第4話 天の聖杯 第1節 「炎と光」
かつて、アルストに存在した1つの王国。
平穏だった筈のその国は、ある日二色の光線により悉く破壊された。
閃光に飲み込まれていく国を避難して見守る国民達、その頭上には...
...ヒカリが、居た。
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「魂は死せず。また、彷徨うこともなく受け継がれるのみ。幸いなるかな、命の結束。世は全て輪環のことわりの中に」
ここは、ヴァンダムの墓の前。
ビャッコが弔辞を述べ終えて墓の前を退くと、次はイオンが前に出て花束を添える。
「ごめんなさい、ヴァンダムさん...あたしが、あんな奴らの話を聞いたばっかりに...ごめんなさい...!」
「...君が悪いんじゃない。いずれあいつらはオレ達の前に現れたと思う。オレ達皆、ヴァンダムさんに命を救われたんだ。今は、ありがとうって、送ってあげよう」
泣き崩れるイオンに、レックスが言葉をかける。
そして、立ち上がって墓と向かい合い、口を開く。
「ヴァンダムさん...オレ戦うよ。オレの戦を、ホムラと一緒に」
「...俺も行くぜ、ヴァンダムさん。もう二度と、俺の前で誰かを死なせたりしねぇから...俺自身の戦を戦い抜いてみせるから...安心して、眠ってくれ」
レックスに続いて、俺もヴァンダムさんへの挨拶を告げた。
次に来る時は...胸張って、戦い抜いたぞ、辿りついたぞって語れる様に...やってやる。団員を守んのは...俺の仕事だ。
「ホムラ...」
後ろからやってきたのは、ホムラ。
ホムラは墓の前に立って、守ってくれたことを感謝し、死なせる結果になってしまったことを謝るかの様に、一度、礼をした。
「もう、いいの?」
「えぇ...」
「そうか...一生起きないんじゃないかって心配してたんだ。...ところでホムラ、昨日のことなんだけど」
レックスが話を切り出した。まあ、あんなもんを見せられたからには、聞いておかねぇといけねぇよな。
「ヒカリって言ったっけ?何で急にあんな風になったの...?」
「え?そ、それは...」
「アタシも知りたい。あの力、普通じゃなかったよ。アレが天の聖杯の本当の力?」
「俺からも頼むぜ。話し辛いことなのかもしれねぇが、仲間のことはちゃんと知っておきてぇ。あの時何が起きたのか...教えてくれ」
「ええと...あれは...つまり...」
ホムラが答えに困っていると、その胸元のクリスタルが光り出した。
その光はホムラの全身を覆い、そして...
光が消えると、姿が変わっていた。
「ホ、ホムラ...」
「...どうして?どうして私を起こしたの?」
ヒカリ、と名乗っていたその少女は、不機嫌そうな、怒りを隠せないような表情でレックスに歩み寄り、問い詰める。
「起きたくなかったのに...出てきたくなかったのに!この力を使いたくなかったからあの子に代わってもらっていたのに...何で起こしたの!?」
「お、起こすって...」
「君が、もっとしっかりしてれば!起きずに済んだの!この力を使わずに済んだの!ヴァンダムって人に言われてたんでしょ?力を効率よく使えって、今は逃げろって!」
ヒカリは凄まじい勢いでまくし立てる。暫く止まりそうもない。
にしても...起きたくなかったってのは妙だな。
「無理して無茶して、でコレって!もうサイアクじゃない!」
「わ...」
「何であの時─」
「わかってるよそんなこと!わかってたよ...あのままじゃだめだって」
「レックス...」
「あいつらに君を渡したくなかった...君を守りたかったんだ!」
「え...やだ...と、とにかく!疑問があったらあの子に聞いて!以上!あとよろしく」
お、なんだ?急に話切り上げたぞ?
こりゃもしかして...いや、突っ込んだら俺もあいつらのブレイドと同じ末路を辿りそうだし...やめておくか。
「あ...ずるい...」
一方そのヒカリはというと、また光に包まれて、ホムラの姿に変わっていた。
「ごめんなさい。皆さん、お騒がせしました」
続けて見るとあれだな、ほんっとに全然違う性格じゃねぇか...
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「私とメツは天の聖杯。この世界を消し去ることができる程の力を与えられて生まれたブレイドでした...」
「...は?待て待て...ホムラはともかく、メツもなのか!?」
フォンス・マイムの、劇場の中。
公演していない時間を借りて、俺達はホムラの話を聞いていた。
そこでとんでもない事実を知ることになった訳だが。
「はい。...一人の男が神に会うために、世界樹を登って、楽園を目指しました。でも、楽園へと辿り着いた男は、神には会えませんでした。男は、神の御座に辿り着いた証しとして、コアクリスタルだった私とメツを持ち帰りました。そして...アルストに戻った男は、メツを目覚めさせたんです。何のために目覚めさせたのかはわからない。欲のためか、力のためか。それとも...」
まじかよ...あんな馬鹿でかい木を登った奴がいるのも驚きだが、まさかメツにもドライバーがいやがったなんてな。だがホムラは500年前には既に目覚めてた...そんでホムラとメツは同じ人が持ち帰ったって話だから、流石にそのドライバーはもう死んでるか。
「目覚めたメツは、天の聖杯として与えられた力を、世界を消し去る力を振るいました。何の疑いもなく、純粋に、それが当然のこととして。私はそんなメツを倒すため、一人のドライバーの求めに応じて目覚めました。...私とメツは戦った。激戦の末、私はメツを倒すことができたけれど、その戦いで3つの
メレフの話は本当だったって事か...にしても、どんだけ壮大な戦いをしたらあんなでっかいもんを3つも沈めれるんだよ?もしかしたらメツも...まだまだ全然本気じゃないのかもな。
「戦いの後、私はこの力が二度と目覚めることがないよう封印し、この姿、この人格となって眠りにつきました。...500年前の出来事です」
「聖杯大戦じゃ。ヒカリを目覚めさせたのは、古王国イーラの英雄アデル。アデルは世界を守るため、ヒカリのドライバーとして戦った。ワシら
「じっちゃん...」
「じーさん、あんた結構凄い奴なんだな」
「お世辞は後で聞いてやるわい。...アデルは眠りについたホムラを一隻の船に隠し、誰の手も届かぬ雲海の底深くに沈めたんじゃ」
「その船を、オレが見つけたのか...そしてオレとホムラは...」
そう考えてみると、バーンとかいうあの会長が大金使ってレックスに依頼してきたのも納得だな。古代の英雄の沈めた船なんて宝船もいいとこだ。
「私達の出会いは...運命だったと思います。でなければ、ヒカリちゃんは目覚めなかった。あの場所...夢の中の楽園で、私とヒカリちゃんはいつも話をしていました。いつか、私達が目覚める時がきたら、その時は楽園に還ろうって。還って、私達の本当の目的を果たそうって」
「本当の目的...もっかいメツを倒すってことか?」
俺が聞くと、ホムラは静かに頷いた。
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「ねぇ、オルガ」
「んぁ?どうしたよミカ」
「あの時はごめん。もっと早く敵を倒すべきだった」
「...お前が気にすることじゃねぇよ」
その日の昼頃。俺達はフォンス・マイムの宿の自室にて、各自休憩を取っていた。
俺とミカは同じ部屋だったんだが、そこでミカが話しかけてきた。
「誰か一人のせいで仲間が死んだなんて、そいつを馬鹿にしてる。...前、お前が似たようなこと言ってなかったか?」
「...そうだったかも」
「だろ?ヴァンダムさんが殺されちまったのは辛ぇし、あいつらは許せねぇ。でも...いや、だからこそ、後悔なんざしてる暇はねぇ。前向いて突っ走るぞ、ミカ」
「...うん。行こう、皆で」
仲間が死ぬのは、そりゃ勿論出来るだけ避けてぇ。
けど、いざ実際にそうなった時、いつまでも止まってるつもりもねぇ。
だから、止まらずに進み続ける。
今までも...これからも。
「...あ、そろそろ出発の時間だよ」
「ん?おぉ...みたいだな。んじゃあ、行くとするか」
この先何が待ち受けてるかなんて誰にもわからねぇ。
けど、こいつと...皆となら、必ずやれる。
だから俺は...迷わねえ。
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「...なんだ、これ?」
「それを持ってアーケディアへ行け。その短剣の持ち主が、楽園への道を開いてくれるだろう」
俺達は出発前、コールのじーさんから短剣を受け取った。
青と紫が入り混じったような色で輝くクリスタルが印象的だが...こいつは...
「この剣...ブレイドの武器か?持ち主ってのは誰だ?」
「わしのドライバーだった男だ」
「ドライバーって?え?まさか?」
コールのじーさんは驚く俺らの反応を見透かしていたかのように、服の胸元を開く。
するとそこには...武器と同じクリスタルが埋め込まれていた。
「コールはブレイドじゃ。聖杯大戦を共に戦った...な。本当の名をミノチという」
「ブレイドなのにおじーさんみたいだも。何でも?」
「忌避の者、マンイーターだからな。わしは」
「マンイーター?」
「人の細胞と融合を果たしたブレイドのことだ。聖杯大戦よりずっと以前、人とブレイドの更なる可能性を模索した者達がいた。わしはそんな者達の手によって創り出された、ブレイドのなれの果てだ」
おいおい、まじかよ...人の細胞を得たブレイドなんてもんもいやがるのか...
「昔の人はどうしてそんなことをしたも?」
「人間と融合したブレイドは、より特異な能力を身につける可能性があったからだと聞く。だが成功例は僅か、ほとんどが失敗したようだ。わしもその一人...わしはその代償として、無限の寿命を失った。もうあまり長くはないだろう」
「おじいちゃん...」
なるほどな、融合に成功すればもっととんでもねぇ能力が目覚めるかもしれないが、失敗すれば人間と同じように寿命で死んじまう様になる、と。...いやそれでも500年も生きてるんだから、やっぱすげぇよブレイドは。
「それが潰える前に、お前の行く末を見てみたい。その短剣は道標だ。歩いて、くれるか?」
「...あぁ、当然だ!折角道が開けたんだ、歩くなんて言わず、突っ走ってやるよ!」
「だよね、オルガ!...あぁそうだ、コールさん。オレからも一つお願いがあるんだけど」
「何だ?」
「今度はさ...ヴァンダムさんの物語、書いてくれないかな」
「ヴァンダムの?」
レックス、何を言い出すかと思ったが...そうきたか!
あの人は皆の為に目一杯出来ることをしてたんだ、ならそれを語り継いでいくってのは...いいんじゃねぇの?
「そして、劇団の人達に演じて欲しいんだ。楽園を見つけたら報告に戻るからさ、その時に見せてよ!」
「...そうだな。それがわしの責務かもしれんな。いいだろう、約束しよう。その代わり...必ず、戻ってこいよ?」
「わかった!約束するよ!」
約束...か。
なら、全力で果たさねぇとな。
俺は渡された短剣をしまって、決意を新たに、団員達と共に再び進み出した。
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「そうか...惜しい男を失っちまったもんだな」
「はい...」
俺達は、アーケディアに向かう前に、フレースヴェルグまで戻ってきていた。
名瀬の兄貴に、一連の出来事の報告と挨拶をしておくために。
「...兎に角、報告ご苦労だぜオルガ。この傭兵団の事は俺に任せといてくれ。...それと、こいつを持っておけ」
「...これは?」
「通信機、だ。お前らはこの先も進んでいくんだろ?何かあったら俺を呼べ。やれるだけのことはやってやるよ」
「感謝します、兄貴...では、出発します」
「おう。お前の進む先...楽しみにしてるぜ。オルガ」
兄貴から通信機を受け取って、俺達は村を出た。
...「行く末を見てみたい」、「楽しみにしてる」...
託された想い、裏切るわけにはいかねぇな。
さーて、気い引き締めて行くぞぉっ!
というわけで 原作ではレックスに託されていた傭兵団ですがこちらでは名瀬さんが引き受けることに
とはいえ通信機があるので原作で傭兵団が必要になった箇所ではきっと動いてくれるはず()