1となると、俺の相手は...!
「余所見たぁ、随分余裕そうじゃねぇか」
「っ!!」
やっぱりこのフード男か!
だが、そう簡単にやられるほど俺らも弱くはねぇぞ!
俺はまずフード男に数発反撃を入れる。見事に防がれダメージを与えれはしなかったが、注意はひけた!
「ミカァ!」
「任せて」
俺は頭上に向かってメイスを放り投げる。それを分かってたように飛び出したミカがキャッチし、空中から落下の勢いをつけて攻撃。
「ほぉ...いい連携だな」
だがフード男の方はその一撃をさっきブレイドのニューツから受け取っていた刀で受け止めながら余裕そうにしてやがる。
「ちっ、防がれたか...だが次はそうはいかねぇぞ!」
ミカからメイスを受け取って次は俺が攻め込む。ミカがでっかい一撃を決めてくれりゃぁそれだけで勝ちが近づくんだ。ならその隙を作ってやるのが俺の役目だよなぁ!
「...!」
「よし、今だっ!」
一瞬あいつがよろけるのを見て、俺はミカにメイスを投げ渡す。さっきは上から行って防がれたから、今度は後ろから入れ替わるように攻撃してもらう。ミカもそれを察して後ろで構えてくれてたしな。
よーしミカ、受けとれっ!
「甘いでありますよっ!」
「何っ!?」
そのパスは、エーテルバリアを張りながら割り込んできたニューツに防がれる。
しかもニューツはオレとミカの間に陣取り続けてやがる。これじゃ連携もままならねぇぞ...!?
「次はこっちから攻めさせてもらうぜ?オルガ」
「...!?あんた、何で俺の名前を...」
俺の問いかけなんて思いっきり無視して、あいつは突っ込んでくる。炎を纏わせた刀の連続攻撃に、なすすべなく俺は死ぬ。
すぐさま復活できるが、初見の筈にもかかわらず分かってたかのように続けて攻撃を叩き込んでくる。こいつ、本当に何者だよ!?
ミカの方は...ニューツのバリアに阻まれ続けて動けねぇみてえだ。武器さえ弾かれてなきゃこんなことにもなんねぇのに...!
「もう逃げ場はないぞ!食らえっ!」
声がする方を見ると、レックスが戦っている。ヴァンダムを壁際まで追いつめて、剣を掲げている。なんとかなりそうか...ん?ホムラの奴、なんか苦しそうだな...?
「...えっ!?」
直後、展開していたレックスの剣が閉じる。あれじゃアーツは放てねぇんじゃ...!
「...終わりだ!小僧!」
ヴァンダムが斧を構えて突撃する。まずいっ...!
「小僧、お前ドライバーに成り立てだろ?」
後少しでレックスの首が飛ぶってとこで、ヴァンダムは止まっていた。
「ドライバーってのはな、ブレイドから送られたエネルギーを一時的に武器に溜めて、それをアーツとして使うんだ。溜められる量にも自ずと限界はある。後先考えずにアーツを放てば、いかに天の聖杯だろうと...ガス欠にならぁ」
...つまり、レックスはバンバンアーツを放ちまくって、逆に負けたと。しっかし、なんでそんなことを教えてくれんだ...?
「ア、アンタ達、一体...」
ヴァンダムが止まるのに合わせて、他の奴らも攻撃を止めていた。気がつきゃ、ミカが隣まできてる。
「俺の名はヴァンダム。この先の村で、傭兵稼業をやっている。さ、ついてこい。天の聖杯の力、楽しませてもらった礼に、メシでも食わしてやる」
なるほどな、俺らを試してたとか、そういうあれか...だが俺にはどうしてもわかんねぇことがある。ちゃんと聞いとかねぇと。
「なぁ。そこのフード被ったあんた...何者だ?」
「...はっ。村についたら言うつもりだったってのに、急かすねぇ...まあ、いいけどな。ほらよ」
そう言いながらフードを取り、見せた顔は...
「よっ。久し振りだな、オルガ」
「...兄、貴...!」