オルガブレイド   作:シン・ファリド

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中途半端なところで終わるわけにもいかないので文字数少な目になりました()


第1話 出逢い 第7節 「聖杯の目覚め」

「やるじゃねぇか、天の聖杯をそこまで扱えるとはな...」

 

レックスとホムラの攻撃の影響で、古代船は所々燃えている。

俺もレックス達の攻撃の余波に巻き込まれながらも、メツに攻撃を浴びせてる。ミカとの連携だって上々の出来だ。一方あのシンって奴は全然動く気配がないが...そんなに力を使っちゃいけねえ理由ってなんなんだ...?

レックスが剣を構えて突撃し、大きく振りかぶる。しかし...

 

「けどな...調子に乗るなよ、小僧!」

 

メツはそれを受け止め、逆にレックスの腹に思いっきり拳を叩き込んだ後に、投げ飛ばす。

 

「「レックス!」」

 

俺とホムラの声が重なる。だがザンテツの妨害が邪魔で中々助けにいけねえ。

 

「ビャッコ!」

「承知!」

 

メツがレックスに追撃するために走り出したのに合わせ、今まで見てるだけだったニアがビャッコに乗る。あいつも追撃に加わる気か...?そう思ったんだが。

 

「はぁっ!」

「何っ」

 

ビャッコが口から水の渦みたいなもんを放って足止めする。ザンテツが守りに入ったから大したダメージにはならなかったが、おかげで俺達も自由に動けるようになった。

ビャッコとニアは、倒れてるレックスを守るように立つ。

 

「何で邪魔をする?頭いかれてんのかニアァ!」

「いかれてんのはそっちだろ!?子供相手に!」

「お前...自分の立ち位置わかってんのか?」

「わかってるよ!けどね...」

「めんどうくせぇぞ、ニア!」

 

メツの奴、中々お怒りの様だな。まあ味方だと思ってる奴に邪魔されたんなら当然なのかもしれねぇが...ん?こっちに来て、どうしたミカ?

 

「返してもらうよ、これ。...頭がいかれてる、だって?俺の仲間を馬鹿にしないで」

 

ミカ、俺からメイスを半ば強引に奪って突撃していきやがった。相変わらず仲間想いのいい奴だなお前は。

...目が殺る気に満ちてやがる様に見えるのは気のせいだよな?怖ぇよミカ...

 

「これでっ!」

「もうそれは喰らわねぇよ!」

 

ミカが腕からバルバトスの武装のはずのワイヤークローを飛ばすが、メツは後ろに飛び退いてそれを避ける。ってかいつの間にそんなもん身につけたんだミカァ!

 

「はぁぁぁっ!」

 

ホムラが倒れたレックスの側に落ちていた剣を手にし、メツに切りかかる。メツはそれを受け止めたが、即座にホムラは空中でバック宙しながら後ろに退く。その着地の隙を狙ってメツが突っ込むが、そんな隙などないとばかりにメツの激しい連続攻撃に対応してみせる。

メツの攻撃を弾きつつ、時々反撃を織り交ぜる。

その反撃をメツも避けてみせ、攻撃の方法を回転斬りに切り替える。

ホムラもホムラで、それを避けきった後に炎を放って攻撃する。

そんなもん通じるかとばかりに防いでみせるメツだが、ホムラの狙いは炎を浴びせることじゃあねえみてえで、その炎の中から現れて奇襲を仕掛ける。しかしメツは、それさえも受け止める。なんだよ...俺達の混ざる隙ねえじゃねえか...

 

「寝起きにしちゃあいい太刀筋してるじゃねぇか。思い出すぜ、500年前を。"その姿"どういうつもりだ?やはり目指すか?楽園を?」

「それが!"私達"の望みです!」

「なら、させるわけにはいかねぇなっ!」

 

なんか意味深な会話してやがる。ってか、500年前ってどういうことだ!?厄祭戦よりも前じゃねえか!随分長生きだな...

色々考えてる間に、いつの間にかレックスも起き上がっていた。一応無事だったみたいで何よりだ。

 

ズズズズズ...

 

...と、そこに突然雲海からの浮上物。いや船だ。

ありゃあ...港に止まってたメツ達の船だな。そういえばミカがついてきてたって言ってたな...って!なんか砲門が出てきたぞ!?しかもいきなり撃ってきやがった!

 

「ホムラ、危ない!」

「させる訳ねえだろ!」

 

俺は咄嗟に飛び出し、砲撃を受け止めた。

辺りは爆風に包まれたし、俺は死んだが...何、他の奴が無事ならそれでいい!

 

「ホムラ、大丈夫?」

「ええ、私は」

「よかった、オルガは?」

「こんぐらいどうってことはねえ...!」

「そっか、ホムラを守ってくれてありがとな!」

 

レックスに感謝されたが、俺からしてみれば心配してくれることの方がよっぽどありがてぇぞぉ!なんせ今までの世界じゃ基本扱いがぞんざいだったからな!

 

ガシャンッ!

 

しかし、そんな俺らの気持ちなんて気にしねえとばかりに他の砲門がこっちを向く。まずいな...あんだけきたら直接のダメージはなくとも爆風で巻き込みかねないな。

 

「やめろぉっ!」

 

今度はさっきの俺みたいにニアとビャッコが飛び出してくる。そしてビャッコがバリアを作り出し、攻撃を止める。しかし数が多すぎる上、俺みたいにいくらでも耐えれる訳じゃねえ。やがて耐えきれずに、バリアを砕かれて爆風で飛ばされる。

 

「ニアッ!」

 

すぐさまレックスが走り出し、雲海に落ち掛けたニアの腕を掴む。そして上を向いてアンカーを発射し、壁にぶっさした。全く、ヒヤヒヤさせやがるな...

 

「しぶといな小僧、だがそれもここまでだぁ!」

 

メツの声と共に、砲門が方向調整を始める。

 

「させる訳ないだろ」

 

ミカがメイスを思い切ってぶん投げる。投げられたらメイスは二カ所ある砲門の片方に直撃して破壊したが、まだもう片方が残ってる。

 

「間に合うか...いや、間に合わせる」

 

コアから次のメイスを発生させるミカ。そして投げようとしたその瞬間、空から火球が飛んできて、砲撃を止める。

その火球を放った者がこっちに向かって飛んでくる。ん?あれって...

 

「じっちゃん!」

 

レックスが叫ぶ。やっぱりあいつだったか!

さしずめ心配から追いかけてきてくれたってとこか?

じーさんはレックスの声に頷いた後、空高く舞い上がる。

 

「シンよ...お前はまだ...そしてあれは...メツか!」

 

じーさんの声が聞こえたような気もしたが、気のせいか...?

 

「セイリュウ...いいだろう、受けて立つ」

 

何かを呟いた後、とうとうシンが剣に手をかける。

じーさんが再び火球を数発放つ。ってちょっと待て!一発こっちきたぞ!

 

ヴァァァァァァァァァァアァァァ!!!!

 

やっぱり庇ったりしなくても死は免れられないもんらしい。ちなみにシンの奴はその火球を居合い切りで一刀両断しやがった。すげぇ剣の腕前じゃねえか...

そんでじーさんの方はというと、その間にレックスの方に接近。どうやら乗せて逃げるつもりみたいだな。

 

「乗るんじゃレックス!」

 

その声を聞いたホムラはビャッコに乗り、そのビャッコもレックスを助けに船の側面を走り出す。

ビャッコが瞬時に二アを口で咥え、レックスの空いた手をホムラが掴む。

ちなみに俺は...ミカに引き摺られながら運ばれていた。急いでるとはいえ雑だぞミカァ!

ビャッコがじーさんの背中に飛び移った一瞬後に、ミカも飛び移る。

 

「ゆくぞ、落ちるなよ!」

「逃がすな、撃て!」

 

飛び去ろうとするじーさん。逃がすまいと砲撃の指示を出すメツ。

何発か食らっちまってるが、それでも耐えながら空を飛ぶじーさん。やるじゃねえかあんた...

 

 

 

 

 

 

 

「船首回頭!主砲用意!」

「無駄だ、射程外だ」

「ちっ、奴ら逃げ切りやがった...」

 

取り逃がしたことを残念そうにするメツ。

だが、こうなったのなら別の策を用意するのみだ。ならばここに長居は不要。

 

「戻るぞ」

「追わないのか?」

「目覚めたのなら、それで十分だ...後はヨシツネに探らせる」

「ふん...そういうことか...」

 

己の考えをメツに伝えて、モノケロスに戻る準備を始める。

 

 

 

 

───────今の今までいなかったのだから、彼等がこの世界に来ることはないと思っていたのだが...想定外だった。

 

「ふむ...何処か楽しそうにも聞こえるな」

 

───────そうだろうか?もしかしたら五百年ぶりの再開に、心が躍っているのかもしれないな。

 

「そうか...だが俺にとって奴等は敵だ。奴等が天の聖杯と共にいる限り、戦いを避けることは出来ないぞ」

 

───────分かっているさ。そして私と君は運命共同体...君が戦うというのなら、私も共に戦うさ。

 

「...ならば、この先も進み続けるとしよう」

 

───────あぁ。我々の、往く道をな。

 

 

 

 

 

            第

            一

            話

          

 

            出

            逢

            い




そういうわけで、次回から二話開幕です。
最後のは...そういうことです。ゼノシリーズといえば説明しないのがお約束なのでしません。っていうかそうじゃなくてもしません。

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