捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編 作:ローリング・ビートル
祝日を含む3連休。2日間みっちり勉強したし、最後の1日くらいはゆったりと過ごして、鋭気を養っておきたい。
そう思っていた時期が俺にもありました……。
「いやあ……またまた手伝ってもらって悪いねえ、比企谷君」
「本当に助かるわぁ……」
「もうっ!二人も手伝ってよ!」
「…………」
何故俺は高海家にいる……そしてさらに掃除まで手伝っているのだろうか。
……まあ、スーパーに買い物に行こうとしたら高海次女に捕まっただけなんだが。実についてない。素直に掃除を始める俺も俺だが。
ちなみに、掃除といっても旅館の方ではなく、高海家の居住スペースの方だ。あれ?本当に俺なんで掃除してんだろうな?
一人首を傾げると、高海が小声で話しかけてきた。
「ごめんなさい、比企谷さん。手伝ってもらっちゃって」
「まあ、気晴らしの運動だと思えば……」
我ながら、なんてプラス思考。だが、この家……かなり広い。家族5人暮らしとか聞いたが、広すぎじゃね?
「ほら、美渡姉も志摩姉もダラダラしてないで手伝って」
「まさか千歌からそんな言葉が出てくるとは……普段は一番だらけてるのに……」
「うん。お母さんに見せてあげたいくらい」
「これが恋の力か……」
「ちょっ……な、何言ってるの!?イミワカンナイ!ほら、はやく立って!そんなんだから彼氏できないんだよ!」
「何を~!一番言うてはならんことを~!」
「ほらほら、二人とも暴れないの」
「…………」
てか、全員はやく手伝って欲しいんだけど……。
*******
小一時間ほど経ったところで、だいぶ辺りが綺麗になった実感が沸いてきた。喋らなくていい作業だから、気は楽なんだよな……疲れたけど。
自分の仕事の成果を確認し、悦に浸っていたところへ、高海がとてとてとやってきた。
「比企谷さ~ん、こっち終わりましたから手伝いま……わぁっ!?」
彼女は足を滑らせ、尻餅をついた。
慌てて駆け寄ると、照れくさそうな笑みを浮かべた。
「大丈夫か?」
「あはは……転んじゃいました。いたた……」
高海が転んだ場所は、さっき俺が柄にもなく気合いを入れて雑巾がけした場所だから、少し罪悪感はある。
すると、今度は高海次女がぱたぱたと駆け寄ってき
「千歌、大丈夫!?すごい音したけど……ん?よしっ……むむっ、これはまずいわね。あまり動かさないほうがいいかも」
「え、全然平気だよ」
「何言ってんの。あんたダンスしてんでしょ?もしケガがひどくなって踊れなくなったらどうすんの」
高海次女は真剣な眼差しを向け、妹を叱っていた。普段はからかってばかりでも、こういう時はしっかり姉やってんだな。「よしっ」とか聞こえた気がしたけど、あれは気のせいだったか。
「じゃあ、比企谷君。千歌を部屋までおんぶで運んであげて」
「「…………え?」」
突然の提案に、俺も高海もきょとんと首をかしげた。
だが、高海次女はそれもお構い無しのようだ。
「ほら、お父さんは今仕事で手が離せないから。それに、急がないと色々やばいよ!ほら、はやく!さあ!」
「…………」
どうしたものかと思い、高海に目を向けると、彼女はあちこちに視線をさまよわせてから、申し訳なさそうな笑顔を見せた。
「じゃ、じゃあ、お願いしていいですか?」
そんな上目遣いされたら断れるもんも断れないだろうが。ステージの上よりカワイイを発揮してやがる。
「…………わ、わかった」
はやくしないといけないらしいので、腹を決めて素早くしゃがむと、ゆっくり立ち上がった高海が背中に乗っかってきた。
……やばい。な、なんだ、これ……予想よりやばいんだが。いや、どこがとは言わないが。長いボッチ生活で培った鋼の理性がなければ、どえらいことになってた気がする。
立ち上がると、意外なくらい軽いが、今はそれどころではない。早々にこいつを部屋に運んで下ろさなくては……!
そこで、高海の部屋の場所を聞こうとすると、なんと……高海次女がこちらに妖しい笑みを向けていた。
……おい、その笑み……まさか……。
色々察してしまい、訝しげな目を向けると、すぐにまた真面目な表情になった。おい。
とはいえ、今から下ろすのもアレなので、とりあえず足を進めると、少し離れてから高海次女が声をかけてきた。
「千歌って見た目の割に胸おっきいよー!」
「っ!?」
「ちょっ!美渡姉!?何言ってるの!」
本当に何言ってんだ、この人は。さらに意識するだろうが。
高海は、背中でじたばたしながら、姉に怒っていた。だから、そう動かれると色々こすれて……
「もうっ!美渡姉はあっち行ってて!比企谷さんもエッチなの禁止!」
「俺何も言ってないんだけど……」
「耳まで赤くなってるもん!!」
「…………」
それに関しては否定のしようがなかった。
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部屋は割と近い場所だったので助かった。
高海に襖を開けてもらうと、ふわりと甘い香りが漂う可愛らしい室内が見える。
「じゃあ、下ろすぞ」
「あ、はい……」
そっとベッドのそばでしゃがむと、彼女の体は離れていった。
「……俺は掃除に戻るから、しばらく休んでていいぞ」
「あ、でも……」
「安心しろ。一人で黙々と作業するのは得意分野だ」
さっきの事もあり、気まずいのでさっさと行こうとすると、袖をつかまれた。
振り返ると、彼女はいつもと違う雰囲気で、初めて見る表情だった。
「?」
「あ、あの……ありがとう、ございます」
「お、おう……」
微かに頬を染めた高海の目は、なんだか熱っぽくて、ついつい目が離せなくなりそうだった。
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比企谷さんが部屋を出てからも、私はしばらくその方向を見つめていた。
「……なんか顔熱いな。熱、じゃないよね?」
手には、さっきつまんだ袖の感触がはっきり残っていた。