オルガブレイド   作:シン・ファリド

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課題が!思ったより!!多すぎました!!!!!


第4話 天の聖杯 第2節 「スペルビアへ」

「商会に戻ってから、スペルビアを経由して、法王庁が最短ルートだなぁ」

「港に商会の船が来ているかもしれんの」

「なら、タダで乗れそうだね。行ってみよう」

 

村を出て、俺達はルート確認をしていた。...というより、してもらっていた。この手の事はどうしてもレックスの方が遥かに詳しいからな。...ん?ちょっと待て。

 

「お金いらねぇのか?」

「サルベージャーならタダで乗れるんだ。皆のことも交渉してみるよ」

 

ありがてえ話だ。懐に余裕があるって訳でもってない以上、節約できるとこはとことんしねぇと。

そしてレックスの言葉通り、フォンスマイムからアヴァリティア行きの商会の船は確かにタダで乗ることが出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、レックスも!」

「あのでかい人も一緒も!」

「生きてたのかも!」

「何かいっぱい、オトモ連れてるも!」

 

ん?あれは...あぁ、いつぞやの仕事の時、一緒に来てたノポン族じゃねぇか。俺らが戦ってる間に逃げ切れたんだな!

 

「はいはい、話は後でなー...さて、と。オレは帝国行きの船の手配してくるから、皆は先に宿に行っててよ」

「俺も行くぜ。この世界のことも色々知っとかねぇといけねぇしな。...ミカ、もしもの時は皆を頼むぜ」

「うん、また後で」

 

団員たちを見送って、俺とレックスは船の手配に向かった。

 

 

 

「スペルビア帝国行きの船は4階のゴルドムント飛行甲板から出てるんだよな、確か受付があって、そこで船の手配ができたはず...」

「じゃあ、上まで登ればいいんだな?何だよ、簡単じゃねぇか...」

「あっちょっと、ストップオルガ!」

「俺は止まんねぇからよ...!お前も止まるんじゃねぇぞ...!」

「今は止まってくれ!頼むよー!」

 

楽園への道が見えたってんだ。こんなもん急ぐしかねぇだろ!大丈夫、あんなことミカには言ったが敵なんて出てくるとも思えねぇし...!

 

 

 

 

 

...数十秒後、俺はレックスの言葉の意味を完璧に理解した。

そう。ずばり。

 

「あれ、ここさっきも通ったか...?」

 

迷子だ。

そこから更に数分、俺はレックスに無事発見され、今度はちゃんとついていって、目的地までたどり着けたのだった...。

 

 

 

「スペルビア帝国行きの船に乗りたいんだけど...えーっと...8人...いや、人...?まあとにかくそれぐらい」

「もももっ!?久々の団体さまも...団体さまの場合はお得なサービスがありますも。全員まとめて4000Gで乗り放題ですも」

「オレは見ての通りサルベージャーだから、タダで乗せてもらえるよね?」

「そうでしたも。こういう場合は値引きして、3000Gになりますも」

 

俺達は船の手配を進めていた。この「ムルムル」っていうノポンがその受付らしい。

...ん?待て。さっきの船は全員タダで乗れて...

黙っちゃいられねぇ。ここはビシッと言ってやる!

 

「おいちょっと待て。フォンスマイムからここまで来るときに使った船は連れもタダだったぞ?」

「ももっ、見ない顔も...じゃあ聞くけども、全員で何人乗るんでしたも?」

「あ?8人...人かどうか微妙なのもいるが、まあそんなとこだな」

「そのうちサルベージャーは何人ですも?」

「俺とミカも一回だけ参加したことはあるが...ちゃんとそういう仕事になってんのはレックスだけだな」

「じゃあ3000Gは払って欲しいですも。タダで団体さまを運ぶ程ムルムルの懐は潤ってないですも」

 

こいつっ...確かにこれだけいてサルベージャー1人でタダにしてもらうのも変な話ではあるけどよ、インヴィディアん時はな...!

 

「ぐぐっ...おいレックス...」

「流石、アヴァリティア商会のノポンだよ...仕方ない、流石にそれぐらいのお金は持ってるし、払って宿に戻ろう」

「...そういうもんなのか...分かったよ。ほら、持ってけ」

「まいどありですも!乗りたくなったら声をかけて欲しいですも。団体さんに合わせて出発してあげますも」

 

スペルビア行きの乗船券を受け取り、俺達は皆の待つ宿へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってな訳で、出航は明日する事にした。世界樹を目指す旅である以上、いつ何が起きるかわからねぇ。お前ら!気ぃ引き締めて準備しろ!」

「承知いたしました」

「りょーかいですも」

 

オルガが戻ってきて、経緯を聞かせてくれた。そして、明日までに各自準備ということになった。

...まあ、ブレイドの俺は準備することも特にない気がするけど。

 

「ねぇねぇ、ミカ」

「ニア?どうかした?」

「オルガって、そのー...前居た世界でもあんな感じだったの?」

 

近くの席に座っていた二アが聞いてくる。

 

「んー、まあ。いつも皆の先頭に立って、引っ張ってくれる。そこは同じだ...けど色々、変わった気がする」

「変わった?そうなのか?」

「うん。おかしなこと言う回数もだいぶ増えたし、変な事するのも多くなった」

「...悪化してない?それ」

「確かに。けど多分...オルガ、なんだかんだで楽しいんだと思う」

「楽しいって?」

「異世界巡りのこの旅が。昔は、ただ明日生き延びる為に戦う、誰がいつ死んでもおかしくない...みたいな感じだったし。そんな状態じゃなくなって、気が楽になったのかも」

 

まあ、度が過ぎる時は銃撃ってでも止めるんだけどさ。今のオルガは死なないし。

 

「なるほどね...それでもアタシには、随分気を張ってるように見えるけど」

「そりゃね。気が楽になったからって、オルガは団長としての役目に手は抜かないし」

「じゃあ...アタシ達で支えてやらないとな」

「分かってる。道は俺達で切り開くんだ」

「あぁ!」

 

今までもそうしてきた。そして、これからも。

いつかたどり着くために...その先を見る為に。

 

「...あ!あそこ魚料理売ってるじゃーん!一個食べてみよ?な?」

「...そういえば、火星ヤシは無くてもチョコレートくらいならあるかな。探しに行こっと」

「あっ逃げるなっ!じゃあわかった!せめて一口だけ!絶対美味しいってなるから!」

「やだ」

 

なんかもう見た目がやだし。うん、仕方ない仕方ない。

結局今日も魚を食べることはなく、宿で眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うごーっ...がーっ...」

「すぅーっ...」

 

...いやぁ、最高にふっかふかのベッドじゃねぇか...何時間でも寝てられるぜ...

 

「んー...え、あ...えっ...?」

 

とはいえ、そろそろ起きた方がいいか...いややっぱもう少しだけ...

 

「あぁぁぁぁっ!?」

「うわぁっ!?」

 

...おいなんだ、人が気持ち良く寝てるってのに煩いじゃねぇか...この声...レックスと...ホムラか?

ってなんでホムラが男部屋にいるんだよ!?まさかレックスの奴...!?

団長としてそういうのはちゃーんと言っておかねぇと!勢いよく飛び起きた俺の目に映ったのはホムラ、ではなく...ヒカリだった。

 

「君っ、いつからそこにっ!?な、何で人のベッドで寝てるのよっ!」

「い、いや...」

「なに...うるさいなぁ...」

 

あまりの騒がしさにミカも寝てられなくなったみたいだ。しかしヒカリ、あいつ何やってんだ...?

 

「きゃーっ!ヘンタイ!ケダモノ!チカン!」

「ちょっ、ちょっと待って...いたっ!」

「...!レックス!」

「ミカおまえっ、何しようとし...ヴアァァァァァァァァァッ!!!」

 

ヒカリはベッドから降りると全速力で机に向かい、上に乗っていたものを手にとっては手当たり次第に投げ始めた。

その一撃目がレックスに炸裂したと同時にミカは状況を何となく理解したのか、俺をその斜線上に突き飛ばした。

当然残りの弾は全て俺に直撃。為すすべなく俺は死んだ。

...いや、別にいいけどよ。扱いが雑すぎるぜミカァ...

 

「こっ、ここ!オレの部屋!おっ、男部屋!」

「...ん?あ...」

 

そうこうしてる内にレックスが、何とかヒカリを止めてくれたようだ。

 

「...またやっちゃったのね。無意識の内に...私ったらもう、バカッ」

「む、夢遊病というやつですか?」

「...見たでしょ」

「え?」

 

おっと?話が噛み合ってねぇぞ?大丈夫か...?

 

「エッチ!」

「...えぇぇぇぇぇっ!?」

 

一言言い残して、ヒカリは部屋から出て行った。やっぱり大丈夫じゃねぇじゃねぇか...

しかしこりゃひでぇな...上手くやってけるか不安ではあったが更に不安になったぞこれ。

...だが。

 

「あんな格好しとって見るなと言われてものぉ...」

「全く同感です」

「もうちょっと露出を抑えるとか...できんもんじゃろか」

「俺は大好きだぞぉ...」

「は?」

「すみませんでした...」

 

いやだって。いいもんじゃねぇかああいう服。

...まあ、ミカの氷点下より冷たい視線に刺され、黙らざるを得ない訳だが。

 

「...オルガ殿」

「ん?どうしたビャッコ?」

「...私も大好物ですよ」

「えっ」

 

...こいつ、この顔でこれか...だが理解者がいるのは嬉しいもんだ。

人とブレイドの、奇妙な友情が芽生えた瞬間だった。

 

 

 

 

「...ホ、ホムラぁ...?」

「あ、おはようございます」

「えっと、さっきは...」

「ごめんなさい。ヒカリちゃん、寝ぼけると徘徊する癖が...」

「そう...なんだ」

 

全員起きたんで、宿から外に出て。

今は、朝食の時間だ。

レックスは...さっきの事を聞きに行ってるみたいだな。

 

「変なことしませんでした?」

「やっ!してない!してない!!オレなーんにも」

「いえ、そうじゃなくて。ヒカリちゃんが」

「あ、あぁ...ヒカリ、ね」

 

おいおい早とちりするなよレックス。逆に怪しまれるぞ?

 

「ちょっと...物を投げられたくらいか、なぁ...」

「やっぱり、これその時のですよね。ごめんなさい、痛かったでしょ?」

 

ホムラが席を立って、レックスのおでこ...さっき物をぶつけられたとこを撫で始める。

いやレックス、お前...!

 

「俺も!俺も物ぶつけられたぞぉっ!」

「...オルガは傷すぐ治るんだから仕方ない」

「畜生...この体質が今だけは憎いぞ...」

「いやオルガは不死身のままじゃないと困る。撃ったり盾に出来ない」

「!?」

 

ミカからすっげぇ怖い言葉が聞こえた気がするが...慣れって事でいいんだよなぁ!?これ!

 

「あっあぁ、大丈夫!ほんと、平気だから!」

「...そうですか?私、まだちょっとズキズキしてるんですけど」

 

 

 

「いいもんじゃなぁ...若いってのは」

「全く同感です」

「俺も一応若い筈だぞぉ...」

「しつこい」

「はい」

 

ばっさり切り捨てられる。

...あ、もしかしてミカ、寝てる時にうるさくされたから機嫌悪いのか...?

 

「...けどよ、ああいう人、いつか欲しいもんだぜ...なぁじーさん?」

「うむ...ワシらも欲しいなぁ...」

「やっぱそうだよな?ほらビャッコも。そう思わねぇか?」

 

悲しい男達の談義が始まった。

けど丁度ここにいるミカは既に...なぁ...とか思うと尚更悲しいぞ俺は。

...しかも。

 

「いえ、私は結構です...」

 

まさかの裏切り。

奇妙な友情に、早くも亀裂が入った瞬間...かもしれない。

ミカ以外の俺達一同は顔を見合わせて、少しの間沈黙が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはスペルビア帝国、皇宮。

私は...皇帝陛下へと天の聖杯に関する報告をするべく、帰還していた。

...いや、厳密に言うなれば。

天の聖杯と、その仲間の件の報告だ。

 

「メレフ様、どう説明します?不死身の、男など...」

「...だが、それが事実である以上はそう報告するしかない。近頃イーラの連中の被害が更に増えた事と関係している可能性もある」

「承知しました」

 

オルガと、ミカ...何度死んでも立ち上がるドライバーに、ドライバーが死のうと影響を受けないブレイド。

その実力に反し一切の噂も無く、突如として現れた...

...調査を進めなくては。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま帰還いたしました、皇帝陛下」

「ごくろうさまでした。カグツチも」

「恐れ入ります」

「久し振りだね、カグツチ」

「あなたも元気そうね、ワダツミ」

 

ワダツミ...それは、皇帝陛下のブレイドの名。

凄まじい剣の腕前に、エーテルの扱い。

私も信頼の置ける、皇帝陛下の護衛人。

 

「天の聖杯...やはり本物でしたか」

「はい」

「少年ですか?」

「格好から、サルベージャーの様でした」

「ふむ...」

「...それと。鉄華団、と名乗る謎の一団が動き始めました。天の聖杯のドライバーも、彼らと共に行動しています」

「聞かない名前ですね...イーラとの関係は?」

 

イーラとの関係。

彼らの言葉を信じるならば敵同士。

...だが、あの団長を名乗る男、オルガは仲間想いのようだった。もしイーラと協力しているのなら、嘘を吐く理由になる。

だが...

 

「...恐らく、敵対しているものかと」

「...メレフ様...?」

 

あの時の、あの者達の眼...

微塵も悪意を感じさせない、真っ直ぐな眼。

あれを、信じてみる事にした。

...とはいえ、調査を止める訳ではない。その先で何らかの障害になると判断すれば、その時排除するだけだ。

 

「そうですか...是非一度、会ってみたいですね」

「お望みとあらば」

 

皇帝陛下も、こう言っている。

もし何らかの形でスペルビアに現れたなら、どうにかして連れてくるとしよう。

 

「先刻、法王庁(アーケディア)行きの輸送船が襲われたとの報が入りました」

 

ワダツミが、書類を渡してくる。

どうやら、その一件の物の様だ。

 

「輸送船が?」

「積み荷はコアクリスタルとのことです」

「コアクリスタル...イーラですか」

「恐らく。運良く脱出できた者の話では、銀髪の、仮面の男だったそうです」

「...銀髪の仮面の男...シンですか」

 

仮面の剣士...シン。

その圧倒的な実力で、これまでにも甚大な被害をアルスト中で出してきた。

ある時は長剣で全てを断ち、ある時は黄金の双剣で障害を斬り刻む。

 

「これで三隻目。インヴィディア側でもかなりの被害が出てると聞きます」

「...申し訳ありませんでした。トリゴで捕らえたイーラの少女、厳しく尋問すべきでした。私の責任です」

 

まさか、そんな事態になっていようとは。

今イーラと共にいないとしても、その計画を知っている可能性はあった。聞き出すべきだったか...

 

「あなたが必要と思ったから、自由にさせたのでしょう?ならばそれで十分です。それに、相手がシンであるのなら...5000の兵を持ってしても、どうにもできなかったでしょうしね」

 

...確かに、そうだ。

あの男の力は圧倒的。

悪戯に兵を向かわせても、死体が増えるだけ。

...何故その強大な力を、破壊と簒奪の為に使うのか。

いつしか捕らえた暁には、一つ残らず吐かせてやろう。

 

「今の問題は別にあります」

「と、おっしゃいますと?」

「元老院が独自にユーディキウムの発掘調査を再開しました」

「開戦派...ローデリッヒ議員...」

「コアクリスタルを失ったことで焦りが出たのでしょう...ユーディキウムはとても繊細な地です。下手にインヴィディアを刺激すれば...」

「委細承知いたしました。元老院に不穏な動きあらば、掣肘も致しましょう」

 

次の任務は決まりだ。

下手な真似をしないでくれると助かるが...いざ、という時はこの手で。

 

「お願いします。"従姉さん(ねえさん)"...」

 

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