そんなわけでようやく第2話です。ようやく。
第2話 機械仕掛けの人形[ブレイド] 第1節 「小さなじーさん」
「...というわけで、命からがら逃げてきたのですも」
ここは、アヴァリティア商会会長室。
通信機のモニターに写るのは、無事逃げ切ることに成功したプニン。一方、その通信の相手は...
「というわけでじゃないも、お前はアホかも!どうしてきっちり死んでこないも!後で返金しろって言われたらどうするつもりも!」
アヴァリティア商会会長、バーンである。
「え?死んで...返金ってどういう...」
「ふん!こっちの話だも」
というのも、バーンはウズシオの乗組員の命の代金を既にイーラから受け取っていたのだ。だから、レックスに手付金だけであれだけの大金を渡すことができたという訳である。
「で、レックスとそのブレイドはどこ行ったんだも?」
「はい、レックス達を乗せた
「わからない、も?」
「はい、も...」
「で、逃げてきたも?」
「は、はいも...」
「んぐもも...言い訳は聞きたくないも!とっとと戻ってこいも、次の仕事が山盛りになってるも!」
そう言い切ったバーンはそのまま通信を切る。
「ももも...ウズシオにも保険をかけてたってのにこれじゃ大損だも!」
ウズシオも沈めて保険金を頂く算段でいたバーン。彼はノポンの豪商として名が知れ渡っているが、裏ではこういった事にも手を染めているのだった。
「それにしても...トルネア海から南ということは...今の時期だとグーラに向かった可能性があるも。グーラのモーフ領事を呼び出せも!」
「わかりました。少々お待ちください」
お付きの女性が通信機を触り、モーフ、と呼ばれた男との通信を繋ぐ。
「これはこれはバーン会長、先だっては大変お世話になりました。くずもののコアクリスタルも、アヴァリティアブランドを付ければ一級品!それを我がスペルビア本国に売り込むお手並み、さすがはバーン会長、恐れ入ります」
「気持ち悪いおべんちゃらはいらないも。ていうか、通信でコアクリスタルの話するとか、お前もアホかも?
「こ、これはっ。す、すみません...」
「まあ、それよりいい話があるも」
「え?いい話とは?」
「それはも...」
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「ぐっ!ううっ...」
「うーん...」
俺とレックスの目が覚める。ここは...どこだ?
「ホ...ムラ...?」
「良かった。レックス、どこか具合悪くありません?」
「具合...あぁ、たぶん大丈夫...ここは?」
「わかりません。どこかの
お、ホムラも一緒だったか」
俺は起き上がって、レックスとホムラの声のする方を向いた。向いたんだが...
「なんだよ...膝枕してもらってんじゃねえか...変わってくれよ...」
そう、レックスの奴、ホムラに膝枕してもらってやがったんだ!
「ダメだよオルガ。それはダメだ」
「ん?おぉ、ミカじゃねえか。先に起きてたのか」
自然な流れで止められた。まあ、当然か...
「あ、三日月さん。皆さんは?」
「遠くにいって迷っても不味いからすぐ近くしか見てないけど、ニアもビャッコも竜のじーさんもいなかった」
「ニア、ビャッコ...じっちゃん...あっ...!」
レックスが、さっきまで何があったのかを思い出して飛び起きる。
「俺も探さないと!きっとどこかに流れ着いてる筈だ...!」
「俺も行くぞぉ!」
「レックスとオルガが起きたから、全員で手分けして探しに行こう」
どうやらミカは、先に皆を探しに行ってくれていたらしい。その間ホムラが、俺らの様子を見ていてくれたみたいだ。
「あ、あれって...じっちゃん!」
森の中を散策していると、じーさんが倒れているのを見つける。すぐさま俺達は駆け寄っていく。
「無事じゃったか、レックス」
そう呟くじーさんの身体は、ボロボロだった...。
「くそっ!守んのは俺の仕事だってのに...!」
「待ってて、今傷薬を...」
「お前の薬なんぞ、千人分あっても足りんわい...」
傷薬を出そうとするレックスを止めるじーさんの声は、まるでもうすぐ死ぬ奴みたいだった...
「これもまた運命、泣くなレックス...」
「無理なこと、言うなよ...」
当然だ。このじーさんはレックスにとっちゃ親同然だ。それが死のうってのに、泣かない訳がねえ。
「別れは一瞬。やがてエーテルの導く先で、また巡り会う...」
そう言ったじーさんの全身が光に包まれる。あんた...消えるのか...!?
「お前と過ごした日々、楽しかったぞ。また会おう、レックス...」
「じっちゃん...!」
「じーさん...!」
消えていくじーさんを見て、俺達はただ叫ぶしかできなかった。俺達を守って、こいつは死んだ...その事実に、俺は己の無力さを実感した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「くそっ、くそぉっ...!」
泣き叫ぶレックス。地面に拳を打ち付ける俺。
手で口を覆い、悲しげな顔をするホムラ。ミカも守ってもらった恩を感じてるのか、僅かながら顔が悲しさで歪む。
「泣くなと言うとるじゃろうが、レックス」
...は?
「うっうっ、うわぁぁぁぁぁ...!!」
「レックス」
なんだこの、ついさっきまで聞いてたような聞いてなかったような声は...?
「じっちゃーーーーんっ!!」
「レーーックスッ!!!」
声のする方を俺達が見ると、そこには...
さっき消えた筈のじーさん...をデフォルメしたような謎の生物がいた。
何度か手で目をこすってみるが、そいつは消えない。幻覚じゃあないらしい。
「「「えええっ!!??」」」
「...何これ」
俺達の叫び声がハモる。ミカも呆気にとられてるみたいだ。
「じ、じっちゃん...なのか」
「嘘...」
長年一緒にいたレックスでも、これがじーさんだとは分からねえらしい。初めてなった姿なのか...?
「当たり前じゃろうが、見てわからんか?」
「えっと...わからないです」
「わかるわけねえじゃねえか...」
「わかるわけないって」
「...何これ」
じーさんはさも当然わかるだろと言わんばかりだが、俺もホムラも、レックスだろうとわかるわけなかった。ミカはさっきと同じセリフを放つが...心なしか少し目が冷たくなってる気がするな。
「ま、まぁまぁ。今からちゃーんと説明するわい」
「ふーん」
ミカの視線が若干怖かったのか、焦りながら説明を始めようとするじーさん。さてはあれだな。本気で心配したのに全然大丈夫そうだったから怒ってるなミカ。
「...というわけで、全身の代謝を最大限にして身体機能を維持した結果、幼生体にまで退行してしまったんじゃな」
「してしまったんじゃなっつったって...正直ピンと来ませんねぇ...」
「随分便利なもんなんだな、
レックスも若干怒ってるっぽいな、これ。
「全ての
「理屈は分かったし、もういいよ。喋らなくて」
「...もしかして、レックスも三日月も怒っとる?」
「当たり前じゃん」
「俺は怒ってるわけじゃないけど...ただわんわん泣いてた自分があほらしくなっただけだよ」
ミカを怒らせると怖いぞぉ...?何度か殺されたこともあるしな...あとレックス、それについては同感だ。
「なんじゃあ、やっぱり怒っとるじゃないか」
「...で、いつ元に戻れんの?」
俺の気になってたことをレックスが先に聞いてくれた。すぐに戻れんなら乗せてもらえれば移動手段に困ることはねえが...
「そうさのう...300年もあれば元通りじゃ」
「さ、さんびゃくねんっ!?オレ死んじゃってるぞ!?」
「俺も寿命は流石に生き返れねえぞぉ!」
「うむ...まぁ、そういうことになるかのぉ」
「どーすんだよ、家!オレ、もしかして宿無し?」
あ、そういやレックスはじーさんの背中の上で暮らしてるんだったな...。
「これを機に一人暮らしを始めるとか」
「家賃かかるじゃないか」
「けちくさいのぉ...」
「お金は大事だから仕方ねえぞぉ...」
「ほら、オルガだってこう言ってる。あと、現実的って言ってくれ」
「でも、無事でよかったよ...っと、のんびりもしてられない。ニア達を探さなきゃ」
「ニア?一緒におったあのドライバーとブレイドのことかの?」
「あぁ、オルガ達と一緒に俺達を助けてくれたんだ。じっちゃん、何か覚えてない?」
「んー...ここに来るまでの間に幾度となく木々にぶつかったからの...その時に落っこちたのかもしれん」
「うーん、それだけじゃ探しようがないな...ってあれ、三日月もいないぞ!?」
何!?って...ほんとにいねえじゃねえか!いつの間に...?
「あいつ、どこ行っ」ドォンッ!
俺の台詞は謎の音で掻き消された。もしかして今の...ミカか!?
「今の、ミカの仕業かもしれねえ。いくぞぉ!」
「はいっ」
「あ、この姿で急いで飛ぶの難しいんじゃ、待っとくれ」
「はぁ...じゃあとりあえずここに入ってて!」
「おほっ、こりゃ楽ちんじゃわい」
サルベージスーツのヘルメットにじーさんを入れると、レックスも俺の後を追って走り出した。
[数分前...]
「お嬢様、ここは私に任せて...」
「アンタ一人、置いてける訳ないだろ!」
遠くの方から聞こえる声。間違いなくニアの声だ。近くにいる。
オルガ達は置いてきたけど...まあ、多分大丈夫でしょ。
...ん、どうやらニア、モンスターと戦ってるみたいだな。身体は大きいけど数は1...横から攻めて一気に片を付けよう。
そのモンスターはニア達の方だけ見て、俺のいる方向は警戒していない。これなら...一瞬で殺しきれる。
...じゃあ、行くかぁ!!
──────────────────────
...まずい、な。
アタシとビャッコだけでこんなデカい奴をやれるのか...?
ビャッコが自分を囮にアタシを逃がそうとしてくれているけど、一人で逃げるわけにはいかない。
どうすれば...
「お嬢様、敵の攻撃が来ます!」
「っ!しまっ...!」
相手に向かって飛びかかる攻撃。それをするモンスターは結構多いけど、こいつの身体がデカいから避けきれそうもない...このままじゃ...!
ドォンッ!
...え?
モンスターのでっかい横っ腹に、でっかい武器を叩き込んでモンスターを吹っ飛ばしたのは...三日月だった。
三日月はそのまま古代船でモンスターにやったのと同じ様に、武器の先端を開いて突きつけ、閉じて押し潰し、モンスターを仕留めた。
「アンタ...助けてくれたのか?ありがとう」
「私からも...手助け、感謝します。」
「別に?普通でしょ」
ウズシオで話したときから思ってたけど、こいつ...アタシの知ってる人間と全然違う。異世界から来たって言ってたし...あいつの世界じゃあれが普通なのかな...?
「お、いたいた。おーい、ミカァ!やっぱお前だったか!」
オルガって言ったっけ、あのよく死ぬ人。さっきの爆音を聞きつけたからなのか、こっちに近付いてくる。
その後ろにレックスと天の聖杯...ホムラだっけ?がついてきてる。あとよく見たら、レックスのヘルメットの中に妙な生物が住み着いていた。
「アンタらも無事だったんだね。で、その見慣れない生き物は何?」
「あー...実はちょっと色々あってね...」
「ん?どうかしたのか?」
「ま、ゆっくり休みながら話すとしようぜ」