捻くれた少年と海色に輝く少女達 CYaRon編   作:ローリング・ビートル

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明日への扉 ♯1

 高海に誘われて人生初のダイビングをしてみたのだが、ぶっちゃけ楽しかった。松浦の指導もわかりやすく、思ったよりもすんなり潜ることができたのも大きい。

 初めて体感する世界。

 薄暗くも鮮やかな海の中、海の音が何故か記憶に焼き付いた。

 そして、海から上がった時、ゴーグルを外した彼女の笑顔が何故かわからないが、やけに心に焼き付いた。

 

「沼津の海、綺麗ですよね!」

 

 ……今度戸塚や材木座にも話してみよう。

 あれ、材木座って……誰だっけ?

 

 *******

 

 まさか、いきなりパンクするとは……。

 朝、登校初日から自転車の前輪がパンクしてしまった。マジか……。幸先悪すぎだろ。

 とはいえ、朝っぱらから沈んでいても仕方ないので、渋々バス登校することにする。

 窓から見える景色は、一週間経った今でも見慣れない。自分の千葉愛に驚きである。

 千葉の景色が頭に広がりかけたところで、バスが風情のある旅館近くのバス停で一時停止した。

 ……こんなところに旅館があったのか。

 そして、バスが再びのろのろと動き始めたところで、後方からやたらと元気のいい声が飛んできた。

 

「乗りまーす!」

 

 その声に運転手が気づき、バスがゆっくり止まる。

 大きな音と共に開いたドアから慌てて乗り込んでくる二人組の女子。そのどちらにも見覚えがあった。

 さらに、どちらも小町と同じ制服を着ていた。

 

「あっ、比企谷さんだ!おはようございます!」

「……おう」

「ヨーソロー!」

「お、おう……」

 

 朝からハイテンションな二人にたじろいでいると、二人はそのまま一番後ろまで来て、俺と反対側の席に座った。

 何の気なしに見ていると、高海がこちらを向き、人懐っこい笑顔を見せた。

 

「比企谷さんもバス通学なんですか?」

「……いや、自転車パンクしただけだ」

「あらら、ついてないですね~」

「……ああ」

 

 危ない危ない。中学時代の俺なら、うっかりときめいていたところだ。てかこの子、まだ二度目ましてなのにフレンドリー過ぎない?

 朝っぱらから女子にガンガン話しかけられる気恥ずかしさのせいか、窓の外に目をやると、肩をポンポン叩かれる。だから男子へのボディタッチは控えなさいとあれほど……

 

「あの、比企谷さん!実は私、スクールアイドル始めるんです!」

「ス、スクールアイドル?」

 

 アイドルスクールに入学とかじゃないのか?いや、アイドルスクールも実際あるのかわからんけど。

 

「え?知らないんですか!?」

「すまんが、全然知らん」

「ち、千歌ちゃん……どうしたの?いきなり……」

 

 高海のハイテンションに、渡辺も戸惑っている。

 ……一瞬だけあの二人が浮かんだ。

 しかし、それは一瞬の事で、意識は距離を少しだけ詰めてきた高海に引きつけられた。

 

「だって宣伝しなくちゃ!ライブ観に来てくれるかもしれないし♪」

「…………」

 

 その後、高海達の通う学校に到着するまで、スクールアイドルとは何かを語られ続ける羽目になった。

 

 *******

 

 高海の熱い解説により、スクールアイドルがどういうものなのかは、とりあえず理解できた。とりあえず握手券を買わされることはなさそうだ。

 

「まあ、とにかく……そのユーズってグループが凄いんだな……」

「そうなんですよ!特にユーズのこの曲が……」

 

 高海がスマホの画面を見せつけながら、ぐいぐい近寄ってくる。だ、だから、そういうの男子が誤解するから止めてね?なんか滅茶苦茶いい匂いするし……。

 そこで、渡辺の声が高海の後ろから聞こえてきた。

 

「千歌ちゃん。もう着いたよ」

「あっ、本当だ!じゃあ、ライブする時は来てくださいね!」

「……ああ、まあ、いつか、その内な……って、もういないのかよ」

 

 高海達はこちらの返事も碌に聞かずにバスを飛び出していった。おい、行かなきゃいけなくなるだろうが。

 そのはしゃぐ背中を見送っていると、後をついて行く渡辺は、何故か俺と高海を交互に見比べていた。

 

 

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