「...なるほどな。楽園に行くために世界樹に近づいたら飲み込まれたってか。そりゃ災難だったな」
俺達は、ヴァンダムさん達が傭兵をやってるっていうフレースヴェルグの村の正門までやってきていた。
「ヴァンダムさん達は、何であんな場所に?」
「ここの
「そうだったんだ」
「えーっと、ヴァンダム...さん」
「ん?お前は...オルガだったな。名瀬から話は聞いてるぜ」
「兄貴から?」
「おう。いい弟分がいるってな」
「そうだったのか...兄貴はいつからここに?」
「数ヶ月前から世話になってるな。お陰でブレイドとの連携もだいぶ出来るようになった。お、そうだ。俺のブレイド、他にも何人かいるから見ていくか?ヴァンダム、そんくらいの時間はあるよな?」
「おう、メシができるまで時間はあらぁ」
「だとよ。ほら、ついてこい」
「...兄貴、まさか...」
兄貴、どうやら色んなブレイドと同調してるらしい。
...俺の予想が正しければ多分そのブレイドは...
「お前ら、帰ったぞ」
「お帰りなさい、私の名瀬さん」
「アザミだけのモノじゃないですから!...って、そこの人達、お客さんですか?」
「ん?誰だ?強いヤツか?」
「...やっぱり女だらけじゃねえか...」
案の定だった。しっかもかなり濃いメンツなのが一瞬で分かったぞ...
「紹介するぜ。こいつらはアザミ、ウカ、ヤエギリだ」
「...皆さん、随分とお強いようですね。見ているだけで伝わってきます」
ビャッコが瞬時にその強さを感じ取ったみてえだ。持ってる武器もいかにもな感じだしな。
「...って、ちょっと待って」
「ん?どうしたレックス」
「ドライバーって、そんな何人ものブレイドと同調できるの?」
「あ...言われてみりゃあ、確かにそうだな」
「同調しているブレイドが増えれば、単純に戦力の増強にも繋がるから、お前らもやってみるといい」
「おお...そうと決まりゃあ早速...」
戦力が増えれば、より強大な敵にも打ち勝てる。それに、仲間が増えるのはいいことだしな!
「だがなオルガ。お前は駄目だ」
「な、なんでです?」
「知らなかったか?ブレイドはドライバーが死ねばコアに戻る。死ぬことが前提のお前の戦いには合ってねぇ」
「あ...でも、ミカは全然そんなことにはなってませんよ?」
「あーそれ、トラも不思議だったも。なんでミカ、コアに戻らないし記憶もそのままなんだも?」
「そうだな...異世界から来たが故の特例、ってヤツかもな」
「ふーん...まあ皆を守れれば何でもいいや」
「...ドライバーが死んでも、コアに戻らない...」
「ん?どうしたホムラ。もしかして、天の聖杯には何かわかるのか?」
「あ、いえ...なんでもありません」
そういえば、ブレイドはそういうルールだったな...ちくしょう...。
「まあまあ、落ち込むなって。同調はアタシ達だってできるんだから」
「ああ。仲間を増やすのはオレやニアに任せてよ」
「すまねぇ...サンキューな」
そうだな...こんなとこで落ち込んでてもしょうがねぇ。俺は俺の出来ることをしねぇとな。
「お前らぁ、メシの用意が出来たぞ」
「おっと。話の続きはメシを食いながらだ」
俺達は、ひとまず広場のテーブルに移動することにした。
「うまい、うまい、うまい」
「オルガ、少し落ち着きなよ」
出された料理が美味いもんだから、つい語彙が死ぬ俺。だがそれだけこれが美味いんだからしょうがねぇだろ。うん。
「あ、私、お水汲んできますね。ヴァンダムさんは?」
「すまんな。俺はビールを頼む」
「おっ、じゃあ俺もいただこうかね」
「兄貴...よし、俺も」
「ダメだよオルガ、オルガ酒弱いんだから」
「...すみませんでした」
「えっと...行ってきますね」
ホムラが水を汲んでくるって言い出すと、ヴァンダムさんと名瀬の兄貴がビールを代わりに頼む。俺も一緒に飲もうと思ったんだが、隣のテーブルで飯を食ってたミカに止められた。まあ、いつぞやの宴会の時は後で酷い目に遭ったからな...
「何だ?ここのメシは口に合わんか?」
「ん?どうしたレックス。美味いぞ?」
ヴァンダムさんが話しかけた方を見ると、レックスが座ってたが、飯を前に止まってやがる。全く、どうしたってんだ?
「...ヴァンダムさんも、戦争してんの?」
「傭兵が気に入らないか?」
「そういう訳じゃない、けど」
なるほど、そういうわけか。レックスは確か、戦争に関わる物とかは扱わねぇって前に話してたな。それで、傭兵のことを考えてたと。
「...レックス、お前サルベージャーだろ?サルベージャーが引き揚げるものの中には軍需物資も多い。それはどう考える?」
「オレはそういうものは扱わないよ」
「同じことさ。磁流コンパスもエーテルコンロの調整バルブも、軍や兵士の助けになっている。お前が食ってるそのパンのルスカ粉だって、スペルビア政府から調達したものだ。この世界は戦で満ちている。その中にあって、誰かと関係を持って生きる以上、それは戦に荷担してるってことさ。違うか?」
「それは...」
なるほど、な。そんな考え方はしたことなかったな...
「レックス。お前は天の聖杯のドライバーなんだろ?じゃあ戦なんて、嫌でもお前についてくる。じゃあどうする?そんなに逃げたきゃ、ホムラを置いてきゃそれで終いだ。けど...ま、考えてみることだな」
「兄貴...」
兄貴が話し終わると、ヴァンダムさんが立ち上がる。
「よし、行くぞ。支度しろ」
「え、行くってどこに?」
「いいからついてこい」
それだけ言うと、ヴァンダムはスザクと一緒に歩いていった。
「ヴァンダム...ま、いいか。あいつの分のビールは俺が頂いとくとするかね」
「ちゃっかりしてますね、兄貴...」
「まーな」
さて...と。じゃあミカ達にも声かけるとするか。
「いや、俺は火星ヤシ食べるから...」
「いーじゃーん!一回でいいから食ってみろって!」
「...」
見てみると、そこにいたのは、魚料理を食わせようとするニアと、頑なに拒否するミカ。そういやミカ、魚の見た目がそもそも苦手だったっけな...けどよ...人が真面目な話してたときによ...
「何やってんだミカァッ!!ニアァッ!!」
「...で、付いて来いって言ったくせにどこにもいないな...勝手なおっさんだなぁ」
「ヴァンダムさん、どこへ行ったんでしょうか?」
「...あ。いた」
「本当かミカ。どこだ?」
「あそこ。さっき俺達が入ってきた門とは別のとこの門」
ミカがそう言いながら指差した方を見ると、確かにヴァンダムさんとそのブレイドのスザクがいる。んじゃ、早速向かうとするか。
「随分と待たせてくれるな、新米ども」
出向いて早々に、スザクの一言が突き刺さる。
「すみませんですも」
「ヴァンダムのおっちゃんがさっさと行っちゃうのが悪いも」
素直に謝るハナと、正直に喋っちまうトラ。いやトラ、確かにそうだけどよ...
「ハッハッハッ!すまんな」
「えーっと、ヴァンダムさん。そういえば、珍しい武器をお使いでしたよね?」
「ツインサイスって言うんだぜ。この辺りでも使い手はヴァンダムくらいだ」
ホムラが、前から気になっていたことをヴァンダムに聞くと、代わりにスザクが答える。
「ツインサイス...サイス...メイス...なんだよ、結構似てんじゃねぇか...」
「え?」
「は?」
バンバンバンッ!
レックスとニアの意味が分からないと言わんばかりの声が聞こえた直後、俺はミカに殺されていた。自分でも言った後でつまんねぇなって思ったけどよ...即座に弾丸ぶち込むのは勘弁してくれよミカ...
「...さて。本題に入るぞ。大噴気孔付近に異常な力の反応があるって調査を依頼されていたんだが...どうだ?手伝ってみる気はないか?」
「いいよ。ただし、手間賃はきっちり貰うからね」
レックスもレックスで、いい性格してるよな。ほんと。
「言うじゃねぇか。んじゃ行くぞ」
そうして俺達は、大噴気孔に向かって出発した。
...因みに兄貴は、村の方に何かあってもいいように待機するらしい。これで安心だな。
オルガ達が村を出発した頃の大噴気孔付近...そこには、二人の男がいた。
「...あれが、例の
「その様だな...ヨシツネ、天の聖杯の場所は?」
「えーっと...?ふむ、こちらに向かっているようですよ」
「丁度いい。コアクリスタルのついでに天の聖杯も手に入れてしまおうか」
「ふふ...即席の脚本がそう上手く行くとは思えませんが、どの道天の聖杯の力は僕達の物にする。それが早くなるのなら好都合です」
「そうだな...まずは俺が戦おう。お前は俺が仕留め損ねた時に出向いてくれ」
「えぇ。いいですよ?ヴィダール」
天の聖杯を狙う者達...名をイーラ。
彼らもまた、動き始めていた。
「おぉ...なんだこれ...?」
「初めて見るのか?これがエーテル瘴気だ」
俺達が村を出て、目的の場所に向かって進んでいると、風が竜巻みてぇになって行く手を阻んでいる場所に着いた。エーテル瘴気...って、なんだそりゃ?
「エーテル瘴気?」
「
へぇ...こういう話を聞くと、
「こんなのがあっちゃ先に進めないよ?他に道も無さそうだし...」
「まぁ見てな」
そう言うと、ヴァンダムさんがツインサイスを構える。
そして、後ろでスザクが飛び上がり、羽ばたいて風を起こす。その風をヴァンダムさんが瘴気に向かって飛ばすと、瞬く間に瘴気が消えていった。
「ま、ざっとこんなもんだ。さぁ、進むぞ」
瘴気が消えた道を、俺達は再び進み出した。
目的地まで後少しってとこで、モンスターに出くわした。確かあの見た目は...アルドン、って奴だな。ヴァンダムさんや兄貴と会う前に何度か戦闘したが...
「アルドンか...お誂え向きだな。レックス、アンカーを使うのは得意か?」
「まあ、そこそこには」
「ちょっと貸してみろ」
レックスからアンカーを受け取ると、射出口をアルドンに向ける。そしてアルドンの足めがけて撃ったかと思ったら、アルドンの足に絡ませ、そのまま引っ張って転倒させた。
「伸びきったところでワイヤーをたわませるのがコツだ。実践でやってみせろ。さっきは不意打ちだったから上手く行ったが、相手が警戒してると簡単にはいかねぇ。相手の態勢が崩れた時を狙え」
そうヴァンダムさんが言っている頃にはアルドンは起き上がり、怒りを露わにしていた。
「こっち向けも!」
「その先に俺らはいるぞ!」
まずは俺とトラでアルドンを軽く叩き、気を逸らす。
「崩れろっ!」
そこを二アが、ツインリングで一閃。アルドンがよろける。
「今だ!アンカー、ショット!」
レックスがアンカーを放つ。そして...
...見事に、アルドンを転倒させやがった。
よし、レックスは上手くやってくれた。じゃあ後はとどめを刺すだけだな!
「オルガ!」
「あぁ...わかってる!」
ミカからエネルギーがメイスに送られてくる。俺はそのメイスを思いっきり振りかぶって、下から打ち上げるようにぶん殴った。
その一撃で、アルドンはぶっ倒れた。討伐成功、ってやつだな。
「一度見ただけでモノにするとはな。やるじゃねぇか」
「へへへっ」
「...いいかお前ら、ドライバーのアーツってのはな、何もブレイドの力に頼ったアーツが全てじゃない。アーツを使ってブレイドを守るのがドライバーの役目だ」
「ブレイドを、守る?」
「そうだ。ブレイドに頼り切るな。流れてくる力を常に意識しろ。無駄遣いせず、確実にアーツを決め、守れ。それができて、初めて一人前のドライバーになれる」
一人前...随分大変そうだが、そんなんで挫けてられねぇな。頑張らねぇと。
「だが、一人前っつったってそう遠い道のりでもねぇ。さっきの技だって、会得するのに俺は5年かかってる。だがお前は一度見ただけでモノにしちまった。レックスをサポートする他のヤツらの動きも、中々どうして大したモンだ。おまえ等、見どころあるぜ?」
「へっ...俺は鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ...こんくらいなんてことは」
ピギュッ!
「調子に乗るのはダメだよオルガ」
「正論じゃねぇか...すみませんでした」
「はっはっは!まぁ、浮かれすぎもよくねぇ。鍛錬を怠るなよ」
多分為になるであろう話を聞いた俺達は、再び目的の場所に向かおうとした。しかし...
「うわっ、モンスター!」
「エルダー・スパイド...大物だな。この先で何が起きてやがんだ?」
「...待って。あのモンスター、傷だらけだ」
「ん?...おお、ほんとだな」
奥から、蜘蛛型のモンスターが現れる。横には...多分あれはブレイドだな。モンスターとも同調できんのかよってツッコミはさておいて...あんなでっけぇのをあそこまで追い詰める奴って一体...
グシャァッ!
とか思ってた矢先、何者かがそのエルダー・スパイドの横から飛びかかり、膝蹴りを叩き込む。
その瞬間、辺りに風が吹き荒れる。風属性のブレイドなのか...?
それを受けたエルダー・スパイドは...倒れ、起き上がらない。横にいたブレイドがコアに戻ったってことは、死んだんだな...。
「お前達を待っていた」
その何者かは...マクギリスのとはまた違う、顔全体を覆うタイプの仮面を付けていた。
そして、着ている服は、これまたどっかで見たような、見てないような...ガンダムの中にあんなんがいた気がする、そんな感じの見た目の鎧だ。
「ヴィダールっ!なんでここに!」
「決まっている、天の聖杯だ。そのついでにコアクリスタルを集めていた」
ニアだけが名前を知ってるってことは、多分イーラの連中だな。けど...ヴィダール...?
「ヴィダール...?どっかで聞いた名だな」
「ええっ!?じゃあアンタらと同じ世界の出身ってこと?」
「かもしんねぇ...けどそんなことは今は関係ねぇ!お前らぁっ!行くぞ!」
そして、俺達鉄華団と謎の仮面男の戦いが始まった。