捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 #17

 祝日を含む3連休。2日間みっちり勉強したし、最後の1日くらいはゆったりと過ごして、鋭気を養っておきたい。

 そう思っていた時期が俺にもありました……。

 

「いやあ……またまた手伝ってもらって悪いねえ、比企谷君」

「本当に助かるわぁ……」

「もうっ!二人も手伝ってよ!」

「…………」

 

 何故俺は高海家にいる……そしてさらに掃除まで手伝っているのだろうか。

 ……まあ、スーパーに買い物に行こうとしたら高海次女に捕まっただけなんだが。実についてない。素直に掃除を始める俺も俺だが。

 ちなみに、掃除といっても旅館の方ではなく、高海家の居住スペースの方だ。あれ?本当に俺なんで掃除してんだろうな?

 一人首を傾げると、高海が小声で話しかけてきた。

 

「ごめんなさい、比企谷さん。手伝ってもらっちゃって」

「まあ、気晴らしの運動だと思えば……」

 

 我ながら、なんてプラス思考。だが、この家……かなり広い。家族5人暮らしとか聞いたが、広すぎじゃね?

 

「ほら、美渡姉も志摩姉もダラダラしてないで手伝って」

「まさか千歌からそんな言葉が出てくるとは……普段は一番だらけてるのに……」

「うん。お母さんに見せてあげたいくらい」

「これが恋の力か……」

「ちょっ……な、何言ってるの!?イミワカンナイ!ほら、はやく立って!そんなんだから彼氏できないんだよ!」

「何を~!一番言うてはならんことを~!」

「ほらほら、二人とも暴れないの」

「…………」

 

 てか、全員はやく手伝って欲しいんだけど……。

 

 *******

 

 小一時間ほど経ったところで、だいぶ辺りが綺麗になった実感が沸いてきた。喋らなくていい作業だから、気は楽なんだよな……疲れたけど。

 自分の仕事の成果を確認し、悦に浸っていたところへ、高海がとてとてとやってきた。

 

「比企谷さ~ん、こっち終わりましたから手伝いま……わぁっ!?」

 

 彼女は足を滑らせ、尻餅をついた。

 慌てて駆け寄ると、照れくさそうな笑みを浮かべた。

 

「大丈夫か?」

「あはは……転んじゃいました。いたた……」

 

 高海が転んだ場所は、さっき俺が柄にもなく気合いを入れて雑巾がけした場所だから、少し罪悪感はある。

 すると、今度は高海次女がぱたぱたと駆け寄ってき

 

「千歌、大丈夫!?すごい音したけど……ん?よしっ……むむっ、これはまずいわね。あまり動かさないほうがいいかも」

「え、全然平気だよ」

「何言ってんの。あんたダンスしてんでしょ?もしケガがひどくなって踊れなくなったらどうすんの」

 

 高海次女は真剣な眼差しを向け、妹を叱っていた。普段はからかってばかりでも、こういう時はしっかり姉やってんだな。「よしっ」とか聞こえた気がしたけど、あれは気のせいだったか。

 

「じゃあ、比企谷君。千歌を部屋までおんぶで運んであげて」

「「…………え?」」

 

 突然の提案に、俺も高海もきょとんと首をかしげた。

 だが、高海次女はそれもお構い無しのようだ。

 

「ほら、お父さんは今仕事で手が離せないから。それに、急がないと色々やばいよ!ほら、はやく!さあ!」

「…………」

 

 どうしたものかと思い、高海に目を向けると、彼女はあちこちに視線をさまよわせてから、申し訳なさそうな笑顔を見せた。

 

「じゃ、じゃあ、お願いしていいですか?」

 

 そんな上目遣いされたら断れるもんも断れないだろうが。ステージの上よりカワイイを発揮してやがる。

 

「…………わ、わかった」

 

 はやくしないといけないらしいので、腹を決めて素早くしゃがむと、ゆっくり立ち上がった高海が背中に乗っかってきた。

 ……やばい。な、なんだ、これ……予想よりやばいんだが。いや、どこがとは言わないが。長いボッチ生活で培った鋼の理性がなければ、どえらいことになってた気がする。

 立ち上がると、意外なくらい軽いが、今はそれどころではない。早々にこいつを部屋に運んで下ろさなくては……!

 そこで、高海の部屋の場所を聞こうとすると、なんと……高海次女がこちらに妖しい笑みを向けていた。

 ……おい、その笑み……まさか……。

 色々察してしまい、訝しげな目を向けると、すぐにまた真面目な表情になった。おい。

 とはいえ、今から下ろすのもアレなので、とりあえず足を進めると、少し離れてから高海次女が声をかけてきた。

 

「千歌って見た目の割に胸おっきいよー!」

「っ!?」

「ちょっ!美渡姉!?何言ってるの!」

 

 本当に何言ってんだ、この人は。さらに意識するだろうが。

 高海は、背中でじたばたしながら、姉に怒っていた。だから、そう動かれると色々こすれて……

 

「もうっ!美渡姉はあっち行ってて!比企谷さんもエッチなの禁止!」

「俺何も言ってないんだけど……」

「耳まで赤くなってるもん!!」

「…………」

 

 それに関しては否定のしようがなかった。 

 

 *******

 

 部屋は割と近い場所だったので助かった。

 高海に襖を開けてもらうと、ふわりと甘い香りが漂う可愛らしい室内が見える。

 

「じゃあ、下ろすぞ」

「あ、はい……」

 

 そっとベッドのそばでしゃがむと、彼女の体は離れていった。

 

「……俺は掃除に戻るから、しばらく休んでていいぞ」

「あ、でも……」

「安心しろ。一人で黙々と作業するのは得意分野だ」

 

 さっきの事もあり、気まずいのでさっさと行こうとすると、袖をつかまれた。

 振り返ると、彼女はいつもと違う雰囲気で、初めて見る表情だった。

 

「?」

「あ、あの……ありがとう、ございます」

「お、おう……」

 

 微かに頬を染めた高海の目は、なんだか熱っぽくて、ついつい目が離せなくなりそうだった。

 

 *******

 

 比企谷さんが部屋を出てからも、私はしばらくその方向を見つめていた。

 

「……なんか顔熱いな。熱、じゃないよね?」

 

 手には、さっきつまんだ袖の感触がはっきり残っていた。 

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