捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
ライブ当日。天気は生憎の雨だった。
とはいえ、会場は体育館なので、ライブは予定通り開催される。
俺は傘を差し、普段とは違う、どんより暗い内浦の町の風景を眺めながら、ゆっくりと歩いた。
さて、高海達にとって記念すべき日だが、果たしてどのくらいの人があつまるのだろうか。
「あら、比企谷君?」
「……どうも」
声をかけられただけで高海長女だとわかるあたり、俺も少しはこの街に慣れてきたらしい。
目を向けると、彼女は赤い傘を差し、こちらに穏やかな笑顔を向けていた。
「おはよう。今から千歌ちゃん達のライブ?」
「ええ、まあ……」
「ふふっ、そんな心配そうな顔しなくても大丈夫よ」
「?」
「この町は皆あったかいから」
「……そうですか」
そう言いながら妹の事を思い浮かべるその眼差しは、とても優しく尊かった。
「今日は観に行かないんですか?」
「ええ。今日は旅館のほうが忙しくなるから。美渡は気が向いたらって言ってたけど……」
心底残念そうに言うその表情からして、何だかんだ応援はしていたのだろう。
すると、彼女はそっと俺の肩に手を置いた。
「だから今日は私の分も応援お願いね♪」
「……まあ、一応」
何故か照れくさい気分になりながら、俺は控えめに頷き、その場を後にした。
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浦ノ星女学院の体育館内は、まだ人もあまりおらず、薄暗さと外の雨音も合いまって、ひどく物哀しく思えた。
そして、その数少ない人の集団の中には、多少見覚えありそうなのがいた。
とはいえ、仲がいいとかでもないので、別に声をかけに行ったりはしないのだが。
そこで、ふと総武高校の文化祭を思い出す。そういやあの時は一番後ろにいたっけ。
その記憶をなぞるように一番後ろの壁によりかかり、まだ下りたままの幕を見た。今彼女達は、幕の向こう側で緊張しているのだろうか。それとも、案外普通なのだろうか……
「チャオ♪そんな後ろでイインデスカ?」
いつからいたのだろうか。突然声をかけられ、慌てて反応すると、まず鮮やかな金髪が視界に入った。外国人か?片言だし……。
暗い場所なので、はっきりとはわからないが、とにかく今までに出会った事のないタイプの人間だということはわかった。
「ふふっ、ソーリー。まだあんなに空いてるのに一番後ろにいるからつい……」
「……べ、別に。優しい性格してるもんだから、つい後から入ってきた人の為に空けてるだけだから」
「ワオ!それは親切デスネ~」
出だしで噛んでしまったが、どうやら俺の優しさは伝わったようだ。てか、いきなり距離を詰められると、緊張しちゃうから離れて欲しい。
すると、暗がりを縫うようにクスクスと彼女が笑う声が聞こえてきた。
「親切なのはいいけど……」
「?」
「せっかくの彼女達の晴れ舞台なんだから、一番前で見なくちゃモッタイナイデース!」
「っ!お、おい……」
こうして俺は謎の金髪女により、ステージの真ん前へと連れていかれてしまった。
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「よーし、頑張らなきゃ!!……観に来てくれてるのかな」