オルガブレイド   作:シン・ファリド

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本当にごめんなさい!!!!!!!!


第4話 天の聖杯 第3節 「意志を継いで」

「...おいレックス、何か光ってねぇか?」

「本当だ──何だ?」

 

朝食も無事に終え、俺達が乗る船の出る『ゴルトムント飛行甲板』へと向かっている途中。

レックスのポーチの中から、青い光が漏れ出し始めた。

 

「...スザクのコアクリスタルが。今まで石みたいになってたのに、どうして?」

「本当じゃねぇか...なんで急に」

 

レックスが取り出した光源は、確かにあの日コアに戻ったスザクだった。

一体どうしたってんだ。

...まさか...?

 

「知らないのかい?コアクリスタルはね、色を失ってもしばらくすると復活するのさ」

「復活?」

「また同調できるようになるってこと」

 

やっぱり、そういうことか。

ブレイドはドライバーと同調して生まれ、ドライバーの死と共にコアに戻る。そして、時が経って...また、新たなドライバーのブレイドになる。

その準備が、出来たって事なんだな。

 

「じゃあ、今同調させれば──」

「新しいスザク殿が誕生することでしょう」

 

新しい、スザク。

そいつはつまり、前の記憶を全部忘れて、新たなブレイドとして目覚めるって意味だ。

...ま、こいつを託されてんのはレックスだ。だから──

 

「──どうすんだ、レックス」

 

レックスに、問う。

俺としちゃあ、仲間が増えるのは助かるし、嬉しいが...それでも、無理矢理やることじゃねぇからな。

 

「...どうしようかな。ヴァンダムさんの大切なスザクだし、そう軽々しくは扱えないよ」

「まぁ、アンタが託されたようなもんなんだからさ。好きにするといいよ」

「ニアの言う通りだ。そいつの事はお前に任せるぜ、レックス」

「オルガ...うん」

 

俺が言うより先に、ニアが言っちまいやがった。

...ま、考えが同じなのはいい事だがな。

皆、こう言ってんだ...自由に決めろよ、レックス。

 

「...そろそろ出航の時間だったよね、オルガ」

「ん?まあそうだが...どうしたってんだ、ニア」

「先に行って、乗船手続きしてくるよ!」

 

そう言うニアは、今すぐにでも走り出しそうだった。

おいおい...んな急ぐこたぁねぇだろ?

 

「全部自由席だから。好きな席を選びたいんでしょ、二アは」

「おっミカ、大正解ー!じゃ、行ってくる!」

「なるほどな...っておい待て!」

「あぁー?なんだよオルガー!」

「俺らの分も忘れんじゃねぇぞ!飛びっきりの席選んどけよー!」

「分かってるってー!」

 

...よし、聞こえたな。これで席は安心だ。

 

「にしても...あいつもまだまだ子供だな、やっぱ」

「人のこと言えないでしょ、オルガ」

「...ははっ、違いねぇな。でも、お前も折角ならいい席がいいだろ?なぁ、ミカ」

「...うん」

 

走り去るニアを見送りながら俺が呟くと、ミカが賺さず突っ込む。

ま、俺らの分も取っといてくれんならありがてぇ。折角の船旅、特等席で楽しもうじゃねぇか。

 

「...ご主人。誰か、走ってきてますも」

「ハナ?誰かって誰...もっ!?」

「あぶねっ...おいこら!気をつけやがれ!」

 

とんでもねぇ勢いで、ガキが俺らの近くを走り抜けていく。見た目からして...グーラ人か。

あぶねぇあぶねぇ...ハナが予め言ってくれなきゃ、ぶつかって無駄死にかますとこだったぜ...ついつい怒鳴っちまった。

 

「...レックス!鞄が...!」

「え...あ、本当だ!ない!」

 

ホムラが、異変に気付く。

さっきの奴が盗んでいきやがったんだ。

あの鞄にはスザクのコアクリスタルも入ってたんだ...クソッ、やってくれるじゃねぇか...!

...だが相手が悪かったな。

何せ俺らは鉄華団。そしてここには...

 

「逃がすなよ、ミカ!殺す必要はねぇ、とっ捕まえて話聞き出すぞ!」

「...分かってる」

 

ミカが、いるんだよ!

間違っても逃げられると思うんじゃねぇぞ、泥棒!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...おし。完璧だぜ、ミカ」

「別に、普通でしょ。素人の子供相手なんだから」

「ま、そりゃそうか...手、離してやれ」

「分かった」

 

あいつはグーラ人だっていう俺の考えは正しかった。

んで、色々考えた結果...あいつは船を奪って逃げ帰る気なんじゃねぇかって予想した。

だから、途中でニアと合流しつつグーラ行きの船が泊まっている場所まで走ってきてみると...まあ見事に、いた。

そのままねじ切られそうな勢いで、ミカに腕を握り締められるあいつが。

流石に子供相手だし、ここまで追い付けば逃げられるとも思えねえから...手は、離させたが。

 

「さて、と。んじゃあ...奪ったもん返しやがれ」

「...っ!だ、誰がっ!」

「...オルガ、顔怖いって」

「お?...あぁそうか。悪い、癖でな」

 

つい、今まで誰かにケジメつけさせようとしてた時みてぇな喋り方と顔になっちまった。

そうだよな。敵対してる奴らならともかく...幾ら何でも、こんなガキ相手にする顔じゃねぇよなこれは。

 

「なぁ。まだ子供だろ?盗んだもの、返してくれないか?」

「...お前だって子供じゃないか!」

「これでも一応社会人なんだぜ?...さぁ、返してくれ」

 

レックスが、真剣な顔で語りかける。

ガキはまだ反抗的な姿勢を崩さないが...それでも、あくまでレックスは向こうから返してもらうつもりみたいだった。

 

「イヤだ。返さない!どうしてもってんなら、力尽くで取り返してみ──がっ!?」

「...力尽くで...何?」

「おいミカ、お前...」

「こいつがやってみろって言ったから。それに、この方が速いし」

 

我慢の限界、みてぇだな。

ミカが、叫ぼうとしたこいつを取り押さえ、その上でレックスの鞄を取り返した。

ミカの実力なら、まあ余裕だろうが...やっぱり容赦ねぇな、お前。

...仲間の大切なもん奪われて、怒ってたんだろうけどな。

 

「さ。言われた通り力尽くで取り返したぜ?まあ、ミカがだけど...にしても、まだ十になるかならないかじゃないか。何でこんなことしたんだ?」

「......」

「...ねぇ。黙ってたら分かんないんだけど」

「ミカ...もう少し優しく、ですも」

「なんで?」

「シショー!子供も、相手子供もー!」

 

あくまで話を聞いてあげる感じで話すレックスと、滅茶苦茶急かすミカ。ミカを宥めるのは、トラとハナのコンビだ。

いやまぁ...気持ちは分かるけどよ、一旦落ち着けってのミカ!

 

「なぁ、何か事情があるんだろ?もしかしてお金に困ってるのか?」

「馬鹿にするな!金になんか、困ってるもんか!」

「なるほど。金には困ってない、と...」

「...素直に話すほうがいいも。悪いようにはしないも?」

「そういう事だ。何かあったんなら、遠慮なく話してくれ」

 

中々話が進まないところで、トラが語りかける。

無論、俺も同じように思ってる。

俺らに出来ることなら、全力でやってやるさ。

それに、仮に俺がそう言わずとも...今の鉄華団(こいつら)は、そう願う奴らだしな。

 

「──敵討ちだ」

「敵?」

「村の皆の、敵討ちをしたかったんだ」

「...まさか、ブレイドを同調させるつもりだったのか?」

 

おいおい...ありゃ適性が無きゃとんでもない事になっちまうんだぞ?当然それも分かってるだろうし、よっぽど覚悟決まってやがるな、コイツら。

村の皆の、敵討ち...俺らがガキの頃から、必死で足掻いて生き抜いてきたのと同じぐらいの強い意志で、コイツもそれを願ってやがんだ。

けどまぁ...幸い、ここには俺らがいる。だから、コイツに無理させたりはしねぇ。

 

「じゃあ...詳しく説明してくれ。力になってやる」

「......」

 

少し俯いて考え込んだ後、そいつは...今までに何があったのかを、語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「野盗に、村を...」

「小さいけど、平和な村だったんだ...それを、水が出るって理由だけで...!」

「生き残ったのは?まさか、お前一人なのか...?」

「...まだ、グーラにいる。だけど、俺と同じぐらいの子供が...数人だけ」

「...ひでぇ話だ」

 

コイツとその生き残り達は、きっと普通に暮らしてたんだ。にも関わらず、その「居場所」を下らねぇ理由でその野盗共は奪いやがったんだ。

許せる訳が、ねぇ。

 

「...名前は?」

「俺の?それとも、村の?」

「両方」

「...リリオ。村の名前は、イラーダ」

「イラーダ村...俺らが前にグーラに行った時は聞かなかった名前だな」

「グーラの端にある小さな村だからな...知っている人は少ないよ」

 

リリオ、と名乗ったソイツは、俺の言葉にそう答えた。

...知ってる奴が少ない。だから狙われたんだろうな。

そんな辺境の村が一個襲われたからって、気にする奴はそうそういねぇ...とか思ってやがるんだろう。

ったく、野盗らしいクソみてぇな考え方だ。

 

「...リリオ、事情は分かった。けど、人のものを盗るのは良くないな。...それに、コアとの同調は危険だ。もし失敗したら、どうす──」

「...生き残りの奴らの内、誰か一人でも成功すれば良かったんだろ。そいつが皆の敵を討てば、例え死んでも悔いは無い...そんなとこだろ?リリオ」

 

リリオは、無言で頷いた。...やっぱり、そういうことだったか。

ったく...何処の世界にも、年に不相応な覚悟を決めなきゃいけねぇ奴はいるもんだな。

だが、もうそんな真似はさせねぇ。

絶対に俺らが、ソイツらをぶっ潰してやる。

 

「...相手の、場所は?」

「双樹の丘に大きな洞窟がある。そこが奴らのアジトさ」

 

ここまで話を聞いていたミカが、口を開く。

あの目は...へっ、まるで俺らの作戦を聞いてる時みてぇだ。

やる気、だな。

それなら...じっとしちゃいられねぇ!

 

「レックス。ここお前の職場だったよな...船、借りてこれるか?」

「任せて。知り合いを当たってみる!」

「...え?」

 

意図は伝わったみたいで、レックスは早速近くの...恐らく仕事仲間の所へと向かい、話を始めてくれている。

戸惑うリリオを前にしながら...俺は、団員達に聞こえるように声を張り上げて、叫ぶ。

 

「行き先変更だ!次はグーラに行って、ソイツらをぶっ潰す!たがが野盗だからって油断すんな、気ぃ引き締めて行くぞォッ!」

「──お前...何なんだよ...?何でそこまで...」

「...俺は鉄華団団長、オルガ・イツカだ。お前らの敵、討ってきてやるよ」

 

そう言って俺は、手を差し出した。

リリオはそっと自分の手を出し...少し乱暴に、握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リリオ!戻ってき──っ、その人たちは?」

「心配すんな。お前らの敵じゃねぇよ」

「この人達...俺達の代わりに戦ってくれるって」

「ほ、本当に?」

 

レックスが借りてきてくれた船に乗って、グーラに戻ってきた俺達。

野盗との戦いに巻き込んだら危ねぇから、まずはリリオを仲間の元に送り届けた。

まあ当然ビビられたが、リリオがちゃんと説明してくれたお陰ですぐに誤解は解ける。

...だが。何だか焦ってるみたいだな。何かあったか?

 

「...って、それより!大変なんだリリオ、奴ら近々トリゴの街を襲うって!」

「それ本当か!?」

「うん、さっき奴らの仲間が街で話してるの聞いたんだ。多分下見に来てたんだと思う...領事がいなくなって統率が乱れてる今が狙い目だって言ってた」

 

...そりゃ思った以上にヤバいな。今度はあの大きな街をターゲットにして、色々奪っていってやろうってか...

俺達はトリゴじゃ一度追われた身だが、にしたって見過ごせる事じゃねぇ。ますます急がなきゃいけなくなってきたな。

 

「なるほど...確かに、襲撃するなら今かもしれませんね」

「あの領事に統率力があったのかは疑問だけどね」

 

ビャッコが納得する横で、ドライバーの二アが言葉を洩らす。

いやまあ、確かにアイツが部下を纏めたり出来そうかって言われれば、出来てなさそうだが...

...ん?待てよ?

領事がいなくなって、統率力が...だから今襲撃を...

 

「...なるほど。こりゃ余計に俺達がやらなきゃいけねぇな」

「そうじゃな──あの時の行動が、襲撃のきっかけを作ったようなものじゃ」

 

やっぱりそうだよな。

領事がいなくなった、その一番の原因は間違いなく俺らだ。

ああするしか無かったとはいえ、その結果こうなっちまってる。

なら...ケジメは俺らでつけなきゃいけねぇ。

 

「よし。リリオ達は街の衛兵に伝えに行ってくれ。オレ達は双樹の丘に行ってくるよ」

「伝えるって...野盗のこと?」

 

レックスが出発する準備を整えつつ、リリオ達にそう言う。

衛兵...?別にそんな奴ら呼ばねぇでも、俺らで何とでも出来るだろ。

 

「野盗の話をしたところで信じちゃくれないだろ。そうじゃなくって、オレ達のことさ。給水塔を壊した連中が双樹の丘に隠れてるって伝えるんだ」

「...レックス。どういうつもりだ?」

「まぁ...その内わかるよ。とにかく、頼んだぜっ」

 

...何だよ、今教えてくれねぇのかよ...まあ、いいけどよ。

レックスの事だ。何かしら良い考えがあるのは間違いない。

だったら...俺はそれを信じて進めばいい。

止まる理由も、止まってられる時間もねぇしな。

 

「...じゃ、話も済んだしそろそろ行くか!奴らの居場所は双樹の丘...だが、そこまでどうやって行くか...そうだニア、お前なら分かるか?」

「当たり前だろ?皆、アタシとビャッコについてきて!」

「よし分かった、頼りにしてるぜニア!」

 

ニアがビャッコに飛び乗り、真っ先に走り出す。

これならあっさり到着しそうだな...さぁ、全速力で行くぞぉっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──こいつは...」

 

草原を駆ける俺らの足は、ある場所で止まった。

そんな俺らの目の前に広がっていたのは...見覚えのある、竜巻みたいな風。

確か、これは...

 

「...オルガ。インヴィディアで見たのと同じやつだ」

「ミカの言う通りのようじゃな。間違いない、あの時と同じものじゃ」

 

ミカの言葉にじーさんが同調する。言われてみりゃあ、確かにそっくりだ。

...と、なると。この先を進むには...

 

「スザクの力なら、きっと...」

「だな...お前が同調してくれ、レックス」

「...うん。じゃあ、いくよ──」

 

レックスはスザクのコアクリスタルを取り出し、同調を開始する。

コアの放つ光がだんだんと強くなっていく。

そして、コアはブレイドを形作る。

...俺らの記憶に強く残る、スザクの姿を。

 

「──お前が俺の新たなドライバーか。随分と小さな奴に起こされたもんだが、まぁよろしく頼むわ」

 

だが、当然スザクは俺らの事を知らない。

仕方ねぇ事ではあるんだけどよ...ヴァンダムさんの事も忘れちまってると思うと...何か、な。

 

「...何だか、物言いがヴァンダムと似てるね」

「ヴァンダム?誰だそれは?」

「アンタの前のドライバーさ」

「俺の、前の...」

 

ほら、な。

初対面でいきなりやり合った事も、一緒にイーラの連中と戦った事も、全部忘れちまってるんだ。

なんで...ブレイドってこうなんだろうな。

もしこの世界に神なんてもんがいるんなら...一度聞いてみてぇもんだ。

 

「──スザク、頼みがあるんだ。この障害物、取り除けないかな?」

「...これか?この程度のもの、造作もない」

 

レックスの頼みにさらっと答えてみせたスザクは、羽ばたいて風を起こす。

その風はいとも容易く瘴気を打ち消し、俺らの進む道を開いた。

 

「すごいや...!あれだけのものをあっという間に」

「ふん、造作もないと言っただろう?」

「サンキュー、スザク!」

「......」

 

満面の笑みを浮かべながら礼を言うレックス。だが、言われた側のスザクは...何か考え事をしているようだった。

 

「スザク?」

「...一つ聞きたい。俺の前のドライバー、ヴァンダムという者...どんな人間だった?」

 

...そういう事か。

まあ、そういうのは気になるもんなのかもな。かつての自分がどんなドライバーと一緒にいたのか...俺だって、同じ立場だったら聞きたくなりそうだ。

...ま、俺は誰の事も忘れるつもりはねぇけどよ。

 

「──すごく強くて、強面だけどとっても優しくて...命の恩人なんだ」

「...そうだな。今俺らがここにいるのは、ヴァンダムさんが俺らを守ってくれたからだ」

 

思い出すのは、あの日の戦い。

生きて、生き延びて、楽園に行くんだ...ヴァンダムさんは、俺らにそう言った。

...そうだ。俺は必ず、『楽園』に辿り着くんだ。

新生鉄華団の皆と、一緒にな。

 

「そうか...ならば、俺はお前達を守れば良いんだな?」

「え?」

「その者の意志を継ぐことが、俺がすべきこと。俺は...ブレイドを、そういうものと考えている」

 

...そうか。

それが、ブレイド...なのかもな。

ドライバーが死ねばコアに戻り、記憶を失う。

だがそのコアは、確かに誰かに受け継がれる。

そして新たに生まれ変わったブレイドは、新しいドライバーの元で生きていく...かつてのドライバーの、意志を継いで。

そうやって大切なもんを未来に繋いで、前に進んでいく...そう考えると、死んだら何もかもお終いって訳でもねぇんだな。

 

「俺は鉄華団団長、オルガ・イツカだ。よろしくな、スザク」

「あぁ。ヴァンダムが守ったお前達を...今度は俺が、この力で守り抜こう」

 

...ヴァンダムさん。

俺らは絶対に辿り着く...絶対に止まらねぇからよ。

だから、その先で...俺らの事、見ててくれよ。

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