「...醜態だな。いつまでその姿でいるつもりだ」
「どんな姿でいようと関係ない。これが今の私。あの子はどこ?」
カラムの遺跡。皆を置いて1人ここまで来た私は、メツに問う。
「ヨシツネほどゲスじゃないんでな」
振り向いたメツが顎で差した先を見ると、確かにイオンが眠っていた。
死んではいない。ひとまずは無事でよかった。
「クククッ、ゲスだってさ」
「チッ、喉元に刃物でも突き立てた方が効果的だってのに...知りませんよ?」
声のする方を見ると、男と浮遊するブレイドが1人ずつ。恐らく男の方がヨシツネ。
「俺の目的はわかってるよな?」
「あの人も...あの人達も同じなの?」
「俺はアイツらのために存在している。それが答えだ」
「そう...」
聞きたくなかった答えに私は俯きかけたけど、すぐにメツを見据え、睨みつけてみせる。
「その目...気にいらねぇ」
反抗心を示す私を不快に思ったのか、メツは旋棍を取り出して構え、ザンテツから送られたエーテルを使って風の斬撃を放つ。
「ふっ!」
「...くっ!」
「ふん!はぁっ!」
「うっ、あぁっ!」
私は咄嗟にエーテルバリアで防いだけれど、止まらないメツの攻撃により、最後には態勢を崩されてしまう。
「はぁ...はぁ...うぅ...はぁ...」
「おぉやおやぁ...どっちがゲスなんだか」
「...まだその目をするか。どこからくるんだその自信は?独りでも使えるってか!あの力を!」
あの力...どんな存在をも凌駕する聖杯の力...でも、私は...!
「私は使わない!あなたにも使わせない!」
そう叫び私は、身体に残るエーテルを放出して私自身よりも大きな火球を作り出し、放つ。
「へぇ?ドライバーなしでよくやりますね」
「ふん!俺の力を忘れたか!」
しかしメツは、いとも容易くそれを切り裂き、平然と同じ場所に立っている。
「今のお前じゃ俺は倒せんぞ」
今の一撃で倒せないのは分かっていたけれど、こんなにも力に差があるなんて...
流石に驚き、一歩引く私。それを追い詰めんとするメツ。
そこに...
「ならオレがぶっ倒してやるよ!
「小僧...!」
「レックス!皆!」
レックスが...皆が、現れた。
大きく飛び上がって剣を振るうレックス。それを受け止めるべくバリアを張るザンテツ。
剣は弾かれ後ろへ飛び退いたレックスは、私を守るように立つ。
「ヴァンダムさん、イオンを頼むぜ!」
「おうっ!」
オルガが叫んだその先では、ヴァンダムさんが素早くイオンの下へ駆けつけ、抱えている。
「ほらご覧、こうなる。...ったく世話がやけますね。カムイ!殺るよ!」
「待ってたにゃー!」
ヨシツネもブレイドの名を呼び声をかけ、メツの横に立つ。
「いつまでも増え続ける鼠共め...その命、あるべき場所へ返してやろう」
冷たく刺すような声と共に、何処かに控えていたヴィダールも現れる。
「お前らぁ!こいつらの好き勝手にやらせる訳にはいかねぇ!全力でぶつかって、勝つぞぉっ!」
団長の声を合図に、戦闘が開始した。
──────────────────────
「俺とミカでヴィダールの奴をやる!レックスはメツ、トラはヨシツネだ!二アは皆の傷を回復させてくれ!」
「「分かった!」」「任せるも!」
俺の指示に従って、皆が散開する。
俺はメイスを握り締めて、俺達の敵へと向かっていく。
「ホムラは渡さない!『ローリングスマッシュ』!」
「お前のそれは、蛮勇ってんだよ!『スパイラルソバット』!」
横でレックスとメツがアーツを撃ち合う。
だが、レックスが武器なのに対しメツは蹴りであるにも関わらず、メツの方が力で押している。
「余所見とは舐めた真似を。『ノーブルランサー』!」
「ぐぅぅぅっ...!」
一瞬の隙を突いてヴィダールが地を蹴り距離を詰め、レイピアを突き刺してくる。
それはまあ見事に突き刺さったが...お陰で銃の狙いがつけやすいぜ!
「喰らいやがれ...ヴぅぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「!!」
咆哮と共に俺が放った銃弾は、ヴィダールの仮面に弾かれる。だが、この一撃は相手から受けた傷により強くなる、いわば反射技。
弾かれても、その威力、衝撃で一瞬態勢を崩すぐらいは出来る。
────その隙があれば、あいつが食らいつく。
悪魔とさえ呼ばれた、あいつが!
「やっちまえ、ミカァッ!」
直後、後ろで待機していたミカが、地面を蹴り、俺の横まで滑り込む。
それを確認した俺は即座にメイスを手放し、ミカがそれを握る。
そこに思いっ切りエーテルを流し込んで、ミカが一撃、二撃。往復する様に殴打。これは...!
「『鉄華戦闘機動・ブロウ』!」
やっぱりな!ミカが編み出した、必殺の一撃!
この前あいつと戦ったときは決まる前に逃げられたが...今度こそ、ぶちかましてやれぇっ!
「...同じ技が通用すると思うか?」
「ダメか...!」
だがあいつも、その攻撃の全てを寸前で避けてみせる。
「やっぱりこいつ...やばいな」
「...やはり、お前達は...」
「...は?何か言った?」
奴の仮面の奥から、冷め切った様な声が、聞こえてくる。
「やはりお前達は、何かを奪う為では無く...生きる為、居場所を守る為に戦っている。実に真っ直ぐで、人間らしい」
「どうしたいきなり...何が言いてえんだ?」
「この世界とは違うと言いたいんだ。この世界には、権力、威力、暴力、そして人間の欲...醜い物が渦巻いている」
その声は段々と、怒りを帯びていく。
「俺達の邪魔をすることは、そんな醜さを守るのと同じだ。そうだとしてもお前は、聖杯を守るのか?」
「何言ってやが...」
「さっきからうるさいなぁ、ゴチャゴチャと」
俺が問い返すより早く、ミカがメイスを振るう。
この世界に来て、色んな人と出会って、色んな物を見て...確かに、見るに耐えねぇ欲塗れの連中もいたが、それ以上に、助け合い、共に生きる人やブレイドを行く先々で見てきた。その中であいつは、きっとこの世界を...皆を、好きになってたんだろうな。俺と同じように。
だから、なのだろう。
「もういいよ、喋らなくて」
敵に投げかける声、獲物を見据える冷たい目には、怒りが満ちていた。
「...そうか、なら...」
一方ヴィダールも、その膝に風のエーテルを纏わせる。
「望み通り...歪んだ世界の礎となるがいい!『スターライト・ニー』!」
「とっとと消えろよ...『鉄華戦闘機動・ソーバイティング』!」
それに対するミカは、メイスの先端をレンチメイスへと変化させ、それを展開し、ソーの部分を回転させる。
凄まじい量のエーテルがぶつかり合い、辺りが爆風に包まれる。
そしてほぼ同時、近くでもう一つの爆発が起きた。
「大人しく倒れたらどうだ、小僧!」
「イヤだね!お前らこそ、さっさと諦めろ!」
「そいつは出来ない相談だなぁっ!」
オレとメツの武器の打ち合い。
中々いい一撃は決まらないけど、それは向こうも同じだった。
力ではオレが負けている。でも、それなら受け流すように受ければいいんだ!
「チッ...なら...」
「動きが止まった!チャンス!『ダブルスピンエッジ』!」
メツが動きを止め、構えを取った。
何をする気かは分からないけど、今一気に攻めるしかない!
「効かねぇよ...『チャクラバースト』!」
「うわぁっ!?」
「まだ終わらねぇぞ?『ハンマーバッシュ』!」
「がっ...!」
けど、いつの間にか展開されていたエーテルバリアに剣が弾かれ、更にメツのアーツの直撃で上に打ち上げられる。
そして、オレが落下するのに合わせて旋棍での追撃を決めてくる。
抵抗もできず直撃を浴びたオレは、後ろに大きく吹っ飛ばされる。
本当に、強い、けど...!
「オレだって、負けられないんだ!『アンカーショット!』」
「何っ!」
オレはメツの攻撃で吹っ飛ばされながら、咄嗟にアンカーを放つ。
それをあいつの腕に巻き付け、すぐさま回収する。
流石にそれでメツを引き寄せることは出来ない。逆にこっちが引っ張られる。でもそれはわかってる!
「おぉぉりゃぁぁぁぁぁっ!」
「ぐっ!?」
引っ張られる勢いのまま、剣を大きく降ってメツに叩きつける。
「このまま決めるよ!ホムラ!」
「はいっ!」
メツを吹っ飛ばし返したオレは、すぐにホムラに剣を渡す。
ホムラもオレの意図を察して、エーテルを解放していく。
「『フレイムノヴァ』!」
放たれた炎がメツに直撃し、爆発を引き起こす。
それと同時に、オルガ達の方ではより大きな爆発が起きていた。
「よっしゃあ!見たかお前らぁっ!」
「ホムラは渡さない!誰だろうと絶対!」
ミカとヴィダールの激突を制したのは...ミカだった。
完全勝利とまではいかなかったが、それでも押し返してみせたんだ。
続いてレックス達も、メツに一撃お見舞いした。
これでくたばってくれれば、後はあの声の腹立つ野郎をぶっ倒せば...!
「ちぃっ...やってくれるじゃねぇか...」
「どうやら、想定以上の強さの様だな」
...まだ、足りねぇか...!だがここで折れる訳にはいかねぇ!
「ミカ、メイスを...」
「...おやおやぁ、随分苦戦しているみたいですね?」
「...ヨシツネ...!?おいトラ、無事か!?どこにいる!?」
散開した後、トラが相手していた筈のヨシツネがメツ達の前に現れる。
「オルガ...気をつけるも...」
「トラ!...ボロボロじゃねぇか...!二アはどうしたんだ!?」
声のする方に振り向くと、トラが傷だらけで倒れていた。見渡してみると、ニアとビャッコまでやられている。俺はすぐさま駆け寄ったが...一体何が...!?
「まとめてあいつにやられたも...あいつのブレイドが何かした瞬間、トラたちのブレイドが...!もっ!?」
「危ねぇ!」
「オルガッ!」
トラが一言ずつ、言葉を繋げるのを阻むように、雷のエーテルが放たれ、迫り来る。俺は咄嗟にトラを庇い、死ぬが...大したことはねぇ!
「はい、そこまでです。ネタバレは大迷惑なんですよ。...ま、こんな陳腐な物語には過ぎた演出なのですが...カムイ!次はこの辺り一帯、全部だ!」
「へいへーい♪最終章、かにゃ?」
カムイと呼ばれた奴のブレイドが、ヨシツネから武器を受け取り空へ舞い上がって、空中で翼を畳む。力を貯めた後、翼を展開すると同時に赤い波動の様な物を放つ。
だが...
「...あぁ?何ともねぇぞ?」
「こんな、こけおどし...!」
レックスがすぐさま突撃を仕掛ける。
俺もそれに続こうと思ったが...
「ダメだ、レックス...!」
「ニア!起きたか!」
「アタシのことなんていいから、早くアイツを止めろっ!返り討ちに...うっ!」
「ニア!...わかった、お前らはそこでじっとしてろよ!」
ニア達に声を掛けて、俺は戦いの場に戻る。
レックスは、ヨシツネを倒さんと飛びかかっていた。
「何だよ、何も起きてな...!?」
だが、その剣は、ヨシツネの、武器も持たぬ素手で、いとも簡単に受け止められてしまった。
「ブレイドは、空間に存在するエーテルエネルギーを武器のクリスタルへ送り込んで力を発生させている...僕達には、その流れさえも操ることができる!」
ヨシツネの言葉の直後、メイスから力が抜けていくのが分かった。つまり、奴らは今、本当にエーテルを操っている...!
「こうなってしまえば、力の差は圧倒的になる...私も先程、お嬢様に力を送れずに...!」
「ビャッコ!そうか...それでお前らはやられたのか...!」
いつぞやの戦いの時の、ヴァンダムさんの判断は正しかった...!けどヴァンダムさんはイオンを避難させてるし、戻ってきてくれたとしてももう、あいつの能力は乱せない...!
「今更気づいても遅いぜ!おらぁっ!」
「させねぇよ!」
メツが俺達の息の根を完全に止めようと、飛びかかってくる。
メイスでその一撃を受け止めるが...明らかに押されてる。押し返せない。
「お前ら!何でホムラを欲しがるんだ!」
「愚問ですね、天の聖杯の力が欲しいからですよ!」
一方でレックスの方はと言えば...押し返されるも、負けずに立ち向かおうとしている。だが、呆気なくヨシツネの双剣に武器を弾かれ、追い詰められる。
「悪く思うな。俺達はこの道を進むと決めた」
「ヴィダール...!お前ら、天の聖杯の力で何をしようってんだ!」
「シンの望み...そして、俺達の望みを叶える。全ての人間の...抹殺だ」
「何だと...!?」
全ての人間の抹殺...並大抵の覚悟で掲げるような目標じゃない。こいつらに、一体、何があったってんだ...!