村に戻ってきた俺達。
トラはハナを相手に特訓中、二アはビャッコの毛の手入れか。で、ヴァンダムさんは座り込んで何か考えてるみてえだな。名瀬さんは村人からの依頼で今は留守にしてるらしい。レックスはというとホムラに手当してもらってるみたいなんだが...
「いででででで...」
「ほーら、動かないで。男の子なんだからこのくらいガマンです」
「そんなこと言ったって染みるもんは染みるって!そういうホムラはどうなのさ?」
「私はこんなのへっちゃらで...」
チョンチョン
「いったぁぁぁぁぁい...!今ワザとでしょ?ワザとやりましたよね?ね!?」
あいつら、昼間っから見せつけてくれるなぁ...ぐぐぐ...
「オルガ、羨ましいの?」
「あ、いや、俺は女なんて別に...」
「嘘は駄目だよオルガ。吐くならせめて顔に出さないようにしなきゃ」
「そんな分かりやすかったか...?」
「うん」
「勘弁してくれよ...」
まあ実際、羨ましいんだけどよ...
「やってないやってない!フツーに塗っただけ...」
「嘘、こう塗りましたよ!こう...」
「ぐぉぉぉぉ...!」
...ほんと、何やってんだあいつら。
「お前ら!ちょっと見せてみろ」
ん?ヴァンダムさん、急に立ち上がって...一体どうしたんだ?
「何てこった...どうしてブレイドであるお前が、傷を負ったままなんだ?しかもレックスと同じ場所に...」
レックスはホムラと顔を見合わせた後、ヴァンダムさんに、ホムラから命を分けてもらったことや、ダメージの連動が起きていることを話した。
「...信じられん、そんなことってあるのか?」
「でも、事実だしね」
「そうか...ブレイドはどんな傷を負ったとしてもすぐに回復する。コアを破壊されるか、ドライバーが死なない限り不死身だ。しかしお前らは...」
...ん?ちょっと待て。
「ミカ、お前不死身なのか?」
「あー...そういえばここに来てから対した怪我してないかも」
「おいおい...いよいよ俺の存在意義が怪しいな」
「そこは大丈夫。ブレイドはドライバーがいてこそ、みたいだし。それに、オルガにしか出来ないことだっていっぱいあるから」
「ミカ...」
相棒の言葉に救われつつ、話の続きを聞くことにする。
「まぁ仕方ないよ。こうなっちゃったんだから」
「困ったもんだな、これじゃあどっちがぶっ倒れてもアウトじゃないか」
「一人前のドライバーはブレイドを守るんだろ?ならオレは、ホムラを守ってみせる」
そうか、守る...
「仲間を守るのは団長の仕事、だろ?オルガ。皆を連れて行くのだってそうだ。だから...」
「あぁ。そうだったな」
そうじゃねえか...例えミカが死なない体だとしても、俺が皆を守るってのに変わりはねぇよ。当たり前のことじゃねぇか。
「口で言う程簡単なこっちゃないぞ」
「ヴァンダムさん。オレさ、この命をくれたホムラのために、二度と死なないって決めたんだ。だから絶対に死なない。そして必ず、楽園に行ってみせる。ホムラと一緒にね」
「レックス、お前...」
そうだな。俺も...お前らを
「楽園に行く?聞き捨てなりませんね」
...誰だ?俺らの作戦をぶっ壊した誰かさんにそっくりな声だったが...
声のした方に振り返ると、青い鎧に身を包んだ男が立っていた。傍らにブレイドらしき女を連れて。
「困るんですよ、脇役ごときに出しゃばった真似をされるとね。脚本が台無しじゃないですか」
「ヨシツネ!」
真っ先に反応したのは...ニアだ。ってことはイーラの奴か!
「裏切り者に名前を呼ばれる覚えはありませんよ」
「裏切り者、裏切り者ー♪ニアちゃんってば、とんだ悪女だったってワケだー」
「アタシは裏切ってなんかない!」
「ならなぜそこに?そこがあなたの居場所とでも?」
「アタシは...」
ニア...やっぱり今までの仲間達と敵対したくはねぇんだな...
「...ヨシツネ。アンタ、何だってここに?」
「そりゃあそこにいる天の聖杯ですよ。主演女優の姿ぐらい見ておきたいじゃないですか」
「シンの差し金かい」
「ご明察。あーそうそう...シン達からあなたのことは好きにするようにって言われました。意味、わかりますよね?」
「そんなっ...嘘だ!」
「おやショック?まさか見限られないとでも思ってたぁ?お花畑すぎるでしょう」
「っ...」
かつての仲間でも敵なら容赦はしない...その姿勢は理解できるがこっちだって団員をやらせる訳にはいかねぇんだよ!
「...おいおい。村に戻ったら休憩しようと思ってたんだがね...」
「っ!兄貴!」
「話は聞かせてもらった。ホムラ...お前さん、随分人気者じゃねぇか」
このタイミングで帰ってきてくれたのか!ありがてぇ...!
「おっと、これ以上脇役は必要ないのですが」
「そりゃあ悪かったな、こっちもお前の脚本通り動く気は毛頭ねぇんだ」
「そうですか...脚本家に逆らうキャストなど不要です、一瞬で退場させてあげましょう」
「望むところだ...お前のその声聞いてると、無性に腹立ってくるんだよ...ニューツ!ヤエギリ!」
「了解であります!」
「おっ、さっきのモンスターより強そうじゃん!いいねぇ...!」
おぉ...兄貴の戦闘技術は俺ら以上だ、こりゃ頼りになる...!
「よし、俺達も...」
「いや、必要ねぇ」
「何でだ兄貴!1人でやるってんですか!?」
「1人、ではねぇけどな。それに今は、俺の知ってる技術をお前達に見せてやりてぇんでな。悪いが下がっといてくれ」
「...分かったぜ、兄貴」
兄貴の眼は本気だった。普段の飄々とした感じはどこにもねぇ。
「...ユウ、ズオ!村の連中を避難させろ!あいつがイーラのヨシツネだとしたら、被害が及ぶかもしれねぇ!」
「了解です!」
ヴァンダムさんに名前を呼ばれた2人が走り出していく。そしてこっちも、もうすぐ始まりそうだった。
「...名瀬さん、だっけ?ヨシツネのブレイド、カムイは空間のエーテルエネルギーを操ってこっちが使う属性とは相反する場を一瞬で作り出すことができるんだ」
「なるほど...こっちの属性に対して有利な場を作って戦えると。一見厄介だが...いや、そうでもねぇな」
「舐めた事を言ってくれますね...ならば僕とカムイの力、特等席で拝ませてあげましょう!」
ニアのアドバイスを聞く限り、相当手強い風に聞こえたんだが...本当に大丈夫なのか兄貴...?
「まずは...っと」
兄貴がニューツから受け取った刀を手に斬りかかる。ヨシツネも腰にかけた双剣を引き抜き、攻撃を防ぐ。
「なるほど...炎属性。カムイ!」
「りょーかい!」
後ろでカムイが何かをする。
「あいつ、何しやがった?」
「...エーテルの流れが変わった。さっき、ニアが言ってたのを使ったんだと思う」
「そうか...ってことは今は炎の力は弱まるってことか?」
「多分」
「なるほどな...兄貴、一体どうする気だ?」
ミカがエーテルの変化を感じ取り、その原因を見抜く。
これだとあいつ有利のまま進んじまうんじゃ...
「そらよっ!」
「ふふっ、もうあなたの攻撃は通じませんよ!」
「おっと...こりゃ確かに弱まってるな」
やっぱり、少しずつ押され始めてる。どうすんだよ...!?
「んじゃ、そろそろ交代だ。ヤエギリ!」
「任せなっ!」
その掛け声と共に、遠くに居たはずのヤエギリと兄貴の後ろから力を送っていたニューツの位置が入れ替わり、武器も刀から斧に変化する。
「ブレイドスイッチですか...味な真似を!」
「相手に弱点があってそれを突けるのに、突かない理由はねぇだろ?」
「くっ..次の属性は...」
「遅いぜ!」
兄貴が斧で一閃決めた直後に、その斧を上に向かって投げる。これは...!
「決めるぞヤエギリ!」
「見せてやる、アタシの力を!」
斧を手にしたヤエギリは瞬時に間合いを詰め、連続斬りを叩き込む。風を纏った連続攻撃がヨシツネを追い詰め、そして...
「「『天来・羅刹大連撃!』」」
再び斧を手にした兄貴の、一際大振りな一撃が決まる。
ヨシツネは大きく吹っ飛ばされ、岩壁に叩きつけられる。
「...くっ、脇役が生意気な...カムイ!」
「ほいっ!」
またさっきのが来るか?けど通じないってわかったばっかじゃ...
「おっと、これ以上は勝手な真似させねぇぞ?」
ヴァンダムさんが飛び入る。武器は...持っていない?
俺はもしかしてと空を見上げる。やっぱりだ。
ツインメイスを手にしたスザクが飛んでいる。
スザクは突如身体を回転させると、巨大な竜巻を生み出して攻撃した。
その竜巻自体に大した攻撃力は無かった。だが...
「いやぁぁー!何よこれー!」
「エーテルの流れが乱された!ちぃっ、これじゃあ...」
あいつの力を封じたみたいだ。だがさせた所で特に問題なんて無かったんじゃねぇのか...?
「随分と脆かったな、お前の技」
「ちぃっ...脇役どもがそろいもそろって...興がそがれました。カムイ!物語を再考するよ」
「ふぅ...りょーかい」
そう言い残すと、ヨシツネとカムイは凄まじい跳躍力で逃げ去った。
「おいおい、俺にやらせてくれる流れじゃねぇのかよ?」
「まあいいじゃねぇか。お前の教えたがってた『技術』はもう見せたじゃねぇか」
「まあな」
技術...さっきの入れ替わりのことか?
「ヴァンダムさん、なんで乱入したの?さっきの技なら効かないんじゃ...」
「あー、それは俺も思ってた。別に兄貴一人でもどうにかなったんじゃあねえのか?」
「確かにな。だがもし、あいつが別の技を使おうとしていたら?もしそれが俺達にとって致命的な影響を与える物だとしたら?一瞬の油断で、戦況は大きく変わる」
「それは...」
確かにその通りだ。俺は思いっきり油断していた。もし戦っているのが俺だったなら、負けていたかもしれねぇ...いや、そもそも最初のあいつの技すら破れてなかったかもな...。
「ま、もし仮にヴァンダムが来なくてもどうにかしてたけどな?」
「...」
「ん?どうしたオルガ...」
「いや...」
名瀬さんやヴァンダムさんがいなかったら、あいつを追い返す事は出来なかった。俺には、まだまだ力が足りない。
こんなんじゃ、誰も守れねぇ...それどころか。
この前俺達の前に現れたヴィダールって奴、あいつは多分俺らと同じ世界の奴だ。もし俺がこの世界に来たせいで...レックス達と一緒にいるせいであいつが襲ってきたんだとしたら。俺はあいつらの敵を増やすことしかしてねぇじゃねぇか。だったら...
「...ヴァンダム、任せるぜ」
「おうよ」
...?
「レックス、オルガ。こっちこい」
「え?あっはい...」
俺とレックスはヴァンダムさんに呼ばれ、ついて行った。よく見るとレックスも何か悩んでるみたいだった。やっぱ、力が及ばないことを気にしてるんだろうな...
村にいくつもある小屋の内の一つ、その中までやってくると、ヴァンダムさんは俺達に問いかけた。
「なぁ、お前ら。俺とあのヨシツネって奴の違いは何だと思う?」
「そりゃあ、あいつはホムラを狙う連中の一人で、悪い奴で...」
「ヴァンダムさんは...いい人?」
俺達が問いに答える。するとヴァンダムさんは首をかきながらこう言った。
「ははっ。そいつはありがたいこったが、どっちも違いはないって言ったらどうする?」
「「...?」」
その問いの意味が、俺達にはよくわからなかった。違いはあるじゃねぇか。一体どういう...
「村の連中は義のために戦をしてると信じている。けどな、義のある戦なんて、存在しねぇんだ。義なんて言葉はな、手前勝手な強弁よ。戦は戦。自分を守ろうとすればする程、そこには対立が生じる。それが拡大したのが戦だ。つまり...俺には俺の、奴には奴の戦があるってことだ」
「でも、あいつのやってることは...」
「当然だ。肯定なんかしねぇよ。お前ら、戦は力だ。だが、力はそれを使う者の心の形でいかようにも変化する。力を恐れ、守ることを放棄しちまったらそこで終わりだ。何が正しくて何が間違ってるかなんて、誰にも決められねぇ。ならとことん、お前ら自身の大事なものを守れ。それがお前らの戦だ」
「オレ達の...戦...」
大事なもの、と言われた時、俺達は同じ方を向いていた。鉄華団の皆...それが俺の大事なもの。
そうだ...考えてみりゃあ昔から俺はそうだ。
大事なもん守るために後先考えねぇで突っ走って、そのせいで敵が増えたらそいつらも倒せばいい。俺はそうやってここまで来たんだ。
だったら、俺のせいでとか考えねぇで、皆を守って、連れてって...止まらず進み続ければいいじゃねぇか。
それが...俺の戦だからな。