捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 #9

 渡辺は高海の方にちらりと視線をやってから、じぃっと俺の目を見た。何となくだが、その視線からはあまり好意的な話は期待できそうもなかった。

 彼女は一歩距離を詰め、口を開く。

 

「千歌ちゃんと仲良いんですね」

「……普通、じゃないか?」

「好きなんですか?」

「違う。てかいきなり過ぎんだろ。どこをどう見たらそう見えるんだよ」

「……目」

「この腐った目はデフォなんだよ。あんま気にすんな」

「…………」

 

 渡辺は黙ったかと思えば、急に距離を詰め、俺の目をじっと覗き込んできた。

 

「……何だよ」

「…………」

 

 つーか顔近いんだけど!?えっ、何?この子、俺の事好きなの!?

 ついドギマギしていると、渡辺はクスッと笑いながら顔を離した。

 

「ふふっ、目つきは確かに悪いけど、一応悪い人じゃなさそうですね。……一応」

 

 やたら『一応』という単語を強調しなくても悪い人じゃないんだけどね?

 とはいえ、目つきが悪いのは事実なので、特に反論はせず、話題を変えた。

 

「ライブ……大丈夫そうなのか?」

「う~ん、さすがに体育館いっぱいは難しいですね~。比企谷さんもお友達連れてきてくださいよ」

「いや、引っ越してきたばかりの奴に無茶言うなよ……」

「あはは……確かに。しかも千葉からじゃ前の学校の友達も呼びづらいですもんね」

「…………」

 

 こういう時に呼べる友達がいるかどうかについては黙っておこう。

 すると、少し離れた場所から視線を感じた。

 

「あれっ?千歌ちゃん、どうしたの?」

「……高海」

 

 目を向けると、いつの間にかチラシを配り終えたらしい高海がこちらを無表情でじぃっと見つめていた……かと思えば、何故か不思議そうに首を傾げている。どうしたんだ、こいつ。

 

「千歌ちゃん?」

「えっ?あ……もうチラシ配り終わったよ!」

 

 どうやら渡辺と話している内に、もう終わっていたらしい。向こうのベンチでは、疲れきった桜内が休んでいた。だいぶ気力と体力を削られたらしい。

 渡辺は高海に爽やかな笑顔を向けた。

 

「そっか。お疲れ様♪」

「えへへ、優しい人ばかりで助かったよ~」

「……お疲れさん」

 

 労いの言葉をかけると、高海は距離を詰めてきた。

 

「はいっ、ありがとうございます!」

「あ、ああ……」

 

 本当に人懐っこい子犬みたいな奴だ……あと変な勘違いをさせて、男子を死地に向かわせそう……。

 すると、渡辺が高海の肩をとんとん叩き、自分の方を向かせた。

 

「千歌ちゃん。そろそろ梨子ちゃんを連れて旅館に戻ろっか。曲作りも進めなきゃだし」

「あっ、そだね。じゃあ、比企谷さん、私達もう行きますね。ありがとうございました!」

「おう」

 

 桜内に声をかけ、遠ざかるその背中を少しだけ眺めてから、俺はそのまま本屋へ向かった。

 渡辺から何か勘違いされてる部分もあるが……まあいいだろう。そのうち自分で気づくだろうし。

 

 *******

 

「…………」

「千歌ちゃん、どうしたの?ぼーっとして」

「え?な、何でもないよ!うんっ」

 

 さっき……何で変な感じがしたんだろ?気のせい、だよね?

 

 

 

 

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