「で?いつまでそうやってるつもり?」
ずっと土下座をしているヘスティアにヘファイストスは問いかける。
「頼むよヘファイストス!ベル君のために武器を作ってくれ!」
ヘスティアの必死な頼みにヘファイストスはため息をついた。
「どうしてそこまでするの?」
「ベル君の力になりたいんだ!あの子は一つの目標のに向かって高く険しい道のりを走り出そうとしている!それは命も落とすかもしれない危険な道のりだ。だからあの子を手助けしてやれる力が欲しい。あの子が自分の道を切り開ける道が!」
ヘスティアは続ける。
「ボクはあの子に助けられてばっかりだ。それなのにあの子にはまだ何もしてやれてない...嫌なんだ、何もしてやれない自分が...だから頼むヘファイストス!」
「変わろうとしてる、か。ベルだけじゃなくてあんたもなのね...」
ヘファイストスは微笑みながら答えた。
「いいわ、作ってあげる。でも、ちゃんと対価は支払ってもらうわよ?」
「ありがとうヘファイストス!もちろんだよ、たとえどれだけ時間がかかっても必ず払うよ!」
ヘスティアの嬉しそうな顔にヘファイストスも思わず嬉しそうな顔をした。
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「おーいそこの白髪頭と美青年ちょっと待つニャー!」
「「え?」」
街中を歩いていたら急に豊穣の女主人の店員に呼び止められた。
「えっと、何かご用ですか?」
「この財布をシルに届けるニャー」
「急になんだそれ...」
「アーニャ、それでは説明不足です。クラネルさんと悠斗さんが困っています」
「リューはアホだニャ。店番サボって怪物祭に出かけたシルに忘れた財布を届けるなんて、一々言わなくても分かることニャ」
「(分かるわけねえだろこの猫娘...)」
悠斗は心の中で突っ込んだがあえて口にはしない。
「そういうわけです。もちろん店番をサボったわけではありません。休暇をもらってでの怪物祭の見学です。クラネルさん、悠斗さん申し訳ありませんがよろしくお願いします」
「オーケーオーケー、それくらい任せてください」
悠斗はついリューの頭をポンポンとしてしまい、リューは顔を赤くしながら払いのけてしまった。
「あ、やべ...すいません。エルフは異性との接触は嫌な種族でしたっけ...」
「い、いえ...ちょっと驚きましたが大丈夫です。すみません払いのけてしまって...」
「いやいや、忘れてた俺が悪いんですから気にしないでください」
笑顔で悠斗は答えた。
「おやおや~?リューにもとうとう春が来たのかニャ~?ニャーは嬉しく思...ふぎゃ!」
言い終わる前にリューはアーニャにパンチを食らわせた。
「あ、あの~リューさん?」
「私のことは気になさらずに!さあ早く行ってください!」
「お、おう...じゃあ行ってくる...」
リューの得体の知れない威圧感に悠斗とベルは引きつった顔をしながら怪物祭に向かった。
「何をするニャリュー!図星を突かれたからと言って...ふぎゃ!」
「まだ言いますか?」
「す、すみませんニャ...」
「はあ...怖かったですね悠斗さん」
「ああ。あの人絶対冒険者だったろ...しかも高レベルの...」
改めて女性の恐ろしさを思い知らされた悠斗とベルだった。
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「貴方がいいわねえ」
とある場所でとあるモンスターにフレイヤが言った。
「オッタル」
「はっ」
大柄の猪人が現れた。【猛者】オッタル。フレイヤ・ファミリアの現団長でレベルは最高ランクの7。
個人の戦闘力ではロキ・ファミリアの精鋭達を凌駕し、彼らがまとめて相手にしたところでようやく渡り合えるといわれてるほどの圧倒的力を持つオラリオ最強の冒険者。
「この子を解放するから貴方の方も準備をお願いね?」
「もう1人の男、神津悠斗はいかがいたしましょう」
「そうねえ。あの子に邪魔をされてはベルの成長を見られないし...丁度いい機会だからあの子を足止めしつつ試してきてちょうだい」
「御意。しかし、あの男は本気の片鱗も見せず【凶狼】を圧倒した実力者。そう長くは足止めできないことをご了承ください」
「あら、貴方がそんなことを言うなんて初めてじゃない?ふふふ、でも貴方も随分と楽しそうな顔をしてるわね」
「お戯れを...」
フレイヤのからかいに少したじろいでしまったオッタルだった。
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「さーてついたのは良いけどすんげえ人だかりだなあ...」
「これじゃあシルさん見つけられないですよ...」
さすが年に一度開催される大規模な人気の祭典。人の多さも尋常ではない。
「仕方ねえ...ここは手分けして探そう。2時間後にここに集合ということにしようぜ?」
「は、はいわかりました!」
2人は分かれてシルの探索に向かった。
「やれやれ、人が多すぎて困るな...何だ?」
ドーン!!
大きな音と人の悲鳴が聞こえてくる。
「これは何かのイベント?...いや、それにしては様子がおかしい!くそ、ベルと分かれたのは失敗だったか...」
何か胸騒ぎがする悠斗はただ事じゃないことを確信して走り出した。
「あ、あなたはもしかして神津悠斗さん!?」
突然声をかけられて振り向くとエイナがいた。
「エイナさん!一体何があったんですか!?」
「そ、それが突然モンスターが街中で暴れだして!普段は檻の中に閉じ込められてて街中に出ることはあり得ないはずなんですが...」
「(檻の中にいるはずのモンスターが突然街中で暴れだす...普通ならありえない...誰かが意図的にやったと考えるべきだな)」
「分かりました。エイナさんはこのまま住人たちを安全な場所に避難させてください。俺はこのままモンスターの討伐に向かいます」
「む、無茶ですよ!逃げ出したモンスターの中にはシルバーバックのような中層モンスターだっているんです!レベル1の貴方では勝てるはずが...」
「大丈夫ですよ、いざとなったら逃げますから。さ、無駄に口論してる場合じゃないです。早く行動しましょう」
「...分かりました。でもいいですか?生き残ることが第一です。危なくなったら必ず逃げること。これが守れずに大けがでもしたら貴方には私の特別講義6時間スペシャルを強制的に受けていただきます!」
「うげ...それは嫌だな...了解です。ではまた!」
エイナの講義に軽くトラウマがある悠斗は青ざめてそれを約束し、再び走り出した。
「どけえ雑魚ども!」
ズバン!ドガ!ザシュ!
次々とモンスターを切り捨てていく悠斗だったがいかんせん数が多い。
「ちっ。これじゃベルと合流できねえ...大通りはガネーシャ・ファミリアあたりに任せて裏の通りを進むか」
回り道にはなるが、人とモンスターが少ない裏通りを通ることにした。
「よし、これならベルと合流できそうだな.........上か!!?」
ドゴーーーーーン!!!!!
突然上方からの急襲に間一発で避けた。
「よく今のを避けたな」
声がした方を向くとそこには2m以上の高身長で大剣を背負った猪人の男が立っていた。
「!!お、お前は!【猛者】!!」
「そうだ。フレイヤ・ファミリア団長、【猛者】オッタルだ」
「そうかい。で?その最強ファミリアの団長さんが"ただの下級冒険者"相手に一体何の用事だ?」
「ヘスティア・ファミリア所属、神津悠斗。貴様があの方の寵愛を受けるに相応しいかどうかを見極める!」
「(寵愛?何言ってんだこいつ)ああん?おいおい今どんな状況か分かってるのか?それに俺はレベル1だ。とても最強ファミリアに試されるレベルじゃないんだが?」
「今の状況など知ったことではない。あの方が決めになったことを俺はただ遂行するだけだ」
「(ということはつまり、今回の騒動の首謀者はこいつらか!?自分たちの目的のためなら他人の迷惑も厭わないその考え、気に入らんな...)」
「それに、貴様がただのレベル1じゃないこともすでに調査済みだ」
「は?」
一瞬悠斗はぎょっとしてしまう。
「貴様がレベル1というのは事実だろうが、そのレベルには似つかわしくないほどの強さがある。あの【凶狼】を圧倒していたほどだ。おまけに俺の先ほどの一撃も難なくかわした。これだけ揃っていて"ただの下級冒険者"で片付けるのはさすがに苦しいだろう」
「なん...だと...?」
まさかもうそこまで調べられていたかと悠斗は落ち込んでしまう。
「お喋りは終わりだ...行くぞ」
そう言った瞬間にオッタルは悠斗の懐に斬りかかった。
「くっ!」
ガキィン!!
何とかそれをガードする悠斗。
「少しはやるな。ではこれならどうだ」
その体型と剣の大きさからは想像できないほどの速さがある剣のラッシュ攻撃。
ベートよりもさらに速く重い、【猛者】の斬撃である。
キンキンキンキンキンキン!!!
「(さすがオラリオ最強と呼ばれてるだけあって、手加減しながらもあの犬コロよりも速くて重い攻撃だ...だが師匠に比べれば!!【稲妻斬り】)」
バチバチバチ!!!ブン!!!
「むっ!」
悠斗は速い斬撃の中にわずかな隙を見て反撃する。
オッタルも完全には避けきれず、体に切り傷と焦げ跡が残った。
「(ちっ!さすがに犬コロのように簡単にはダメージは与えられねえか...)」
「(まさか魔法まで使えるとはな...)ふっ。面白い...ならば俺も少し本気を出そう!」
ゴォ!っとオッタルの闘気一気に膨れ上がる。
「来るかオラリオ最強...」
「行くぞ」
ドン!!
キィーーーン!!!
「(クソ、バカでかい図体してなんて速さだよ!)」
先ほどよりも速い斬撃を受けてできた悠斗の隙を突き
「ふん!」
ドゴ!
オッタルの渾身の蹴りが悠斗に炸裂する。
「ぐっ!」
「まだ終わらんぞ...ぬうん!」
ドガガガガ!!ズバン!!
すかさずオッタルの打撃と斬撃を数発撃ち込んだ。
悠斗は回避と防御ができず直撃した。
「がは!!」
バゴーン!!!
そのまま悠斗は壁に吹き飛ばされた。
「痛ててて...ったく化け物が...」
耐久力もある悠斗は今の連撃でそほどダメージは受けておらず、そのまま立ち上がる。
「ほう...俺の連撃を受けて立っていられるとはな。貴様は実力だけ見れば明らかにレベル6以上…やはりあの方の目に狂いはなかったようだ」
「何上から目線で勝手なこと抜かしてんだよ?さすがにもうキレたぜ。てめえにはとっておきの鬼道を食らわせてやるよ!【縛道の六十一 六杖光牢】」
「何!?」
六つの帯状の光が胴を囲うように突き刺さりオッタルの動きを奪った。
「(ぬ...体が動かん!?何だこの技は...俺の力をしても解けないのか!)」
「続けて食らえや化け物!【破道の九十 黒棺】」
黒い直方体のような棺がオッタルの周りに出現し、一気に潰しにかかった。
「な、なんだこれは...ぐうう...うおおおお!!!」
グシャ!っと嫌な音が鳴り、
オッタルはそのまま全身の骨ごと潰されたが、かろうじて意識があった。
「とんでもねえ化け物だな。これを食らって立っていられる奴はそうはいないぜ...」
「はあはあ、まさか俺がここまで追い詰められるとは...いいぞ神津悠斗。貴様ならあの方の寵愛を受ける資格がある」
「冗談じゃねえ、さっさと帰ってフレイヤとやらに伝えな。あほか、こんな痛いあんたの愛なんてごめん被るってな!」
「ふっ...いいだろう。今回は俺の負けだ。神津悠斗、貴様と再び剣を交える日を楽しみにしているぞ」
そう満足そうに言い、オッタルはその場から去っていった。
「痛てて...ったくあの化け物め、とんでもない奴に目をつけられたな。いかんな、今回は鬼道で勝ったようなもんだが実力で勝たんと...」
悠斗は深くため息をついてそのままベルの探索を再開した。