まどほむ百合短編集   作:夜嶺

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さや仁推しです。


長い旅の末に……

「いい天気だね、ほむらちゃん」

 

「……ええ」

 

青い空がどこまでも澄み渡っていた。

 

そんな空の下、私はほむらちゃんと静かな公園で二人っきりでいる。

 

「まどか……足は痺れてない?」

 

「私は大丈夫だから、このままでいいよ」

 

「ありがとう……」

 

ほむらちゃんは私の膝の上に乗っかり、まるで幼い子供のように私の胸に顔を埋めていた。

 

「貴方はいい匂いがする……とても幸せな優しい匂いね……」

 

ワルプルギスの夜が倒されて戦いが終わった時、今まで自分の心を押さえつけてた代償なのか、ほむらちゃんの心は壊れてしまった。

 

「ほむらちゃんもいい匂いがするよ」

 

今のほむらちゃんを例えるなら、母親に甘える小さな子供。

 

私の膝に乗ってきて胸に顔を埋めたと思えば、そのまま何時間も喋らないまま動かなくなったり、たまに喋ったと思えばどこか現実離れした言葉を喋る。

 

「私は心も身体も血で濡れた……汚い人間よ……貴方と一緒にいるなんて本来なら許されないのに……」

 

「それは言わない約束だよ?私はほむらちゃんと一緒に居たいんだからね」

 

それに自分のことを酷く罵倒したりもするし、常に虚ろな目で返事が無い時もあった。

 

「また貴方は泣いてるの……?」

 

「……えっ?」

 

「貴方の悲鳴が……貴方の叫びが…………!」

 

そう言うと、ほむらちゃんは急に身体を素早く起こして私の膝から降りようとする。

 

もし放っておいたら、そこら辺にいる一般人が私を殺そうとする敵と錯覚して無差別に殺し始めるかもしれないから。

 

「ま、待って!私は大丈夫だよ……!!」

 

ほむらちゃんが膝から降りようとするのを私は必死に抱きしめる事で止めようとする。

 

「貴方の声が聞こえる……貴方の助けを呼ぶ声が……」

 

「私は大丈夫……だから……!!」

 

私は暴れるほむらちゃんに必死にしがみつくも、物凄い力で逆に私が押さえつけられそうになる。

 

こうなった時のほむらちゃんは簡単には止められない、だからこういう時は早く安心させなければいけなかった。

 

「……んっ……はぁっ…………」

 

どうすればほむらちゃんが安心するのか、答えは簡単だった。

 

「……私は絶対にほむらちゃんから離れないよ」

 

ほむらちゃんに私の存在を思いっきり知らしめればいい。

 

「んっ……」

 

再び深い口付けをする。

 

私の唇がほむらちゃんの柔らかい唇に触れ合った瞬間、頭が何も働かなくなる。

 

ずっとこのままでいたい、ずっとほむらちゃんとキスをしていたくなった。

 

「あっ、ほむらちゃん!?」

 

でもほむらちゃんの身体から急に力が抜けて、ガクッと私に倒れこんだ。

 

「早く……ほむらちゃんの家に……」

 

おぼつかない足取りになるも、私は何とかほむらちゃんを背中に抱えて歩き出す。

 

正直、こんな状態のほむらちゃんを誰かに見せるわけにはいかなかった。

 

もし見せたらほむらちゃんが変な目で見られる。同情ではなく腫れものを見るかのような醜い目で。

 

それだけは絶対に許せなかった。

 

誰もほむらちゃんの事を理解しようともせず、一方的に軽蔑の目で見るなんて許せない。

 

 

 

 

 

 

 

「…………まどか」

 

「ほむらちゃん!気が付いたんだね!」

 

女の子が住んでるとは思えない、とても殺風景な部屋。

 

「……また迷惑をかけたようね」

 

「迷惑じゃないよ!ほむらちゃんは私のために……」

 

ほむらちゃんは私の為にずっと一人て戦ってきた。

 

みんなに裏切られながら、みんなに傷つけられながら、心も身体もボロボロになりながら私を救ってくれた。

 

でも言い換えれば、私がほむらちゃんを壊してしまったという事になる。

 

私がわがままじゃなければ、ほむらちゃんは傷つく事は無かった。

 

「私の事なんか放っておいたらいいわ、これ以上は貴方を傷つけるだけだから」

 

何かとほむらちゃんは自虐的になる事が多い。

 

「私はほむらちゃんが好きだから……だから好きな人が苦しんでいたら私も苦しいよ……」

 

それに、ずっと戦い続けた代償として、ほむらちゃんは幻覚を見たり幻聴を聞いたりするようにもなっていた。

 

寝ている時でも悪夢を見るらしくて毎日のようにうなされている。

 

「ずっと聞こえるのよ……貴方の悲鳴が……助けてって……」

 

でも不思議と私は弱ってるほむらちゃんを見て、欲情していた。

 

こんなにもほむらちゃんは傷付いてるのに、私は最低な事を……。

 

「……ほむらちゃんは辛いことを溜め込み過ぎてるんだよ」

 

ほむらちゃんが弱ってるのにつけ込んで、私は自分の快楽を満たそうとしていた。

 

私だって、ほむらちゃんにずっと抱きしめられていれば変な気分になったりもする。

 

「一人で何もかも抱え込み過ぎちゃうから、変な物を見たり聞いたりしちゃうと思うの」

 

ゆっくりと私はほむらちゃんの両頬に手を添えた。

 

「だから溜め込んだ物を吐き出そっか……」

 

「まどか……」

 

そのまま私はゆっくりとベッドに倒れこんで、ほむらちゃんに押し倒されているような姿勢になる。

 

「スッキリするまで……私をメチャクチャにしたらいいと思うな……」

 

荒治療かもしれないけど、ほむらちゃんは嫌な事も悲しい事も一人で溜め込んでいるから心が壊れているんだと思う。

 

「私はもう自分を抑えられない……貴方を傷付けるだけだから……」

 

だから何もかも忘れるぐらいに吐き出させれば、きっと少しはよくなるに違いないと思った。

 

「私ね、ほむらちゃんになら何をされても嫌だって思わないの」

 

それに私自身も溜まった欲望を解放したい。

 

「だから……いいよ…………?」

 

「まどか…………」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー私の隣には、何も衣服を纏わないまどかがいる。

 

安らかな寝顔はとても可愛らしく、とても愛しい。

 

「ワルプルギスの夜という鹿目まどかと契約できる最大のチャンスを潰されたし、もう君には負けを認めるよ」

 

そんな時、もはや腐れ縁とも言える存在インキュベーターが現れた。

 

「愚かなものね。最初から負けを認めていれば無駄な時間を使わずに済んだのに」

 

「全く……それはそうと、ワルプルギスの夜との戦いが終わってからの君の行動は理解しがたいね。急におかしな言動をとっていたのは何故だい?」

 

しばらく私の馬鹿みたいな行動を監視していたのか、インキュベーターは言った。

 

「お前たち……いえこの世の誰にも理解できないでしょうね」

 

「つまり?」

 

わざわざ馬鹿みたいな行動を取っていたのは理由がある。誰にも理解されるはずのない、私にしか分からない理由。

 

「この子には私だけを見て私だけの事を考えて生きてほしい。家族や友人のことなど考えず、私だけの為に生きててほしい」

 

そう、私は鹿目まどかという女の子を独り占めにしたかった。

 

その姿は私だけが見て、その声は私だけが聞くのを許される。

 

「言い換えるなら、この子は私だけが独占していたいのよ」

 

他の誰かがまどかに近付くのも許さない。この子はずっと私だけを見ていてほしい。

 

「君は……」

 

「長い戦いの末、私は究極の感情へ辿り着いた。どんな希望よりも遥かに強い力、どんな絶望も勝つ絶対的な力……」

 

「愛よ」

 

「君ほど猟奇的な少女は中々いないね」

 

感情を持たないはずのインキュベーターでも私の愛の異常性を見出している。

 

「簡単だったわ。キチガイな女を演じるだけで、この子は自然と私だけを見てくれるようになるのだから」

 

別に私は自分の愛が正常だと言う気はない。愛なんて感情は人それぞれ違って、それぞれが理解できない愚かな感情なのだから。

 

「やれやれ。人類は……いや君の感情は少し危険すぎる」

 

「何とでも言いなさい」

 

隣で寝ているまどかの頬に手を添える。

 

この子が私のものになるなら、私はどんな手段でも使う。

 

思えば、私はこの子の全てを手に入れる為に戦ってきたのかもしれない。

 

髪の毛一本から爪先までの全てを私だけの物に。

 

「もう貴方は二度と離さない……ずっと私だけのものよ……まどか…………」

 

 

 

 

ーENDー




たまにはいいじゃない、こういうのあっても……!
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